【DVD】『チェチェン・ウォー』

居飛穴を組んできた『AI将棋』に、スーパー四間飛車(ふるっ)で完勝
定跡型で戦うと、AI相手でも手強い(こっちが忘れているだけだが)

チェチェン・ウォー [DVD]チェチェン・ウォー [DVD]
(2003/06/04)
アレクセイ・チャドブイアン・ケリー

商品詳細を見る


チェチェン紛争の最中、イスラム武装組織の捕虜となったイワン(=アレクセイ・チャドブ)は、地下牢でイギリス人の俳優ジョン(=イアン・ケリー)に知り合う。彼らは釈放されることになるが、ジョンは婚約者を人質に取られ莫大な身代金を請求されることになった。ジョンは集金に奔走し、イワンに交渉の通訳を頼むが・・・
ロシア人側から見たチェチェン紛争を描いたアクション映画。意外にもプロパガンダ的な押しつけはなく、ただただシリアスな現場の光景を見せつけていく
軍の協力を得ているわけで、高潔な将校を登場させるなど多少の配慮はなされているが、紛争地の地獄ぶりは包み隠さず撮られていた
ところどころにチープな箇所(BGMがダサイ!)もあり、後半はイワンがランボー化しB級アクションに近い内容にはなる
しかし、オチまで含めた全体で見れば、そうしたチープさがイワン中心の構成とリンクしていて、一本筋が通っているから不思議だ

この映画で強調されるのは、武器を持った人間が無防備な人間に対していかに残酷になれるか、ということだ
それは、ゲリラもロシア軍も主人公も変わらない
イワンは除隊した後、“民間人”としてジョンに協力するが、彼がロシア軍、ロシア人を象徴していることは明らかである
彼は通りがかりの車を不意打ちし、捕虜を容赦なく蹴りつけ、ジョンには戦争の論理を押しつける
それは捕虜の首を刎ね、指切りなどの虐待を重ねるテロリストとどれほどの違いがあろう
それを弁解する態度からは現状を肯定するだけの「開き直り」にしか見えない
もちろん、その態度が製作者の本意ではなく、それはオチで明らかになる

グロシーン以外はほとんど実写で撮られているので、CGのような嘘くさい奇麗さがなく絵に重厚感がある
頻発にイワンのインタビューを挿入し、違う性質のカメラを巧みに入れ替えることでドキュメントの空気を作り出しているのも上手かった
チェチェン紛争の政治的背景にはいっさい触れていないものの、作り手の戦争に対する訴えは明白だ
主人公がアレだったりグロが強烈だったり見にくい映画ではあるが、予想に反してなかなかの佳作だった

10’3/2 ほんの一部修正
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

【DVD】『リクルート』

どうしても就職情報誌を思い浮かべてしまうが、実はスパイ物

リクルート [DVD]リクルート [DVD]
(2005/07/06)
アル・パチーノコリン・ファレル

商品詳細を見る


就活をしていたジェームズ(=コリン・ファレル)に謎の男が近づく。その男バーグ(=アル・パチーノ)はCIAのリクルーターで、ジャームズの素質に目をつけ彼にCIA入りを誘う。最初はまるで乗り気でなかったジェームズだが、事故死した父親の話を持ち出され、惹かれるように採用試験を受けるのだった。しかし、新人研修では想像を越える虚実入り交じったテストが彼を待っていた
この映画のウリは、CIA広報の全面協力を得て作られたこと。前半では、その採用、人材育成のプロセスをリアルに再現されている(リアルといっても、CIAがどこまで手の内を明かしたかは分からんが)
ただ後半は正直言って地味な展開だ。親父の件を追って海外へ行くこともなく、主人公は国内で二重スパイの内偵に専念するのみ
駆け引きは面白いし登場人物をうまく使って飽きさせないのだけど、CIAの名前の割にはコンパクトにまとまりすぎた嫌いがある
悪役の動機もせこいし、この筋ならCIAを使う必要もない
映画にはトリックだけでなく、華もなくちゃいけないのだ

