『アメリカを葬った男』 サム&チャック・ジアンカーナ

落合信彦訳!

アメリカを葬った男 (光文社文庫)アメリカを葬った男 (光文社文庫)
(1997/01)
サム・ジアンカーナ、チャック・ジアンカーナ 他

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暗黒街からアメリカを牛耳ろうとした男、サム・ジアンカーナ。ケネディ兄弟、モンローの死にも関与したゴッドファーザーの一代記
訳者が落合信彦で、本書をもってケネディ暗殺は「2039年の情報公開を待たずに完全な形で解明された」と断言していて返って胡散臭いように思えるが(えっ、内容はとりあえず“ムーニー”サム・ジアンカーナの弟チャックによる伝記と証言であり、ケネディ関係が主題ではない
文体もよくできた小説調であり、代筆者の存在も想像できるし、陰謀の多くが“ムーニー”の口から出ただけで裏づけがとれないので、イコール真実とは受け取れない
マフィアの大物が自分の姿を膨らませるため、裏仕事を誇示することは充分ありうるし、マフィアの間で勝手に噂が一人歩きすることも大いにありうる。チャックが決定的な仕事を任されるポジションでなかったことは踏まえて読むべきだろう
しかし、貧しいイタリア系の人間がスラムから頭角を現し、闇の帝王まで駆け上がっていく様は映画さながらであるし、20年代から70年代までのアメリカの裏社会が詳細に描かれている
近代の最先端と思われるアメリカの政治を裏から覗けば、おぞましい黒歴史があったのだ!

“ムーニー”こと、サム・ジアンカーナは凄まじい履歴も持ち主だ
彼が育ったシカゴのイタリア人地区パッチでは、アイルランド系の警官が幅を利かし、イタリア系は苛め抜かれていた。それに対抗し貧困から抜け出すために、イタリア系のマフィアは半ば自警団的に育った(もっとも、マフィアという言葉は60年代に流行り、本人たちは“シンジケート”と称した)
ムーニーは地元の組織から成り上がり、有名な“スカーフェイス”アル・カポネのもとで殺し屋を送る運転手をとつめ、当時シカゴを支配していたエスポズィートへの下克上に協力した
アル・カポネが脱税で収監されると、その後継者であるポール・リッカをリスペクトし、攻撃的にそして驕らずに勢力を拡大していく
禁酒法時代が終わると同時に、労働組合の乗っ取り、芸能界ビジネスへと事業を拡大し、黒人のカード賭博を押さえることでシカゴの第一人者へと駆け上がる
禁酒法時代に、密造業で富を為したジョー・ケネディ(ケネディ兄弟の父)の面倒を見た関係で、息子が上院議員になる上での経歴もみ消し、大統領選では芸能界の盟友、フランク・シナトラに一大キャンペーンをさせ、非合法的な選挙協力もしてジョン・F・ケネディの大統領就任を助けた
実際にはライバル候補のニクソンと親しかったが、自らの力で大統領を誕生させることでマフィアへの指弾を回避させることを狙った

しかし、ケネディ兄弟はイタリア・マフィアへの攻撃をやめなかった。著者(チャック)によると、ケネディ家の忌まわしい過去を封殺するため、闇の協力者を始末するつもりとしか考えられないという
大統領就任前から、不穏な空気はあった。ジョンの弟ロバートマクレラン委員会でマフィアによる労働組合支配に手を突っ込み、広域に広がる犯罪組織の存在を明るみにした。犯罪ネットワークの存在を否定していたFBIのエドガー・フーバー長官は、大恥をかくことになり、八つ当たり的にマフィアの摘発を始めることとなった
ジョンの大統領就任後は恩に着るかと思いきや、ロバートの司法長官就任でマフィアへの風当たりはさらに強くなる
ムーニーもそれを想定して、兄弟の女好きにつけこみ手を打っていた。フランク・シナトラを介して女性芸能人を接触させ、そのエースとしてマリリン・モンローを送り込んだ。その醜聞をもって、兄弟を脅迫、操縦するつもりだった
が、ムーニー自身が海外で政府組織と、特にCIAと一体となって行動していたことから、ケネディ政権への直接の攻撃が自分に響く可能性があり、不発となる

本書で一番信憑性があり、衝撃的なのは、CIAが海外の活動でマフィアと結託していたことだろう。人事交流こみのずぶずぶの関係なのである
中南米からの移民が多いアメリカでは、逆に送り込む工作員をマフィアが用意し、軍事物資の供給にもその持ち出しに関与していた。著者によれば、CIAは麻薬輸入を黙認する代わりに、マージンをとり秘密工作資金として積み立てていたらしい
キューバに関しても、ムーニーはバティスタ政権とカストロ両方に支援し、カストロが社会主義陣営に投じるとピッグス湾事件にも協力。その失敗で、CIAとケネディへの怒りを共有する
ケネディ暗殺に関しては、オズワルドを殺したジャック・ルビーはテキサスにおけるムーニーの代理人であり、マフィアの関与は疑い得ない。組織に返せない借りを抱えた人間を使って始末させ、返す刃でその人間を葬るのはマフィアの伝統的な手口である
ただし、犯人がマフィアかCIAかというのではなく、半ば一体化した組織だというのが本書の答え
ムーニーはケネディ暗殺後、FBIの追及を受けて海外での活動に専念するが、最後はメキシコを国外追放後にアメリカに送還され、委員会での証言を前に謎の死を遂げた
国内を席巻したマフィアが海外に進出した結果、冷戦で肥大化した情報機関に取り込まれ使い捨てられたのだ
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