![]() | トム・ソーヤーの冒険 (ポプラ社文庫―世界の名作文庫) (1979/12) マーク・トウェン、岡上 鈴江 他 商品詳細を見る |
村岡花子訳の『ハックルベリー・フィンの冒険』を読むために、触っておいた
子供の頃に読んだはずだけど、内容は完全に忘れている
ストーリーはわんぱく坊主のトムが、機転を利かせて家の用事を済ませたり、悪戯をしたりしつつ、日常に飽いて冒険に出てみんなを心配させたり、と思い向くままに行動して、最後は大きなご褒美がという、児童文学にありそうなものだった。いや本作から、児童文学の定番が生まれたかもしれないが
ただトムことトマス・ソーヤーの身の上は、早くに母を亡くし、弟ジッドともに叔母の家で暮らすという複雑なもので、彼自身も叔母に愛されているのか、気にしている
思春期にさしかかった少年として、一目ぼれしたベッキーとの恋、殺人事件の秘密を抱えた不安などを抱えている。細かい心の動きを追いかけられていて、アメリカ文学の父といわれた片鱗が窺えた
トムの住むセント・ピーターズバーグはマーク・トウェインの故郷である、ミズーリ州ハンニバルをモデルにしていて、ミシシッピー川を航行する船の中継地として栄えていたという
マーク・トウェンの名の由来も、汽船の水先案内人の合図“by the mark, twain”(2ファゾム=約3.6m)に由来し、作中でも船に助けられる場面がある
街の住人は児童文学らしく理想主義的で、善行をすればそれに答えてくれるといった調子だが、日曜に教会に集まる日曜学校、体罰のムチ、子供に飲ませる危ないドラッグ(興奮剤)など、当時のアメリカを偲ばせるというか、今のアメリカにつながる文化をそこかしこに感じさせてくれた
トムの冒険仲間であるハックはいわゆる家なき子で、父は飲んだくれで行方不明となり、街の住人からも嫌われている
そのハックがトムのような堅気の人生を嫌って大冒険に出るのが、次作『ハックリベリー・フィンの冒険』。この作品はアメリカ文学の源泉といわれるガチ仕様らしいから、どんな展開が待っているか、楽しみだ
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