CIAの訓練で目がつくのは、心理面のテスト
表の作戦に言い渡されても、裏では本命の作戦が進んでいて、表の要員のトラップになっていたりする
詳しく書くと面白さ半減なので自重するが、アルパチーノが繰り返す「世の中はうわべどおりではない」の台詞の通り。カイジのカードじゃんけんのように、気づきのゲームの連続なのだ
ソ連のスパイが西側に亡命した際に、MI-6だかCIAだかがソ連の報復部隊の振りをして襲わせ、亡命者が二重スパイか判別したなんて話もあるから、映画ぐらいの訓練は実際にやっているのだろう
佐藤優の本を読んでいても、情報戦には物事の表裏を読む力が問われるというのは分かる
後半の地味さもリアルな考証の裏返しとも言える。しかし、なあ・・・

いまいち乗れなかった理由の一つに、主人公の鈍くささがある
単純に能力的には抜群でも、スパイ向きには見えない。クールに物事を受け止める強靱さが表現されていない
研修所の心理テストではフルボッコ状態(笑)で、素質を買われているのが不思議でならない。もう少し、序盤で聡く見える演出を入れてもよかったんじゃないかな
スパイ映画のヒーローとしては頼りな過ぎだぞ続きを読む
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

『アメリカのユダヤ人迫害史』 佐藤唯行

ニコ動の将棋動画に触発されて、数年ぶりにコンピュータ将棋を指してみると軽く完敗
大学の将棋部で培った実力はどこへ逝ったやら・・・
最新の『AI将棋』はいっちょまえに位取りとか指してくるんだな。感心した

アメリカのユダヤ人迫害史 (集英社新書)アメリカのユダヤ人迫害史 (集英社新書)
(2000/08)
佐藤 唯行

商品詳細を見る


アメリカにおけるユダヤ人差別の歴史を綴った新書
アーレントの『全体主義の起源』とは違って、具体的な事件を扱いつつも、アメリカ社会の人種構成、経済事情から分かりやすく差別の原因を引きだしている
アメリカには圧倒的な黒人差別があって、ユダヤ人は支配人種たる白人のうちにいた。ヨーロッパから輸入された「反ユダヤ主義」が囁かれても、それがアメリカ全体を覆うことはなかった
なので、「迫害史」というタイトルのわりには、内容はずいぶんと大人しい・・・
ユダヤ人差別を通して、アメリカの人種問題を辿っている言った方が近い

一番大きい「反ユダヤ」の運動は、大学において行われ続けた「クォータ・システム」だろう
クォータ・システム」とは、大学側がユダヤ人の入学者数を制限する制度で、特に医科大学において採用された。入学できなかったユダヤ人青年は、仕方なく黒人校やイギリス、果てはナチス・ドイツ下の医科大にも留学したという(アメリカ国籍だから捕まらない!)
そもそも大学は、WASPが上流への通過儀礼としてくぐるものであって、貴族主義的な伝統があった。そこに大量のユダヤ人が階級上昇のために入学し、実力主義の風を持ち込んだものだから、大学側が拒否反応を起こしたということらしい
この件も「反ユダヤ主義」というより、WASPの組織防衛という意味合いが強い
キリスト教国だから反ユダヤの言論は絶えず流れるけど、「主義」というほど病的な醸成はされなかったようだ

カルト的集団の思想などには立ち入らないので、どれほど当時の空気を伝えられているのかは不明
発展途上の街に入ったきた新参者があらぬ疑惑で迫害されるという図式はわかっても、発展した都会で漠然とながれる「反ユダヤ」の空気がどうも分からない
できる子が嫉妬されるみたいな話で済まなくて、キリスト教国自体の問題があると思うのだ
本書は全体的にドライな分かりやすい論調なので、期待が空振りしちゃったなあ
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

【DVD】『クローバーフィールド』

公開前は謎めいた宣伝で話題になっていた作品。公開後は知らんけど・・・

クローバーフィールド/HAKAISHA スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]クローバーフィールド/HAKAISHA スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
(2009/05/22)
リジー・キャプランジェシカ・ルーカス

