『暗闇のスキャナー』 フィリップ・K・ディック

あまりにガチすぎる


暗闇のスキャナー (創元SF文庫)
フィリップ・K・ディック
東京創元社
売り上げランキング: 147,814


近未来のアメリカでは、物質Dと呼ばれる麻薬が蔓延していた。麻薬捜査官フレッドは、大物売人を捕らえるために物質Dを自ら服用し、アークターの偽名で中毒者のグループへ潜入操作する。フレッドの家には、画像と音声を認識するスキャナーが備え付けれられ、入り浸るジャンキーを観察することとなった。しかし物質Dの中毒が進むなか、自らが麻薬捜査官なのか、ジャンキーなのか、定かでなくなって……

ジャンキーによるジャンキーのための小説か
作者自身が薬物に溺れた過去(ハインラインに救われた!)があり、ジャンキー特有の混乱した思考と会話が真に迫りすぎて読みにくかった(苦笑)
しかしストーリーは最高級。フレッドが麻薬捜査官かジャンキーか自我が混乱し、酷い中毒者の恋人ドナをいかに救い、愛せるかで苦悩するところ、とんでもないどんでん返しが待っている
バイスの裏切りでさんざん盛り上げておいて、それが陽動なんだから手が込んでいる。まんまと乗せられてしまったよ(笑)
解説で触れられるように、作者があまりにドラッグに嵌り、ジャンキー仲間に近づきすぎたゆえに、薬物批判というには手ぬるい部分もある
しかし、ディック作品のテーマ、何が真で何が虚かが強烈に貫かれた名作である

麻薬戦争の深刻さもさることながら、近代社会のなかでの自我の分裂がテーマではなかろうか
麻薬捜査官とジャンキーの二重生活を送るフレッド(アークター)は、スキャナーに映った自分から「中毒者としての自分」を発見する。物質Dによる記憶の混乱から、あまりに違う自己イメージに、フレッドはアークターと自分は別人であると規定する。あえて多重人格とすることで正気を維持するのだ
薬物による近代的自我からの逃避と、テクノロジーの発達による自我の分裂。まるで危険ドラッグが蔓延し、リアルとネットで違う自分を持つ現代人の自我を映しているようではないか
そして分裂する人格の問題は、主人公本人のみに留まらず、愛する恋人にも及ぶ。二つ以上の人格を持ち合わす人間同士の付き合いは、どこまでが真実でどこまでが嘘になるのだろうか。はたして表に見えている人格を信用できるものなのか

しかし問題に直面しているはずの政府と社会は、逸脱した者をシステム的につまみ出すのみで、本質的には何も解決しようとしない。むしろ、邪魔を追い出し続けるシステムに問題があるかのようだ。主人公は逸脱したことすら当局の計算のうちで、警察行政の作戦に利用されていく
弱者がシステムのなかで使い倒されていくだけで、物質Dを作る組織も政府も変わんないという痛ましいラストには、ため息しか出ない
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