『ウルトラ・ダラー』 手嶋龍一

これも『リーン』(旧)を追い抜いてしまった・・・

ウルトラ・ダラー (新潮文庫)ウルトラ・ダラー (新潮文庫)
(2007/11)
手嶋 龍一

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2002年、アイルランドの首都ダブリンで偽ドル札が摘発された。ほぼ本物に近いという贋札は、「ウルトラ・ダラー」と呼ばれることになる。表向きはBBCのスタッフをしている英国情報員スティーブン・ブラッドレーは、事件の真相を追って日本、アメリカ、フランス、ウクライナと世界中を駆けめぐる

1989年に発見されたという、精巧な偽ドル札「スーパーノートを下敷きにしたスパイ小説(解説の佐藤優は「インテリジェンス小説」と呼ぶ)
贋札作りの犯人は最初から北朝鮮とされていて、犯人捜しの要素は薄い。むしろ、その証拠を固めながら、それに関わる国際環境、情報戦の実際を見せることに主眼が置かれている
小説のほとんどは、細かい情報のやりとり、駆け引きで埋められていると言っていい。諜報員の任務はド派手な工作活動ではなく、地味な情報収集がメインなのだ
こうした外交、情報収集の現場における、ウンチクがここぞと散りばめられていて、さすがは敏腕ジャーナリストといったところ。もう、ウンチクを吐き出すために小説があるといわんばかりに知識を露出させている

作者もネタが地味なことをよく理解しているのか、各所にベタな要素を盛り込んでいるのが微笑ましい
主人公スティーブはイギリス人ながら日本好きの御曹司で、日本の住家には馴染みのおばさんに面倒みてもらうという、「坊ちゃん」な生活ぶりで、読者の親近感を誘う設定になっている
また、篠笛の師匠、官房副長官、シークレット・サービス主任捜査官など女性登場人物はすべて美人揃い(!)で、師匠とスティーブはいい仲だったりワンマン社長と外交官夫人の不倫なんていう色恋ネタも用意されている
まるでシリーズ化を意図したのではないかという、念の入った人物設定なのだ。フォーサイスやトム・クランシーなど外国のミステリーを意識したのだろうか
ただ、こうした涙ぐましい工夫が上手くいっているかというと、それは怪しい。サービスで入れたコミカルなシーンが浮いてしまっているところもある
全体としても最初に犯人が分かっているから、盛り上がる筋にはならないのが痛い。意外な真相という部分も、ちょっとした国際通(!?)なら想定の範囲内だろう
最後のクライマックスがああならば、スティーブと麻子の心理描写を積み上げて欲しい(やりすぎると、インテリジェンス小説からは外れるかもしれないが)
作者が不慣れさのためか、いろいろ手を出しすぎて、ドラマとしては突き抜けない作品に止まっている

さて、この本で問題になっているのは、「スーパーノート」が本当に北朝鮮製だったかということ
「ウルトラ・ダラー」に対する反証として、『北朝鮮VS.アメリカ―「偽米ドル」事件と大国のパワー・ゲーム』(ちくま新書)という本が出ている
まだ、未読なので詳しいことは分からないが、ドイツの新聞記者の証言から北朝鮮で作られたものではなく、CIAの陰謀である説を唱えているらしい。北朝鮮の技術では、これほど精巧な物は作れないという話もある
ただ、この新書の論理も北朝鮮の反論と被るものである(そもそも「ウルトラ・ダラー」は小説に過ぎない・・・)
CIAの工作ならいずれ文書で明らかになりそうだが、真相が分かるのはいつの日だろう

北朝鮮VS.アメリカ―「偽米ドル」事件と大国のパワー・ゲーム (ちくま新書)北朝鮮VS.アメリカ―「偽米ドル」事件と大国のパワー・ゲーム (ちくま新書)
(2008/01)
原田 武夫