商品詳細を見る


首の飛んだ自由の女神がPVで流れていて、何か現代的なテーマを追求した社会派なのかと妄想していたが、蓋を開けてみるとパニック映画だった(笑)
『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』みたくハンディカメラで撮影したような演出が特徴で、個人の視点からみた映像は視界が限られているために独特の臨場感を生むことに成功している
ハンディカメラだから持ち主が変わることで、容易に視点となるキャラが切り替わる。撮影されたテープが回されている設定だから、途中で違う動画が挟まってもなんら違和感がない
そういう便利な設定を生かして、後半は畳みかけるような展開が続く。比較的短い尺の映画だけど、見事に引っ張り回されてしまった

こういうハンディカメラの視点で撮った作品の難点は、それを撮り続ける動機を設定しなくてはならないことだと思う。日常でカメラを回し続けるのは本来、怪しい行為である(笑)
かといって、無理に完璧な動機を用意すると、製作者の作為が露出しすぎてしまう
この映画でもカメラマンは興味本位な素人という設定だから、「カメラなんて回している場合じゃない瞬間」は結構あった
それでも本作は、以前の似たような作品より不自然さは感じない
これは時代が変わったからというしかない。今はケータイで画像も動画もパチパチ撮れてしまう時代なのだ。映画の中にも自由の女神の首をケータイで撮る人たちが現れている
youtubeなどの動画サイトも一般化しているから、ハンディカメラを回されることにも免疫ができてしまっているのだ。昔ほど街で動画を撮る行為は特殊なものではなくなっている
グーグルアースのストリートビューに、一般人やその家屋が無差別に写りこんでしまう時代だもんなあ

もう一つのこの手法に決定的な力を与えているのが、なんといっても視聴者の「9・11体験」だろう
9・11同時多発テロ直後の報道では、民間人のカメラで撮影された映像で、ジェットが衝突しビルが崩落する様を全世界に発信された。何十回も繰り返して流されたから、二十歳以上の人はまず忘れられないもののはずだ
このハンディカメラから映し出された映画の災厄は、確実にその体験を呼び起こす。映画のように街が壊れるという光景がリアルでインプットされているから、衝撃度が他のアクション映画の比ではない
この迫力、面白さにはどうしても不謹慎さが漂ってしまう。テロから7年目の公開だけど、まだまだ生々しいのだ
それでも、こうした体験に影響された映画は発表されていくんだろうなあ続きを読む
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

【DVD】『カビリアの夜』

何故か、『戦争の犬たち』の記事が二つ存在していた
別口で保存していたと思って、片方消したら両方消えちまった・・・
ブログ上も管理画面上も同一記事が二つあったんだけどなあ

カビリアの夜 [DVD]カビリアの夜 [DVD]
(2009/05/30)
ジュリエッタ・マシーナフランソワ・ペリエ

商品詳細を見る


娼婦カリビア(=ジュリエッタ・マシーナ)は、何をやっても上手く行かない。恋人に河へ突き落とされ鞄を盗られるし、有名俳優と懇ろになりかかったところに元カノが現れてより戻されたり。娼婦仲間や悪党どもと仲良く(?)暮らしながらも、底辺な生活に嫌気が差していた。そんな彼女の前に、突如理想的な男が現れるが・・・

『道』に続いてのジュリエッタ無双(!)である
ただ今回は脇役たちのキャラが立っていて、彼女に負けていない。特に娼婦仲間のハイテンションは異常で、二丁目のオカマちゃんに負けないものがある(笑)
本作の舞台はローマ近郊高級キャバレー、俳優の犬御殿、マリア信仰の聖地、場末の芝居小屋、郊外の穴住居と当時のイタリアの風俗をカビリアの目を通して、上下の格差を意識して撮られているのが分かる
イタリア社会の側面とそこに生きる娼婦の女心、その両方を悲喜こもごもに描ききった名作なのだ

