『空洞化のウソ』 松島大輔

あえてぶちあげる「大きな物語」


空洞化のウソ――日本企業の「現地化」戦略 (講談社現代新書)
松島 大輔
講談社
売り上げランキング: 302,563


海外進出は、「空洞化」にはならない!? 日本企業の「現地化」を推奨する
本書は経済産業省の官僚である著者が、日本企業のアジア進出が本国の「空洞化」になることを否定し、むしろ「現地化」によって日本経済を救うと提言するものだ
すでに海外子会社の送金なしに経営が成り立たない企業も多く、現地に生産拠点を持つことで本国をそのバックアップや高付加価値の製品開発に絞ることで収益を上げ、雇用も保てるとして「空洞化」論を否定する
難は海外進出を進める省庁の人間自身がプレゼンしているだけあって、邪魔になるデータを黙殺していること。特に雇用に関しては、数だけ取り上げて質を問うておらず、所得水準が下がり続けていることを無視している
いいとこ取りのデータに、意識高い系の人が喜びそうな言語が並び、その論理には気持ち悪いほど曇りがない。いかにも賢いテクノラートが書いた本である

日本の製造業が新興市場で苦戦する理由は、高付加価値の製品を作るあまり、現地のニーズにあった価格帯の商品を用意できないことにある
現地化は企業がアジアに生産拠点を移すことで、市場の実状に接しそれに沿った商品開発をできるようになる、さらにその経験を踏まえて、グローバル仕様の企業体質に変えるきっかけとなるのがキモだ
本国の生産にこだわると、古いしがらみを引きずって、自力での改革は難しい。海外進出で自ら「外圧」に出会うことで、改革のきっかけを作る。ムラ社会体質の日本企業には理にかなったやり方だろう
著者が足を運んだ「新興アジア」(インド、東南アジア)では、アメリカ型の全てオープンで決めるスタイルより、内々で関係者だけで決める日本型の談合スタイルに親和性があり、複数の部材を調整しながら製作する「すり合せ型」のもの作り文化を持っている
古くから東南アジアへは、日本企業が積極的にFDI(直接投資)を行っていて、そうした資産も生かせるチャンスとなるのだ
大国流にルールを押し付けるのではなく、その環境を企業自身に利用させる手法(他国のFTAを利用して中継する等)は、したたかで日本にふさわしい戦略だ

ただし、どんな企業にも海外進出を勧めているわけではない
国内でダメだから海外に賭けるというのが、典型的な失敗パターンらしく、国内ですら通用しない会社は外で稼げるほど甘くない
むしろ、一流の技術を持って国内中心で自足している企業に、先手を打った海外進出を勧めている。新興市場ではパイオニアになることで企業名がブランド化し、打ち出の小槌を得ることができる。また、手を広げ過ぎて恐竜化しつつある大企業にも、「選択と集中」をするきっかけになるとしている
単独で進出できない中小企業に対しては、省庁や地方共同体が複数の企業で「産業クラスターを組む政策という手が用意されいるそうだ
新興アジアを文化的に「日本化」して、「王道楽土」を築こうとか、実験台にしようぜとか不穏の表現(苦笑)も目立ち、ずいぶん楽観的な見通しを立てていて微苦笑を禁じえないが(おそらく、満州国の官僚もこういうノリだったのだろう)、末端の労働者としては、企業と国民の利益が必ずしもイコールではない現実を踏まえながら、注視するほかないだろう
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