『真田太平記 (五) 秀頼誕生』 池波正太郎

忍者佐助の誕生


真田太平記(五)秀頼誕生 (新潮文庫)
池波 正太郎
新潮社
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立て続く身内の死、朝鮮出兵の苦戦で秀吉の心身は衰退していった。豊臣家の行く末が危ぶまれるなか、待望の跡継ぎ・秀頼が誕生し安心したのも束の間、関白である甥の秀次とその一族が粛清されてしまう。秀吉の死によって外征は終わったものの、その裏では奉行衆と前線の武将との間に埋められない溝が生まれていたのだった

第5巻は一気に歴史が加速していく。もはや関ヶ原の前段である
自らの起こした「唐入り」身辺の多事多難から秀吉は急速に消耗し、秀頼を得た後も元へ戻ることはなかった。幼い秀頼のもとに石田三成を筆頭とする奉行衆加藤清正・福島正則ら武闘派が対立し、そこへ五大老の一人の徳川家康が介入して政権の主導権を握る
秀吉から後事を託された前田利家との約束で、伏見城から向島の出城へ移るも、利家の死後には手のひらを返すように再び伏見城へ戻り、有力大名との婚姻など傲然と法度を破ってしまう
家康の横暴を止められないのは、家康自身が政権の柱であり、中老や奉行も本気で指弾して天下が崩壊してしまうことを恐れているためとされる。大老のなかに、家康の除いて天下人の器量を持つ人間がいないのだ
本作では二度目の外征「慶長の役」を、大大名を消耗させるための口実と見なしているが、それなら家康が外されていることが解せないところになる
あと、作者お得意の「このことである」のフレーズが頻出するのが気になった(笑)。場所によっては数ページに一度で、どれだけ念押ししたいのであろう

真田家関係での変化は、向井佐平次の息子・佐助が忍者としてデビューしたところ
昌幸の甥である樋口角兵衛が村娘をレイプしようとしたところを投石攻撃で気絶させる戦闘力を持ち、「草の者」の頭領である壺谷又五郎を尾行し別所温泉に先回りするなど、天性ともいえる才能を持つ
又五郎は佐助を一人前の男にしようと、女忍者のおくにを送り込んで五日間、みっちりもっこりとした筆下ろしをさせるのであった(うっ、うらやましい)
佐助に凹まされた角兵衛は、昌幸に疎まれて本家では目が出ないと沼田の信幸の下へ移る。柳生五郎右衛門に弟子入りしていた鈴木右近も、信幸の窮地を救って帰参し、にわかに沼田の分家に豪傑が集まってきた
前田利家の死後に起こった石田三成謀殺の動きに、真田家の忍びともに三成の父や兄の動きも取り上げられ、その居城・佐和山の城下も美しく描かれていた
この石田家と真田家の連携は『真田丸』でもフューチャーされるのではないだろうか


次巻 『真田太平記 (六) 家康東下』
前巻 『真田太平記 (四) 甲賀問答』
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『ベルセルク』 第38巻 三浦建太郎

リッケルトにも、強力なお仲間がつく。どこまでキャラを増やす気なの


ベルセルク 38 (ヤングアニマルコミックス)
三浦建太郎
白泉社 (2016-06-24)
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前巻から三年は経っただろうか? ようやくの38巻である
元鷹の団の鍛冶屋リッケルト幼妻エリカは、新生鷹の団のアーヴァインに助けられ、グリフィスが建てた王国「ファルコニアを訪れる
かつてウィンダム城があった場所には、信じられないほどの荘厳な城が建てられ、城下には魔獣に追われた難民が集まり、かつてない喧騒を極めていた
リッケルトは元鷹の団の経歴から、グリフィスにその真意を訪ねようとする。城ではたどりつけなかった難民たちの一人一人の葬儀が行われており、シャルロット姫はおろか法王自身までが祝福を行う。なんと、グリフィスは法王庁まで取りこんでいたのだ。モズグズ様が見たら、どう思うだろうか
そして、人間と使徒を結びつける力を持つ「鷹の巫女」ソーニャが、死んだ難民の魂を呼び出してしまう。一見、文明的に見える「ファルコニア」は現世と幽界の境がなくなってきているのである