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【DVD】『陸軍中野学校 密命』

シリーズ4作目

陸軍中野学校 密命 [DVD]陸軍中野学校 密命 [DVD]
(2007/12/21)
市川雷蔵.高田美和.野際陽子.山形勲

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中国で活動中、椎名次郎(=市川雷蔵)は国民党のスパイ容疑で日本の憲兵隊に捕まってしまった。全く見覚えのない次郎だったが、日本に護送され、憲兵の鬼の拷問を受けることになる。そして、同じ牢屋の中には、なぜか元外相高倉(=山形勲)が入れられていた。次郎は体が弱った高倉の面倒を見、その信頼を得ていくが・・・

序盤の絵に書いたような主人公の転落には、大笑い。もちろんこれには裏があって、今回の任務は日本国内に潜伏したイギリス諜報員“キャッツ・アイ”を探ること
敵に近づくためにまず味方から欺くという芝居なのだ(本当は知らない方が面白いけど、DVDの背表紙に堂々と書いてあるんだよ・・・)
時代は昭和15年夏で、日米開戦が近いという状況下。ジャズ、ダンスなどの英米を象徴する文化の規制や、戦時を意識した模擬防空管制親米派をつけねらう右翼など当時の政情が色濃く反映されている
元外相をスパイするというのは、吉田茂や鳩山一郎を監視したヨハンセン工作が元ネタかな?

もともとブレの少ない椎名次郎だが、4作目ともなるとスパイとして完成されてきたのか、任務のためにはいかなる手段も厭わない冷酷さを各所で見せつけてくる
憎らしいほど自然に人の手の内に潜り込み、しれっとした顔で女性の好意をも利用してしまう。もう一流の悪漢、トリックスターといっていい
中野学校の後輩狩谷(=山下洵一郎)が熱血漢なのと比較すると、その冷徹は際だつ。ハリウッドのギャング映画とはまた違ったハードボイルドなのだ
この映画で一番の注目は、怪しげな男爵夫人を演じた野際陽子だろう。存在感からは実質ヒロイン格といっていい
アナウンサーから女優デビューしたまもないからか、どぎつい役ではあるけれど、それが嵌る美貌の持ち主なんだなあ
しかし、野際さんのキャリアは凄いなあ。まさか、市川雷蔵と共演しているとは思わなかったぜ(笑)

作品全体としては、序中盤は丁寧な作りでストーリーが展開していくが、尺の都合も相まってかすべての手がかりが消えてからの打開の仕方が強引すぎたのが残念だった。この内容で1時間30分は短すぎる
視聴者はあの外人のしゃべりは胡散臭い(笑)と当たりはついても、中野学校視点からはヒントがないからどうしても唐突に見える。というか、あの状態で分かっても椎名次郎は普通に殺されますって!
現代人はキャッツアイ=女性と考えてしまうから、中盤までの野際さんはいい陽動にはなっていたんけどなあ


次作 【DVD】『陸軍中野学校 開戦前夜』
前作 【DVD】『陸軍中野学校 竜三号指令』
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『海の都の物語』 1巻~2巻 塩野七生

『リーンの翼』(旧)より、こっちが早く読み進んでしまった

海の都の物語〈1〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)海の都の物語〈1〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)
(2009/05/28)
塩野 七生

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海の都の物語〈2〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)海の都の物語〈2〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)
(2009/05/28)
塩野 七生

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ローマ帝国崩壊からナポレオンに征服されるまで生きのびた、“千年共和国”ヴェネツィアの通史
一巻はヴェネツィア誕生から“地中海の覇者”となる第4次十字軍まで。2巻は十字軍国家崩壊後の混迷期と共和国の国体を決定づける改革とそれに対する反政府運動を扱う
ヴェネツィア共和国に特徴づけられるのは、何よりも旺盛な団結力
ゲルマンの侵攻から干潟に避難したことから始まって、人の住めないところを自力で切り開いた歴史は、強い共同体意識を生み出す。そして天然資源が皆無なことから、早くから東地中海での交易に特化し、簿記や航海技術などで他国の大きな差をつけることに成功した
そうしてつけた力を分散させないことがヴェネツィアの強みで、共和国が一体となって交易の特権を目指し、伝統ある商家は貴族となって共同体の保全に力を尽くす。文字どおり、皆が一人のために一人が皆のために支え合う
そして、このバランスを維持するために時には獲得した領土を捨てることは厭わない
著者も指摘するように、ヴェネツィアは単に都市国家であるだけではなく、一つの会社のごとしなのだ。商人たちは独立心を持ちつつも、会社員のように共同体の伝統に沿って行動する
ナナミンは商社に喩えたが、僕は大手の広告代理店を想像した

