『1914年 100年前から今を考える』 海野弘

100年前を繰り返す、というより100年前から始まっている


1914年: 100年前から今を考える (平凡社新書)1914年: 100年前から今を考える (平凡社新書)
(2014/05/16)
海野 弘

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第一次世界大戦から100年。1世紀前の出来事と今はどうつながっているのかを問う
本書は「歴史は繰り返すのか」をテーマに、1914年後に起こった変化を多岐に渡って掘り下げていく
そこで見えてくるのは、100年前に生じた大衆消費社会が今の社会のベースになっているということだ。無線通信による情報の氾濫、アイドル文化の誕生、フェミニストの展開、遺伝子研究の先駆け、映像メディアの萌芽、すべて20世紀初頭に始まっていたのだ
現在と1910年代の比較について著者の指摘は怪しく(「少女趣味」は今に限ったことではない)、エピローグの締めも他者の引用が多くて頼りないが、1910年代の小ネタ集として楽しく読める

1914年を境に、世界が変わったのは間違いない
きっかけはやはり第一次大戦で、それによって19世紀が持っていた価値観が徹底的に破壊された
国際政治ではバランス・オブ・パワー、国内政治では自由主義、経済では自由放任、金本位制が力を失った。国家は戦争の末で情報戦と機密保持を重視し、国民の間にはスパイと陰謀論が渦巻き、ヨーロッパ人同士の信頼関係も失われていった
こうしたことは物理学上の発見にもつながり、ウェルナー・ハイゼルベルクの唱えた不確定性原理は、ニュートン以来の物理学の常識を打ち壊してしまう
不確定性原理とは、電子の位置と運動量を同時に測定できない、というもので、エネルギーを計算しようにも電子を発見する位置は「確率」で決まる
この確率論に対して、アインシュタイン、シュレーディンガーなどが反対したが、はっきりとした結果は出ず確率論が主流となっていく
神がサイコロを振る。それは1914年以降、従来の楽観的な世界像が崩れ、未来がどうなるか予測できないことを改めて立証することとなった

著者の得意分野なのか、1910年代の美術史にもマニアックに掘り下げていく
本書で取り上げるのは、グスタフ・クリムトの弟子エゴン・シーレという画家で、豊満な女性を描く師匠に比べ、シーレは痩せこけた女性を作品にした
それはベル・エポック(良き時代)の終わりを表していて、シーレはモデルが健康的な女性なのに、怯えた女を描き続けた
面白いのが、ノイレングバッハという街で起こした事件で、未成年の少女をかどわかした罪で拘留され、スケッチをわいせつ物と押収されてしまう
著者はこの事件を<少女趣味>の時代を象徴する出来事とする。1910年代に少女への独身者的執着=ロリコンが発見されたというわけだ
「少年少女」という概念は近代教育によって創成されたものなので、ロリコンもそれにともなって生まれたわけだが、シーレは病的なロリコンをテーマとした絵師の魁ともいえそうだ
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