『長いお別れ』 レイモンド・チャンドラー

ついギムレットを飲みたくなる(ありませんけど)


長いお別れ ハヤカワ・ミステリ文庫 HM 7長いお別れ ハヤカワ・ミステリ文庫 HM 7
(2012/08/01)
レイモンド・
チャンドラー、清水 俊二 他

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探偵フィリップ・マーロウは、女に放り出された酔っ払いと知り合った。テリー・レノックスは大金持ちの娘と離婚、再婚を繰り返し、顔には下手な整形手術の跡を残す謎の男。とある店でギムレットを呷る仲だったが、ある日突然、メキシコへ逃がしてくれと頼まれる。彼の嫁が残酷な殺され方をし、彼が犯人と疑われていたのだ。マーロウは憎めないこの男のため、留置場へ放り込まれて……

もう絵に描いたようなハードボイルドものだった
それもそのはず、文学史的にフィリップ・マーロウというキャラクターこそが、ミステリー小説におけるハードボイルドの源泉となっているのだ
タフだが粗暴ではなく、敏いが理知に落ちず、恋に酔うが耽溺はしない。マーロウは教科書的に見えてしまうほど、あまりに漢の理想形、黄金比に位置している
レイモンド・チャンドラーの経歴を見てみると、単に作品が映画化されるだけでなく、自身が映画の脚本に参加していた。それなら、ハリウッドで求められるヒーローへ収斂されるのも自然というものだろう
隙がなさ過ぎて「優等生なハードボイルド」という矛盾した言葉を思いついてしまうが、そういう金字塔的キャラクターなのである。王道すぎる分、ジェンダー的に女性の弱さが目立ったり、ヒスパニック系移民への視線が気になるも、それ含めて時代を代表する作品といえよう

ブルジョアの淫靡な世界、傲岸な官憲とマスコミ、世界大戦が生んだギャングたち、謎めいたヒスパニックの使用人と、50年代のアメリカを批評しつつも、映画的な小道具もそろえているが、展開は必ずしも映画的ではない
冒頭のテリー・レノックス事件から次の人気作家の失踪事件を、まるで無関係の独立した事象として扱い、読者に展開を読ませないのだ。管理人も「これってオムニバスだっけ」と疑ってしまった(苦笑)
共通の知り合いがいるらしいという、心細い伏線だけでつなぎ、後半にマーロウの不意を突くような鋭い推理によって、ようやく接続されるのである。マーロウ視点なのに、マーロウが本当はどう考えているか明かされるのが、佳境という!
この“ゆったり”さは、小説ならではだろう
そしてそれを可能にしているのが、硬質でかつユーモアに富んだ文章力。もう筋そっちのけで、読むだけで楽しいのである。映像文化に浸っている人間が焦れそうなところ、読ませきってしまうのだ
かといって、物語が退屈なわけもない。本筋と思われた事件が解決されたら、そもそもマーロウが首を突っ込むキッカケになったほうも大ドン返しと、ゆったり進んだ物語も怒涛の勢いで畳まれてしまう!
この緩急のつけ方。絶品である


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