『「赤報隊」の正体―朝日新聞阪神支局襲撃事件』 一橋文哉

パリとは違う、日本独特の背景


「赤報隊」の正体―朝日新聞阪神支局襲撃事件 (新潮文庫)「赤報隊」の正体―朝日新聞阪神支局襲撃事件 (新潮文庫)
(2005/04)
一橋 文哉

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1987年5月3日朝日新聞阪神支局で散弾銃を持った男が侵入、記者一人が死亡、一人が重傷を負った。2003年に時効を迎えた赤報隊事件」の真相とは?
パリで新聞社が襲われる事件が起きたので、何か共通点がないかと読んでみた
本作はこのジャーナリスト(?)独特の、ミステリー調のルポルタージュ(あるいはルポルタージュ調のミステリー)となっていて、状況証拠によって想定される犯人・真田茂之(仮名)への追及を軸に、「赤報隊事件」の背景を探っていく
なぜ多くの物証がありながら、犯人は捕まらないのか
その謎には、公安警察と治安警察の摩擦、朝日新聞の及び腰、犯罪組織と「えせ同和行為」、関西闇の紳士たちと政界からの圧力、など単なる新聞社へのテロに留まらない巨悪が隠れていた
まるで松本清張の小説のような展開ながら、導き出された結論には異常なリアリティがある
日本社会は、テロや犯罪と共存し続けていたのだ

犯人が捕まらなかった要因のひとつは、捜査一年後に公安警察が介入したこと
当初「日本民族独立義勇軍 別働赤報隊」と名乗っていたことから、1981~1983年に起こった「日本民族独立義勇軍」のテロ事件(未解決)と絡めて、右翼の過激派の犯行と想定されたから。公安側からすれば、現在進行形のテロ事件なのだから、積極的に関係者を拘束し、事件を予防する必要があるというわけだ
そのため、多くの物証から犯人を絞らず、右翼関係者に対する見込み捜査へと迷走し始める
そもそも赤報隊とは薩摩藩邸を中心に破壊工作を行い、鳥羽・伏見の戦いのきっかけを作った相楽総三が、近江の松江山金剛輪寺において結成した義勇軍。西郷隆盛の許可を得ていた「官軍」なはずが、勝手に租税免除を占領地に約束したことから、「偽官軍」の烙印を押され、非業の死を遂げた存在である
そうした由来からも、捜査当局は政治目的を持ったテロと思い込んでしまった

もうひとつは、ある汚職事件と関わって捜査にストップがかかったこと。ある事件とは、「金屏風」で有名な平和相互銀行事件(以下平相銀)である
平相銀の創業者一族と経営陣の内紛から、85年4月に経営陣側が画廊社長の仲介で「金屏風」を40億円で購入し、その一部が竹下登に流れて支援を期待した。しかし、裏工作は失敗し、翌年住友銀行に吸収合併された一件だ
当時、東京進出に向けて拠点が欲しかった住友銀行、銀行再編を狙う大蔵省、自民党総裁選に向けて資金が欲しい竹下陣営の利害が一致し、竹下登はこの件から恩に売った住友銀行を「米櫃にした」といわれる
小尻記者は、平相銀が関連会社「太平洋クラブ」の物件に対する売却資金を不正融資した事件を扱っていて、そこには関西の大物右翼、暴力団が絡んでいた
「赤報隊」の朝日以外の標的である、中曽根・竹下元首相、江副元リクルート会長は、「平相銀」やイトマン事件を視野に入れると、不思議な関係で結びついている。褒め殺しで悩まされたことのある竹下登は、闇の紳士たちに釘を刺されたのではないか
同記者は、その証拠を握ってゆえに殺されたというのが、本書の見立てだ

80年代、暴力団対策の法改正から、新しいシノギを得ようと「経済ヤクザ」が急増した
そのひとつが、部落差別解決のために展開された公共事業、政策にぶら下がり、企業や行政への恫喝をする「えせ同和」であり、実行犯と目される真田茂之(仮名)もある組織の「会長」に子供同然に育てられ、「えせ同和行為」を手伝っていたといわれる
同和対策事業は部落の混在率が四割を越えたことを持って、2002年に時限立法が終了したが、それまで膨大な税金が投じられ、部落の環境を改善する一方で、甘い汁を吸る「えせ同和」がたかっていた
こうした背景は、1984年のグリコ・森永事件を解く鍵にもなるという
本書では「赤報隊」事件のみならず、その背景となる「経済ヤクザ」の伸張、統一教会とその関係団体「国際勝共聯合」、散弾銃の流通などにも触れ、日本社会の裏の顔を活写する
今となっては景気のいい80年代も、一皮めくればエグい事だらけ。そして、それは今も違う形で続いているのだ


闇に消えた怪人―グリコ・森永事件の真相 (新潮文庫)闇に消えた怪人―グリコ・森永事件の真相 (新潮文庫)
(2000/01)
一橋 文哉

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