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【プライム配信】『ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪』 第8話

さすがに年末までには見終わらないと


<第8話 合金>

エリュン・ガレン(緑森)を彷徨っていたよそびとは、ノーリを装った魔女たちに追いつかれる。彼女たちはひざまずいて、「お仕えするために参りました。サウロン様」
しかし、思ったとおりに動かない“よそびと”に、業を煮やした魔女たちは縛ろうとするが、そこをノーリたちが目撃。無謀にも助けようとしたところを、武闘派の魔女に長老サドクが重傷を負わせ、ノーリたちも危機に陥る
そこでようやく覚醒した“よそびと”は、月光蝶(である!)の魔法で、魔女三人をオーバーキル!
“よそびと”は、サウロンではなくリューンの魔法使い(イスタル)らしい
長老サドクの死で、ハーフットのリーダーはノーリの母マリゴールドが努め、ノーリは“よそびと”とリューンへと旅立つのだった

ガラドリエルは負傷したハルブランドを連れて、エルフの都市エレギオンにたどり着く。ミスリルの採掘に失敗した傷心のエルロンドと再会した
小さなミスリルでエルフの滅亡をどう防ぐか、苦心するケレブリンボール卿に、負傷から異様に回復の早いハルブランドが、合金にするように助言する
霧が晴れたように活発な行動をする彼を不審に思ったガラドリエルは、南方国の系譜を調べ直して、それが千年前に途絶えた家系と判明。ハルブランドを問い詰めるが、ここでサウロンとしての本性を露わにする
そして、サウロンの意図は中つ国に平和をもたらずことだと、幻術を弄し始めるのだ。からくもガラドリエルはそれを退け、ケレブリンボールに対してひとつの冠ではなく、3つの指輪を作ればいいとした。いわく「ひとつは腐敗を招き、ふたつは対立を生み、3つは調和を生む」

ヌーメノールへは、ようやく摂政女王と遠征軍が帰還。失明した女王と遠征の司令エレンディルは抱きしめて慰め合う
彼がガラドリエルを救ってしまったのは、エレンディルの名が「エルフの友」を意味するからで、「エルフに味方すると最後は報われる」と言われているが、最愛の息子イシルドゥルを失ったのは高すぎる代償だ
完全に目覚めたサウロンは、3つの指輪が作られたことを察しながら、影の国モルドールへ駆けていった


シーズン1の最終回にふさわしく、タイトルである「力の指輪」が生まれたところで終わった
名シーンが多いのだけど、ガラドリエルとサウロンが対峙する場面で、精神的な戦いに転じるところに、なんだか日本の漫画くささを感じたのは管理人だけだろうか。SF小説やおとぎ話に前例はありそうだけど、こういう使い方には既視感と親近感を覚えてしまった
“よそびと”が家族と離れるノーリに言う台詞「一人ではただの旅だが、仲間が入ればそれは冒険だ」は、ゲーム世代に向けたものに思える(アメリカだとゲーム世代=ほぼ全世代か)

シーズン1の総括としては、暴れん坊ガラドリエル、とでもいう他ない。視点キャラとして、アロンディルノーリはいるものの、紛うことなく彼女の物語なのである
構成では“よそびと”をサウロン第1候補に見せ続けて、最終話で魔女に「サウロン様」と念を押させるところが巧みだった
で、原作にハルブランドはいないから、オリジナルキャラと思わせて、実はサウロン。WIKIで人物名を確認している間に、正体を知ってしまったのだけど、それだけに演出の上手さが光って見えた
最終回の挙動が怪しすぎるのが、ラスボスにしては浅はかな気もするが、それが向こうの悪魔像なのだろう
この『ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪』は、最低5シーズンが予定されている。「3つの指輪がエルフに、7つの指輪がドワーフに、9つの指輪が定命の人間に、ひとつの指輪が冥王に……」とエンディングテーマが流れて、今後の物語の流れを予告しているようでもあった
ノーリと“よそびと”の旅、3つの指輪の行方、沈没が予言されているヌーメノールと、気になることが盛りだくさんなので、シーズン2が楽しみでならない


