『秀吉と武吉―目を上げれば海』 城山三郎

村上海賊の娘の親父

秀吉と武吉―目を上げれば海 (新潮文庫)秀吉と武吉―目を上げれば海 (新潮文庫)
(1990/12/24)
城山 三郎

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村上武吉は、能島村上の頭領にして、因島、来島を従える村上海賊のリーダー。厳島の戦いにおいて、不利と見られた毛利氏につき、瀬戸内における地位を固めると、小早川隆景という理解者を得つつ、村上海賊をあくまで独立した勢力として保っていた。しかし、播磨に秀吉が現れたことで情勢は一変し、信長の鉄甲船を前に一敗地にまみれる。時代は海賊の存在を許さなくなっていた

フロイスから日本一の海賊と称された村上武吉をとりあげた大河小説
村上武吉は船を略奪する文字通りの海賊行為ではなく、通行料として帆別銭を取り立てて航行の安全を保証するという、洗練された手法を確立し、瀬戸内海の主といえる存在だった
しかし信長ら天下人からすると、勝手に海へ関所を立てるようなものであり、断じて許せない。武吉もそれを承知していて、村上海賊の手法を邪魔するような大勢力が現れないように、ときには毛利にすら歯向かった
その結果、秀吉に目をつけられた武吉は、本拠能島も奪われ、息子も朝鮮出兵に動員され、海賊としての誇りをずたずたにされてしまう
それでもなお武吉は、戦国の世で村上海賊が甦ることを信じて、75歳で天下分け目の戦いに臨む。絶望の淵に追いやられながら、時代の逆流に決然と立ち向かう男の一徹さはすがすがしい

もうひとりの主人公といえるのが小早川隆景
本作は村上海賊とのつながりから、毛利家の描写が多く、厳島の戦いから元就と三人の息子の関係、関ヶ原の輝元まで、実質は毛利家の小説といってもおかしくない
隆景は水軍の小早川家に入ったことから、海賊の価値観を知る理解者であり、毛利本家や秀吉に楯突く武吉に対し、本家の利益を重んじつつ懐柔していく
「胡乱第一の人」秀秋が毛利家に養子に押し付けられそうになった際は、自らの小早川家に迎えて事を収めるなど、身を挺して毛利本家と秀吉の間を取り持った
武吉と違った手法で時代を凌いでいく苦労人の知将が渋い
そうした隆景から「乱魁の人」、姦雄とまで言われたのが安国寺恵瓊で、毛利家を踏み台して大名にのし上がり、武吉からも色眼鏡で見られる
しかし武吉が秀吉に潰されそうになったときに、命がけの使者として助けたのも恵瓊だった。そして関ヶ原の際には、村上海賊復興のためには乱世が望ましいと、最も嫌っていた恵瓊に期待するのだから、面白いめぐり合わせである

タイトルの武吉と秀吉は一度も直接対決しない
武吉にとって秀吉は見えざるラスボスであり、調略によって村上海賊の結束をずたずたにし、上方では大盤振る舞いで次々と盟友たちが懐柔されてしまう
手の打ちようもなく、味方が一人一人敵に回ってしまう。その「人たらし」、恐るべしだ
NHKの大河で、天下人となる側から描かれている人物が、逆から観るとどれだけ脅威で陰険であるか、本作で実感できるだろう
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