リッケルトは新生鷹の団の幹部ログスに連れられ、ファルコニアの裏側を見せられる。人間たちの住む区画と離れた場所に、ファルコニアの主戦力である戦魔兵たちが押し込められていたのだ
ガッツが戦ってきたいわゆる使徒である彼らの力によって、ファルコニアの秩序は保たれている。鷹の団の犠牲によって、クリーンな覇者として君臨するグリフィスをリッケルトは許せないが、一種の均衡を認めざる得ない
読者はゴッドハンドの連中との取引を知っているから、グリフィスをアンチキリスト(偽救世主)と見なすこともできるけれど、何も知らずに住んでいる市民からすると平和の使者なのだ
綺麗な社会の裏に制御できない暴力がうごめくという構図は、近代社会への暗喩にも感じられて気味が悪い。市民に夢を見せて扇動し、クリーンな世界を作ろうという動きは、全体主義的なのであ~る

最後の数話はガッツ一行の妖精郷(エルフヘルム)へと赴く。そこの畑で襲い掛かるのが、巨大な案山子(スケアクロウ)!
思わず『案山子男』を連想してしまった。作者もきっと観ているんじゃないか(笑)


次巻 『ベルセルク』 第39巻
前巻 『ベルセルク』 第37巻

関連記事 【DVD】『案山子男』
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【DVD】『ストーカー』

中古で探し求めて、ようやく手に入れた。なんだか、CDぐらいの大きさのケースだった


ストーカー 【DVD】
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キングレコード (2015-06-10)
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隕石が落ちたことによってある村は消失し、調査に出た軍隊が全滅した地域があった。以来、そこは「ゾーン」と呼ばれて政府に封鎖されていた。しかし、そこには“隠された宝”、なんでも望みが叶う「部屋」があると言われ、そこへの道先案内人「ストーカー」という職業が生まれた。その一人である“ストーカー”(=アレクサンドル・カイダフスキー)は妻の反対を押し切りつつ、物理学を専攻する“教授”(=ニコライ・グリニコ)“作家”(=アナトリー・ソロニーツィン)を連れて、「ゾーン」への旅に出るが……

原作者が脚本に参加しているわりに、少し方向性の違った作品となっていた
SF要素はほとんどなく、「ゾーン」へも科学的考証はされていない。「ゾーン」に入るまでの第1部は、当局が厳重に警備する検問・巡回を突破する、ささやかなアクションシーンがあるものの、本編である第2部は「乾燥機」「肉挽き機」などの罠が登場しつつもその脅威が映像で見せられることはない。まさに「ゾーン」という魔境へのピクニックなのである
哲学談義がなければ、軍艦島などの廃坑・廃墟を巡るドキュメントのようだ
とはいえ、タルコフスキー独特の映像美が光り、現実社会がモノクロの灰色世界で、「ゾーン」に入るや美麗なカラー映像に切り換わるところなど、魔境で解放されるストーカーたちの心境が大胆に表現されている。あちらこちらに滴る水に、動かぬ戦車、沈む文明の遺品……と廃墟好きなら、三時間近い長尺でも退屈することはないだろう

ストーカー、“教授”、“作家”の「ゾーン」に対するスタンスの違いがポイントとなる
“教授”は科学の担い手だけあって、不可解そのものである「ゾーン」を分析して事実化しようとする。“作家”は分析しきれないはずの現実を分析しようとする不毛を笑いつつ、「ゾーン」に対する恐れを抱かず先頭を突っ走る
ときに、ストーカーは“作家”の暴走を怒るが、あえて先頭を切らせたりもする。新しい事態に対して、最初に反応するのは“作家”の感性だからだろうか
しかし、何でも望みが叶う「部屋」に対しては、“作家”は入室を拒む。ストーカー「ヤマアラシ」のエピソードから、「部屋」で叶う望みとはその人間の「無意識」に過ぎないと看破したからだ。絶えず自らの「無意識」と向き合ってきた“作家”からすれば、そんな望みほど無意味なものはない。「自分の腐肉など見たくもないし、人に見せたくもない」
“教授”は得体の知れない「部屋」を、世人が騒いではためにならないと爆弾で吹き飛ばそうとする。人間の理性では推し量れないものを無くしてしまおうという態度は、「ゾーン」に対する最終的な結論といっていいだろう

