『日本の深層文化』 森浩一



日本の深層文化 (ちくま新書)日本の深層文化 (ちくま新書)
(2009/07)
森 浩一

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古代の日本人はどんな生活をしていたのか。「粟」「野」「鹿」「猪」「鯨」をキーワードに日本の深層を探る
著者は日本考古学の権威で、同志社大学の顔とも言われた森浩一教授。本書では、稲作中心、西日本中心に語られがちな古代史に対し、見逃されてきた五つの要素から新しい可能性を見出していく
日本書紀、各国の風土記などの史書や遺跡から発掘された史料から推論していき、特に「鹿」の章では細かい発掘の話になって眠たくなってしまったが(失礼)、高度成長期に開発へ邁進している時代に行政や住人にかけあって遺跡を確保するなど、考古学の現場のことも知ることができる
いきなり本人の体験が語られるなど、とりとめのない話になっていて読みやすいとはいえないが、教科書で知ったのとは違う、日本の原風景を見えてくるはずだ

五つの章のうち、四つが食材で、それぞれ「米」とは違う存在感がある
は、古代では稲と双璧を為す穀物であって、日本各地に「粟野」など“粟”のつく地名、名字が残されている
「粟」は作付けそのものは悪くなかったものの、粒が細いせいで脱穀をする際の効率が悪く、徐々に稲作へシフトしていってしまう。それでも「粟田」という言葉があったほど、メジャーな穀物で律令にも粟による納税が認められていた
現代では、稗(ひえ)と共にグレードの低い食物のように伝えられているが、米の増産に成功する昭和までは、主要な穀物のひとつだったのだ
鹿は、古代の日本人にとって自然の象徴だった
鹿の肉はかならずしも美味しいとは言えず、食用というより角などの素材が薬用・儀礼用に珍重されていた。狩りの標的となるものの乱獲はタブーとされていて、貴人による狩猟はそれ自体が儀式となっていた
埴輪などから「鹿」は人間と共生する自然を表していて、人が鹿を従える構図に、人間社会が山野を開発していく様子が窺えるという
は、鹿と違って食材そのもの。古代には猪飼」と呼ばれる人々が飼育していて、ほぼ豚に近い形で食されていたという。仏教が伝来して、四足の食事は忌まれるようになったが、「猪」は“山の鯨”として別枠扱いをされていた
は字のごとく、大きい魚として認識され、食料として以外にも鯨油など全身が素材として活用されていた。肉食がタブーだった時代には、朝廷や武家たちにも珍重されていて、捕鯨の問題もこのような文化的見地から考えなくてはならないというのが著者の主張である

ひとつだけ食材ではない「野」とは、脈絡を得ないが「野」がつく地名の地域
古代では都のすぐ外の地域を「」と認識されていて、例えば京都の上京区にある北野天満宮の「北野」は、秀吉の山城開発までは都の北、洛外とされていた
大きなところでは、国名となった「上野」(群馬県)、「下野」(栃木県)。朝廷の権威が及ばない関東は、古代は貧しい地域だと思われがちだがそうでもない
古代日本の交通は北陸地方は海路だが、東海から奥州までは陸路が中心で、上野国は北陸、奥州、関東に通じる要所だった
実際、奥州、関東の報告されている人口、石高は高く、関東の豪族たちは多くの布を都にもたらしていた。その規模からすると、豪族たちは多くの奴婢を持っていたはずで、商売にも長じていたことになる
こうしたことから、古代の関東が野蛮な東人の国とするのは偏見であり、強力な指導者はいなかったものの、潜在的に豊饒な地域と見るべきだという
また「野」の地名は、“野蛮”な土地だからついたわけではなく、むしろ豊かな産物を出すからこそ付けられたというのが著者の持論だ
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【配信】『Gのレコンギスタ』 第4話「カットシー乱舞」

好きで武器を持っているのではない!


