『街道をゆく 5 モンゴル紀行』 司馬遼太郎

今は貧富の差が激しいそうで


街道をゆく 5 モンゴル紀行 (朝日文庫)街道をゆく 5 モンゴル紀行 (朝日文庫)
(2008/09/05)
司馬 遼太郎

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第5巻は日本を離れ、モンゴル
司馬が少年の頃から夢想した大地であり、大学ではモンゴル語を専攻したほど。30年越しの夢が叶ったからか、普段なら風景をそっちのけで歴史とのつながりに終始するのに、今回だけは紀行文らしい描写に溢れている
モンゴル人民共和国(1974年当時)は、人口が日本の都道府県ほどで、広さは日本の四倍ほどの国。人口密度の違いからか、社会主義国のわりに暢気な空気が流れており、本来なら悪名高い警察すら親切だった
仏頂面のソ連役人との落差が際立っている
同シリーズの旅のほとんどに夫人が同行していたらしいのだが、本巻では珍しくその姿を映してネタにしていた


<ハバロフスク>

モンゴルへ入国するには、ソ連領の沿海州ハバロフスクを経由する
街を開拓したというコサックのハバロフ隊長の話から、毛皮を追う遠征と支配地拡大の拡大へと広がる。19世紀までは征服者が英雄だった
満州の経験からホテルに日本人収容者の苦難を連想する司馬だったが、意外な元収容者と会う。その日本人は強制収容所の所長に世話になったとして、お礼を言おうと有志とモスクワへ行くというのだ
捕虜の強制労働は国際法違反だが、(ソ連にしては)人道的に扱ってくれたとしてお礼を言ってしまうその人に、日本人ならでは人の好さを見る
当時の沿海州のロシア人は、日本が再び攻めてくると恐れていて、実態を説明しても「自衛隊がいる」と言い張っていたそうだ


<イルクーツク>

ハバロフスクからイルクーツクを経由してモンゴルへ入る予定が、ここでトラブル発生。飛行機が遅れたために夜七時にイルクーツクへ着いてしまい、領事館が開いているかもさることながら、その場所さえはっきりしない事態に。ホテルのフロントに聞いても、場所が分からないというのだ
ソ連にはモンゴルへの経由として旅券を得ているので、もし滞在が延びればどこに放り込まれるかと、シベリア抑留者のような運命を連想してしまう
ハバロフスクで出会った商社マンに助けられ、領事館付きの運転手(!)に入国査証を発行してもらい事なきを得る

イルクーツクはあの大黒屋光太夫が滞在した都市で、19世紀にはゴールドラッシュで各国の商人でにぎわった。清朝の商人は、自国の人間の死体を加工してその中に金を流し込み、密輸出したという


<ウランバートル>

ようやく念願のモンゴルへ入国。ガイドのツェックマさんの案内で、首都ウランバートルを巡る。ウランバートルはモンゴル語で「赤い英雄」を意味し、ロシア風の町並みである。都市生活は息苦しいのか、身分の上下問わず休暇は郊外の「包」へと戻る
日本とはノモンハン事変=ハルハ・ゴル戦争のせいで、歴史的には侵略者と評価されているが、民族感情は悪くなく日本語と構造が似ているため、日本の歌が流行っているという

モンゴルは清朝の版図に組み込まれた時代に、ラマ教による弱体化政策が取られ、遊牧民としての牙を抜かれて搾取され続けた。中華民国の時代には、国民党の将軍によって中国服まで強要されたので、革命のソ連を頼ることとなる
ロシアとモンゴルは。ロシアの東進に対して“ブリュート”・モンゴル人が協力した経緯もあって関係が良好だった。ただジンギスカンに関してのみ、ロシア人にとって侵略者なので、英雄として崇拝することは禁じられた
ソ連に経済的に依存されるコメコンに加盟していたが、牧畜主体の経済なので悪影響はなかったようだ


<ゴビ>

ウランバートルからゴビ砂漠の南部へ飛ぶ
ゴビ砂漠はタクマラカン砂漠のような、さらさらした純粋な砂漠ではなく、一面が赤い鉄さび色の荒野。司馬は火星の表面にも喩えている
ゴビでは、連綿と続く遊牧民の生活を体験。馬乳酒は、馬あるいは駱駝の乳を元にしたアルコール度数3%以下の清涼飲料水ともいえるもので、一度にどんぶりに三杯は呑む
乾燥したモンゴルの大地では、頻繁な水分補給が不可欠で、体から水分の蒸発を防ぐため、どんなに暑くても分厚い衣服を着込んでいる
遊牧民にとって、馬は自転車・バイクに相当するもので、バスで別れたはずの青年に行く先に出会って一同をびっくりさせる
モンゴルは広い。地平線の雄大さに距離感がまったく働かず、風景に興奮してフリーダムに動く須田画伯(挿絵担当)を恐々呼び止めている


次巻 『街道をゆく 6 沖縄・先島諸島への道』
前巻 『街道をゆく 4 郡上・白川街道、堺・紀州街道ほか』

草原の記 (新潮文庫)草原の記 (新潮文庫)
(1995/09/29)
司馬 遼太郎

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