それに対して「ゾーン」を崇拝するストーカーは、力づくで阻止しようとする。ストーカーは実社会では無力な「ろくでなし」だが、「ゾーン」の世界では案内人としての腕を振るえる。「部屋」ではなく、「ゾーン」そのものがアイデンティティを与えてくれる無償の存在なのだ
ストーカーの想いに、“教授”も「分からなくなった」と爆弾を解体してしまう。そして、「部屋」の前にへたりこんだ三人に慰安とも思える時が流れる
「ゾーン」という大自然そのものが、退屈な近代社会から解放してくれる聖地なのである。どんな人間の行いも大地が飲み込んでしまう。三者の構図といい、なんだかロシア文学の伝統を感じるところだ
ラストにストーカーの帰還を受け入れた夫人の長い独白があって、監督が言いたかったことが正面から語られる。「苦しみなくして、幸せも希望もあるだろうか」
歩けない娘が不気味なサイコネキシスを発揮する締めは、希望とそれを上回る不安を感じさせて、原作の味も健在である


関連記事 『ストーカー』(原作小説)
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『メタルギア ソリッド2 サンズオブリバティ』 レイモンド・ベンソン

小説でも頼りないデン


メタルギア ソリッド2   サンズ オブ リバティ   (角川文庫)
レイモンド・ベンソン
角川書店(角川グループパブリッシング) (2011-02-25)
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シャドー・モセス島事件から2年後、スネークオタコンともに反メタルギア財団「フィランソロピー」を結成し、新型メタルギアを搭載したタンカーへ潜入した。ハドソン河を下るタンカーには、メタルギアを開発した海兵隊にロシア私兵部隊が襲撃し、大混乱の末に……。そして、そのさらに二年後、沈没したタンカーの後には環境悪化を食い止めるための施設『ビッグシェル』が建造されていたが、スネークを名乗る男が大統領視察中に占拠した。フォックスハウンドの新兵「雷電」は、大統領救出のために乗り込むが……

アクの強い同作品の忠実なノベライズだった
前段となるタンカー沈没事件と本編のビッグシェル占拠事件二段構えの構成で、小学生で原爆を完成させた爆弾魔ファットマン、銃弾を弾く不幸な女フォーチュン、何度でも蘇る吸血鬼ヴァンプと、ファンタジーな敵役が原作同様のパフォーマンスを見せくれる
前作にも超常的な敵役がいたものだが、一つのテロ事件として現実世界に近い形で終息した。本作では、アメリカの歴史を支配する『愛国者達』、デジタル情報を統制するGWシステム、個人の感情を数値化し意のままに誘導する3S計画と、陰謀論的世界観がぶっぱなされていく
ゲームだと全体の整合性などより、クライマックスに向かっての勢いでプレイヤーは乗っていけるものだが、小説として冷静に読んでしまうと「おっ、おう」と立ち止まってしまう。現実に投げかけるテーマがあるにも関わらず、計画とそれに対する費用対効果とかアラの部分が目についてしまうのだ
それをフォローするための設定改変、後付けもなく、本当に忠実なノベライズなのである
作者のやり込みは万全で、終盤になって狂う大佐、フナムシを嫌がるエマを気絶させようかと思う雷電など、プレイ経験があればニヤリとする場面も多い。その点は期待どおりだ

