『ローマ人の物語 21 危機と克服(上)』

このシリーズはだいぶ読み進んだのだけど、感想書くのが遅れちゃうなあ

ローマ人の物語〈21〉危機と克服〈上〉 (新潮文庫)ローマ人の物語〈21〉危機と克服〈上〉 (新潮文庫)
(2005/09)
塩野 七生

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ガリア軍団の蜂起により、皇帝ネロは自死に追い込まれた。その後ローマは、決め手となるリーダーが現われず、1年に3人も皇帝が変わる異常事態に陥る。タキトゥス曰わく、ローマが滅ぶかもしれない最悪の一年
まず、ガリア軍団に推挙されたガルバが皇帝となるが、すぐに軍や市民の反発を買い。再びガリア軍団の蜂起を招く。ガルバは近衛軍団に暗殺され、行政官上がりのオットーが皇帝に
が、すでに反ガルバで立ち上がったガリア軍団も司令官ヴィテリウスを擁立してしまったために、帝国は100年ぶりの内戦に突入する
決戦に敗れたオットーは自殺。ヴィテリウスが次の皇帝となる
もう、日本の応仁の乱のような、凄まじい状況だ。指導者がコロコロ変わって、行き当たりばったりになっているのは、むしろ今の日本政治に近いか。読んでいて洒落にならないと萎えた・・・

この3人の指導者は、ローマ出身でかつ名門の出(パトリキ)だった。が、次の皇帝候補として立つヴェスパニアヌスは叩き上げの兵隊上がりで、平民出身かつイタリアながら地方都市に生まれた人間
本来、選ばれるはずのない人間だが、上位の将軍であるムキアヌスを初め多くの人間が彼を推挙した。何故か?作者は健全な常識人だからと煙に巻く(?)が、本当に謎
ただ、パトリキの代表でなくて、軍の代表を皇帝にしようという意識が軍団兵たちのなかで芽生えていたの事実なのだろう。そして軍団兵たちはローマ市民でもあるのだから、皇帝を選ぶ権利は法的にもある
ヴェスパニアヌスのパートナー、ムキアヌスは偉い人で、自分が上位であるにも関わらず皇帝になろうとしないし、ヴェスパニアヌスが中東を固めている間に、自らがケガレ役を背負うようにローマに向かって進軍し、同じローマ軍団と戦う。何故にここまで献身的に支えたか、これが本当に謎だ
内戦はローマで市街戦が展開されるほど熾烈だった。ヴェスパニアヌスがローマに入るまでの間、ムキアヌスが事実上の皇帝として混乱の後始末を行うのであった

次巻 『ローマ人の物語 22 危機と克服(中)』
前巻 『ローマ人の物語 20 悪名高き皇帝たち(四)』
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『時計仕掛けのオレンジ』 アントニイ・バージェス

言わずとしれたキューブリック作品の原作。アメリカで出版された際には、作者の許可なしに削除され、映画でも扱われなかった最終章が載った完全版だ

時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1) (ハヤカワepi文庫)時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1) (ハヤカワepi文庫)
(2008/09/05)
アントニイ・バージェス

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読んでみると、主人公の不良少年の主観で書かれているためか、謎の若者言葉が混じっていて読みづらい。パッとわかるのは“ハラショー”ぐらいだ。一応ルビで意味は分かるのだが・・・。いわば、それだけ主人公が大人と心通わない言語空間を生きていることが反映されているわけで、演出的には成功しているのだろう
映画と一緒で、彼の気分の多くはとても共感しがたく、不愉快。とはいえ、そう感じるのも自分の子供時分の“痛さ”と少しでも被るからかもしれない
筋としてはほぼ映画と同じ。人類が月で住む近未来という設定ながら、テクノロジーが余り発達していないというのも同じだ。いわば、SFという体裁で社会問題を扱っているスタンス(もともとのSFはそういうもんだが)
ただ、全体の調子としては完全に主人公の主観で進んでいくので、展開は軽快。映画の演出がトリッキーなのはキューブリックのオリジナルだったようだ