前回 【プライム配信】『ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪』 第7話



『呪術廻戦』 第19巻・第20巻 芥見下々

買い忘れてた




第19巻。「死滅回遊」のルールを変えるべく、虎杖伏黒100点をもつ男、日車寛見を探す。手分けして探したものの、虎杖は池袋、伏黒は新宿に案内される
正解にたどり着いたのは、虎杖。日車は凄腕の弁護士であり、その術式は裁判所になぞらえた領域を展開し、相手の罪状に応じて能力に制限を加えるというものだ
虎杖は未成年でパチンコへ行ったことを咎められ、呪力を封じられてしまう
複数の審理があることに気づいた虎杖は、第二審を要求し、挽回なるかと思いきや、渋谷での大量虐殺を認めてしまい、死刑宣告が!
しかし、ここで日車が弁護士としての本能に目覚め、虐殺は宿儺に乗っ取られたためで、責任能力なしと判断。自らの罪に向き合うことにした彼は、虎杖に得点を譲り、プレイヤー同士で融通できるようになった

新宿に連れられた伏黒は、レシートを利用した術者レジィ・スターとその一党による罠にかけられてしまう。式神を犠牲にして凌ぐうちに、特撮パロディをネタにする芸人術師・高羽文彦が助勢に!
身を削りながらレジーを体育館に誘い出し、そのものを領域化するのだった
前半のバトルと法廷ドラマが入り交じる展開は秀逸で、まさに神回だ
高羽の着ぐるみに金を使えた頃の、テレビ番組のノリはなんだか懐かしく思えた




第20巻。熾烈を極めた伏黒とレジィ・スターの決闘に終止符。相手が逆転の手を繰り出した瞬間に“影の領域“を解いて、本来の体育館のプールへと落とす。レシートが呪術のタネとしたレジィを仕留めたのだ
ただ虎杖よりも、オーバーキルの人殺しを続けたことにより、闇落ち感が増していて、自分を罠に誘い込んだ呪術師を使い魔で殺そうとした。が、義姉・津美紀を思わせる声音の謎の天使によって、意識を失うのだった

話は一転して、虎杖の故郷仙台へ。仙台もまた全国にもうけられた「死滅回遊」のエリアのひとつであり、古代の呪術師ドルヴ・ラクダワラ、一撃必殺のリーゼント石流龍平安時代のアサシン烏鷺享子ゴキブリ呪霊・黒沐死による三つ巴ならぬ、四つ巴の戦いとなっていた
そこへ現れたるは、乙骨優一。ドルヴ・ラクダワラを打ち倒すと、均衡が一気に崩れ、黒沐死と戦う最中に、背後から攻撃を受ける
しかし怨霊の里香ちゃんなどの隠し玉が多いのが、乙骨の武器。戦ううちに相手の術を模倣する術式で、次々に相手を圧倒するのだった
前日譚の映画が好評で、彼の出番も増えていくのだろうか


次巻 『呪術廻戦』 第21巻・第22巻
前巻 『呪術廻戦』 第17巻・第18巻

『胡蝶の夢』 第1巻 司馬遼太郎

幕末の医学界




「佐倉順天堂」を開設した佐倉泰然の息子、良順は、幕府奥医師ながら蘭学を修める松本良甫の家に婿入りする。その若い跡取りの助手として、佐渡から連れてこられたのが、異常な記憶力を持つ伊之助。伊之助は忠犬のように良順に従うが、あまりに世渡りと人付き合いが下手で、紆余曲折を経て佐渡へ帰されてしまう
良順は黒船が到来しても、漢方が絶対の奥医師の世界にうんざりし、長崎へ海軍伝習所への“留学”を決意。伊之助を再び佐渡から呼び出すが……