<第4話 カットシー乱舞>

アイーダによって海賊部隊に連れられたベルリたち。海賊たちの物の見方が飲み込めないベルリノレドラライアを人質にとられ、“天才”クリム・ニックにG-セルフを動かすように命じられる。一方、キャピタルではキャピタル・アーミーの華々しい式典が開かれ、デレンセン大尉はカットシー隊を率いて出撃。ベルリはアーミーと海賊部隊の戦闘に巻き込まれる

アイーダの回想が入り、徐々に事態が見えてきた
第2話で死んだカーヒル大尉は、放棄されたG-セルフを回収し、G-セルフをアイーダの愛機・アルケインとの同系統と認識していた。想像されたとおり、アイーダはカーヒルに恋愛感情あり! ベルリに対し、「海賊の法律で裁いてください」と取りつく島も無い
不思議なのは、G-セルフを出撃させた海賊部隊もラライア・マンディの正体を知らないことだ。キャピタル・アーミーは宇宙から来る勢力に向けて設立されたというから、ラライアはニュータイプな宇宙人なのだろうか
ローラとララァを合わせたような風貌には、何か意味があるはずだろう

キャピタル・アーミーの式典や、大陸間戦争という単語からは、ヴィクトリア朝、帝国主義たけなわの時代を連想させる
公式的にはターンエーの前の時代であることは間違いないのだけど、作品の持っている世界観は黒歴史から復興したベルエポックの時代から明らかに進んでいる。産業と戦争が両輪となって突き進んだ世界大戦前夜のようだ
アイーダによって宗教によって技術進歩が止まり、大陸間戦争のような時代錯誤が起きているという指摘があり、一方でベルリの母親は近頃のキャピタル・アーミーの動きは宗教のタヴーを犯すものだと批判する
ターンエーで過去の悲劇が黒歴史として封印されたように、RCの世界では宇宙世紀の悲劇を宗教的統制によって抑制されていたが、その権威が否定される啓蒙時代が再び訪れているのだ
非合理的なタガが外れるのは自然の成り行きだが、進歩の果ての悲劇は避けられるのか。ターンエーと同じ主題がここにも込められている


次回 【配信】『Gのレコンギスタ』 第5話「敵はキャピタル・アーミー」
前回 【配信】『Gのレコンギスタ』 第3話「モンテーロの圧力」

ガンダム Gのレコンギスタ  2(特装限定版) [Blu-ray]ガンダム Gのレコンギスタ 2(特装限定版) [Blu-ray]
(2015/01/28)
石井マーク、嶋村侑 他

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HG 1/144 グリモア (ガンダムGのレコンギスタ)HG 1/144 グリモア (ガンダムGのレコンギスタ)
(2014/10/25)
バンダイ

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『乾坤の夢』 下巻 津本陽

三傑シリーズ終結

乾坤の夢〈下〉 (文春文庫)乾坤の夢〈下〉 (文春文庫)
(1999/12)
津本 陽

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慶長14年、関ヶ原から15年を経て、徳川家康は打倒豊臣の兵を挙げる。方広寺の鐘の一件を口実に大坂城の豊臣秀頼へ、淀君の人質と関東への転封を求めるが、大坂方はこれを拒否。豊臣家の重臣として交渉にあたっていた片桐克元が更迭されると、これをきっかけに大軍を集め東上した。大坂方も真田幸村、後藤又兵衛などの牢人を集め10万の兵で迎え撃つ

いよいよ三傑シリーズも最終巻。大坂の陣である
豊臣家は65万石の身代ながら、秀吉の遺した莫大な遺産により多くの牢人衆を集めることができた
中には、上田城で二度も徳川軍を苦戦させた真田信繁(いわゆる幸村)、元黒田家の後藤基次、元宇喜多家の明石全澄などがいた。彼らは城を囲まれる前に東上する幕府軍を迎撃する策を掲げたが、淀君の乳母の子である大野治長によって籠城策がとられた
幕府軍は将軍・秀忠が関ヶ原の遅参を取り返そうと、兵士を落伍させながら東上していた。もし計画どおり、宇治から瀬田に出陣していたら戦況はどうなっていただろう
家康も大坂方の積極策を警戒して、後に『甲陽軍艦』を著す小幡景憲を軍師として潜入させ、籠城戦へ仕向けさせたという
作者いわく「戦国最後のカリスマ」の家康を前に、相手になる武将は残っていなかったのだ