ヴェネツィアと高度成長期の日本を比較すると面白い
ヴェネツィアは中継貿易、日本は加工貿易で経済を成り立たせていて、内輪の対立は薄い
主な喧嘩を外でやっている分、内ではともに伝統と和を重んじる。ヴェネツィアの意志決定は必ず複数者の談合で決まる!
またヴェネツィアが直接住民の声を聞く市民集会から、世襲貴族と官僚による議会制に移行してから政情が安定し、全盛期を迎えるというから面白い。政治と経済のプロ化が効率を良くしたというのだ
こうなると権力を奪われた市民が怒りそうだが、それで反乱が起こらないのがヴェネツィア。おそらくは元が同じ商人であり、市民と貴族の間に他国ほど階級差がなかったからだろう。階級社会でないところも日本との共通点だ
唯一絶対の違いは、市民の国防意識が高いところだろうか。まあ、時代と状況、必要性が大きく違うわけだけど・・・

2巻まで読んだところ、ナナミンの史観は『ローマ人の物語』となんら変わりがないことに驚く。この頃の延長線に『ローマ人の物語』があるというぐらい一貫性がある
ヴェネツィアのバランスを愛でるところは、ローマのそれを愛でるのと変わらない。イデオロギーより俗っぽくても実質を重んじる保守志向だ
彼女のローマ愛というのは、ルネサンス人が夢見た古代ローマの栄光そのままなのかもしれない。実際の古代ローマは周辺の文明により野蛮であっても、キリスト教社会のルネサンス人にとって見れば古代ローマは光り輝いているのである
『ローマ人の物語』「ルネサンス人から見たローマ人の物語」だと考えると分かりやすい

次巻 『海の都の物語』3~4巻
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【DVD】『陸軍中野学校 竜三号指令』

前回は案外だったが・・・

陸軍中野学校 竜三号指令 [DVD]陸軍中野学校 竜三号指令 [DVD]
(2007/12/21)
市川雷蔵.安田道代.松尾嘉代.滝田祐介

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日中戦争のさなか、和平工作に出かけた陸軍佐官が暗殺された。その裏には講和を阻止せんとする欧米のスパイ組織があるとして、椎名次郎(=市川雷蔵)はその調査のため上海の特務機関に派遣されることに。現地の情報で、汪兆銘派の要人張宇源(=松村達雄)をマークすることになるが・・・

今回はちゃんと中国・上海を舞台にしたスパイ映画に仕上がっていて、中野学校の名にふさわしいスケール感があった
演出的にもちゃんと英語、中国語が使い分けられており、セットも当時の上海を意識して組まれている。決して満足のいく予算が投入されたとは思えないが(笑)、そこは白黒の良さ。いい意味でごまかしが効いている
題材のわりに圧倒的に尺が短いのは相変わらずだが、前作よりは遥かにスリリングな展開を見せる。製作者がその気になれば、ここまで作れるわけなのだ
『兵隊やくざ』でも思ったが、戦争の記憶が風化していない時代に日中戦争を題材にしていることに驚く。いつの頃からタブーになってしまったのだろう

