『猫を抱いて象と泳ぐ』 小川洋子

将棋ファンにもお薦め


猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)
小川 洋子
文藝春秋 (2011-07-08)
売り上げランキング: 11,216


屋上を降りられなくなった象インディラ。壁の間に挟まれて出られなくなった少女ミイラ。空想を友にした少年はある日、プールで死体を見つけた。その不幸な会社員を追いかけるうちに、同僚でチェス仲間だった独身寮の管理人に会う。ポーンという猫を抱く太っちょの管理人は少年にチェスを教えたが急死。悲嘆にくれる少年のもとに、“海底”パシフィック・チェス倶楽部からチェス人形“リトル・アリューヒン”を動かす依頼が来る

不思議でもの悲しく、美しい物語だった
屋上を降りられなくなった象から始まって、チェスを教えてくれた“マスター”が肥満ゆえに(生活の場にしていた)廃バスから出られなくなったことから、少年は「大きくなること」への恐怖を感じるようになる
からくりチェス人形“リトル・アリューヒン”を操作する立場になると、少年の体のままでいることに成功し、ほぼ12歳のままの体で一生を送る
一種の幻想のなかで生きる少年は、単純に成長忌避とはいえないし、作品としてもそれに突っ込まない。少年は“リトル・アリューヒン”でチェスを指すことで、大人たちを渡り合って行くし、アリューヒンの名に相応しい詩の棋譜を残していく
少年は“リトル・アリューヒン”となることを選んだのだ。そして、その代償として、鳩を肩に乗せた少女との悲恋を味わう
さて、少年は「大きくなること」から逃げ切れたのだろうか。人形から出られなくなる結果から考えると、彼もその宿命に飲まれている。大人とは、大きくなって屋上から降りられなくなることかもしれない
しかし、降りられなくなった少年の前にはチェスの豊饒な海が広がっていた

ヨーロッパとおぼしいものの(フランス?)、どこの地域かと特定できず、主人公をはじめ固有名詞はほとんど出てこない
ただ、アリューヒン”は実在したチェス・チャンピオンをモデルにしている
本名はアレクサンドル・アレクサンドロヴィチ・アレヒン。モスクワ生まれで、1927年にフランスに帰化しアリューヒンと呼ばれる
帰化した歳に、キューバのホセ・ラウル・カパブランカを破り、チェス・チャンピオンとなる。リベンジの権利をカパブランカを有していたものの、アリューヒンはこれを避け続けて、違う相手に防衛戦を行っている
カパブランカの実力を認めていても、「チェス機械」と称された棋風と相容れなかったようだ。彼がチェスを差す人形である“リトル・アリューヒン”を見たら、どう思うだろうか
アリューヒンは1933年に来日していて、目隠しの同時対局を全勝。あの木村義雄十四世名人とも対局していたという
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