家康と戦える“将”がいなかったとはいえ、大坂方はかなり健闘した
冬の陣の攻城戦では、激烈な射撃戦が展開される。幕府軍は大量の大筒で備えていたが、堅固な大坂城と出城は落ちず膠着状態に陥った
しかし大坂方も兵糧は充分でも、弾薬に事欠くようになり、長期戦を避けたい家康と和議を結ぶ。淀君を中心に大坂方は、本当に和平が成立したと半ば信じてしまったことから、家康に大坂城の堀をほとんど埋められてしまう
小説では大坂方の訴えに対して、本多正信・正純親子を使った巧妙な猿芝居が続けられ、家康が中止を命じる前に埋め終えるという茶番が描かれる。いかにも史実でありえそうな光景だ
夏の陣、滅亡を覚悟した大坂方は、遅まきながら結束が固め、捨て身の攻勢に出る。真田信繁(幸村)、毛利勝永、大野治房(治長の弟)の奮戦により、家康・秀忠父子の本陣は大混乱、特に家康の旗本衆は散り散りに逃亡してしまった
仕方なく、家康は供一人を連れて山の谷間に隠れるところにまで追い込まれる。あの強い三河武士たちは関東転封で失われたのだろうか
旗本勢は総勢の人数は多いものの、戦闘単位が小さいので大軍勢同士の合戦では分が悪いということもあるようだが(秀忠の側は井伊直孝を中心に立て直している)

本作を総括すると、家康が古狸として完成しているため、その活躍は相手を地味に陥れていく謀略・政治ドラマが中心となった
政治家としては派手なパフォーマンスを好む秀吉と異なり、武士の価値観を重んじ、部下に対して律儀・潔さを褒め、卑怯・怠惰を罰っしていく
主君・大谷吉継の首を埋めた湯浅五助を討ち取った藤堂高刑に、吉継の首の場所を聞いたところ、五助との約束だと断られると感心し、自らの槍と刀を与えるエピソードは、信長、秀吉からは生まれなかっただろう
とはいえ、かつてのイラちは直っておらず、関ヶ原の戦場でぶつかった旗本に刀を振り上げたり、本多忠勝の子・忠朝に「父に似ない愚物」と罵ったりと、まったく隙のない人間でもない。そうした性格の弱点が政治に表面化しない、意志の強さが250年の覇権を作りしめた由縁なのだろう
『夢のまた夢』同様、主役が天下人なので派手なアクションはないが、その周辺の人々、前線で戦う武将などはマイナーな逸話が取り上げられていて、泗川の戦い、関ヶ原、大坂の陣では迫真の戦場が描かれる。筋において小説的な楽しみは少ないが、戦国時代の終焉を飾るに相応しい群像劇だった


前回 『乾坤の夢』 中巻

NHK大河ドラマ 葵 徳川三代 完全版 第壱集 [DVD]NHK大河ドラマ 葵 徳川三代 完全版 第壱集 [DVD]
(2008/10/24)
津川雅彦、西田敏行 他

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【配信】『Gのレコンギスタ』 第3話「モンテーロの圧力」

G-セルフというものは、奪われつつあります


<第3話 モンテーロの圧力>

G-セルフアイーダ、ラライア・マンディは、クンパ・ルシータ大佐によって調査部に引き取られた。アイーダに会いたくて仕方ないベルリは、運行長官である母親を介して大佐のもとを訪れる。一方、カーヒル大尉の死に衝撃を受ける海賊部隊に、謎の青年クリム・ニックが到着、青いMSモンテーロでアイーダ奪還へと向かうのだった

少々、説明台詞の多さが気にかかる回だった
いつもベルリに引っついて回るノレドは、距離は近いが恋人未満。というか、ベルリから女性として見られていないようで、食い下がっても「黙れええ」で済まされる
ベルリの弾き方も決然としているから、いわゆる草食男子ではない。外柔内剛で、けっこう印象が変わった
襲撃騒ぎの中、ベルリたちとアイーダ、ラライアの合流の仕方、G-セルフの乗っ取り方が強引ながら、大佐がわざと逃がしたフリがあれば、まあ整合性は取れている。捕虜を連れ出して陣営をまたぐには、多少の飛躍、偶然が必要だ
しかし説明台詞の多さは、状況の複雑さだけで納得できない。視聴者の感覚を読み間違えたのではないだろうか。コンテの出来がいいから各場面が見た目で把握でき、説明台詞がいらなかったという、なんとも皮肉な話である