2巻まとめて感想を書こうと思ったけど、あまりに長く内容も濃いので1冊ずつ
医療の視点から幕末から明治の社会を描いた作品ながら、視点となる主人公がかなりマイナー!
順天堂大学の起源となる蘭学塾を開いた佐倉泰然を父に持ち、幕末は幕府陸軍、奥羽列藩同盟の軍医となりながら、明治では陸軍初代軍医総監となる松本良順。脅威的な記憶力と語学力で、日本最初のドイツ語辞典を作った司馬凌海(島倉伊之助)と、本作を読むまでまったく存じ上げなかった人なのだ
日本の近代を準備した“小英雄”が主役なので、その周辺の人々との関係から、自然と江戸の身分制度、佐渡と江戸の風土の違いが浮かび上がってくる
颯爽とした江戸っ子の良順に、変わり者で純朴な伊之助凸凹コンビは、心は通うようで会話がドッジボールという、このぎこちなさに人間関係のリアルを感じてしまう


漢方医学の既得権益

幕府奥医師の跡取りながら、蘭学を志す良順に立ちはだかるのが、多紀楽真院を始めとする漢方絶対主義の壁
蘭学しか学んでいない良順に漢方の試験を課し、いかに民間や他藩で蘭方医療の有効性が証明されようと幕府内には取り入れない。自分たちの権威が脅かされるからであり、それら多くの侍医は江戸城に控えているだけで扶持をもらう体たらくだった
その医療体制は、第12代将軍・家慶二十数名の子を為したにも関わらず、将軍を継いだ家定を除いて早世するという、異常事態を招いている


江戸の細かい身分制度

伊之助の側から見えてくるのは、江戸時代の細かい身分制度。なにかにつけて上下の別を作って、庶民同士でもマウントをとってくるのだ
同じ松本家の用人でも、些細なことの積み重ねから追い出そうとしてくる
伊之助が育った佐渡は、金山のある天領であり、役人は最小限の人数でまかなっていた。そこでは医者に士分はなく、風通しもいい
江戸には勉学の興味は満たされても、人間的には鬱屈する。伊之助は人の気持ちへの鈍感さも祟って、良順以外の理解者を得られずに苦しむ
彼の苦しみは、現代の日本にも通じるものがあって、なんだかんだ江戸時代の悪弊が今でも残っていると思われるのだ


*2023’8/29 加筆修正

次巻 『胡蝶の夢』 第2巻



【プライム配信】『ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪』 第7話

火砕流に巻き込まれても、ガラドリエルの白肌は健在


<第7話 目>

オロドルイン火山の火砕流に巻き込まれたガラドリエルは、灰まみれになりながら目覚める。そこに広がる光景は村は燃え崩れ、村人や兵士たちは生きながら焼かれる、まさに地獄絵図!
テオ母親ブロンウィンとはぐれて、ガラドリエルとその場を離れる
女王ミーリエルの一行は崩れた家に取り残された者を助けようとするが、それに巻き込まれてイシルドゥルが犠牲に(生死不明)。女王も失明してしまう
息子を失ったエレンディル「エルフを信じるんじゃなかった」と後悔するが、ガラドリエルと謁見した女王はすべての責任を引き受けるその態度に、「再び、ヌーメノールは帰ってくる」と宣言した

ドワーフの王国では、エルロンドミスリルの採掘と500年の森の産物を交換しようと、ドゥリンの父王(ドゥリン3世)と交渉するが、これを拒否される
ドゥリン王子に対して父王は「エルフの没落は宿命」と頑な。生まれたときの話まで持ち出して王子を懐柔しようとするが、こっそり坑道を掘り当てた息子と大喧嘩をして、最後には後継者の資格を剥奪してしまう

ハーフットの一行は目標だった“グローブ”(grove=林、木立)に到着するが、そこは火山の噴火の影響で噴石が落ち、灰に覆われていた
長老のサドクよそびと樹木の再生を頼むが、ハーフットの子供が下敷きになりそうになるアクシデントから、敬遠されて人間の村へ追い出すことに
しかし、ある夜に“よそびと”を追う白装束の女たちが忍び寄るが、ノーリは偽の方角を教える。ラルゴがノーリを守ろうと、松明をつきつけると、リーダー格の女が松明を手で消し、ハーフットの荷物車に燃え移らせた!
“よそびと”による豊作から一転、大被害を被った一行だが、ノーリは“よそびと”に注意を喚起しようと言い出し、その優しさに感じ入ったサドクは追い出した罪滅ぼしからか、率先して“よそびと”を探そうとするのだった