この映画に描かれているのは、あくまで日本から見た日中戦争
陸軍上層部の決めた和平工作に、現場の参謀、蒋介石から離反した汪兆銘派、国民党を支援する英米が反対するという状況の中、中野学校は和平工作を助ける少数派として、それなりの大義名分が担保されているのだが、これがどこまで通用するかは疑問だ
上海事変の時点で蒋介石は徹底抗戦を決意したというから、そもそも国民党側が応じるかが怪しい。まして汪兆銘を担ぎ込んでからでは無理があるだろう
映画に登場する中国人(全員日本の俳優だけど)に和平に前向きな人が登場しないことは、ある意味リアルである
(史実に準じたラストを見ると、作り手も和平に現実味がないことを分かって作っていた気もするなあ・・・)

何気に面白かったのが、国民党の女スパイ周美蘭(=松尾嘉代)が暗殺する相手に必ず「成佛」(成仏)と書いた紙を仕込むこと
監督は後にテレビで必殺シリーズを手がけることになる田中徳三である。早くも仕置人の片鱗がうかがえる(笑)
前作は不発気味だったが、今回はそれを取り返した感じ。詰まらなかったら今作までと思っていたが、次作も見ざる得ない続きを読む
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『妖人白山伯』 鹿島茂

本書には、ガチホモ成分を多数含んでおりますので、ノンケの方は用法・容量をよく確認のうえご覧下さい(笑)


妖人白山伯 (講談社文庫)妖人白山伯 (講談社文庫)
(2009/03/13)
鹿島 茂

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維新後のパリ日本大使館。後に総理大臣となる原敬の前に謎の紳士が現れた。男の名はモンブラン伯爵(漢名・白山伯)。幕末に日本とフランスを股にかけた伝説の大山師で、過去の経歴を生かして最後の大勝負に出ようとしていた。原敬はモンブランの手玉にとられながらも、その真意を探ろうとするが・・・

幕末の日本と諸外国で暗躍した実在の策士を描く歴史小説。冒頭に山田風太郎に捧ぐとあるように、風太郎の明治ものを意識した小説で、実在の人物、またその子弟を絡めて、史実と想像が違和感なく混ざり合っている。読んでいけばいくほど、どこまでが史実か虚構なのか分からなくなってくる構成なのだ
いわゆる史実の隙間を想像で埋めたという程度ではすまなくて、隙間の出来事が史実の解釈をひっくり返してしまう(!)ほどである
そんな馬鹿な、と思っても後で、モンブランが回顧録を書く話が出てくる段には、幕末の話はモンブランの法螺という解釈ができるようになっていて、さらに真実がなんだったのか分からなくなってくるから困る
娯楽小説としては、最後の対決が理性的過ぎて盛り上がりにかけたが、そこにたどり着くまでにモンブランの武勇伝と作者の博識に飽食気味なっているので、ちょうどいい締めに思えた
本当に上手い落語を聞くとオチがどうでもよくなってしまうのと似た感覚

冒頭にも注意書きを置いたが、この本はガチホモだけではなく、ありとあらゆるエロが横溢している
普通の作家だといかにも過激な演出を誇示したように描いたりするところ、本書は日常の延長でひょいと自然に非日常的な空間を作り出してしまうのが凄い。いきなり道端を歩いている人にイチモツを見せられたような勢いなのだ
棚からエロというノリなのだが、これはこれで当時の風俗の感覚に近いとも思う。今の我々から見て過激に感じることも、昔のある場所は敷居が低かったのだ
こういう時代の空気を自然に描いてしまうところは、さすがはフランス文学とエロの第一人者である
蘊蓄ばかりの歴史小説は頭でっかちで入りにくくなるが、エロの世界を踏まえたことで読み手の心身に直接に訴えてくるものになっている。いや、分かってらっしゃる

解説の人が指摘しているように、日仏の著名人が史実に沿って姿を現わすのが面白い
アナトール・フランスボードレールシーボルト高橋是清大久保利通黒岩清輝・・・と数え上げればキリがない。そういう人間たちが大胆にモンブランと絡ませるのだから、歴史小説好きとしてはもうたまらない
一番驚かされるのは、ふらんすお政」のお色気無双だろう。あれこれといろんな男性と関わりをもって、最後は井上馨夫人におさまる(!)
明治の元勲の夫人って、芸者上がりで出自が怪しい人が多いから、ありえなくもないんだよねえ
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【DVD】『北斗の拳 ユリア伝』