モンテーロのパイロット、クリム・ニックは、ベルリ同様の天才くんで、ナルシズムはそれ以上!
「落ちろ、蚊トンボ!」発言の直後にデレンセン大尉にいっぱい食わせられるあたり、偽天才の疑いもなくもないが(苦笑)、アメリア大統領の息子という経歴から、Gレコの世界を大いに振り回してくれそうだ
今回で、国籍不明の海賊部隊が事実上、アメリア国の独立部隊ではないか、と発覚し、クリムの「タワーはアメリアの拠点になる」という台詞から、キャピタルとアメリアの戦争になりそうな見通しが立ってしまった
となると、問題はアイーダが「誰にとっての姫」かということ。さすがにこのまま、アメリアの傀儡でしたということもないだろう
そのほか、デレンセン大尉が、有名な志願兵ポスターのパロディ「I WANT YOU」を引き裂いて出撃するなど、歴史から引用されたネタもあり。こういうのは好物です


次回 【配信】『Gのレコンギスタ』 第4話「カットシー乱舞」
前回 【配信】『Gのレコンギスタ』 第1話「謎のモビルスーツ」 第2話「G-セルフ起動」

【Amazon.co.jp限定】ガンダム Gのレコンギスタ  1(特装限定版) (全ディスク収納オリジナルデジパック付) [Blu-ray]【Amazon.co.jp限定】ガンダム Gのレコンギスタ 1(特装限定版) (全ディスク収納オリジナルデジパック付) [Blu-ray]
(2014/12/25)
石井マーク、嶋村侑 他

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HG 1/144 ガンダム G-セルフ (大気圏用パック装備型) (ガンダムGのレコンギスタ)HG 1/144 ガンダム G-セルフ (大気圏用パック装備型) (ガンダムGのレコンギスタ)
(2014/09/20)
バンダイ

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『ヒットメーカーの寿命―阿久悠に見る可能性と限界―』 高澤秀次

最先端から時代遅れの男まで


ヒットメーカーの寿命―阿久悠に見る可能性と限界―ヒットメーカーの寿命―阿久悠に見る可能性と限界―
(2008/12/19)
高澤 秀次

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多くのアイドル、スターを発掘し、数え切れないヒット曲を送り出した作詞家、阿久悠。昭和歌謡にもたらした新しい可能性とその限界を探る
本書は阿久悠の著作や対談、ヒット曲の歌詞から、いかに市場=視聴者の要求を読んだか、時代の思潮に乗ったものだったかを論じている
山本リンダの『どうにも止まらない』ピンク・レディーの『UFO』から歌の世界で定番だった「忍ぶ女性」から、挑戦的で活発な新しい女性像を提示し、尾崎紀世彦の『また逢う日まで』で現代人のクールな別れを描き、沢田研二の楽曲で没落していく男の意地を語った、とする分析は鋭い
ただし、評論としては阿久悠に寄り添い過ぎていて、その限界に対しては語りきれておらず、デジタル化した環境や視聴者に押しつけている
今の音楽を小室哲哉に集約して語り呪う姿勢も残念で、最後の社会批評が著者が嫌う「自分語り」を終わっているのが皮肉だ

作者自身は阿久悠の限界を語りそこなっているが、それまで分析された内容でいろいろと推測できる
歌謡曲の世界では、男の作詞家は女の気持ちを想像、あるいは男の望む「おんなごころ」を描いてきたが、阿久悠は高まるウーマンパワーを読み取って従来と間逆な「前向きな女性」を生み出した
しかし女性自身が楽曲を作られてしまうと、男たちの作った「おんなごころ」の世界は色褪せ、阿久悠もそれを免れない。女性のシンガーソングライターにぶっちゃけられたら、男に何が言えるだろう
また90年代に入ると冷戦崩壊、社会のネット化で世界の距離が縮まり、アメリカやヨーロッパの流行がリアルタイムで視聴者を刺激してくる。これもまた、流行の洋楽をパロディし日本語の歌詞を載せてきた歌謡曲を動揺させた
TMネットワーク直撃世代からすると、小室哲哉は90年代に想像された未来(決して明るくない)を聴かせてくれたわけであり、若い世代に歌謡曲はテンポが遅過ぎた
とはいえ、歌謡曲の精神が滅んでしまったわけではない。テレビを媒介に国民的歌謡曲が生まれ続けることはないしても、アニソンやアイドルの歌に詩を聞かせる流れはあるし、由紀さおりがアメリカ経由で再評価されたり、たまに歌謡曲のカバーがヒットしたりする
近づき過ぎたゆえのアメリカへの幻滅もあるし、洋楽のリズムに違和を感じる層からすれば歌謡曲の需要はあるはずだ
阿久悠と作者が嘆く、90年代以降の「自分語り」は、自分が書いて自分で唄うシンガーソングライターが多過ぎるゆえで、歌手と作曲家の関係が見直されれば、お互いがお互いの意図を想像しあう歌謡曲が再生されることだろう
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『乾坤の夢』 中巻 津本陽

