『カエサルの魔剣』 ヴァレリオ・マンフレディ

タイトルは原題の「L’ULTIMA LEGIONE」(=最後の軍団)のほうが合ってる

カエサルの魔剣 (文春文庫)カエサルの魔剣 (文春文庫)
(2007/05)
ヴァレリオ マンフレディ

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西暦476年。西ローマ帝国は滅亡の時を迎えようとしていた。13歳の少年ロムルス・アウグストゥスは、父親オレステスによって皇帝に推戴されたが、帝国の傭兵隊長オドケアルのクーデターによって帝位を奪われてしまう。しかし、父が作った軍団の兵士アウレリウスがロムルスの救出を画策、家庭教師アンブロシヌス、女戦士リウィアらともに逃避行が始まった

西ローマ帝国滅亡前後のヨーロッパを舞台にした物語
冒頭の謝辞をみるところ、最初から映画化を前提にして企画されたようだ。ただし、いわゆるノベライズに近い内容ではなく、イタリア人の作家による本格的な歴史小説となっている
アンブロシヌスがロムルスをブリタニア(イギリス)に連れ帰りたがるところで、オチは読めてしまうものの、帝国末期の暗黒ヨーロッパを力強く忠実に描いていて、作者のローマに対する愛情が登場人物を通して伝わってくる
当時の暴力性を再現したガチ仕様ゆえ、残酷な場面も目立つが、それも文明が野蛮に屈する悲劇を描くため。ローマの秩序を愛しつつ、無秩序と暴力が横溢する闇の時代を生き抜く人々の姿がそこにある
カエサルの剣、ドルイドの秘術と、神秘的な演出も違和感なく物語に彩りを添えていて、最後の戦いも大迫力。ロムルスを主人公に見立てると、アウレリウスに食われてやや陰が薄いが(アルスラーンみたい)、テーマ性と娯楽性を兼ね備えた一流の歴史小説なのだ

小説の舞台はすでにゲルマン人の傭兵が闊歩する時代なので、帝国は末期も末期である
“蛮族”たちは騎兵集団による機動戦を行うので、歩兵の集団戦を想定した軍団(レギオン)は時代遅れと見なされていて、新軍団に所属していたアウレリウスは方々でからかわれている。騎兵に対するには騎兵ということで、蛮族を傭兵として雇わざるえず、母屋をとられる結果となっている
ただしガリア(現フランス)には、ローマの軍人に由来するシャグリウス(シアグリウス)の政権が残っていて、パリシイ(現パリ)を押さえてフランク族に打倒されるまで支配し続けていた
全体としては軍事力を持つ蛮族が支配していたものの、各地の都市では重税を納める代わりに元老院や執政官が残存し、ローマの秩序が細々と保たれていたようだ
宗教面ではキリスト教がローマ人に浸透していたものの、ゲルマン人にはそうした権威がいまだ通用せず、ローマ人も一神教を信じながら、“異教”的要素を保持し排除しない
ドルイド僧であり敬虔なキリスト教徒でもあるアンブロシヌスは、そうしたローマ人の典型であり、辺境のブリトン人でありながら、ローマ的秩序を愛する
キリスト教とローマの精神は相反するものと思われがちだが、共存していた時代、可能性もあったのである


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