秀逸なのは、編集者による解説である。MGSシリーズを通したテーマを丁寧に触れられているのだ
ゲームに登場する専門用語、コードネームには、それぞれにアメリカの歴史に関わる由来がある
例えば、サブタイトル「サンズオブリバティ」はアメリカ独立戦争のきっかけとなったボストン茶会事件を起こした組織の名称であり、情報を統制・検閲するGWシステムは、アメリカ政界で神格化されているGW=ジョージ・ワシントンの存在から来ている
ビッグボスとそれを受け継ぐ子供と反抗する子供、父と子の葛藤という『メタルギア』から初代『MGS』のテーマに対して、本作ではさらに管理する者と管理される側の相克が加えられ、人間にとっての自由とは何かが突きつけられる。アメリカで人気を二分した『GTA』シリーズの「freedom『MGS』シリーズの「liberty、二つの“自由”を巡る分析は読み応えがあった
くしくもゲームの開発中に9・11が起こり、ニューヨークにアーセナルギアが突っ込む描写が割愛されるという事情もあった。時代と寝たゲームシリーズなのである


前作 『メタルギア ソリッド』
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『真田太平記 (四) 甲賀問答』 池波正太郎

大河だと、お江役は遙くらら。草刈正雄があさイチに出てたときにビデオ出演してた


真田太平記(四)甲賀問答 (新潮文庫)
池波 正太郎
新潮社
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天下統一が成った後、豊臣秀吉は明朝の征服に乗り出した。真田家は秀吉の近侍として仕える幸村の運動もあり、名護屋城での滞在組に配属される。秀吉の天下統一に協力してきた甲賀の山中内匠秀俊は、この無謀な戦いに将来への不安を感じ、同じ山中一族の首長・大和守俊房とともに、徳川家の天下に貢献することを誓う。真田家の忍びを仕切る壷谷又五郎もまた、天下の先行きを案じて、甲賀の動きを探ろうとお江などの手練の忍者を派遣。甲賀と真田の熾烈な闇の戦いが始まった

第4巻は史実の進行としては、朝鮮出兵の文禄の役までしか進まない
しかし裏の世界では、真田忍び畿内に忍びの拠点を作るともに、甲賀の動きを偵察したことから壮絶な戦いが始まる
真田忍びのエースであるお江は、父・馬杉市蔵が山中家の命に背いて武田に残った因縁から、猫田与助をはじめとする甲賀忍者に付け狙われる。山中忍びの頭領・大和守から生け捕りの指令が下り、彼女は獅子奮迅の戦いを見せるが、ついには……
その後、意外な人物に救われて、なおかつチョメチョメな関係になってしまうとか、彼女には作者のエロ魂が惜しげなく投入されている
昌幸も信幸も幸村も又五郎も、みんな彼女が好きであり、真田太平記のスーパーヒロインなのである

そのほか、名胡桃城の亡き城主・鈴木主水の子息である鈴木右近が出奔の果てに、柳生石舟斎の四男・五郎右衛門に入門するなどの興味深い展開が。他の作品で徳川家の闇の部隊として活躍する柳生一族と、甲賀・真田がどう関わるのだろう
朝鮮出兵に関しては、真田家視点なのでほぼ肥前・名護屋周辺しか描かれない。大政所の死に際して秀吉が大泣きするところなど「こんな武将を見たことがない」と作者が急に顔を出すのだが(苦笑)、自分で創作した場面と史実から引き写した場面の文体、テンションの違いが少し気になった。その場面をあえて抜き出したのは、作者なのに


次巻 『真田太平記 (五) 秀頼誕生』
前巻 『真田太平記 (三) 上田攻め』
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『日本共産党と中韓 左から右へ大転換してわかったこと』 筆坂秀世