江戸は「の」の字型の都市開発で、100万人都市となった。ふむふむ

乾坤の夢〈中〉 (文春文庫)乾坤の夢〈中〉 (文春文庫)
(1999/12)
津本 陽

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関ヶ原の戦いは、東軍の勝利に終わった。しかし、いまだ毛利家3万の軍勢は健在で、輝元が秀頼を擁して大坂城に籠もればどう転ぶか分からない。家康は輝元に穏当な使者を送って開城させた上で、西軍の諸大名に厳しい処分を下していく。ただし豊臣家に対しては、征夷大将軍の宣下を受けつつも臣従の姿勢を続けるのだった

中巻は、関ヶ原の戦いから大坂の陣までの15年
冒頭は関ヶ原の掃討戦だが、まだ東軍の勝利が決していたわけではなかった。吉川広家が中立化した毛利の軍勢は好戦的な毛利秀元に率いられていて、秀元は大坂城と秀頼を頼みにもう一戦しようとする
しかし輝元は家康の低姿勢から、本領安堵の約束を信じ大坂城を開城してしまう。結果、怖いものがなくなった家康は、毛利家120万石を36万石に減封するのだ
さて、天下人としての地位を確立した家康は、関ヶ原前の質素倹約から打って変わって、諸大名に大普請を課す。徳川家の拠点となる伏見城、二条城、彦根城、名古屋城などの造営に、江戸城、駿府城、姫路城などを大規模改修した。駿府城の普請には、豊臣家にも賦課されて、家康は臣従の姿勢を見せつつも権力を既成事実化していくのだ
江戸城の改築から諸大名の人質と参勤により、江戸の開発も本格化、朱印船による海外貿易も重視して、従来のポルトガル、スペインからオランダ、イギリスへと傾斜していく
本巻は関ヶ原後の“戦間期”を掘り下げていて、徳川家内部の本多正信・正純父子と大久保忠隣・大久保長安の暗闘、豊臣家に対する謀略他、マイナーなエピソードも満載だ

なぜ家康は豊臣家滅亡に15年かけたのか
家康は関ヶ原の時点で57歳と、当時としては高齢であり、あまり時間はかけられないはずである
理由の一つは、豊臣恩顧の武将の存在加藤清正は九州の中心に位置していたし、豊臣家と姻戚関係にある福島正則も関ヶ原の勝利で広島49万石を有していた
家康自身も秀吉に後事を託された“大老”であり、遺言である秀頼と孫の千姫を婚姻を実現した手前、表立っての討伐には名分が立たない
家康の次男にして越前75万石をもつ秀康が、秀頼に肩入れしている状況はかなり頭が痛かっただろう
大坂の陣までの15年で、大名の代替わりが進んでいく。1607年にその秀康が早世し、1611年に浅野長政、加藤清正が、13年に池田輝政、14年に前田利長が死去する。福島正則は健在だったが、清正の死は大きかったろう
仮に自分が死んでも、秀忠は豊臣家に対してなんら義理立てする筋合いがないと考えてもいただろう(千姫はいるけど…)
家康もただ人の死を待っていたわけではない。方広寺大仏殿など豊臣家に様々な普請をさせ、膨大な遺産を消費させている。本巻では、実家に援助を頼んだ千姫に対し、「なんで秀吉の大仏に徳川の金を使わねばならぬのか」と自分で勧めておいて跳ね除ける、狸ぶり(笑)が描かれている


次巻 『乾坤の夢』 下巻
前巻 『乾坤の夢』 上巻
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『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』 水野和夫

設備投資依存の景気回復はすぐ行き詰るって……


人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか (日経ビジネス人文庫)人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか (日経ビジネス人文庫)
(2013/07/02)
水野 和夫