『道』もそうだったが、彼女がどうなるという右肩上がりの物語ではない。むしろ、どうにもならないという話
印象的なのが、聖母マリアを祭る祝祭で娼婦仲間が揃ってお参りする場面で、そこでは貧困や重病等で悩める者たちが集まる。
金を払ってでかいロウソクを買い、懸命にお祈りする。みんな祈ることは現世利益で、日本の仏教、神道とやっていることは変わらない。根底の死生観となると違うだろうけど、貧民がまず望むことは同じなんだな
カビリアもつい本気になって祈ってしまうが、仲間のマフィアの怪我が治らないことに怒る。「何も変わらないじゃないか」
それに対して親友のワンダは「当たり前でしょ」となだめる。仲間たちは激しく祈るだけで気が済むのだ
ここに人が何かに信心する心性を観た気がする。何も変わらないけど、祈らざるえないというか。祈る行為に満足するというか
誰だって「祈る」という行為を無意識の内にする。祈るという行動が人を安定させる部分があるんだ
上昇を夢見るカビリアと底辺で安定するワンダたちの両方に、作り手の暖かい視線が注がれていて好きなシーンだ

オチは想像していたけど、悲惨だ。どうにもならないどころか、まさかのマイナスである(笑)
監督としては貧民の世界を映しつつ、そこにすら人としての幸せはある、と持っていきたいのだろうけど、ラストに無理矢理楽しい音楽を載せているだけで少し可哀想すぎる。嫁の笑顔でかろうじて救われた結末だった
底辺を生きる僕にはひりひり来る名作だけど、ぜいたくを言えばもう少し夢が欲しかったなあ
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

【DVD】『バットマン』

こちらはティム・バートン版

バットマン [DVD]バットマン [DVD]
(2009/07/08)
マイケル・キートンジャック・ニコルソン

商品詳細を見る


悪がはびこるゴッサム・シティに一人の怪人が現れた。悪人を懲らしめる彼はバットマン(=マイケル・キートン)と名乗った。ちょうど街は生誕100年を祝う祭りが予定していて、市警は総力を挙げて治安対策に乗り出した最中。ボスの女に手を出していたジャック(=ジャック・ニコルソン)は、ボスの罠にかかり工場で警察に包囲され、バットマンにも追詰められた。そして、ジャックは酸性の溶解液に落ちるハメになる。そしてそこから現れた彼は、ジョーカーとなっていた・・・
スタッフロールの順序にも現れているように主役は明らかにジョーカー
序盤は完全にジョーカーの誕生を描いた物語だ
クリストファー・ノーランのシリーズに比べると、バットマンの素顔たるブルース・ウェインは御曹司然としているが非常に地味。タイトルになっているのに、「ジョーカー=陽」「バットマン=陰」の演出が徹底されている
設定そのものはクリストファー版の方が原作に沿っているそうだが、バットマンの属性ではこちらが原作に近いかもしれない。警察のように、あくまで悪事があってから動く受け身のヒーローなのだ

クリストファー版に比べると、アメコミ的なアクションがふんだんに盛り込まれ娯楽に徹した作りだ。『ダークナイト』のような、陰鬱な展開もない
ジョーカーが悪の限りを尽くす様を存分に楽しむ映画
彼があれだけの行為ができる理由の一つは、失うものも帰るところもないからだろう。バットマンにマフィアとしての人格を奪われ、全く日の当たる場所に生きられる可能性はなくなった
彼が人と関われるのは悪事を通してであって、それがなければ彼には何も残らなくなる。彼の笑いは孤独をごまかすためであり、寂しさを紛らわせるためには、悪を重ね笑い続けねばならない
ジョーカーのキャラクターというのは、都市犯罪者の表象と言っていいのかもしれない

『ダークナイト』を観た後だと、かなり軽い作品に見える
だけどよく考えたら、これも仕方ない話。そもそも、向こうが異様に重すぎるのだ
バットマンを映画化するとなれば、興行的に観てもまずはこういう作りをせざる得ないだろうし、こうした作品ができたからこそ原作から抜けた部分を補うべく後続の作品が作られるわけだ
1989年に作られた映画であり、CGはほとんど見受けられない(というか分からない)。工場の爆発も実際に古い発電所跡を使ったらしい
ティム・バートンらしく特撮の手法が随所に見られて、最近の映画より映像に泥臭さと重厚感がある。この軽さは○だ

<続きはややネタバレ>続きを読む
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

【DVD】『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』

ジャンル別では、「映像作品」の記念すべき100作目
ランキングでも発表しようかと思ったけど、ランク付けもヤボなんでやめておきます

映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲 [DVD]映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲 [DVD]
(2002/11/25)
矢島晶子ならはしみき