アメリカで物議をかもした最終章は、少年が悪友の恋愛を知り、不良を辞めることを決意する大事な部分
ここで作者は主人公に少年の非行問題は永久になくなることはないし、自分も息子の犯罪は完全に止められないと語らせる。どうもこの身も蓋もない正論が、アメリカの出版社を敏感にさせてしまったようだ。今から考えると信じられないが、それだけ当時のアメリカで少年非行の問題が取り上げられていたということだろう
少年の不良時代からの卒業を描いている、とてもいいラストなんだけどねぇ

*2012’08/29 追記

オレンジ→腐ったみかんのつながりで思い出した
アメリカに不良をみかんに喩えるスラングでもあるのかな



関連記事 【DVD】『時計仕掛けのオレンジ』
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『機動戦士ガンダムUC 6 重力の井戸の底で』 福井晴敏

今回は全体的には、やっちまった感じかな

機動戦士ガンダムUC (6)  重力の井戸の底で (角川コミックス・エース)機動戦士ガンダムUC (6) 重力の井戸の底で (角川コミックス・エース)
(2008/10/25)
矢立 肇福井 晴敏

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バナージ-ジンネマン関係のドラマはいい。知り合った人間を殺してしまったことに茫然とするバナージを、いろんな意図を含みつつも建て直そうとするジンネマン。バディものを得意とする作者の面目躍如だ
これまでいろいろ経験しておいて、バナージが案外タフになっていないのは不自然な気もしなくもない
が、それはバナージを完全な“戦士”にさせたくないという作者の意図を感じる。なるべくニュートラルの位置で動かしたいというか。で、それを可能にする強力なスパロボを持たせる
ここらあたりが、なんらかの立場に引きずり込まれてサバイブさせられる富野ガンダムとの大きな違いだろう。ユニコーンは、非富野ガンダム作品に性質は近いと思う(あるいはZZ!?)

おそらく構成は、月刊誌連載のまま。マリーダがニュータイプ研究所で強化される部分が、やけに分けて書かれている。単行本で通して読んでみると、ちょっと違和感がある。最後の場面に時系列を合わせるにしてもまとめて書いてくれる方が良かった
さて問題なのは、シャンブロによるダカール・テロ!
これでラプラス事件は宇宙世紀史上に残る大事件となることが確定した。連邦の首都で大虐殺なんて、もう0083を越え、逆シャアに匹敵する“消せない事件”だ。ユニコーンが先々どういう位置を占めるか分からないのに、良くサンライズが許可したものである
事件の顛末もどうにも良くない。明らかに9.11を意識したテロなのだが、その首謀者マハディが軽いのである。どうにもステロタイプなテロリスト像なのだ
実際のビン・ラディンらテロを指導する者たちは、自身洞窟を転々とし十年単位戦い続ける。9.11は稀に見る大惨事だったが、テロリストたち自身は持久戦志向である
かなり先を見据えた戦いを仕掛けるはずで、マハディのように発作的に全てを賭けちゃうのは日本人的すぎる。自爆テロを仕掛けるのは下っ端の鉄砲玉だしね(一巻のテロはちゃんとそうだった)
国際問題を扱うには認識が不足しているとしか言えない。小説が時代を超えるものと考えるなら、余り時事ネタに縛られず、宇宙世紀に徹して欲しかった。富野ガンダムは元々そうなんだから・・・
とはいえ、テロの被害の描写は見事すぎる。お得意の爆発シーンは凄いし、人がいろいろな死に方をするところをまざまざと見せつけるように描く。作者なりには覚悟して書いたのだろうなあ

あと、大事なところはロンド・ベルを率いるあのひとが出て来たことかな。鈴置ヴォイスを想像して読むと、雰囲気が出まくり



次巻 『機動戦士ガンダムUC 7 黒いユニコーン』
前巻 『機動戦士ガンダムUC 5 ラプラスの亡霊』続きを読む
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『フリッカー、あるいは映画の魔』 T・ローザック

実家で見つけたミステリー本。どこが選んだのか分からないが、98’ベストミステリーらしい(複数ある?)

