第3巻。日方勇は、中国人を装う日本人女優・李姚莉(本名、山内洋子!)を連れて逃避行。ひと目だけと立ち寄った彼女の故郷で、いい仲になるも地元の青幇、針使いの周に捕まってしまう
一方、麗華は李姚莉の代役女優として潜り込んで、相手役の池山大二郎(モデルは長谷川一夫ではなかろうが)に超高濃度の阿片を投入。一撃で虜にしてしまう
その勢いで満映(満州映画協会)を篭絡し、合流した勇は李姚莉奪還作戦に乗り出すが……
順調にぶっ飛んでいた
阿片中毒者になっていく過程が圧倒的に省略されていて、誰もがいとも簡単に仕上がってしまう。アヘン戦争からの歴史的経緯を考えれば、相当な拒否反応があってしかるべしなのだが……
一種の開き直りというか、ギャグにしてしまうことで、ピカレスクロマンに必要な暗さを払拭してしまっているように思える。クライマックスの危機の脱し方もそれでいいのかという(苦笑)
早くも史実と違う展開が始まっていて、実名でない人はいくらでも曲げていく方針のようだ
第4巻。満洲国の首都・新京(現・長春)で、青幇のボスで麗華の父である杜月笙は、日本の"阿片王”里山柾と会談。既存の阿片を脅かす高純度の「真・阿片」の存在は捨て置けないと、里山は提携を持ちかける
満映では、その「真・阿片」を宣伝する李姚莉が主演の映画が公開され、大ヒット。勇たちは彼女を日本へ送ろうとするが、周一派の襲撃を受ける
それを助けたのは、意外な男だった
本巻もいろいろツッコミどころは多かった
満映の映画で「真・阿片」を宣伝って、さすがに関東軍が検閲するのではなかろうか(苦笑)
周たちの追撃を妨害するのも、自分が勇を捕まえたいという元開拓義勇軍で、憲兵に通じた熊田岩男! 「生け捕りにしてやる」と銭形のとっつあんのような存在になってしまった。まさか、これほどの戦闘力を誇ろうとは
後半は舞台をロシア系の亡命者が多いハルビン(哈爾濱)に移り、ロシア人の「逃し屋」キリル・メドヴェージェフと、青幇の支配するスラム街、大観園に住む閻馬という少年が新キャラとして登場する
ハルピンでは、亡命者を束ねる白露事務局の局長アレクセイ・ロジャエフスキーが、青幇と裏社会の二分する"皇帝”として君臨しているようだが
里山柾は、阿片中毒者のために阿片を作っていると、際どい論理で自らを肯定する。戦前の日本では阿片の製造は国の専売であり、鎮静剤のモルヒネや阿片中毒の治療目的の生産・使用は認められていたのだ
ハルピンがロシアが施設した鉄道をきっかけに発展したとか、ちゃんと史実を踏まえてくれるところもあるので、お話作りにもどこかでギアがかかって欲しい
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