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グローバル化は世界をどう変えたのか。気鋭のアナリストが変わった世界の原則を明らかにする
著者は民主党政権のブレーンとも言われた、水野和夫。冷戦以後、急速に進展したグローバル経済の本質を解き、なぜ、従来の経済政策が功を奏さないのかを、丁寧に分析していく
アメリカの「金融帝国」の解説は、時事的に懐かしいものとなっているが(それでも読む意味はある)、金融経済が実物経済より優位に立つ理由、アメリカ、中国、ロシアらの「帝国化」の動き、ネット時代の景気変動、そして、景気回復しても懐が暖まらない訳を明確にしてくれる
初出が2007年であるが、現在の安倍政権も自民党の伝統的政策、輸出増による経済成長を目指してしまっているので、本書の指摘は十二分に通用してしまうだろう

金融経済が実物経済を振り回せる理由は、ひとつにグリーンスパンも指摘していたように冷戦終結で途上国の富裕層、特にオイルマネーが先進国の証券市場へなだれこんだこと、そして、IT技術の進化によりいつどこでも証券市場が開いている限り、参加できるようになったこと
アメリカでは経済成長が実物で見込めなくなったため、「強いドル政策」によって自国の資産価値を高め、外国からの投資を呼び込む「金融帝国」となることで成長を達成した
リーマンショックの失敗で徐々に実物経済への揺れ戻しはあったものの、先進国では株価の変動が景気とリンクしていて、富裕層が株で儲けると個人消費が増える実態があり、金融経済の優勢は変わらない
比較的高い経済成長を遂げても、一部の人間以外賃金が上がらないのはアメリカでも同じで、貯金せず投資に熱くなる人が多いのも他に収入を上げる手段がなかったからだろう

グローバル経済における先進国は、二つの経済圏に分かれる。新興国の成長とリンクできるグローバル経済圏と、国内でしか循環できないドメスティック経済圏
BRIC.sに代表される新興国は、従来の「近代」成長モデルが通用するから、それと付き合える業界、企業は、「近代」モデルの生活でさらなる成長が目指せる。しかし、国内向けの市場しか持てない業界では、努力しても成長は見込めず、従来の政策、あるいはグローバル化の政策が裏目に出てしまう
バスやタクシー業界、外食産業といった国内市場のみをターゲットとする業界に、自由競争、規制緩和を極めた結果、労基法を守らないブラック企業を生み、過労による人身事故を起こしたことは記憶に新しい
こうした成長できる業界とできない業界がくっきり分かれることがグローバル時代の特徴で、成長できない「経済圏」を著者は「新中世と呼ぶ
日本人の約七割以上の人がこのドメスティック経済圏=「新中世」に属し、その中では賃金が極端に抑えられるので、経済格差が大きくなる。経済の格差は子供の学力に直結し、階層の固定化につながる。「新中世」を本当の中世にしないためにも、教育の機会均等など成長が低くても安定した施策が求められるのだ


関連記事 『波乱の時代 わが半生とFRB』 下巻
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【配信】『Gのレコンギスタ』 第1話「謎のモビルスーツ」 第2話「G-セルフ起動!」

『∀ガンダム』からは15年、『リーンの翼』からは9年ぶりに富野アニメが帰ってきた!!!
断続的に入る新作の情報に、胸躍らせては立ち消えるのを見てきたファンにとって、これほど嬉しいことはない
てなわけで、古い作品ばかり触る当ブログも、『Gのレコンギスタ』を追いかけさせて頂きます
バンダイチャンネルでの視聴となるので、テレビより2週遅れとなるのはご容赦あれ

『Gのレコンギスタ』の舞台は、宇宙世紀から100年以上過ぎたとおぼしきリギルド・センチュリー(R.C.)。富野ガンダムの系譜からは、おそらくVガンダムと∀ガンダムの間の年代となり、地球の文明が荒廃させた黒歴史の前、科学技術的には絶頂の時代になるのではないだろうか
宇宙と地上を「キャピタル・タワー」=宇宙軌道エレベーターがつなぎ、フォトン・バッテリーと呼ばれるエネルギーを地球に流し込むことによって、原子力に依存しない未来世界である