フリッカー、あるいは映画の魔〈上〉 (文春文庫)フリッカー、あるいは映画の魔〈上〉 (文春文庫)
(1999/12)
セオドア ローザック

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フリッカー、あるいは映画の魔〈下〉 (文春文庫)フリッカー、あるいは映画の魔〈下〉 (文春文庫)
(1999/12)
セオドア ローザック

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筋金入りの映画マニアのジョナサンが、伝説的な映画監督マックス・キャッスルの秘密を数十年かけて追う
このジョナサンは作者と同じUCLA(カルフォルニア大学ロサンゼルス校)出身であり、物語の途中までは自伝的に読める
特に導入は赤裸々のそれに見え、簡単に引き込まれてしまう
とにかくいろんな映画が作中に取り上げられていて、有名どころもあれば、サイレント時代の知られざる名作も・・・(ベラ・ルゴシの名前が何度か出てきたけど、エド・ウッドの映画はボロカスw)
圧倒的な映画知識が散りばめられる中、架空の映画監督とその映画、スタッフ、女優が絡んでくるもんだから、どこまでが本当で嘘なのかが判然とせず、まさにミステリー
マックス・キャッスルの実在性を高めるため、『市民ケーン』のあの人を引っ張り出すほど手をこんでいる

*ちなみ、ジョセフ・コンラッド『闇の奥』は、コッポラがベトナム戦争に舞台を変えて『地獄の黙示録』に翻案されたそうだ

いろんな魅力があるこの小説だが、主人公と、共に小さな映画館を営むクレア、シャーキーの対比が面白い。それぞれが違った種類のマニアなのである
クレアは映画の歴史、成り立ち、政治性を考慮し、真っ正面からその物語を味わおうとするインテリ
シャーキーはB級映画のくだらなしさぶり、俗悪ぶりを讃える“反正統派”
主人公は二人とは違う独自の視点で映画の技術、映像効果を探求する特撮マニア
この三者の関係性は、創作物に関するマニアのすべてを物語っているように思える。いわば、オタクの類型だ
ひとことでいえばそれぞれ“物語”“感覚(反物語?)”“技術”だろうか。何か作品について考えるときの、基本的な三つの姿勢なのだろう
(ちなみに僕の場合だと、“物語”“感覚”が強めで、“技術”は控えめかな)
キャラとしてもシャーキー、クレアはイケている。シャーキーの悪趣味ぶりは抱腹絶倒だし、クレアの舌鋒は人をずたずたに切り裂くがウィットにとむ。二人が絡んでいる部分は腹筋崩壊レベルである

作者はとにかく映画が好きだ。三者の姿勢について優劣はつけないし、俗悪映画だって認めている
だけど、余りに過激な映像効果のものが巷にあふれていることについてはちくりと批判する
物語のなかでも主人公のナニ(!)が洒落にならないことになってしまって・・・
この小説、映画のことだけに止まらず、終盤は想像を絶する超展開に突入(笑)。これは間違いなく傑作だ

08'12/25 少し加筆 
11’11/19 大幅に再編集
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『ローマ人の物語 20 悪名高き皇帝たち(四)』

まずは手術前に読み終わって、感想を書いてなかった分


ローマ人の物語〈20〉悪名高き皇帝たち(4) (新潮文庫)ローマ人の物語〈20〉悪名高き皇帝たち(4) (新潮文庫)
(2005/08)
塩野 七生

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キリスト教徒を虐殺したことで最も悪名が高い第五代皇帝ネロ。母アグリッピーナの策謀により16歳(!)で即位した彼だが、最初の五年間は近衛軍団長ブルスとローマを代表する哲学者セネカの補佐もあって「善政」との評価も高い
特に最大の仮想敵国パルティアとの和平が一番の実績。属国だったアルメニア王国の王にパルティアの王族が就くことを黙認し、東部国境に長期にわたる平穏をもたらす
治世全般を通しても、実績面では失点が少ないのだ

