『ヒトラー・ユーゲント―青年運動から戦闘組織へ』 平井正

少年団同士の国際交流で日本にも来たそうで

ヒトラー・ユーゲント―青年運動から戦闘組織へ (中公新書)ヒトラー・ユーゲント―青年運動から戦闘組織へ (中公新書)
(2001/01)
平井 正

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ナチズムの少年団「ヒトラー・ユーゲント」の実態を、その成立から悲劇的結末まで追いかける
本書は全体主義のプロパガンダ、その尖兵の供給源となり、最終的にはすべての青少年を強制加入させた「ヒトラー・ユーゲントを、目的、集団生活、文学や映画への題材、指導者の変遷など多角的に検証していく
名前からはヒトラーを個人崇拝する絶対服従の少年親衛隊、と思えるが、実際はそう単純ではない。ヒトラー自身はナチズムの従者として期待し、突撃隊候補生と見ていたが、少年たちそのものにそれ以上の価値を見ていなかった
「ヒトラー・ユーゲント」の性質を決めたのは、ヒトラーから信認を勝ち取ったバルドゥーア・フォン・シーラハ。中産階級出身で文学者志望だった彼は、ドイツの青年運動「ワンダー・フォーゲル」の要素を持ち込み、彼なりのドイツ的価値(国粋主義!)を植えつけようと野外生活、文学や映画による啓蒙に重きをおいた
ナチスの体制では、なにが“頽廃”か、ヒトラーの指示がないところでは各部署の独裁的な指導者に委ねられていて、シーラハは宣伝相ゲッペルスと組むことで様々な妥協を重ねつつも、ユーゲントを自分色に染め上げていく
しかし、戦時下にアルトゥール・アックスマンがユーゲントを指導するようになると、一気に少年兵の戦闘集団へ変貌していく

少年たちからすると、「ヒトラー・ユーゲント」は退屈な家庭、学校生活から解放する側面があった。著者によると、日常からの解放、「非日常性」をいかした偽りの文化(キッチュ文化)を上手く利用したことがナチズムの特徴だとする
しかし実際に入団してみると、画一的に鋳型へ流し込む集団生活は少年達にとって過酷なもので、ユーゲントのなかでは後に反・ヒトラーの活動に身を投じるものもいた
少年たちのイライラは暴力事件へと発展し、共産党本部占拠ゲームなどプロパガンダに利用された事例もあれば、エーデルヴァイス海賊団といわれる反ヒトラー・ユーゲントの少年愚連隊を生み出し、治安当局を悩ます自体に発展した
人間を全体のために存在するとし、理想像にはめ込んでいく全体主義の非人間性を、端的に表しているようだ

大戦が始まると、まずヒトラー・ユーゲントの指導者たちが従軍し、シーラハ自身も負傷するなど多くの犠牲を出す
ノルマンディー上陸作戦の際には、「ヒトラー・ユーゲント師団」が結成され、ついに少年兵が矢面に立つ。連合軍からは“ベイビー師団”と揶揄されながら、大人顔負けに健闘し、ユーゲントは国民突撃隊へ参加していく
少年達が勇敢に戦えてしまったのは、著者は「戦争」と「戦闘」の区別がついていなかったのでは、と推測する。全体の戦況や未来の観測なしに、目の前の戦場に適応し燃焼してしまうのだ
本書では、ナチス統治下の教育、女性に対する考え方、プロパガンダに使われたユーゲント映画など、第三帝国の銃後を様々な角度で触れていて、新書で読めるのは貴重である


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