アダルは火山によって空が灰に覆われたので、「もうこの土地で太陽を恐れることはない」とオークたちに勝利宣言。もはや「南方国」ではなく、モルドール(影の王国)”と称するのだった


ガラドリエルたちは噴火による被害から逃れるのに精一杯で、話の歩みは緩やか
テオとの会話ガラドリエルは、「殺しを称賛しないで」「いつか闇に引き込まれてしまう」と、前回のアダルとのやり取りを反省するように、戒めの言葉を口にする。敵は我にありは、指輪物語のテーマ
“よそびと”が追っていた女たちが、その仲間ではなく刺客ぽいことにはびっくり。残り一話でどこまで進むのやら


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前回 【プライム配信】『ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪』 第6話



【プライム配信】『ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪』 第6話

長くなるので、1話ごとに


<第6話 奈落>

アダルはオークの前で演説し、物見の塔へ進軍開始。しかし、アロンディルたち物見の塔そのものを崩す壮大な罠を仕掛けて、オークたちに甚大な被害を与える
そして、その隙に村を奪還! 今度は村での待ち伏せをはかって準備する
アロンディルはブロンウィンに戦いの後に息子テオと三人で家庭を持とうと語り、庭に植える種を渡すのだった

次の夜、再びオークたちが夜襲をかけてくるが、燃えた荷車を突っ込ませて混乱させたところを、家の上から弓で斉射! 犠牲を出しながら勝利したかに思われた
が、倒したのはオークに降伏した村人たち。そのショックに打ちひしがれているうちに、アダル率いる本隊が突入して、戦えない者が隠れる酒場すら制圧してしまう
アダルは“鍵”を渡すように迫って、人質にした村人を次々に殺害、重傷を追ったブロンウィンの番に回ったところでテオが“鍵”の在り処を告げる

しかししかし、そこに現れたのがヌーメノールの騎兵隊!
現実の馬の能力を越える長距離の疾駆と、ご都合過ぎる展開により、オークたちは駆逐され、アダルも逃亡ガラドリエルハルブランドの追撃で、そのアダルをも囚えるのだった
ガラドリエルの尋問に、アダルサウロンは真の力を求めて北へ向かったが、「旅に疲れて自分が殺した」などと茶化す。自分がサウロンを追う旅で仲間に嫌われたことを思い出したのか、ガラドリエルは「オークは間違って生まれた出来損ない」「殺して尽くして、最後にあなたの耳に囁いてやる」とかコマンドーな暴言をしてしまう

テオアロンディルに“鍵”の場所を明かしてしまったことを謝るが、アロンディルは「俺でもそうする」。そして、テオが“鍵”の力に憧れをもったことを明かすと、「自分でヌーメノール軍に海で捨てるように頼め」と布に包まれた状態で渡す
えっ、彼に渡したら、闇落ちするのでは、と疑問に思ったが、布から出てきたのは、ただの斧!
アダルは事前にワルドレグへ“鍵”を渡していたのだ。彼が物見の塔にあった岩へと刺すと、ダムが決壊! オークたちの作ったトンネルに水流が流れ込み、火山のマグマの海へと落ちる
そこで水蒸気爆発が起こってオロドルイン火山が大噴火!!
村のガラドリエルやヌーメノール軍は火砕流に巻き込まれるのだった。(完)


今回はアクションシーンが満載。騎兵の長期疾駆は異常だが、やはりファンタジーや西部劇では窮地での騎兵隊は外せないところであろう
ドラマではガラドリエルとアダルの対話が面白く、アダルはモルゴスに捕まえられたエルフの末裔であり、その存在は歪められ、モリヨンドル、“闇の息子たち”“最初のオーク”と呼ばれる。アダル自身はウルクと誇る
ガラドリエルはオークの権利を主張するアダルに対して、「存在そのものが許されない」とオークスレイヤーな対応をとるが、アダルに「サウロンと戦ううちに闇に落ちたか」と嘲笑されてしまう
激怒した彼女は、「最後にすると言ったが、あれは嘘だ」とばかりに殺そうとするが、ハルブランドに制止される。数百年強気だったガラドリエルが、ハルブランドと支え合う雰囲気に。しかし、恋人未満という感じでもなく、どうなることやら


