『夢のまた夢』 第5巻 津本陽

巻末に作者のインタビューあり。実家がすごい金持ちで、うらやましい

夢のまた夢〈第5巻〉 (文春文庫)夢のまた夢〈第5巻〉 (文春文庫)
(1996/02)
津本 陽

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いよいよ最終巻。文禄の役の続きから、関白秀次の粛清慶長の役、そして秀吉の臨終まで
朝鮮出兵は明軍の増援が到来するに及んで、日本軍は防戦に追いやられる
西洋の技術を取り入れた大砲、日本にはない本物の騎馬軍団、斬撃を通さない甲冑と体格差、小銃の性能や戦術では日本が勝るものの、明の軍隊は手強かった
限界を感じた小西行長は、明の官吏と釣るんで和議を偽装する。元々、堺衆の行長は勘合貿易の復活を目指していて、唐入りは本意ではなかった
しかし、秀吉は実質的に明の柵封を受けることを知って激怒し、慶長の役に到る
和議の間に明軍は10万もの大軍に増強していて、日本軍に文禄の役のような進撃はできなかった
結局、朝鮮出兵は毛利、島津、宇喜多、加藤清正ら西国勢を消耗させ、勢力を温存した徳川家康、前田利家らの東国勢の格差が拡大。戦功と恩賞がまるで見合わないことから豊臣政権に対する恨みを残しただけに終わる

豊臣政権の崩壊の決め手になったのは、関白秀次の粛清だろう
淀君が鶴松を生んだときに石田三成ら中央集権派と秀次は対立するが、鶴松が早死にしたことで秀吉は後継を秀次に決め、実権を握りつつも徐々に権限を譲り渡していた
秀吉が認めたことを秀次の意向で取り消された事例もあるようで、秀次がまったくの置物状態ではなかった
しかし、お拾い=秀頼が生まれたことで、再び三成らと対立が再燃する。秀次は徳川家康、前田利家といった大大名ら、地方分権派と交際し、自分をないがしろにする奉行衆とは相容れなかった
秀吉は秀次の謀反を疑わなかったが、秀頼に政権が移譲されるかに疑念を持つ。小説では老いからくる判断力の低下が強調されている
秀次には彼が養子にはいった三好家の人脈、おねの実家である浅野家、秀吉の子飼いものたちがついていて、その粛清は豊臣家の勢力を半減させるものだった『下天は夢か』第1巻から出ている川並衆、前野将右衛門(長康)も自裁!
『夢のまた夢』の第1巻では冒頭に登場し、本能寺の変後に上方の情報収集を尽くして天下取りの足場を作った漢がこんな最期を遂げるとは、まさに無情というしかない

朝鮮出兵の歴史的評価に関して、作者も否定的にならざる得ない
戦国時代の日本の人口が1600万人に及んだと言われ、同時代のヨーロッパと比べて異常な人口密度であり、戦乱で生まれた膨大な兵力を外征に向くのは自然の見方をしつつも、半島を包んだ戦火、豊臣政権に与えた影響などから、戦国の蛮風を惜しんでいる
義兵に苦戦した文禄の役を反省し、慶長の役では朝鮮の農民を日本に連行し、逆に日本の農民を半島の田畑に耕す、あるいは兵士が屯田する試みがとられた。連行された朝鮮人の中には、優れた陶工の職人もいて、九州各地を中心に伊万里焼など日本を代表する陶磁器が発達した
イエズス会の奴隷貿易、満州族の漢人連行など、大陸の戦争でよくあることではあるものの、言語も通じない異民族同士の戦争は凄惨を極め、日本人の日記にも目を背けたくなるようなことが多かったようだ

小説全体を総括すると、秀吉が最初から総大将であるため、彼個人の活躍はとうぜん政治、外交の現場が中心となる。合戦描写は加藤清正らを除いて直接関係のない人物の逸話も多く、俯瞰的な視点が強かった
『下天は夢か』の続編であるため、信長の部下時代がなく右肩上がりに出世していくところもないから、本作の秀吉は権力者としてのえげつなさを容赦なく描かれている。従来の太閤記にあるような、人たらしの成功者にとどまらない、専制君主としてのリアルを感じさせてくれる画期的な秀吉像だ
引用が多く資料集と化している部分があるのの、避けられがちな朝鮮出兵を取り上げきったことも高く評価されるべきだろう


前巻 『夢のまた夢』 第4巻
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