『太平天国』 第3巻 陳舜臣

ついに南京へ

太平天国〈3〉 (講談社文庫)太平天国〈3〉 (講談社文庫)
(1988/12)
陳 舜臣

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湖南省に進撃した太平天国だったが、省都・長沙には左宗棠が幕僚にいて苦戦。しかし転進した益陽城で民間の船舶を手に入れ、ここから快進撃が始まった。湖北省の要衝、武漢三鎮を攻略し、近隣の窮乏する流民を糾合。大軍が長江を下れるほどの船も手に入れて、一気に南京を目指す。対する清軍にそれを防ぐ手立てはなかった

大幹部の相次ぐ戦死、長沙からの転進と負のスパイラルに入ったかに思われた太平天国
しかし益陽で船を手に入れると、天地会系の艇賊・唐正財の提言を受けて岳州(現・岳陽)を攻める。そこに平西王の武器が隠されているというのだ
平西王とは、明滅亡後に清朝に山海関を開いた呉三桂のこと。その功績から雲南王に封じられた後、反乱を起こした
その「三藩の乱」から170年経っているが、その間、兵器が発達していなかったので、呉三桂の武器が太平天国にとって大きな力となったようだ(日本の江戸時代を考えれば、ありえる話か)
主人公・連理文は親父の動きを察したのか(苦笑)、恋人・李新妹が長沙で捕らわれたのを機に太平天国を離れて彼女を救出。外部から太平天国の動きを探る
視点キャラとして理想的なポジションを確保した

この時点で“天王”洪秀全は象徴的存在に退き、東王・楊秀清が実質的な指導者として活動していく
拝上帝会の教えに柔軟な楊秀清は、天地会系の人材を次々に取り入れ、士気が高くても素人裸足な太平軍を巧みに指揮していく
城攻めに対しては坑道から城壁を爆破させ、南京へは仏僧に扮した諜者を派遣して内部工作を仕掛ける。太平天国は辮髪を禁止し、仏僧を皆殺しにしていたので、南京には禿頭の僧侶がなだれこんでいた。そのため、禿頭の諜者たちは簡単に南京に入り込むことができた
対する清軍は、長沙城以外では後手を踏み、やることなすこと裏目に出る
武漢三鎮を巡る戦いでは、兵法の常道どおり、周囲の民家を焼き払ったが、普段から収奪された農民たちが激怒。太平天国へ駆け込んでいく
南京で召集された兵士たちは、アヘン中毒者も混ざる悲惨な質で、押し寄せる太平軍を跳ね返せるわけはなかった

まさに英雄といえる楊秀清だが、彼のこだわりのなさが太平天国を変質させていく
太平軍が取り込んだ天地会とは、そもそも明清交替に際して「反清復明」をスローガンに抵抗した秘密結社であり、民族主義の度合いが強かった
そのため、満州人を「韃虜」として忌み嫌い、役人=「妖人」の滅殺にこだわる拝上帝会とは違う残虐さを持っていた
民族主義の傾向を強くした太平軍は、南京において官民合わせて満州人三万人の官民を虐殺し、キリスト教を母体とする思想性を崩してしまう
また組織そのものも、洪秀全のために後宮を作るなど王朝の性格を引きずり、イギリス公使に対して属国の使者扱いする時代錯誤に陥っていた
少数精鋭の状態では先進性を持っていても、大衆を取り込むごとに打倒すべき王朝の体質に近づいていくというジレンマは、近代アジアの革命において宿命的にともなう壁なのだろうか


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