先を読めない「科学の目」




日本共産党は戦前戦後をどう歩んできたのか。本当に護憲政党なのか。元共産党幹部がその実態を明かす
著者は共産党員として参議院議員を務め、党の要職を歴任しナンバー4にまで登りつめた人物。セクハラ事件で議員辞職、離党してからは、保守派に転じている
本書では安保法案の「戦争法」「憲法違反」と批判する日本共産党が、過去に憲法や外交政策でどういうスタンスを取ってきたかが俎上に載せている
戦前の共産党は1930年代には壊滅状態となり、1945年の敗戦ともに再結成されたが、ソ連のスターリンの影響下にあり世界党である共産党の日本支部という扱いだった
平和憲法=日本国憲法制定の際には、「天皇制の存続」「自衛戦争の放棄」を理由に反対票を投じていて、朝鮮戦争が勃発した50年代にはソ連のコミンフォルムから武力闘争が求められ、四分五裂の状態に陥っている。70年代に党勢を回復させてからも、被爆国でありながら社会主義の核は正義としたり、冷戦が終わってからの「ソ連の覇権主義」を批判するなど、一般大衆からは非常識あるいは周回遅れ過ぎる対応を繰り返してきた
前衛政党と称しながらも、その時の政情を意識して野党として生き残るべく、綱領を共産主義との建前の間で変化させ続ける政党なのである

最近、連合赤軍の映画やマンガを読んでいる管理人からすると、新左翼に与えた影響が気になる
なぜ、連合赤軍は山に籠もったのか。その元は毛沢東の中国が日本共産党に押しつつけてきた人民戦争方式である
野坂参三は当初、平和憲法下の社会主義革命を唱えたが、コミンフォルムに非難され徳田球一ともに政策変更。GHQの公職追放後に、両者は中国に亡命して「北京機関」を設立し、日本に武力闘争路線を輸出しようとした
そして、1951年10月に第五回全国協議会(五全協)において、「日本の解放と民主的変革を、平和の手段によって達成しうると考えるのはまちがいである」と綱領を定めた(現在の日本共産党は「綱領」と認めていないが)

そして、同時に「軍事方針」なるものを五全協は採択している。
「占領制度を除き、吉田政府を倒す闘いには、敵の武装勢力から味方を守り、敵を倒す手段が必要である。この手段は、われわれが軍事組織をつくり武装し、行動する以外にない」
(中略)
「われわれの軍事的な目的は、労働者と農民のパルチザン部隊の総反攻と、これと結合した、労働者階級の武装蜂起によって、敵の兵力を打ち倒すことである」
「大衆闘争の発展と軍事的勝利の蓄積ののちには、山岳地帯に根拠地をつくることができるだろう」

 要は、農村部でのゲリラ戦など、中国革命方式の武装闘争を行うことを規定しているのだ。……(p65‐66)

当時は朝鮮戦争が勃発しており、コミンフォルムは日本での後方撹乱を日本共産党に課したと考えられる。これによって50年代の同党は、路線対立と世論の批判を浴びて大きく党勢を後退させた

1960年代、ベトナム戦争が激化する中、1966年に日本共産党は宮本顕二書記長を団長とする代表団北朝鮮中国に派遣した
中国側は中ソ対立から、アメリカと同時にソ連を共通の敵とする立場を求めたが、ソ連が北ベトナムを支援している関係から代表団は拒否。毛沢東は日本共産党を「宮本修正主義集団」と規定し、日本の革命運動へ毛思想の絶対化を広めようとした
再び来た人民闘争路線の浸透に、日本共産党内部のみならず、各層に大きな影響を与える。共産主義者同盟(ブント)の国会突入において樺美智子の死を英雄として人民日報は持ち上げ、1970年の「よど号ハイジャック事件」を周恩来が称賛した
当時の日本のマスメディアは、朝日から読売まで文化大革命を評価する論陣が張られていた(司馬遼太郎すら巻き込まれている→『長安から北京へ』
そうした毛ブームの中で、一番ガチに思える人民戦争路線を突っ走る連中が現れるのは分からなくはない。今からすれば、「どうしてこうなった」と思える連合赤軍事件も、こうした社会的背景があったのだ
ちなみに、ニクソン訪中を機に中共は大きく外交政策を変更させ、自民党との接近をはかり、周恩来は「日本にとって日米安保条約は、非常に大事です。堅持するのが当然」と言い切ったそうだ。これが政治である