次回 【プライム配信】『ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪』 第7話
前回 【プライム配信】『ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪』 第4話・第5話



『清張ミステリーと昭和30年代』 藤井淑禎

管理人のなかにも「清張ブーム」が生まれたが、実際どうするかは積み読と相談



昭和30年代の「清張ブーム」は高度経済成長をどう描いたか。知られざる作品から日本の影を覗く

松本清張論かと思いきや、それを触媒にした昭和30年代論であった
引用されている作品は、『点と線』『砂の器』という鉄板もある一方、『発作』『潜在光景』『坂道の家』『誤差』『憎悪の依頼』『恐喝者』といった中短編から掘り出しているのが渋い!
そうした諸作品から、昭和30年代(1950~60年代)の社会状況を探りつつ、時には自身の原体験を語り、登場人物の心象を推測していき、そこに生きた男女を活写していく
清張作品の特徴は「視点」のトリックを最大限に活かしての、読み終わってなお残す「謎」。その真相を読者に委ねているようで、時代性のみならず今なお読みつがれる魅力となっている

*以下、()内は書籍化の年


1.郊外の誕生

『砂の器』(1961年所収)では、映画館にクローズアップ。テレビが浸透するまでの映画は娯楽の王様であり、映画館は地方においてもその偉容を誇っていた。建物そのものが今のイオンモールのような存在感なのだ
そして、報道に関してもニュース映画の影響力は大きく、作品でもミスリーディングに使われる
『発作』(1957年、「詐者の船板」所収)からは、拡大と密集を繰り返す首都圏に、それに対応して伸長する鉄道網を。そうして拡大された住宅地、ホームタウンは首都と地方の狭間に生まれた「境界」であり、その不安定さは新しい犯罪を生む温床として、様々な作品の舞台となった。80年代の郊外論の魁のような光景がそこにはある
『坂道の家』(1959年、「黒い画集1」所収)だと、地方における小売店に焦点。モータリゼーションが進んでいない年代では、なんでも扱う“よろず屋”が薄利ながら手堅い収益を上げており、作品ではサラリーマンではありえない額を愛人につぎこむ店主が出てくるのだ。まさにコンビニ以前のコンビニの存在であったのだ


2.戦前を引きずる官僚社会の格差

『誤差』(1961年、「駅路」所収)では、田舎の旅館が従来では湯治場として使われていたのに、愛人との逢い引きの場に使われる変化が。『憎悪の依頼』(1982年、「憎悪の依頼」)には、当時の男女における結婚と性愛の感覚のズレが問われる
ただ意外にも名作『点と線』に関しては、あくまでトリック重視であり、“社会派”にしては官僚の実態に即していないと指摘。その反省で生まれたのが、『危険な斜面』(1959年、「危険な斜面」所収)とする
昭和30年代の官僚組織は、戦前の給与体系を引き継ぎ、今以上に学歴による階級社会を為しており、それを覆すにはキャリアの上司に重宝がられるため、汚い仕事に挑まざる得なかった
しかし、高度経済成長とともに、官僚の世界にもベースアップが定着。階層による給与格差が少なくなり、民間企業に抜かされるようにもなった(今は民間がダダ下がりで再逆転なわけですが)


高度成長における動揺を描いたのが、ブーム期の清張作品であり、それが描いた光景は、今では時代の副次資料にすらなってしまう。本書は時代性のみならず、世代を越える普遍的な魅力も伝える良書でありました