が、彼にとって致命的にだったのは、市民と兵士たちの支持を失ったこと。生涯を通してスキャンダルまみれだった彼は、周囲を畏怖させることも、尊敬させることもできなかった
独裁者の地位は孤独らしい。疑心にかられた彼は、治世前半において実の母親を暗殺してしまうし、師匠ともいえるセネカやパルティアとの和平に尽力したコロブロなど有力な司令官を反逆者として殺してしまう
過度ともいえるギリシャ文化への傾倒もまた、軍団兵から皇帝に相応しくないとみなされていて、司令官殺しはそれに拍車をかけた
結果、ガリア軍団の蜂起を招き、慌てた元老院、市民たちはネロを見放して、彼は自死に追い込まれてしまう
政治家たる者、ただ政治実績を上げるだけでなく、人心を掌握し下々を安心させることも大事な責務。ネロは、人のメンタル面への配慮が欠けていた、また余裕そのものをなかったようだ。簡単にいえばリーダーの器ではなかったのだ
ローマ大火での対応といい、ヒドイヒドイ。みんな不安な毎日は送りたくないものな
これでアウグストゥスの血を引く者は途絶え、「ユリウス・クラウディウス朝」は途絶える。皇位継承の基準がなくなってしまって、帝国は大混乱に陥る・・・

作者はローマの帝政を、元老院と市民とのチェック機能が働いた政治体制と見て高く評価しているが、ネロの顛末を見ていてもそうは思えない。あくまで皇帝が政治的方便で「第一人者」を演じてみせたときにのみ、そう見えるだけのフィクションではないのか
どちらかと言えば、軍団兵こそが皇帝勢力の母体であって、彼らの支持があってこそ皇帝の地位が盤石になる。そして軍団兵イコールローマ市民であって、軍団兵は実は平民の声を代弁している、というところがむしろ帝政のキモだと思う
ティベリウスの時代から元老院をスルーする政治は成り立っているんであって、元老院が現アメリカの議会のような存在感を示しているとは言い難い。日本史であてはめると、軍団兵=武家元老院=公家、と思ってしまうがどうだろう?

それにしても、CIV4の指導者にもなったブーディカってば、単なる一揆に担がれた人だったんだな。その割にゲームのブーディカは存在感ありすぎだぞ


次巻 『ローマ人の物語 21 危機と克服(上)』
前巻 『ローマ人の物語 19 悪名高き皇帝たち(三)』
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兄弟ブログの新設

競馬予想等を行っていた兄弟ブログを引っ越しすることにしました
その名も淀夢庵風流記(!)。元ネタの方はただ今読んでいる最中です(汗
内容は今までと同じであります

ローマは一日にして奈良漬けの方は、一応記事を残しておきます
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実家にいる間に買ったCD

その一。DMCのクラウザー様推奨(?)のカヒミ・カリィのアルバム

MY FIRST KARIEMY FIRST KARIE
(1995/01/25)
カヒミ・カリィ

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なるほど、かなり趣味のいい音だ。英語とフランス語のウィスパーヴォイスが心地いい
ただ姉に聞くと他のアルバムも同じ調子だそうで、買い集めるまではどうか。どっちかというと、公私ともにパートナーだったという小山田圭吾の方が気になる
趣味が良すぎて尖ったところがなく、個人的には嵌りにくい感じ


その2。陽水のベスト

BEST BALLADEBEST BALLADE
(2008/12/10)
井上陽水

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GOLDENBESTと被る曲も多く、聞いてみると新録は「背中まで45分」のみのようで残念
せっかく選曲はいいのになあ
マイナーな曲が何本か入っているけど、そのために買うほどではないかな
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帰還

兄弟ブログをお読みの方はお分かりだと思いますが、先々週に脱腸手術を受けておりました。本日、実家からようやく帰還。入院中にだいぶ本を読みましたので、ぼちぼち更新していきます
一身上の都合で暇になってしまったので、これからは更新頻度は上がるかもしれません(苦笑)
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『夢の守り人』 上橋菜穂子

