『黒田如水』 吉川英治

大河の展開に間に合った

黒田如水 (角川文庫)黒田如水 (角川文庫)
(2013/07/25)
吉川 英治

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播磨国、小寺家の若き家老・黒田官兵衛は、いち早く織田家の天下を察知し、岐阜へと旅立つ。羽柴秀吉の知遇を得た彼は、毛利側につく他の領主たちを誘い、秀吉の軍勢を招くことに成功する。しかし、別所家の反旗、荒木村重の謀反により、一挙に情勢は悪化。官兵衛は起死回生をかけて荒木の有岡城へ赴くのだった

吉川英治による黒田官兵衛の半生記
扱う年代が驚くほど司馬遼太郎の『播磨灘物語』と重なって、司馬がいかに打倒吉川英次に燃えていたかが分かる
文章は今の歴史小説より漢詩成分が濃く、分かりやすく軽快。メタ的視点がなくて、あくまで作品内の人物に寄り添って物語は動いていく。漢文調で描かれる作品世界のほうが、戦国人の世界把握に近いのではないだろうか
読者は先は分かっていても、登場人物たちは作品の中の今を生きている。時代がかってはいるけれど、大河小説を書きたい人は吉川英治にこそ学ぶべきだろう
秀吉が姫路に入るのが三木城開城の後とか、史実を外している部分もあるが、なにせ初出が1943年と、戦争中だ。致し方なしか

本作は『新書太閤記』の外伝とも位置づけられる作品で、書かれた年代からも皇国史観の影響がある
「信長・秀吉が天下を取れたのは、勤皇家だから」とされ、それに歯向かう者は時勢の見えない抵抗勢力と断定される。官兵衛視点だから作品として問題はないが、漢詩成分の濃さが、大義名分論の世界観を形作っているところはある
それは司馬遼太郎が亡国の原因と見なした、朱子学イデオロギーにリンクしていて、打倒吉川につながっているのだろう
作品の山はやはり有岡城の虜囚で、キリスト教の信仰は無視するものの、藤の花に勇気付けられたエピソードは、ヒロイン的な於菊との関わりも相まって、人間が大成する瞬間を美しく描いている
驚いたのは、竹中半兵衛が官兵衛の子を救うために、代わりを捜すところ近所の子供を斬首しようと、物色して思い悩む場面は、なかなか他の歴史小説に味わえない光景だ(苦笑)
同時に、当時の人の感覚に近い悩み方だと思う
オチは割愛させてもらうとして、どうせ寿命が近いからとそっと無視していた『播磨灘』の半兵衛のほうがスマートではあった


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