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【DVD】『イヴの総て』

ダブルヒロイン扱いで、アカデミー主演女優賞を逃したそうな




ブロードウェイの大女優マーゴ・チャニング(=ベティ・デイヴィス)を追いかけていた女優志望のイヴ(=アン・バクスター)は、脚本家ロイド(=ヒュー・マーロウ)妻カレン(=セレステ・ホルム)に気づかれ、マーゴの楽屋へ連れられる。戦争で夫をなくしたというイヴの話にマーゴは涙し、自分の付き人として雇うのだが……

『サンセット大通り』とオスカーを分け合ったという作品
こちらは演劇界、ブロードウェイの裏側を描いた業界物で、手段を選ばず這い上がろうとするイヴが、マーゴの付き人という立場を利用して関係者と付き合い、のし上がっていく姿を描いている
冒頭に演劇界最高の賞であるセイラ・シドンス賞(架空)の授賞式があり、トロフィーが渡される瞬間にストップ、ここからそこに至るまでの半年間を振り返っていく
それはすべて関係者の視点からで、いろんな角度からイヴという“怪物”の正体が明らかになっていくのだ

当初のイヴはマーゴの崇拝者を演じる。何から何までマーゴの考える先を読んで行動し、その機嫌をとりつつ関係者の支持を得ていく
しかし話が進むごとに、徐々に本性が。マーゴそっちのけでその代役の話を進め、マーゴがドライブ先のトラブルで出られなくなると、見事に代役を演じて一部に好評を博す
そして、いつの間にやら脚本家のロイドを篭絡し、マーゴ向けに書かれた芝居の主演を射止めるなど、どこかの戦国大名みたいに恩人の立場を奪ってしまうのだ
世代交代は世の常だが、積極的に仕掛けるイヴには、見た目とのギャップから戦慄すら覚える

終盤、トロフィーをもらったところで終わると思いきや、そこから先がこの作品の凄いところ。イヴが自分の部屋に帰ってくると、いつの間にやら演劇部の女子高生が忍び込んでいた
そして、イヴに甲斐甲斐しく仕え始めるが、関係者の名前を来る前に知っているとか、これまたとんでもない玉。大女優然にタバコをスパスパ吸うイヴに、鏡の前でその衣装をまとってトロフィーを持つ女の子という構図は、序盤のマーゴとイヴそのもので、生き馬の目を抜く歴史が繰り返されることを暗示している
実際に、新人女優役にマリリン・モンローが出ていて、本作の跡に躍進していったことも、映画に華を添えたといえよう


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【DVD】『ローラ殺人事件』

こんな美人が最後まで出て来ないはずもなく





美貌で評判のコピーライター、ローラ・ハント(=ジーン・ティアニー)が散弾銃で頭を吹き飛ばされて殺された。ニューヨークの殺人課刑事マクファーソン(=ダナ・アンドリュース)は、ローラの後援者だった著名な作家ウォルド・ライデッカー(=クリフトン・ウェッブ)、結婚直前だった婚約者シェルビー・カーペンターズ(=ヴィンセント・プライス)らと会い、彼女が広告業界で階段を登る過程を知るが、同時に絵に飾られた“幻のローラ”に惚れ込んでいく

タイトル的に外せないと思って(笑)
冒頭はウォルドの独白から始まり、マクファーソン刑事が訪ねてくる。戦前の映画らしく、テンポのよい台詞回しでさくさくと進むから、1時間28分の尺でも展開に起伏がある
ローラを巡るサスペンスでありながら、マクファーソン刑事、パトロンのウォルド、婚約者シェルビーが、それぞれローラという存在に魅せられて振り回されていくラブストーリーにもなっている
登場人物がお互いを気遣って、事件の解決を困難していくところなどが巧みで、最後までハラハラさせられた

はたして、『ツイン・ピークス』に影響があったのかだが、これはわからん(笑)
WIKIを読んだところ、アカデミー賞にも多数ノミネートされ、40年代のフィルム・ノワールのなかでも特にカルト的評価が高い作品らしい。知っている人は知っている名作なのだ
原題はシンプルに『Laura』で、冒頭に美女が死んでいるというのは(顔が吹き飛んでいますけど)、何らかのインパクトを残したかもしれない
ローラが男どもを虜にする”ファム・ファタルであり、業界の父的存在であるウォルドと離れようとしていたという構図も、なにかの因果を感じなくもない