<第1話 謎のモビルスーツ>

冒頭で、謎のガンダムと軍用MSの格闘が! 間違って二話から観てしまったと思ったが、これで正解。キャピタルのデレンセン大尉は上空から落ちるロランをいや、謎の少女を捕虜とする
キャピタルタワーを守護するキャピタル・ガードの候補生、ベルリ・ゼアムは、宇宙の実習を受けるため、同じ学生たちを宇宙へ上がる。同じ乗り物“クラウン”にその少女を乗り合わせていたのだが、そこに宇宙海賊が襲来。謎のガンダム一機で、クラウンをジャックしようとした
ベルリと同級生のルインは、工業用MSレクトンを出動させるが……

2クールであるからか、∀よりギアが入るのが早い。開始早々に主役機が映るのは、悪名高きVガンの1話以来ではないだろうか
が、すぐ主人公の視点に入っていくので、混乱はしない
ベルリは飛び級でガード候補生となった“出来すぎ君”。スペックが高い人は失敗の経験が少ないので、工業用MSでテロリストに戦いを挑むのも合点はいく。若年ならばなおのこと恐れ知らず
ただこうした能力者が感情移入の対象になるかという問題はあって、いくらか隙は作って欲しいところ。鍵は女好きとなるのだろうか
ベルリの教官であるデレンセン大尉は、捕らえた女海賊アイーダにビンタするなど、女性への暴力が強調される。それは彼の性格のみならず、所属する組織の性質を象徴していることだろう
主役機が1話で二回落ちるというのに、少し不吉さを覚えたが、これから挽回してくれるのでしょう


<第2話 G-セルフ起動>

海賊騒動から地球に戻ったベルリたちは、セントフラワー学園に戻った。デレンセン大尉の所属する新部隊キャピタル・アーミーは、まだ組織が整っていないとして学園の施設を間借りし、女海賊アイーダ謎の少女ラライア・マンディ謎の機体G-セルフを隠蔽する
タワーの運行長官であるベルリの母親スコード教の法王調査部隊のルシータ大佐ら有力者が集まったパーティが始まる中、アイーダ救出にカーヒル大尉の海賊部隊が襲撃をかける!

ベルリくんは、単に“出来すぎ君”だけでなく、タワーの運行長官の御曹司だった!
主人公がここまで特権階級というのは、ガンダム史上でも希である。せいぜい、ガンダムの技術者止まりで、UCのバナージは例外的存在なのだ
年上の同級生ルイン・リーは首席ながら、クンダラ(下層階級)の出であり、ベルリとはグローバルな時代の階級対立が反映されそうだ
アイーダの存在からベルリくんの寝返りは確定的であり、そうなれば母親である運行長官とは母子相克の展開が想定される。果たしていかなる結末が待っていることやら
ベルリとカーヒル大尉との戦いは悲劇的な結末をたどった。まさか二話にして、こんな展開になろうとは(驚)。2クールの富野恐るべし
アイーダにとって大事な人物を、ベルリは彼女を庇うために倒したとしか言えない。主人公とヒロインに深い深い溝を残したあとだと、EDのラインダンスがシュールである


富野作品はやはり1話1話が濃い。ひとつの記事で全てに触れられない
ベルリのいるキャピタル・テリトリィとは、タワーを中心に繁栄する地域であり、現在でいうとちょうど南米一帯にあたる
南米というと、ガンダム史でいえば連邦軍のジャブローと重なり、まさにG(重力)に引かれるものの牙城
世界史でいえば、スペイン・ポルトガルに征服された植民地帝国があり、そこから征服者と現地民の混血が進み、諸国が独立した経緯がある
その独立に関わったのは、モンロー主義を唱えるアメリカ。作中では「アメリア」が北米を形成し海賊部隊と関わっているようで、世界をキャピタルの一元的世界から解放する役割を果たすのだろうか
レコンギスタが誰による何を取り戻すものなのか。決めつけずに見るとしよう


次回 【配信】『Gのレコンギスタ』 第3話「モンテーロの圧力」

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(2014/12/25)
石井マーク、嶋村侑 他

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『乾坤の夢』 上巻 津本陽

皆既日食をガラケーで撮るのは無理

乾坤の夢〈上〉 (文春文庫)乾坤の夢〈上〉 (文春文庫)
(1999/12)
津本 陽

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慶長三年8月、天下人・豊臣秀吉は死んだ。後事を受けた徳川家康は、朝鮮に残留する日本軍にその死を伏せたまま、撤退させる必要があった。無事帰国した諸大名は、石田三成ら吏僚派、加藤清正ら武闘派に分かれて対立し、家康はそれを利用して勢力の伸張をはかる。そして、豊臣政権の大老に留まらず天下人の地位を狙い、石田三成の挙兵を予想したうえでの上杉討伐で乾坤一擲の勝負に出た

