『人はなぜ宗教を必要とするのか』 阿満利麿

兼好法師もおすすめの浄土宗


人はなぜ宗教を必要とするのか (ちくま新書)人はなぜ宗教を必要とするのか (ちくま新書)
(1999/11)
阿満 利麿

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宗教はほんとうに要らないのか? 身に余る不条理を受け止める、現代人にとっての宗教の入り口を模索する
『日本人はなぜ無宗教なのか』の姉妹本である
前著で記したように、だいたいの日本人は「自然宗教」が強いから、あえて「創唱宗教」には入らずに生きてきた。しかし、時代を経るごとに「ムラ」は消え、村社会的共同体も失われつつある
そうしたときに、無意識のうちに「自然宗教」に支えられてきた「無宗教」で、日本人は耐えられるのか?
本書はそうした認識のもとに、「宗教」への誤解を解きながら、文豪たちが模索した境地宗教者にとっての「信仰」を語る
著者が浄土真宗の寺で生まれたこともあって、浄土教への入門書と化しているが、「無宗教」とする日本人がいかに仏教の要素に囲まれて暮らしているかには驚かされた

まず最初に、作家・北杜夫「死ねば一切無に帰する」という言葉が取り上げる
「死ねば無」という発想はきわめて現代的なもので、生きているうちが華という現世中心主義の裏返し。地獄や極楽といった「来世」という観念が科学的常識が行き渡るともに、一番受け入れやすいものだという
日本における現世中心主義の始まりは、江戸期の「<浮世>の人生観」で、長い期間を経て多くの人間の共感を得てきた
ちなみに、「人生は無意味」というニヒリズムは、近代国家が成立した以降の代物。村を越えた国家、政府、あるいは会社に振り回され、自己選択を迫られるからこそ、人生の意味を自分で探さなくてはならないために陥る悩みだという
ただ本来、「死後の世界」は生きている人間が死んだ人間を見て想像する世界に過ぎず、科学的証明など不可能。死んで見なければ分からないわけであり、科学的証明とは別次元の事柄なのだ
しかし現代人にとって「科学的」なのが大事で、逆に言うと「科学的」に装われたことなら荒唐無稽なことでも信じられてしまう
著者は明治の宗教哲学者・清沢満之を引いて、「科学」をもって「納得」できないことを無視する態度は、人間の精神を衰えさせると指摘する

ただし「科学」に押されて出てきた「死ねば無」という発想は、仏教の「無」「空」の概念から来ていて、実は日本文化に根づいたものでもある
多くの文化人がその“道”を通じて、「無」という真理への共感を表明していて、「死ねば無」とは永遠の世界に還っていくことを意味する
啓蒙家の福沢諭吉すら、世界観に関しては伝統的な「無常観」を持っていて、「人間は芥子粒」のような存在としていた
近代文学でも志賀直哉の『暗夜行路』などは、人間のはかなさを訴えていて、多くの不条理を自然との一体感によって「救済」される物語となっている
また風流の価値観も佐藤春夫を引いて、自己のはかなさを自然との一体感で乗り越えよう境涯とし、「もののあはれ」「無常感」とも呼んできたという
自然に対して意志的な態度を放棄して、溶け込んでしまう作法は欧米にはない発想なのだ

このように日本人の宗教観には、仏教の入り口が開いているにも関わらず認識されないのは、人間の問題は人間の理解できる範囲で解決するという「浮世」の考えと、職業的宗教家への不信
職業的宗教家、坊さんを恨んでしまうのは、聖人、「清僧」願望の裏返しで、日本人は「苦行」によって神秘的な力を持つ「清僧」を信じてきた
また、仏教側もブッダが「苦行」を否定してきたにも関わらず、民衆の期待にこたえて「清僧」幻想を作り上げた
そうした願望を否定したのが、浄土宗の法然であり、人間は皆自分では悟れぬ「凡夫」であるとして、聖職者による「教会」と「苦行」を否定し、信者と「道場」があるのみとした。厳しい戒律と「苦行」は、並の人間にはついていけず、庶民を救うものではない
ちなみに大阪は、浄土宗・浄土真宗が浸透した土地であり、漫才はアホ=凡夫であることを笑いあうものと著者は解釈している
と、著者は日本人に入りやすい宗教として、浄土教を紹介するが、望まれる宗教の条件としてはその人を精神をポジティヴに、明るくできればよしとする。それが社会と相容れるかは、宗教とは別次元の道徳の話になるのだ


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