『魔界転生』 山田風太郎

せっかく二つの映画化作品を見たので、原作の小説も読んでみた

魔界転生(上)―山田風太郎忍法帖〈6〉 (講談社文庫)魔界転生(上)―山田風太郎忍法帖〈6〉 (講談社文庫)
(1999/04)
山田 風太郎

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魔界転生(下)―山田風太郎忍法帖〈7〉 (講談社文庫)魔界転生(下)―山田風太郎忍法帖〈7〉 (講談社文庫)
(1999/04)
山田 風太郎

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山田風太郎の小説は名前を知りつつも、あまり読んで来なかった
歴史小説・時代小説というと、史実の考証を重視した穏やかな印象が強いけど、これはまさに奇想天外で、歴史的背景を踏まえつつも、ファンタジー要素も組み込んで、伸び伸びとしたストーリーが展開されている
島原の乱から始まり、主人公十兵衛はなかなか出てこない。中盤まで延々と敵方の魔界転生衆が集っていくところに、紙数が割かれている。そのマイペースな展開には、ただただ圧倒された
敵の編成をここまで描くのもまた珍しい
転生衆は生前、ストイックに生きていた人物ばかりで、欲望を抑制し過ぎた果てに、いまわの際、今一度の生を望む。この死に際したあがきは、まるで剣聖らしくないんだけど、著者の人間観が反映されているようだ

見どころはやはり、時代を超えた剣豪達の対決。魔界転生という設定は、それを実現するためのもの
転生した者たちは、どれも腕が立つ。ごく微妙なところで、決着はついていく
後半になると、十兵衛もかなり押されている。奇計によって、ようやく勝ちを拾うのみだ。ここらへんは剣豪たちのビッグネームを立てたというところか
転生衆も魔人に生まれ変わりながら精神は人間的で、十兵衛もまた危機には茫然とし誤謬を犯す。そのバランスがいい
読んでいる間は、どうやって、くぐり抜けていくのかハラハラ

脇を固める登場人物も絶妙。十兵衛の弟子には、美少女剣士三人がいて、しかも、ちゃんと敵に捕まりお色気サービスたっぷりである
最近のラノベなどより、相当突き抜けたことをやってしまっている。なんという旺盛なエロであろう
男弟子たる柳生十人衆がまたみんな人のいい奴で、強敵に際しては必死に戦い、美少女三人や行きがかりの女性にもバカ親切(あっ。これはただのスケベか
彼らの神経は下々のそれであり、読者に一番なじみやすいものになっている。等身大の男達だ。ただ、その死に様は凄まじい
敵として出てくる根来衆も、柳生10人衆と同じく等身大な敵。彼ら同士の戦もまた読み応えあり
痛快なのが、七歳の弥太郎君の活躍。愛敬たっぷりの彼は殺伐となりそうな物語に、明るさと笑いを与えている。柳生十人衆ともども微笑ましい存在
多くの敵味方が倒れ、凄まじい展開をたどるが、かといってシリアス一辺倒ではない。これ以上ない絶妙なバランスを保っている
ほんと、いろんな魅力がこの作品にはある

映画版と大きく違うのは、天草四郎が首魁でないこと。それでも、序中盤までにおける彼の存在感は中ボス以上のものがある。映画で主役に取り上げられるわけだ
話の展開は2003年版の方に近い。ただ、江戸城を炎上させるような大騒ぎまでにはならない
地域的には柳生の里と紀州周辺で片付いてしまう。その代わり、紀州の名所を回り、その史跡の解説があったりする。ここらの風景描写も素晴らしく、実際に行ってみたくなってしまった
最近、映像作品に影響された小説が多い。しかし、元来小説は映画よりもはるかに制約は少なく、その想像のままに物語を編むことができるはずなのだ
その当たり前のことを思い起こしてくれる小説だった


関連記事 【DVD】『魔界転生』(1981年)
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*2013’11/9 読みやすくするため再構成
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