*23’4/5 加筆修正



【プライム配信】『ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪』 第4話・第5話

ドワーフでも政治家レベルではしたたか


<第4話 大きな波>

ヌーメノールの摂政女王ミーリエルは、大津波の夢を見たことから、軟禁中のガラドリエルを呼び寄せる。ガラドリエルはエルフと同盟して南方国への遠征を提案するが断られ、ミーリエルの父王に請願すると言い出したことから牢屋へ入れられてしまう
南方国では捕まったアロンディルの前に、同じエルフにしてオークたちの指導者となったアダルと対面する。彼は「おまえはたくさん嘘を吹き込まれてきた」「それを変えるには新しい世界の想像が必要だ」と語り、物見の塔に逃れた人々に伝言を託すのだった

エルロンドドゥリン王子と仲直りして、ドワーフたちの協力を得てエレギオンの新しい鍛冶場建設に着手
しかしその裏でドゥリンは秘密の坑道を掘らせていて、エルロンドに勘づかれる。なんと、そこにあったのがミスリル”金属
落盤事故により採掘は中止されるものの、父王と対立したドゥリンをエルロンドが自身の父に対する思いから宥めるところが、今回一番の感動だ

ガラドリエルは隙を突いて脱出し、ミーリエルの父がいる塔へ侵入する。そこには瀕死の病人である王とミーリエルと対面、王がエルフとの同盟を謳い出し、国二分したという真実を知る。そして、宝珠“パランティール”から、女王の見た大津波がヌーメノールを滅ぼす未来を目撃した
結局、女王はガラドリエルを追放することで未来を変えようとしたが、出航の際に白の木の花が散る徴を見たことから、南方国への遠征を決断。志願者には、船乗りを落第したエレンディルの息子イシルドゥルと友人たちがいた

物見の塔は住人で一杯になり、食糧危機が勃発。危険を犯してブロンウィンの息子テオが村へ戻るがオークに発見され、手にしていた剣の柄アダルの探す邪悪な力の武器と知る。帰還したアロンディルの助けで逃げ延びたものの、物見の塔では納屋にその柄を隠していた男ワルドレグに、モルゴスを継ぐ者への忠誠を求められるのだった


<第5話 分岐点>

ノーリの一家を助けた“よそびとは、術の代償にホタルを死なせたことから、まだハーフットたちからは不吉な人間に見られていた。予定していた森が枯れていたことから、ノーリの一家ごとの追放を訴える者がいたが、魔狼(ワーグ)を退けたことで一転ヒーローとなる。しかし、その不思議な魔術に氷漬けにされかかったことでノーリとは距離ができてしまう
そして、“よそびと”が落ちた場所には、謎の白装束の集団がその痕跡を追っていた

オークによるトンネルは完成し、アダルは手始めに物見の塔への攻撃を準備する
その物見の塔では、ブロンウィンが人々に結束を呼びかけるが、親サウロンのワルドレグが妨害し半数の人間がアダルの元へ出てしまう。テオの友達ローアンは去るが、テオはワルドレグの誘いを振り切って塔へと残る
そして、弓を教えるアロンディルに、力の源される“柄”を見せ、アダルの求めるなにかの“鍵”と知った

ヌーメノールでは、南方国への遠征を巡り国を二分ファラゾーンの息子ケメンは、父を口説いてミーリエル女王の追い落としを画策するが、ファラゾーンは「人間優位の“中つ国”」を目指すと反論
しかし、遠征用の船に火をつける者がいて、二隻が焼失。ただその犯人を取り押さえたイシルドゥルは、船乗り失格から遠征への参加を許される
南方国への遠征に後ろ向きだったハルブランドは、ガラドリエルの度重なる説得から、ついに王族として旗印となることを決意した

ドワーフのドゥリン王子リンドンのギル・ガラド王を訪問し、お互いの秘密を知ろうと食事の席で探り合いを続ける
ギル・ガラド王はミスリルの採掘を勘づいており、白の木の衰えを知らされたエルロンドドゥリンとの友情の板挟みに苦しむ。エルフの運命はドワーフが掘ろうとするミスリルにかかっているというのだ
エルロンドは意を決して、ドゥリンへ正直に告白。二人してミスリル採掘の再開を期するのだった