関連記事 『長安から北京へ』
     【DVD】『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』
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『米朝開戦』 第3巻・第4巻 マーク・グリーニー

「ザ・キャンパス」の物語は続く


米朝開戦(3) (新潮文庫)
マーク グリーニー
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米朝開戦(4) (新潮文庫)
マーク グリーニー
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アメリカ西海岸に到達する弾道ミサイルの開発と、その資金源となるレアアース鉱山の採掘と精錬。北朝鮮はその野望の妨げとなるジャック・ライアン合衆国大統領の暗殺作戦に乗り出す。一方、CIAは鉱山開発の実態を暴くべく、中国系工作員アダム・ヤオを北朝鮮に潜入させる。ジャック・ジュニアも北朝鮮に協力する民間情報機関を探るために、ヴェトナムで会った美女ヴェロニカ・マルテルに接触を試みるが……

熱いスパイ小説である
北朝鮮に『米中開戦』で活躍したアダム・ヤオを潜入させたと思いきや、ジャック・ジュニア元フランス工作員の美女にお近づきとなり、もう一歩でウッフンなところまで行く。スパイ同士が騙しあう二重三重の頭脳戦が展開され、「ザ・キャンパス」の面々も不測の事態に七転八倒して先を読ませない。まさに痺れる
リアリティはともかくも、純正グリーニーの本作は娯楽性に富んでいるのだ
第3巻のラストにはジャック・ライアン暗殺を狙った大規模テロが起こされ、第4巻ではその真犯人への「ザ・キャンパス」の総力(五人だけど)を上げた追撃、重要人物を亡命させるべく、収容所国家を相手にしたアダム・ヤオの逃走劇が怒濤のように展開される。彼の救出に意外な専門家の分析がものを言うとか、計算され尽くしたプロットには感動した
最後の決着のつけ方に、現実から逸脱する嫌いがあって、今後の国際情勢との整合性に疑問が残るものの、エンターテイメントとしては一級品だ

アダム・ヤオは中国の非公式開発業者を経て、レアアース鉱山へ潜入する
北朝鮮側の責任者・黄珉鎬は開明的な人物ながら、いやだからこそ、警察国家で生まれ育った人間の苦悩を代表している
三代目の独裁者から無茶な要求を出されて亡命を余儀なくされても、独裁者一族への忠誠が洗脳教育として植えつけられている。逃亡中にヤオが崔智勲を非難すると、思わずカッとなって反論し、ヤオを蒼ざめさせるほどだ
そして、黄の両親を脱出させようとして、逆に「裏切り者扱い」されるところなど、洗脳の怖さを物語っている
朝鮮戦争における中国の協力を北朝鮮は国内的に説明しておらず、むしろ中国の革命に北朝鮮が貢献したと夜郎自大な革命観を公式なものとしている。結果、中国人と北朝鮮人の関係は友好とは程遠い
こういった同国の閉鎖性を考えると、小説のオチは中国の影響力を過大視しているように思える


前巻 『米朝開戦』 第1巻・第2巻

関連記事 『米中開戦』 第1巻・第2巻
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【BD】『サイレントヒル』

静岡にようこそ


サイレントヒル [Blu-ray]
ポニーキャニオン (2013-07-02)
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ローズ(=ラダ・ミッチェル)は、娘シャロン(=ジョデル・フェデランド)の夢遊病に悩んでいた。正気を失っているときに口走る「サイレントヒル」という言葉から、彼女は坑道事故でゴーストタウンとなった町へと向かう。途中、同地の警官シビル(=ローリー・ホールデン)から誘拐犯と疑われ全速力で突っ切るが、人影を見てスピン。気がついたときにはシャロンは車から姿を消していた