商品詳細を見る


しんのすけの住む春日部に昭和の懐かしい生活が再現されたテーマパーク「20世紀博」が開かれた。何度も両親につきあわされウンザリするしんのすけとひまわりだったが、あるテレビ放送を境に両親が急に子供化し生活に困るようになる。大人が子供化する現象は、春日部のみに留まらず日本各地で起こっている現象であった・・・
『戦国大合戦』と並んで評価が高い作品と聞いていたが、戦国ほどではなかった。テーマを語ることに偏重して、アクション、ストーリー展開が単調なのだ
両親が敵に回っているから、しんちゃんが友達と立ち向かうのだけど、戦い方が一本調子。逃げ回っている内は楽しいけど、バスに乗ってからは力業の連続
いずれ助っ人キャラが出てくるかと思ったが、それもなし。しんちゃんにリアリティを求めて仕方ないけど、彼と彼の家族だけで組織と戦うのはバランスが悪すぎる
そのためにラストまで根性、根性、根性の連続。ここまで続くと階段を必至で駆け上がるシーンの頃には、こっちが飽和しちゃって感動が薄かった
完璧超人だった戦国大合戦に比べると、総合的に高い評価はできない。あくまでテーマ性重視の良作だろう

映画が公開されたのが2001年バブル崩壊後の「失われた10年」のただ中
昔の日本を美化する風潮はずっと続いていて、偉い人も普通の人も高度成長期の再来を期待していた。バブルの一歩前の時代に戻ればなんとかなる発想
映画で経済的なことは一切描かれないけども、“オトナ帝国”の夢とはそういう意味合いを含んでいるに違いない。筒井康隆『パプリカ』浦沢直樹『20世紀少年』と共通するテーマが隠れている
本作で一番の感動シーンは、しんのすけの父親ひろしが自分の人生を振り返り正気を取り戻すところ。あの匂いで自分を取り戻すところは、なんともこのシリーズらしい
いい歳の人はここでやられてしまうだろうなあ
僕的に気に入っているのは、子供化した両親の醜態(笑)。子供視点でみると、ノスタルジーに耽るオトナというのは醜い
人に押しつけるともう最悪だ。自戒としよう

この映画と対照的に思える『ALWAYS 三丁目の夕日』が公開されたのが、2005年
安倍総理(当時)が『美しい国』の中でそれを取上げたりなんかして、ノスタルジー旋風が今も吹いているわけだ。等身大のガンダムに続いて、等身大鉄人28号なんて話もあるし
それを考えると、2001年の段階でその風潮に棹を差したことは評価すべき


*2013’11/5 読みやすくするため、一部改変続きを読む
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

【DVD】『バットマンビギンズ』

スパイダーマンだけでなく、こいつもパチンコ化されていたらしい
もはや1パチやバラエティにも残っていないが・・・

バットマン ビギンズ [DVD]バットマン ビギンズ [DVD]
(2008/07/09)
クリスチャン・ベイルマイケル・ケイン

商品詳細を見る


両親を殺された青年ブルース・ウェイン(=クリスチャン・ベール)は復讐しようとするが、犯人はマフィアに殺されてしまう。そのマフィアにこけにされたブルースは力を求めて闇社会を彷徨い、ヒマラヤ山中の寺院に籠もる謎の集団「影の同盟」と出会う。その総帥ラーズ・アル・グール(=渡辺謙)の元、東洋武術の修行に励むことになる・・・

監督は『ダークナイト』と同じクリストファー・ノーランで、世界観的にもその前作という位置づけ
『ダークナイト』の時に、「なんでバットマンが金持ちのボンボンなんだ」と引っ掛かっていた。この映画ではそのボンボンがバットマンに成長していく過程が描かれているので、そうしたわだかまりもさらりと氷解
要は『ダークナイト』の前に見ておくべき作品だったのだ