今回はタンダとトロガイの「夢世界」冒険

夢の守り人 (新潮文庫)夢の守り人 (新潮文庫)
(2007/12)
上橋 菜穂子

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バルサの世界にとって、「夢」は“魂の旅だ”。その夢の世界へ行ったきり魂が帰ってこない人が続出する事件が起きて、呪術師師弟がその解決に乗り出すというのが話の筋
夢世界への冒険というのはよくある話だけど、作者は実地でシャーマン達を取材したこともある研究者であり、夢世界に入る手順にも説得力があるし、そのイメージも美しい
ただ、魂が主体となる夢世界内は、どうしても最後は「思いの強さ」がものをいう、おなじみの展開で収まってしまった感はある(これは仕方ないか)
とはいえ、「思いの強さ」合戦は、作者の力量もあって大いに盛り上がる。トロガイと夢の番人「花番」との過去が明かされ、自らが「母」でもあることを思い起こした老呪術師と「夢世界」を破壊しようとするダークマザー(!?)との対決はドラマチック!
魂同士の話なだけに泣かせる話としては、シリーズ一かもしれない
少し甘い部分もあるけど、このドラマの強度は確か

ゲストキャラである歌い手ユグノは、凄い才能を持っているが性格がユルい
最後、トロガイは彼に“夢世界の種”を渡してしまうんだけど、それでいいの?彼が反省して成長しても、また同じようなことが繰り返されるかもしれないのだが・・・
でも彼のユルさは好きだ
守り人シリーズは、完成度が高いんだけど、少し“抜けた”ところもある。でもそれがいい味になっている
きっと、作者の人間観を反映した、「完成された未完全」なのだろう
続きを読む
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『ローマ人の物語 19 悪名高き皇帝たち(三)』

本書は第4代皇帝クラウディウスの治世


ローマ人の物語〈19〉悪名高き皇帝たち(3) (新潮文庫)ローマ人の物語〈19〉悪名高き皇帝たち(3) (新潮文庫)
(2005/08)
塩野 七生

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歴史の研究に没頭していたクラウディウスは、政治生活とは無縁なまま五十代で最高権力者についてしまった。しかし、彼は書物を通して培った見識で、的確な判断力を持っていた。最初の官僚制とも言われる秘書集団を組織し、自らの足らざるところを補い、先帝カリグラが傾かせた国家財政の再建に成功する。彼の時代にグレートブリテンへの遠征に着手している
政治実績だけを見れば、非の打ち所のない治世の名君というところ。そんな、彼が何故、悪評を受けるのか

悪名の原因は家庭生活の失敗に尽きる。最初の皇后メッサリーナは、政治の世界に没頭する夫に愛想が尽かせて放蕩生活。わざわざ遊女に扮して男を求める有り様だ(史実だろうか?)。ひいては公人の身でありながら、元老議員と重婚の罪を犯してしまい獄殺されてしまう
今のイタリアでも「メッサリーナ」は「尻軽女」を意味で使うらしい
次の皇后アグリッピーナはあのカリグラの妹にしてゲルマニクス夫人アグリッピーナの娘(同名ばかりでややこしい)。母同様、アウグストゥスの血を意識する彼女には、恐るべき野心があった。息子ネロを皇帝にして自ら政治を執ることである。そのために秘書集団の有力者を味方につけ、元老院、近衛軍団に地固めをしていく
妻の意図を何も知らないクラウディウスは、ある日キノコ料理にあたって死んでしまう。当時からアグリッピーナを疑う噂はあったが、何事もなかったかのようにネロが第五代皇帝につく
クラウディウス自体が棚ぼたで皇帝になってしまっただけに、周囲も“中継ぎ皇帝”と見ていたということか
ナナミンも彼には人を「畏怖」させる素養が欠けていたとする。これだけの政治実績を残した人が“ただ者”なはずなわけはないが、周囲や妻たちから馬鹿にされた人という悪評を残す結果になってしまったのだ

しかし、真面目に仕事しているだけなのに、背後から刺されるとは可哀想。政治の世界は怖いな


次巻 『ローマ人の物語 20 悪名高き皇帝たち(四)』
前巻 『ローマ人の物語 21 悪名高き皇帝たち(二)』
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