ゲーム『サイレントヒル』の実写映画である
監督クリストフ・ガンズが同シリーズの大ファンということで、霧に包まれた町、異形が近づくと鳴るノイズ、サイレンと共に訪れる裏世界、みんな大好き△様と、ゲーム経験者だとニヤリとするシーンに溢れている
原作ゲームがスティーヴン・キングの小説群(直接的には『霧』)にヒントを得ているからか、実写化すればさもありなんと、世界観が忠実に再現されている
管理人もさして詳しくないので正しい考証はしかねるが、「サイレントヒル」の設定そのものには舞台の町がゴーストタウン、女性が主人公、シビルやグッチ警部など外部の人間が大きく関わるなど、映画オリジナルの要素も多くかつ雰囲気を壊していないので、ゲームのオチを知っている人でも最後まで楽しめる作品となっている
そんなストイックなホラーのなかで、ラダ・ミッチェルの胸元がエロい。さりげないサービスシーンもたっぷりである
ゲームのイメージよりリアルなGやグロ表現に注意が必要だが、もっとも望ましい実写化がなされたといえよう

ゲーム『サイレントヒル』は、とりあえず仮タイトルとして「静岡」の英訳(?)をつけたところ、響きがいいのでそれがタイトルになったらしい。いちおう、熱海が町のモデルになっているという話もある
映画版の「サイレントヒル」は、ウェスト・バージニア州でアメリカ東部の魔女裁判が行われていた土地柄。そうした、かつての悲劇と、都会から切り離された内陸都市の閉鎖性経済原理によって放棄されて生まれるゴーストタウンなどの現実があいまって、地続きのホラーとして成立させている
ちなみに『サイレントヒル』のスタッフが製作したゲーム『SIREN』も、堤幸彦によって実写映画化されたが、こっちはかなり微妙森本レオの怪演ぐらいしか見せ場がなく、設定が根底から変えられていた
日本で実写化にこだわると、予算と環境からヘタレる好例といえそうだ


Silent Hill: Homecoming (輸入版:北米)
Konami(World) (2008-09-30)
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『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告』 エマニュエル・トッド 

イギリスは離脱が正解?


「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)
エマニュエル・トッド
文藝春秋
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ユーロ圏はドイツに支配されている!『帝国以後』の著者がヨーロッパで起こっている真実を告げる
本書は『帝国以後』のエマニュエル・トッドフランスの雑誌やインターネットサイトで受けたインタビューを集めたもの。インタビューといっても、質疑応答が続くわけではなく、著者が独白のように持論が展開されていて、エッセイのように読めてしまった
著者はユーロ圏が誕生することでヨーロッパ諸国が相互に保護することを期待したが、現実に起こったことは正反対。ユーロという統一通貨と経済障壁が撤廃されたことから、経済大国である統一ドイツ欧州中央銀行の本店がフランクフルトにあるように、自国に合わせてユーロ圏の経済が再編されていったのだ
こうした視点からヨーロッパ地図を見直すと、バルト三国にウクライナを巻き込んだ地域は全盛期のナチスを上回る事実上の「第四帝国なのである!
もっとも、著者は陰謀論的にドイツを批判したいわけではなく、あくまで祖国フランスの覚醒を促すべく、過激な政治的発言をしているので、そのへんは割り引いて読むべきだろう

特筆すべきはロシアとウクライナの紛争の読み方だ
著者によれば、戦争を仕掛けているのはロシアではなく、ドイツだという
ウクライナは第一次大戦や独ソ戦もそうであったように、地政学的にはドイツとロシアがぶつかり合う場所である
ドイツは東西統一の際に、共産圏の知的レベルの高い国民を安価な労働力として動員することに成功した。ユーロの拡大にはこの経験が生かされて、ドイツの大企業は東欧に工場を立てて経済的に取り込んでしまっているのだ
そしてウクライナはドイツ資本にとって、東方最後のフロンティアともいえる
ウクライナの中でユーロ入りを望むのは西部の人々であり、大多数のウクライナ人は明確な意思表示をしていない。民主主義の伝統も薄く、現状のウクライナは解体途上ではないか、というのが著者の読みだ
ロシアにとってウクライナ紛争とクリミア併合は、欧米からのイメージとは逆に巨人の復権とする。プーチン政権下で乳児死亡率が劇的に改善し、出生率が増加に転じていて、かつての国力が回復しつつあるのだ
ロシアの政治体制が著者が好むわけはないが、かの地では「権威主義的デモクラシー」が定着してしまっている。欧米型民主主義が万能と思うのは、欧米の傲慢であるとする

