『下天は夢か』 第1巻 津本陽

通勤時間で読んでます

下天は夢か(一) (講談社文庫)下天は夢か(一) (講談社文庫)
(1992/06/04)
津本 陽

商品詳細を見る


近年の信長人気の発端は、『信長の野望』とこの小説ではないだろうか
1986年から1989年にかけて日本経済新聞で連載されていて、『ノルウェイの森』の少しあとにベストセラーになったのを覚えている
文庫本第1巻は、父・信秀の病死から今川勢との戦い、守護代の本家や親戚に実弟を巻き込んだ尾張統一から桶狭間の戦いに、美濃攻めの途中まで
本作の信長は史料から書き起こしたような勘の鋭い青年であり、あまり作家の解釈を露わにせず、遠景から信長とその周辺の人々を描いていくスタンスは読者の想像を刺激するから、かなり入りやすい
会話に方言を交えつつも、文体は漢文成分が濃厚で、テンポは吉川英治に近いだろうか
剣豪小説の書き手だけあって、戦場の殺陣は冴え、再現された戦支度、合戦シーンは迫真そのもの。殺伐した政争のあとには愛妾との濡れ場と、漢のエンターテイメントとしても至れり尽くせりだ

読み返してみて驚いたのは、異様に蜂須賀小六(正勝)がクローズアップされていることだ
蜂須賀小六は木曽川流域を仕切る国人、川並衆の一人で、織田家にも他国にも所属しない独立した勢力を誇っていた
小説で小六は様々な戦いに傭兵として合力するが、直臣にはならず木曾川の物流に対する御免状をもらうのみ。信長も小六の力を認めつつも、家来とならないものに知行を出すのは譜代に示しがつかないと、邪険にする
信長と小六の緊張関係は、領内を一元化する戦国大名と独立独歩を誇りとする国人領主の葛藤を表している
一触即発の二人の間に入るのが、後の秀吉である藤吉郎。普通なら早々に草履持ちで現れそうなところ、後半にひょっこり登場し、美濃攻めまで存在感がでないのが意外でありリアルである

信長の側室・吉野は、生駒家の出で、その血縁で信長は川並衆とも関わっていた。吉野の兄である生駒八右衛門(家長)は信長の側近として作中で異彩を放っている。こうしたマイナー人脈を拝めるのも、本作の魅力だ
ちなみに信長の正室で大河でも無双でもキャラとして根付いている濃姫は、道三の死後に離縁し早々に死んでいる
さすがに美濃攻めの名分に使える濃姫と、あの時点で離縁するのは薄い説だと思うが、他の側室たちとの関係に踏み込んだ意義は大きい
緒方直人主演の大河『信長』で、様々な嫁がでてきたのは本作の影響だろう


次巻 『下天は夢か』 第2巻
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

コメント

コメントの投稿

非公開コメント


(この一行は、各ページ下部に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
カテゴリ
SF (25)
RSSリンクの表示
リンク
FC2 Blog Ranking
ランキング
アクセスアップ!?
検索フォーム
はてな
この日記のはてなブックマーク数
タグランキング

サイドバー背後固定表示サンプル

サイドバーの背後(下部)に固定表示して、スペースを有効活用できます。(ie6は非対応で固定されません。)

広告を固定表示させる場合、それぞれの規約に抵触しないようご注意ください。

テンプレートを編集すれば、この文章を消去できます。