『51番目の州』 ピーター・プレストン

著者はブレア政権の仕掛け人


51番目の州 (創元推理文庫)51番目の州 (創元推理文庫)
(2009/08/20)
ピーター・プレストン

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ブレア政権から30年後のイギリス保守党の院内総務ルパートは、父の死に際の言葉に衝撃を受けて、EU離脱の運動を展開する。どうせ否定されると思っていた国民投票が、低投票率の末に離脱を選択。ルパートは急遽、保守党内閣の首相となり、経済はまっさかさま。今さら、EUにも戻れないイギリスに海の向こうから助けの手が差し伸べられる。イギリス経済を救う秘策、それがアメリカとの合邦だった

日本でも一時期、アメリカへの“ポチぶり”を揶揄し、「どうせなら51番目の州にしてもらったらどうだ」という言論が吹き出したものだ
中国が台頭したせいか、小泉内閣あたりから聞こえなくなったが、イギリスでもそういう冗談があったようで、それを小説にしてしまったのがこの作品
イギリスはEUに加盟しつつも、ユーロ導入の際には有力な構成国にも関わらず、自国通貨ポンドを固守した。そしてアメリカの対テロ戦争、イラク戦争には肩並べて加わり、今なおEUとアメリカを渡り歩き続けている
そんなグローバル時代のイギリスのアイデンティティとはなんだろう、というのが本作のテーマなのだ
小難しい専門用語が飛び交うものの、小説で直接描かれるのは、海を越えた政治家同士の暗闘、男女の愛憎であり、全国家、全人物に注がれるお洒落なボロクソは、よくここまで思いつくなと感心する
雲の上の政治家同士だけで動いていくので、国民の視点が欠けているのは否めないが、まさかのオチ含めて娯楽小説としての完成度は高く、グローバリゼーション下の国家とは何か考えさせてくれる作品である

悲痛な父の遺言のような言葉を受けて、ルパートはイギリスの“独立”を決意する
しかし、いったんEUに取り込まれていたイギリスに、かつての栄光は残されていなかった
自国通貨を堅持しつつも、金融面では実質的にドイツ連邦銀行に依存していたため、離脱直後にポンドは暴落。海外企業は大陸側に移転し、市場から見放されてしまう
その果てに決意するのが、かつての植民地だったアメリカ合衆国との合併で、グレートブリテンはイングランド、ウェールズ、スコットランド、アルスター、アイルランドの五つの州となってしまう(いつのまにか、アイルランドもお付き合いしていた。なんでだろう?)
大英帝国の栄光を取り戻すどころか、旧植民地の一部になってしまったのだ
訳者のあとがきによると、イギリス人には「ヨーロッパとは大陸のこと」であり、その一員であるという自覚が薄いという
島国が独自のアイデンティティにこだわり過ぎると、いかなる末路を辿るのか。皮肉すぎるラストは笑うしかない

*2016年6月24日、イギリスがEUの離脱を決めた。まさか、小説が本当になってしまうとは……
 本作のシミュレーション通り、アメリカの経済圏に入るのであろうか
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