一昨日は殉愛編、昨日はTRICKスペシャル、と3日連続阿部寛ですよ
あっ、今日は新参者もあるな

真救世主伝説 北斗の拳 ユリア伝 通常版 [DVD]真救世主伝説 北斗の拳 ユリア伝 通常版 [DVD]
(2007/02/23)
阿部寛宇梶剛士

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ユリアの視点で、最後の将編までを辿るOVA作品
ひとことで言うと、やっちまったなというしかない(苦笑)。出だしの本編をなぞっていくまでは良かったが、新しく付け足したシーンはなんじゃそりゃという展開なのだ
まさか、五車星にレイを捕まえさせる(!)とは思わなんだよ(笑)。捕まったレイがまたみっともない。あれでなんで後からレイが感謝することになるんだか。人気のレイを出したいばっかりに、作ったシーンなんだろうなあ
原作では受け身一辺倒のユリアが自発的に動き回るのはいいけど、全くストーリーが考えられていない。リュウガジュウザをうまく使えばいいと思うのだけど(リュウガは子供時代のみ出る)
映像のクオリティにも所詮OVAという荒さがあった。商売にしても下手すぎるぞ

ユリアに予知能力がある設定で、さかんに宿命、宿命というのにも違和感
もともとあれは、北斗の掟にまつわるものに関して宿命と表現しているだけじゃなかったのか
男女関係に宿命、宿命と言っちゃうと、電波なお惚気に見えない(笑)
星でその人の運命が決まるという中世的観念が取り入れて、講談的な色彩を生んでいる原作ではあるけど、余り突きつめて設定を埋めてしまうとしんどいなあ

そうそう、フドウはそのまま郷里さんだったね・・・
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【DVD】『北斗の拳 ラオウ伝 殉愛の章』

TUTAYAにアカギの続きがなかったので、借りてみた
主要キャストに芸能人ね・・・
ん、間違えたかな~?

真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 殉愛の章 ディレクターズ版 通常版 [DVD]真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 殉愛の章 ディレクターズ版 通常版 [DVD]
(2006/10/27)
阿部寛宇梶剛士

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ストーリーは聖帝十字陵編がメインで、オリジナルキャラのソウガレイラの兄妹を絡ませてラオウ側の背景を補完していく形になっていた
修羅の国などの連載後期に決まった後付設定が採用されており、それにともなってラオウの性格、目的もわりあい常識的なもの(?!)に落ち着いている
ラオウはいじりにくいキャラだ。暴力の塊のようなシンプルさこそが彼の魅力であって、複雑なものを抱え込ませるほどそれは失われてしまう
この劇場版でも、レイラという彼を愛する女性を登場させたので、最後の将編を前にして丸くなりすぎのところはある。しかし、レイラは原作の流れに棹さすまでの暴れ方はしていないので、ぎりぎり許容範囲にとどまった
ここのところは人によってアウト、セーフの差が大きいだろうが、柴咲コウをあてた新キャラの割にうまく抑制がきいた使われ方だと思う
映像は、今風のCGを多用せずTVアニメの劇画調の作りを継承していて、僕の世代には懐かしく非常に見やすい
うまく原作のネタを拾い上げていて、「愛を取り戻せ!」がかかるタイミングは上手い。昔の劇場版とは違い、北斗ファンの秘孔を的確に突いてくる作品なのだ

