『フランス敗れたり』 アンドレ・モーロワ

ラインラントの進駐を咎めなかったのは、ナチス・ドイツがソ連への牽制になるという計算があったようで

フランス敗れたりフランス敗れたり
(2005/05)
アンドレ モーロワ

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第二次世界大戦でフランスがナチス・ドイツに敗北した原因を、当代の文学者がリアルタイムで分析した書
アンドレ・モーロワはイギリスの歴史に精通した作家で、幅広い教養と文章力で伝記小説や歴史評論で人気を博していて、第一次大戦では英語の通訳として従軍し、第二次大戦においても作家としての地位と人脈から、チャーチル、ポール・レノーといった政治指導者や英仏の軍司令官と会い、連絡と情報収集にあたっていたようだ
そんなわけで著者は、第二次大戦が開戦してからドイツの電撃戦が始まる八ヶ月間を現在進行形で接しており、後に判明した事実を照合しながらフランスの敗戦を突き詰めていく
総力戦を経験していながらの戦力の不備、塹壕戦に固執する旧弊、指導者層の不一致、社会主義による国民の分断、そして第一次大戦の被害から生じた一方的な平和願望
平和主義者が戦争を起こすの箴言が聞こえてくる

フランスが敗戦した直後に書かれたので、戦力分析については誤りもある
本書内では、ドイツの陸上兵力を150万人としているが、実際は108万人足らず(「赤」作戦で130万)。実はフランスの兵力と拮抗し、連合軍全体では上回っている
戦車についても、台数ではフランス側が多く、設計思想と運用の差が明暗を分けている
航空機も機数で勝っていて、メッサーシュミットとの性能差で制空権を失っており、イギリスのホーカー・ハリケーンは健闘していた
しかし著者とフランスの将軍との会話では、ドイツ軍の強大さにまともには敵わないと想定されていて、誇張した情報に振り回された可能性が高い
著者も敵の「第五列」を強調していて、誤まった情報から住民が難民化し、軍隊の移動を阻害するケースがあったという

本書は1940年11月に日本で刊行され、300版という記録的なベストセラーとなった。奇しくも日独伊三国同盟の2ヶ月後であり、英仏の弱体とドイツの強盛を印象づけるものとなったかもしれない
ただし、本書自身は忠実に訳されているようで、全体主義に対して全体主義にならずに立ち向かう方策、それを満たす要件が書かれている
アメリカ人作家との会話では、「議会制度が敗戦の原因か」という問いに対し、勇敢なる指導者であれば議会を統御し敏速に体制が整えられるとして、イギリスを成功例としてあげる
イギリスの議会は貴族のクラブとしてスタートして、内閣に労働者階級が組み込むという役割分担がなされているが、フランスでは法律家出身の政治家が多く、行動力が伴わっていなかったとする

「確実にいえることが一つあります」と、N・A氏は言った。「それは党派間の争いが階級間の争いとなった時、議会制度という政治形態はもはや機能を失ってしまうということです。議会制度政治形態に必要なる条件は何でしょう? それは一党が他党に代わって権力を握るということが、多数の人々の希望である場合には、少数の人々はある特定の期間、多数に服従し、多数に治められ、しかも、これが暴力によらず自由の立場でなされるということでしょう。少数が多数に服従する為に必要にして充分なる条件は何でしょう? それは『多数が公平に行動するに相違いないという確信』です。議会制度、民主主義政態においては、一党による権力の掌握が、迫害の始まりと考えられるようなことがあってはならない。英国では自由党と保守党は何ら疑惧もなしに交互に政権を握ったものであるが、このことは今日の英国の保守党と労働党との関係においても真実です。それは労働党は英国の労働者の利益を擁護しながらも、革命の党となることを拒否しているからです」

フランスでは社会党と共産党が手を組む人民戦線内閣(1935年)から調子が狂い、イデオロギー闘争から議会は空転して国内は分断されてしまった
ファシズムの人を軽蔑する価値観に対抗するには、共和政体への献身の美徳を忘れてならず、指導層は常にノブレス・オブ・リージュが求められる。思想の自由もそれを保障する共和政体の滅亡を願うものであってはならず、ときに大衆であっても逃避生活は許されない
解説の中西輝政が言うほど、日本は危機的状況ではないと思うが(民主党政権が続くとやばかった?)、民主主義の在り様について考えさせられる本だった

西方電撃戦 (欧州戦史シリーズ (Vol.2))西方電撃戦 (欧州戦史シリーズ (Vol.2))
(1997/07)
不明

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