*原作でもバットマンの表の顔は、財閥の大富豪。執事アルフレッドが親代わりなど、最低限の人間関係は抑えておくべきだったか


ゴッサムシティの悪の原因を最終的に「影の同盟」が全て引き受けてしまっているので、正直なところ次作ほどの深刻さはない
それでも社会の枠外で行動するバットマンをシビアに描いていくので、各所に法の限界やテロに対するテーマが見え隠れしている。『ダークナイト』での問題意識がすでにここで表明されているのだ
本作はバットマンの成長期を描いているが、製作者としても『ダークナイト』を結実させるための助走段階、興行的な地固めした作品ということだろう
闇夜に非合法的な「世直し」をするバットマンは犯罪者やテロリストになぜ陥らないか、という答えは、彼の出生にあった
彼の両親はゴッサム・シティを建て直したエスタブリッシュメント(=特権階級)で、非常に公共心に強い人物であった。それを引き継いだ彼に既存の秩序を壊すという選択肢はなかったのだ
社会は放っておくと、惰性に流れて犯罪に走ったり見過ごしてしまったり、怨念や絶望からテロに走る傾向が出てくる
それを防ぐためには人の上に立つもの、力を持つ者は、より高い意識が求められ、その意識を持った行動が社会の自壊を止める
それがノブレスオブリージというものなのだろう
このシリーズのバットマンは確かにそれを体現している

影の同盟」のデザインが凄い
チベット寺院に、忍者イスラムのアサシンとこれでもかと欧米のアジア的イメージが投入されている。まさに混沌
バットマンの出自がアジア的闇になるわけだから、まんざら否定的なわけでもないけれど、アジアの住人として複雑な心境になる
光=欧米、闇=アジアという伝統的なオリエンタリズムの方程式なのだ
陽性のスーパーマンに比べ、バットマンはひたすら耐える男だ。それもまた向こうから見た東洋なのかもしれない
一番驚いたのが、渡辺謙があっさり死んじゃったこと。終盤でひょっこり出てくると思ったら、ラスボスはデュガード(=リーアム・ニーソン)だった
ハリウッドのキャリアからしたら当然かもしれんが、むぅ

*序盤に出てくる渡辺謙は、実はラーズの影武者で、本物はリーアム・ニーソン演じるデュガードらしい。風格の違いから、渡辺謙が本物としか思えなかった(苦笑)
なわけで、『ダークナイトライジング』に出てくるラーズの娘は、デュガードの娘なのである
もっとも、ラーズは影武者が代替わりして不死を装っていたようなので、両方本物という解釈ができなくもないか



次作 【映画】『ダークナイト』

*2015’2/8 加筆・訂正
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

『東インド会社』 浅田實

カイジ和也編の2巻を即買い
やっとゲームが始まったものの、カイジが参加しない観戦モードだ
次巻までそれが続く予感・・・

東インド会社―巨大商業資本の盛衰 (講談社現代新書)東インド会社―巨大商業資本の盛衰 (講談社現代新書)
(1989/07)
浅田 実

商品詳細を見る


近代の株式会社の雛形を築き、ヨーロッパ諸国の尖兵としてアジアに進出し、インドを植民地化するにまで到った東インド会社の歴史を辿りその役割を問う
先に株式会社の制度を確立させたのはオランダの東インド会社で、その優位からイギリスに先行する。東インド会社は各国で作られたが、その構成員はオランダ人とイギリス人が中心だった
しかし、イギリスも組織を改変し英蘭戦争を経て、インドの綿織物(キャラコ)を独占することでついに逆転する
本書は前半を英蘭の競争、後半はイギリスの東インド会社を中心にその盛衰を扱う

アーレントが帝国主義の基本原理である“膨張”は経済的概念から来ると書いていたが、まさにそれを裏打ちする内容だった
東インド会社は、国家が海外進出する力がない時代に、それを代行するように独立行動した組織であり、その構造も後の株式会社の見本となるもの。帝国主義はその前史からして、資本の論理を軸に動いていたのだ
彼らは利益を得るためには、ライヴァルとの戦争を厭わないし、現地の紛争にも介入する。独自の軍隊組織すら持ち、現地のインド兵を雇ってフランスやインド諸侯との戦いを勝ち抜いた
東インド会社が衰退した原因は、やはり経済的要因だ。産業革命で機械化に成功したイギリスの繊維産業はインドに対抗できるほど力をつけ、選挙法の改正で労働者が選挙権を得たことをきっかけに、国内産業の保護が優先されて東インド会社の利権は制限されることになる
とどめはセポイの乱。本国の軍隊が鎮圧し、インド帝国を成立させることで東インド会社はその役割を終えることになる。国家が海外に遠征できるほど力をつけたことで、安全保障面でも存在理由を無くしたのだった