ネックになるのは、やはり声のキャスティングだろう
専職でない人の声は出来不出来の波が激しく、特に宇梶剛士のラオウはかなり苦しかった。阿部寛もときたま上田教授に聞こえてしまう時がある(笑)
ラオウは内海賢二その人以外、誰がやっても苦しいだろうが、芸能人にこだわることはなかったなあ
逆に手慣れた声優さんたちは、原作とは違っても安定感と説得力がある。プロの積み重ねは伊達じゃないのだ
といって、専門外からの起用自体が、悪いわけではない。聞き慣れた声でない良さがあって、新鮮な印象を持てることもある。ひいき目もあるが、オリキャラのコウちゃんは悪くなかった
ただ、普段の芸能人のイメージから連想したような安易な起用は頂けない。そもそもオーディションという行為が行われないのだろうし、慎重に選んでもらわないとなあ

この劇場版はファンドで金を集めて作られた作品で、芸能人の起用なんかも出資金を集める呼び水に使われたのだろう
これ以降、あまりファンドの話を聞かないということは余り儲からなかったということなのかな?
声に目を瞑れば、リメイク止まりとはいえ作品の質そのものは悪くない
なんらかの形で金を集めるシステムさえ確立できれば、ハリウッドばりに良質の作品が世に送り出せるんじゃないのか、思わせてくれる作品ではあった
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『鏡子の家』 三島由紀夫

この小説にも鳩山首相の名が出てくる。一郎の方ですが

鏡子の家 (新潮文庫)鏡子の家 (新潮文庫)
(1964/10)
三島 由紀夫

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鏡子の家に集まる、四人の男たちとの物語
鏡子と四人の男に共通するのは、強烈な自己愛だ。退屈な日常に埋没せず、自分という個人を貫こうという意志。社会で一つの役割を演じるだけで飽きたらず、特別な自分でありたいというこだわり
時は朝鮮戦争後の日本。高度成長前夜、社会には揺るぎない体制、価値観がすでにそびえ立っていた。その社会はどんな人間にも平凡な生活、平凡な生き方を押しつけ、丸め込んでくる
本書は、四人の男たちとそうした有形無形の社会圧力との精神的な戦いを描いているのだ
多くの人間がひしめく社会の前に個人の抵抗は空しく、いかんともし難い。さながら“アメリカン・ニューシネマ”のような敗戦が待っている・・・
時代背景は1950年代ながら、バブル崩壊まで、いや現代にも通底するような大作

四人の戦い方はそれぞれ異なる

『俺はその壁をぶち割ってやるんだ』と峻吉は拳を握って思っていた。
『僕はその壁を鏡に変えてしまうだろう』と収は怠惰な気持ちで思った。
『僕はとにかくその壁に描くんだ。壁が風景や花々の壁画に変わってしまえば』と夏雄は熱烈に考えた。
 そして清一郎の考えていたことはこうである。
『俺はその壁になるんだ。俺がその壁自体に化けてしまうのだ』(p100)

ボクサーの峻吉は日本チャンピオンになるも、登りつめたがゆえに“壁”に取り囲まれたことに気付く。売れない俳優の収は、ボディビルで逞しい体を手に入れるが、それを正しく見てくれる人間がいなければ意味のないことに気付いた
結局、二人は“壁”の外に自分らしさを求め、個人としては死んでしまう(一人は生物学的にも死んだ)
もっとも読者に近い位置にいるのがエリート会社員の清一郎
世界の滅亡を信じる彼は、仮の自分を作って“壁”の中に身を投じ、月並みな生を演じて見せる。この世界を嘘だと思い切っているからこそできることであり、四人の中で一番しぶとく実戦的な戦い方である
しかし、真の自分をひけらかす場が鏡子の家しかなかったため、結婚後は孤独がつきまとう。赴任先のニューヨークで、彼は同じような人間が集う乱交パーティーに参加するのであった
(ここらへんの下りで、キューブリックの遺作『アイズ・ワッド・シャット』を思い出した)