第5話は分岐点だけあって、アクションは少なめだけど、ドラマシーンでは神回ハルブランドに戦うことを求めるガラドリエルは、「なぜ戦うのか」を問われ、戦いの途中に味方に見捨てられたこと、王にも嫌われて栄転という名の追放処分を食らいそうになったことを告白。その上で「止められないからよ」「戦わなくては心の平穏は得られない」とハルブランドに訴えていく
遠征から取り残されそうになったイシルドゥルは、父エレンディルから厳しい現実を突きつけられつつも、仲違いした幼なじみに頭を下げるなど、なりふり構わない行動をとる
そして、エルロンドとドゥリンの友情。意外にこのドワーフは政治の駆け引きがうまい


ついにアダルの軍勢が南方国で進撃を開始し、ガラドリエルヌーメノールの軍勢とともに中つ国へ帰ってくる。物語は大きく動き出した。わりと順調に仲間がまとまってきた感じだが、果たして何が待っていることやら
そして、まだサウロンが正式に登場していないことから、正体は誰なのか、謎を残しているのがポイント。”よそびと”がもっとも疑われる位置にいるのが、まんまな訳もなくガンダルフ的な何かとおぼしいが
ファンタジーに親しんできた人間としては、廉価な魔法金属扱いになっている”ミスリルが、世界を救うような位置づけで出てくるのが新鮮(笑)。ゲームでは店で普通に売られたりしているが、これこそ本来のミスリルなのよ


次回 【プライム配信】『ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪』 第6話
前回 【プライム配信】『ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪』 第2話・第3話



【京都人による京都観光】清水寺の夜間特別拝観

先月末、家族と清水寺の夜間拝観へ出かけた。ちょうど最終日で、平日夜ながら人混みもそれなりに。駐車場には観光バスが何台も並んでいて、コロナが嘘のような状態である


01 大谷本廟
こちらは浄土真宗のお墓がある大谷本廟親鸞上人の墓所ともなっている場所にもライトアップがされていた

02 五条坂
清水寺までの坂道、「五条坂」からもライトアップされた三重塔と放たれたレーザービームが見える

011 仁王門 012 瑞雲青龍
左が「仁王門」 右は「西門」

013 清水三重塔 有名な三重塔

そういえば、近くに住んでいるせいか、清水寺のことをちゃんと記事にしていなかった
その創建は778年興福寺の僧・賢心(後の延鎮)が、音羽山の”金色の水流”を見つけ、そこで行叡居士(ぎょうえいこじ)という老いた修行者に出会う。彼に託された霊木から千手観音を彫り、それを本尊としたのが始まり
その2年後、初代征夷大将軍となる坂上田村麻呂妻・高子の病気のために鹿の生き血を求めて狩りに来た際、賢心に不殺生を説かれ、自身の屋敷を本堂として寄進した。そして、蝦夷征伐を命じられた際には、平定参拝を行ったという
798年、その田村麻呂の後援もあって、大伽藍をもつにいたる

024 音羽の滝
舞台から見下ろした音羽の滝

清水寺の山号は音羽山で、音羽山清水寺が正式名称。山科には東のほうにも”音羽山”があり、比叡山の西の麓にも”音羽谷”の地名が残る。奈良にも音羽山(観音寺)があり、そこが発祥の気もする

027 清水の舞台から見下ろし 025 阿弥陀堂
「阿弥陀堂」(左)と「奥の院」(右)

開山の賢心(延鎮)が興福寺の僧であったことから、中世から奈良の興福寺に属し、南都北嶺の争いの前線として、1165年には比叡山の僧兵による焼き討ちを受けた
応仁の乱に巻き込まれ、再び焼失したところ、勧進聖とよばれた時宗の願阿弥が再建事業に乗り出し、念仏の本願成就の地と見なされるようになった
豊臣秀吉に130石の寺領を安堵され、江戸幕府もそれを引き継ぎ徳川家光により寄進、再建が果たされたそうだ

