『日本人はなぜ無宗教なのか』 阿満利麿

日本人の精神を見つめなおす


日本人はなぜ無宗教なのか (ちくま新書)日本人はなぜ無宗教なのか (ちくま新書)
(1996/10)
阿満 利麿

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日本人はなぜ「無宗教」と答えてしまうのか。葬式、年中行事に親しつつ、「宗教」を敬遠する日本人の宗教観とは?
軽く読めたわりに、付箋をびっしり付けてしまった
「宗教心」の調査だと、だいたい日本人全体の七割が「無宗教と答えてしまう一方、「宗教心は大切だと思う」という質問には過半数が諒とする
日本人にとって「無宗教」とは、無神論ではなく、特定の宗派に帰依しないことを指すのだ。本書では、そう答えてしまう歴史的背景と、もともと持ち合わせている宗教観を柳田國男などを引用しながら解き明かしていく
日本人の宗教観を捻じ曲げたとして近代日本に辛く、浄土宗・浄土真宗への肩入れを感じるものの、日本人がまさに「自然」「普通」と考える行動・思考様式の由縁を明かしてくれる

そもそも「宗教」「無宗教」という用語は、明治政府の政策から生まれている
明治政府は国民国家を作るために、天皇を主権者として下々を「臣民」としたが、その正当性を得るために天皇がアマテラスの子孫であるという「神話」を作り上げた
しかし、近代は合理性を求める時代もあり、特にキリスト教の公認問題は列強との条約改正でのネックになっていた
そうした外圧や宗教者、指導者層の反発もあって、国家神道による一神教化の計画は頓挫する
そこで妥協案として登場したのが、宗教を「内想」(内面)と「外顕」(活動)に分ける考え方だった。内面の信仰を保障するものの、布教活動などは政府によって制限されて然るべしというものだ
そして、政教分離の建て前を守るため、天皇の宮中行事などに関しては、憲法の実質起草者である井上毅によって「神道非宗教論」が展開され、国家が祭祀に税金を投入することを正当化した
井上毅によれば、神道を宗教化したのは近世の国学者であって、祖先崇拝と鎮魂は国家の儀式に過ぎないのだ
こうした政策的詭弁は日本人の宗教観に大きく影響し、「祭祀」と「祈願」の観念を分離させてしまった。神社で拝むことを「宗教」のうちに入れないのは、これが原因だろう
この「神道非宗教論」には、浄土真宗の僧侶も関わっていて、近世以来の政権と宗教組織の関係を引きずっている

そうした政策誘導を除いた上での、日本人にとっての宗教とはなんなのだろうか
著者はいわゆる“宗教”、特定の宗派への帰依するものを「創唱宗教」と、葬式、年中行事といった日常に溶け込んだものを「自然宗教」に分けて考え、「自然宗教」の世界へ切り込んでいく
柳田國男によれば、日本人には“普通”にこだわる「尋常志向があり、部落(ムラ)の平穏のためには、過ぎたる善であっても遠ざける。なるべく結果の不平等をなくそうと、何事も「平衡化」(平均化)し、超越的なものよりも身近な物事を重んじる「日常主義とする。「非日常より日常を」という文句は、よくサブカル界隈に見られるが、日本人のベースとなるムラ社会的発想ともいえるのだ
また自然観として、何事も最後は「大自然」に呑まれて元へ戻ると考えていて、悪いことも時間が経てばどうにかなるという行動様式につながる。これも自然に恵まれた“みずほの国”ならではなのだろう
とはいえ、こうした傾向が広まったのは、近世に入って農業技術が発達し生活が豊かになったから。中世までは災厄に苦しめられ、その苦しみから逃れるために超越的なものに期待するのが主流だった
時代が進むごとに、従来の仏教や儒教が「日常主義」に絡め取られてしまい、宗教としての拘束力を失っていったが、全ての人がそれで満足したわけではなかった
本書は「無宗教」で済まされる日本社会の裏に、多様で豊かな精神が潜んでいることを訴える


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