登場人物は皆、自意識過剰なので、読んでいて自分へのこだわりをなくせば随分楽になるだろうにと思っていた
しかし、それもよく考えると容易なことではない
戦後の価値観には“個人主義”がちゃんと入っていて、社会の側が個人を求めている部分がある。ちょっとしたことでも“個人”の考えや意見を持つことを求めた上で、自分の意志での服従をしてくれという、遠回しの図々しさというか
個人を振り回すことも個人を持たないことも許されない
清一郎のように仮の人格を作ってその時の流れに従うなんてことは、みんな日常でやっている処世術なのだ
それに、生まれたからには人とは違うことがしたいなんていうのは、かなり健康的な心情であって、捨てるには捨てられないものだしねえ
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古井戸

70年代のフォークだったんだ



僕が生まれてまもない頃に解散しているから、知らなくて当然か
フォークというと暗い印象が強くて、数曲聞くと辛くなってくるだけど、この人たちは別だった
声の力強さがハンパないから、哀愁漂うギターの響きを同調せず呑まれない。むしろ辛さを跳ね飛ばす“負けじ魂”が伝わってくるのだ
30年以上前の曲なのに、まったく色褪せない。今、駅前で歌う若者がいても、立ち止まって聞いてしまうだろう

原曲を聴いてしまうとアカギのOPで、肝心の「なんとかなれ~」で切れてしまうのが勿体ない。ここからがいいのに・・・
あそこでイーピンをドスンと打たれてしまうと、「なんともならない」と伝わってしまう(笑)
尺の都合もあるだろうし、原曲をエディットしたくないとか、色んな事情があるんだろけどなあ

10’5/12 一部修正
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【DVD】『陸軍中野学校 雲一号作戦』

名優佐藤慶、逝く。劇場版カイジが遺作となったか
本作では、憲兵の西田大尉役で出演されております

陸軍中野学校 雲一号指令 [DVD]陸軍中野学校 雲一号指令 [DVD]
(2007/12/21)
市川雷蔵.村松英子.佐藤慶.仲村隆

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赴任先の北京に向かっていた椎名次郎(=市川雷蔵)に、草薙中佐(=加東大介)からの電報が届いた。神戸港で輸送船が爆破される事件があり、その犯人の捜索にあたって欲しいというのだ。神戸で同僚の杉本(=仲村)と合流した椎名は、容疑のかかる夜警と連絡をとる芸者梅花(=村松英子)をマークするが・・・

中野学校を舞台にした、市川雷蔵主役のスパイ映画。ノンフィクション的な要素は薄くて、神戸での爆破工作自体が完全なフィクションの模様
(強いていえば、中野学校の訓練で神戸製鋼に偽の爆弾を仕掛けたのが元ネタか)
1時間29分という短い尺のせいで、淡々とシーンが進んでいく。余りにストーリーがとんとん拍子に進みすぎて、視聴者が謎解きを楽しむ余裕がない。予定されたストーリーに比して、尺が短すぎたのだ
エンタメ的にも前作のようなお色気もないので、市川雷蔵主演という意外にウリがない
懐かしい当時の特撮が序盤で見られるぐらいだろうか(拳銃、爆弾の爆発は悲しいほどちゃっちいが・・・)

地味な展開のなか、目立つのが椎名次郎の“任務への忠誠
上司たる草薙中佐が病気の母を見舞えというのを振り切って、仲間の仕事を手伝う(草薙中佐の行動も中野学校の任務からは外れているが)。中野学校の精神を叩き込んだ草薙自身がたじろぐほどの頑固ぶりなのだ
それに対して誰も突っ込むことはなく、最後は草薙自身が彼を中野の鑑と讃えて終わる
映画公開当時の60年代は、仕事に対する忠誠というものが当たり前の美徳だったのだろう
今の人間からすると、椎名次郎は冷酷なキャラクターに見られると思う。“任務”に対する忠誠であって、官僚的な“組織”への忠誠になっていないのが救いか

扱う題材の割に、尺と金が圧倒的に足りない。時代劇のようにセットの使い回しがきかないのがきついのかなあ
次作は中国に乗り込むようだが、どうなることやら


次作 【DVD】『陸軍中野学校 竜三号指令』
前作 【DVD】『陸軍中野学校』
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