『乾坤の夢』 下巻 津本陽

三傑シリーズ終結

乾坤の夢〈下〉 (文春文庫)乾坤の夢〈下〉 (文春文庫)
(1999/12)
津本 陽

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慶長14年、関ヶ原から15年を経て、徳川家康は打倒豊臣の兵を挙げる。方広寺の鐘の一件を口実に大坂城の豊臣秀頼へ、淀君の人質と関東への転封を求めるが、大坂方はこれを拒否。豊臣家の重臣として交渉にあたっていた片桐克元が更迭されると、これをきっかけに大軍を集め東上した。大坂方も真田幸村、後藤又兵衛などの牢人を集め10万の兵で迎え撃つ

いよいよ三傑シリーズも最終巻。大坂の陣である
豊臣家は65万石の身代ながら、秀吉の遺した莫大な遺産により多くの牢人衆を集めることができた
中には、上田城で二度も徳川軍を苦戦させた真田信繁(いわゆる幸村)、元黒田家の後藤基次、元宇喜多家の明石全澄などがいた。彼らは城を囲まれる前に東上する幕府軍を迎撃する策を掲げたが、淀君の乳母の子である大野治長によって籠城策がとられた
幕府軍は将軍・秀忠が関ヶ原の遅参を取り返そうと、兵士を落伍させながら東上していた。もし計画どおり、宇治から瀬田に出陣していたら戦況はどうなっていただろう
家康も大坂方の積極策を警戒して、後に『甲陽軍艦』を著す小幡景憲を軍師として潜入させ、籠城戦へ仕向けさせたという
作者いわく「戦国最後のカリスマ」の家康を前に、相手になる武将は残っていなかったのだ

家康と戦える“将”がいなかったとはいえ、大坂方はかなり健闘した
冬の陣の攻城戦では、激烈な射撃戦が展開される。幕府軍は大量の大筒で備えていたが、堅固な大坂城と出城は落ちず膠着状態に陥った
しかし大坂方も兵糧は充分でも、弾薬に事欠くようになり、長期戦を避けたい家康と和議を結ぶ。淀君を中心に大坂方は、本当に和平が成立したと半ば信じてしまったことから、家康に大坂城の堀をほとんど埋められてしまう
小説では大坂方の訴えに対して、本多正信・正純親子を使った巧妙な猿芝居が続けられ、家康が中止を命じる前に埋め終えるという茶番が描かれる。いかにも史実でありえそうな光景だ
夏の陣、滅亡を覚悟した大坂方は、遅まきながら結束が固め、捨て身の攻勢に出る。真田信繁(幸村)、毛利勝永、大野治房(治長の弟)の奮戦により、家康・秀忠父子の本陣は大混乱、特に家康の旗本衆は散り散りに逃亡してしまった
仕方なく、家康は供一人を連れて山の谷間に隠れるところにまで追い込まれる。あの強い三河武士たちは関東転封で失われたのだろうか
旗本勢は総勢の人数は多いものの、戦闘単位が小さいので大軍勢同士の合戦では分が悪いということもあるようだが(秀忠の側は井伊直孝を中心に立て直している)

本作を総括すると、家康が古狸として完成しているため、その活躍は相手を地味に陥れていく謀略・政治ドラマが中心となった
政治家としては派手なパフォーマンスを好む秀吉と異なり、武士の価値観を重んじ、部下に対して律儀・潔さを褒め、卑怯・怠惰を罰っしていく
主君・大谷吉継の首を埋めた湯浅五助を討ち取った藤堂高刑に、吉継の首の場所を聞いたところ、五助との約束だと断られると感心し、自らの槍と刀を与えるエピソードは、信長、秀吉からは生まれなかっただろう
とはいえ、かつてのイラちは直っておらず、関ヶ原の戦場でぶつかった旗本に刀を振り上げたり、本多忠勝の子・忠朝に「父に似ない愚物」と罵ったりと、まったく隙のない人間でもない。そうした性格の弱点が政治に表面化しない、意志の強さが250年の覇権を作りしめた由縁なのだろう
『夢のまた夢』同様、主役が天下人なので派手なアクションはないが、その周辺の人々、前線で戦う武将などはマイナーな逸話が取り上げられていて、泗川の戦い、関ヶ原、大坂の陣では迫真の戦場が描かれる。筋において小説的な楽しみは少ないが、戦国時代の終焉を飾るに相応しい群像劇だった


前回 『乾坤の夢』 中巻

NHK大河ドラマ 葵 徳川三代 完全版 第壱集 [DVD]NHK大河ドラマ 葵 徳川三代 完全版 第壱集 [DVD]
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津川雅彦、西田敏行 他

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