祖国フランスには、ドイツの暴走を止めるバランサーの役割を期待している
新自由主義的な前任者サルコジは論外として、現大統領オーランドもドイツの金融支配を打破しない点で、「ドイツ副首相とまで言い切ってしまう
ユーロに期待された、諸国民がそれぞれの価値を持ちうる保護貿易と、統一通貨のユーロの廃止(!)ないしはそれに匹敵する金融政策の転換につながるように働きかけるべきであり、銀行のお先棒を担ぐのはやめるべきだとする
中国に関しては、「経済成長の瓦解と大きな危機の寸前」にいるとする。他の論考では「軍事力についてもそれほどの存在ではない」として、空母を今さら購入しても唯一の空母同士の海戦を経験した日米には及ばないと見ているようだ
日本については深く扱っていないが、震災後の東北を取材して「日本人の伝統的社会文化の中心をなすさまざまなグループ――共同体、会社など――の間の水平の連帯関係」が機能しなくなった政治制度に代わって、地域の再建・復興を支えたとして、伝統文化が大切である好例として取り上げている
ドイツとの比較では長子存続という共通点を持ちつつも、「日本の文化は他人を傷つけないようにする、遠慮するという願望に取り憑かれている」「ドイツは同じ貿易黒字国でも、技術の面では日本に及ばない」とも。日本人への警告というサブタイトルに見合った内容ではないが、EUのイメージが一変する一書である
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【DVD】『デビルマン』

酷いもの見たさ その2


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東映 (2005-04-21)
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不動明(=伊崎央登)は、科学者の息子・飛鳥了(=伊崎右典)と幼馴染。怪物好きの了はなにかと問題を起こし、明がかばう関係だった。ある日、了は科学者の父が死んだとして明を実験室へ呼ぶ。そこでは、了の父(=本田博太郎)が寄生生命体・デーモンに合体された異形の姿となっていた。了もデーモンと合体したという告白に驚くが、直後に明もデーモンの寄生体をその身に受ける。しかし、明はデーモンにならず、人の心を残したデビルマンとなる

たしかに噂に違わぬ、凄い出来だった(苦笑)
原作を短い尺に落とし込もうとした影響で、ぶつ切りのシーンが続いてしまい、特に序盤が意味不明。主演の双子を中心に演技が酷く(この時点で芝居未経験、それを補うような演出的な工夫もない
日本なのにボブ・サップのキャスターが英語のニュースを流し続ける、ジンメン(人間時は船木誠勝)固い甲羅の部分をパンチされて息絶える、銃口を向けた警官隊が日本刀で簡単にやられる、追い詰められたデーモンたちがわざわざ撃たれるように出てきて死亡する(コニシキが万歳してそのまま死ぬとは思わなかった)などなど、まさに失笑を禁じえない場面が多かった
宇崎竜童・阿木燿子夫妻に出番が多い反面、小林幸子、的場浩司、キタロウなどなんだか豪華なカメオ出演があって、演技力の不均衡が目立った。なぜにこういうキャスティングになったのだろう
いっそ、どこかの事務所がごり押しで介入したほうが良かったかもしれない。夫婦で監督と脚本とか、某ガンダムシリーズを思い出させるが、限られた尺で何を見せるのか、撮りきる環境があるのか、という今の実写映画に続く問題がある。この映画から10年経って、どれぐらいマシになったろうか

たしかに酷かったのだけど、原作の精神は比較的守られていたのではないか
デーモン狩りに乗り出す人間たちは、無実の同胞をも血祭りに上げていく。魔王ゼノンなどの強敵も出てこないので、後半は原作のテーマである人間の持つ暗黒面、醜悪さへと焦点が当たる
ヒロインの美樹(=酒井彩名)がしっかり生首になっていたのは評価したい


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