034 京都の夜景 036 三重塔も逆光

参道から見た夜景や三重塔の塔が美しい。しかし、光で画質が……まだスマホを使いこなせておりませぬ

041 下から舞台 042 下から舞台
下から見上げた舞台

044 池に映る紅葉 045 池に映る紅葉
池に映る紅葉。枯れ切っているのが悲しいが、それでも幻想的


保津峡にいったあと、雨の日を挟んだことでかなり葉の落ちた木が多かった。気温もすっかり冬モードで、紅葉狩りとしてはシーズンを逃した感は強い
とはいえ、いついけば良かったかというと、きれいに染まった時期というのもなかった気がするので、今年は不作だったというのが本当のところだと思う
といっても、保津峡も清水寺も元の景観がガチでいいので、行った甲斐はあった




【京都人による京都観光】鳥居本・清凉寺

保津峡から峠を越えて、愛宕山の麓にある鳥居本へ下りる。2つの念仏寺で紅葉狩り


1.愛宕念仏寺

府道50号線から鳥居本へ出たところで、石仏で有名な愛宕念仏寺を目指す
途中、猿の群れが高い木の上で木の実を食べていて、なんだか嵐山公園のような様相に

051 愛宕寺

愛宕念仏寺の創建は、まだ平安京ができる前の天平年間で、766年称徳天皇により山城国愛宕郡初めての寺として名付けられた
真言宗の末寺とだったが、醍醐天皇の命で天台宗の千観内供(伝燈大法師)が再建したときに天台宗となり、千観が念仏上人と呼ばれていたことから、「愛宕念仏寺」と改められたとか
太平洋戦争中に管理者がいなくなり、ジェーン台風の被害で1950年に廃寺となったが、比叡山延暦寺から再建を命じられた西村公朝が復興に尽くした

062 愛宕念仏寺本堂  064 本堂からの石仏
本堂

このお寺に多くの石仏が並ぶのは、1980年に一般人が自ら羅漢像を彫る活動が始まったからで、石仏の後ろには作り手の名が記されている。500体目標が10年目で1200体になってしまったとか
2007年に亡くなられた西村公朝・前住職仏師(仏像の職人)として有名で、きらびやかな虚空蔵菩薩ふれ愛観音が境内に安置されている。東京藝術大学の教授になったり、2000年に清水寺で始まった青龍会を監修したり、長渕剛と交流があったりとかなり幅広く活動された方。そのお寺が今もにぎやかなのも納得

073 モアイ石仏 

羅漢像にはユニークものも多く、写真のようにモアイ像(!)ボクシンググローブをはめた羅漢髪型がリーゼントになった羅漢など、一般人が楽しんで盛り上げている


2.化野念仏寺

温度の上げ下げが激しいせいか、紅葉は枯れたり青かったりとまばらなのだけど

077 あだしの念仏寺の入り口 079 あやしのの紅葉

化野(あだしの)念仏寺の紅葉は美しい!
化野念仏寺は、空海上人が都で野ざらしになった死体を弔うために、811年に千体の石仏を沈め、五智如来を祀る五智山如来寺として始まった。その後、法然上人が念仏道場として、念仏寺となったという

083 西の川原の紅葉 084 仏舎利塔

境内なかで、ひときわ目立つのが仏舎利を守る仏舎利塔(ストゥーパ)。本場のインドから専門家を呼び、世界文化遺産であるサン・チーの塔を模して1969年に建立された。タイに旅行したときにも、こういう石造の寺院が一般的であり、東南アジアからインドには、こういった宗教建築は珍しくない
宗教を通したアジアのつながりを感じさせる建造物だ

092 角倉素庵の墓 096 竹林

左上の立て札には、角倉了以の息子・素庵の墓のことが。家の菩提寺は他にあるのだけど、不治の病にかかったため、この地を選んだとか
冬直前とした竹林の向こうには、六面六体地蔵があるけど、そこは割愛



3.鳥居本の街並み

049 愛宕

鳥居本の由来は、愛宕山の愛宕神社の鳥居があるから。戦前の古い街並みを残していることから、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている
コロナゆえか、テナントの入ってない建物が多かったが、人が少ない分、風情が守られてる気はする

075 鳥居本の通り 076 鮮やかな紅葉

街並み保存館には、電気とガスが通る前のレトロな生活空間が再現されていて、母親は懐かしがっていた


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