『夢のまた夢』の続編、三傑シリーズの最終部はもちろん、徳川家康が主役だ
冒頭は朝鮮出兵、慶長の役の末尾を飾る泗川の戦いから。秀吉の死を知ってか知らずか、9月に明・朝鮮連合軍の大攻勢が始まり、島津義弘の守る泗川倭城には数万の大軍が押し寄せた。対する島津軍はたったの七千
力任せに攻めてくる敵軍に対し、島津義弘は逸る味方を統制し、敵火薬庫の爆破をきっかけに一気に攻勢へ転じる。「鬼石蔓子」の名を明国にまで広めた、この一戦の描写は迫真で、これだけでも読む値打ちはある
派手な序盤に比べ、本編である関ヶ原までが地味だ(苦笑)
言い尽くされた題材であるせいか、史料を押さえつつ淡々と進む。意外なのは、前田利家が家康を刺し違えるほどの覚悟を持っていたというところぐらいか
むしろ、今まで語られなかった関ヶ原以後に作家の興味が向いているようだ

前作、前々作のように、武将のリアルな方言は健在
広島弁で不思議な存在感を誇るのが、毛利家にありながら東軍に通じた吉川広家と輝元の名代として出陣した毛利秀元だ
吉川広家は朝鮮でも活躍した武闘派で、毛利家を西軍に導いた安国寺恵瓊に反発し、黒田長政と結んで中立政策をとる
名代として数万の大軍を率いる毛利秀元は、人間を軽々と担ぎ上げる怪力の持ち主。石田三成の狼煙を受けて南宮山を下ろうとすると、吉川広家のその軍勢をもって足止めされてしまう
催促に来た長束正家の使者に対し、弁当を食べていると言い訳したため、宰相殿の空弁当」という逸話を残してしまった
吉川広家は傍観するだけで本領安堵という約束を、黒田長政や家康の家臣と誓書を交わしたものの、家康本人とは確認しなかった。結果、毛利家は本領安堵どころか、二カ国三十七万石への大減封となってしまう
作者はこの甘さを、戦国武将の猜疑心を失った二代目大名と評する。西軍には義将はいても、家康に匹敵する戦国魂をもった者がいなかったのだ


次巻 『乾坤の夢』 中巻

関連記事 『夢のまた夢』 第1巻
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中書島駅周辺をちょっと散策

免許の更新に中書島(京阪)まで来たが、免許試験所へのバスは1時間一本で、次は50分後!!
読書タイムにしてもいいのだけど、少しぶらつくことにした

市バスから京阪の踏み切りをまたいで竹田街道を東に進むと、公園があった

伏見港公園

川も流れていないのに伏見“港”公園?
昔の伏見は河川が交わる沼沢地であり、桂川、宇治川、木津川が巨椋池という巨大な池に流れ込んでいた
そのため、ここには大坂と京都をつなぐ水運の拠点として河川港があったのだ
秀吉による伏見開発(聚楽第、伏見城)によって治水が進められ、交通の便が伏見に集中することから栄え始め、角倉了以が高瀬川とつなげたことからさらに繁栄をきわめた
鉄道が整備され始めて徐々に影響力を落としたが、なんと戦後の1950年代まで存在していた

伏見港2
伏見港3
伏見港4

特に公園には史跡があるわけでもなく(船の模型ぐらい?)、スポーツ施設となっていた
公社が天下り公団くさいのが微妙だが、人がまばらな分、読書したり和むポイントとして悪くなさそうだ

きょうばし

京阪の京橋駅はもっと大阪寄りなのに、ここにもきょうばし
京都の橋だから、「きょうばし」なんだろうけど
かつての往時を偲ばせるために遺されたようだ

中書島散策 018

あいにくの雨空だが、柳の並木は風情があるわあ

中書島散策 021

舟遊びのサービスもあるようで。ウラヤマシス
竹田街道をさらに進むと、長州藩邸跡とか伏見奉行所跡とか、あるそうだけどバスの時間が近いのでここまで
京都は南へ行くほど、工業団地とかが増えてしまうんだけど、伏見あたりだと風情があってよろしおすわ
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