驚かされるのは、資本主義が誕生した当初にバブルが起こっていることだろうか
東インド会社の南米版「南海会社」は、事業者の株価つり上げから始まってロンドンばかりでなくパリやアムステルダムの証券市場を揺るがす大投機ブームを起こす

 このような大株主を喜ばせるためにも、国債や年金保持者に南海株を有利に交換させるためにも、株価のつり上げが必要であった。しかしどうすれば株価をつり上げることができるか。・・・
そこで代わる手だてとして南海会社は、株主に株を購入する資金を貸して、その金で株を買わせることにした。・・・(p131)

ちょっ、なにこの既視感(笑)
年金受益者への利便公的機関の保証なんてのも絡んで、日本の土地バブルやアメリカ発のリーマンショックを彷彿させる内容だ。当局が少し規制を加えただけで脆く崩れたことまでそっくり
こういうことを見つけるのが歴史本の醍醐味であるけど、びっくりするわ
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

『HUNTER×HUNTER』 第25巻 富樫義博

前巻の記事と間が空いてしまったなあ

HUNTER×HUNTER NO.25 (ジャンプコミックス)HUNTER×HUNTER NO.25 (ジャンプコミックス)
(2008/03/04)
冨樫 義博

商品詳細を見る


ついに作戦決行となるけど、開始10秒前までいろいろな段取りや議論が展開される。ま~だ伏線をしこむつもりなのか・・・
作戦開始の合図とともに話は劇的な展開を遂げる
事前の作戦とは想定外のことが幾つも起こってしまって、敵味方とも面食らう局面が。相手が見えないことをシミュレーションゲームに“戦場の霧”と表現するが、急に霧が晴れて遭遇戦になってしまった感じだ
まさに戦場は生き物といったところであり、お互いが限定された情報で相手を読み合う戦いが描かれる。ハンター×ハンターらしく、相手の謎を探るというミステリーが詰まっているのだ

戦い合うのが超人たち同士とあって、そうした読み合いを秒単位で描くんだなあ
「えっ、そんな短い時間でそこまで考えられるの?」とは思うけど、超人なのだから仕方ない(笑)
いろんな人物の視点でその解釈や感情を描いていくから、読んでる人間の体内時間より作品内の時間がだいぶギャップがある。丁寧に事細かく書いているのに好感は持っても、爽快さには欠けるのだ
アクション漫画にしてはスピード感がなく、小説として捉えても視点が飛びすぎている。読み手の容量以上に情報を詰め込んでしまって、局地的には良くも全体としての締まりがない
絵に関しても持ち味ではあるけど、まとまりがない。週刊誌上ではどういう状態だったのか
話としても王とコムギの件は、この巻でメドをつけてほしかったなあ

弘兼憲史に苦言を呈されたことがあったけど、好き勝手やってることはこの巻でも感じる
ある意味、マンガ表現の限界に挑戦しているのは分かる
しかし、読み手を置いてきぼりにするのは良くない
作品世界を精緻に見せることにこだわりすぎて、作品そのもので何を見せたいのか、見失っている気がするな

次巻 『HUNTER×HUNTER』 26・27巻
前巻 『HUNTER×HUNTER』 第24巻
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)
(この一行は、各ページ下部に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)
カレンダー
01 | 2010/02 | 03
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 - - - - - -
カテゴリ
SF (24)
RSSリンクの表示
リンク
FC2 Blog Ranking
ランキング
アクセスアップ!?
検索フォーム
はてな
この日記のはてなブックマーク数
タグランキング

サイドバー背後固定表示サンプル

サイドバーの背後(下部)に固定表示して、スペースを有効活用できます。(ie6は非対応で固定されません。)

広告を固定表示させる場合、それぞれの規約に抵触しないようご注意ください。

テンプレートを編集すれば、この文章を消去できます。