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【DVD】『パヒューム ある人殺しの物語』

さすがにモデルはいない模様




18世紀のフランス。ある男が連続殺人の罪で裁かれようとしていた。その男、ジャン・パティスト・グルヌイユ(=ベン・ウィショー)は、1737年のパリ、魚市場で産み落とされた。孤児院で拾われた彼は、13歳になったときに皮なめし職人へ売られ、商品の運び手としてパリの街を知る。匂いに対する異常な感覚と執着を持つ彼は、果物を売る少女(=カロリーネ・ヘルフルト)を追いかけ、勢い余って殺してしまう。その時に嗅いだ匂いを再現・保存すべく、香水職人のバルディーニ(=ダスティン・ホフマン)に弟子入りするが……

なかなかにぶったまげた物語だった
映画は2006年公開(日本は2007年)ながら、原作の小説は1985年発売で、本国のドイツで大ベストセラーとなり、全世界でも1500万部売れ、1987年に世界幻想文学大賞を受賞と、かなり有名な作品なのだ
しかし、原作者はキューブリックかミロス・フォアマンでないと作品世界を再現できないとして、映画化の権利を得るのに時間がかかったようだ
さて、作品はというと、究極の香水を作るために女性を狩るという殺人鬼を主人公に据えたクライム・サスペンス。ただその目的を達成するために行動し、とんでもない事件を巻き起こしていく
そして、冒頭のシーンにもどって処刑されて幕……というのが、普通の作品なのだが、ここから斜め上へハッテンしちゃうのが本作の本当にたまげるところよ!
原作再現なのだけど、これは映画から観て正解だった

ヨーロッパ映画だけあって、18世紀のパリや地方都市への考証がしっかりしている
主人公が育った魚市場の残飯に群がる蛆やネズミ、過酷な孤児院での環境と腐敗、平均寿命5年という皮なめし職人の現場、橋の中になるバルディーニの作業場と、非常に臨場感があって眺めているだけで心が沸き立つ
強力な嗅覚だけを尖らせて、人と交わらないヴィランが生まれる背景としても、説得力が出てくるのだ
クライマックスへ近づくに連れ、主人公が超人化していくように観えてしまうが、小説だと香水の街グラースにたどり着く前に、殺しの役に立ったり、相手の印象を変えたりする香水を編み出していたらしい。割愛で生まれる飛躍もまた、本作の持ち味といえよう
クライマックスの狂乱の現場において、すべての人間を下したものの、同時に果物売りの少女に求めていた自分の感情を発見し、そこへたどり着くことは永遠にないと知って涙を流す。なんら共感を呼ばない主人公が、人間にもどった一瞬であったろうか
ラストは……凄惨な聖餐って感じですかねえ。やりたい放題でも、ここまでぶっ飛ぶとどこか爽快感すらある。そんな危うい作品だった


アイドルグループは関係ない

【DVD】『ストレイト・ストーリー』

モデルの御本人は連載の2年後に死去




娘のローズ(=シシー・スペイセク)と二人暮らしの老人アルヴィン・ストレイト(=リチャード・ファーンズワース)は、腰が悪く倒れても1人で立ち上がることもできない。ある嵐の夜、10年前に絶縁した兄ライル(=ハリー・ディーン・スタントン)が倒れたという知らせを聞く。車を運転できないアルヴィンは一念発起し、芝刈り機を改造して荷物を引っ張るトラクターとし、500キロ先のウィスコンシン州マウント・ザイオンを目指す旅へ出る

1994年にニューヨーク・タイムズで連載されていた、実話をもとにした映画
タイトルは実名主人公の名前からだけど、構成もストレートなロード・ムーヴィーとなっている
仲違いした兄と会いに行く旅で、妊娠して家出した女の子、通勤でやたら鹿に当てられてしまう女性、自転車のイベントに参加した若者たちなど、道行く人と出会い、会話のなかで相手の身の上に触れ、自らの長い人生の中の出来事を語る
ロード・ムーヴィーに求められることが、素直に盛り込まれているのだ

あれほど奇をてらった作品を撮る監督が、なぜこんな普通の作品(!)を作ったかというと、これも一種のバランス感覚ではないだろうか
『ツイン・ピークス』の中でも、奇怪な事件を扱う一方で、地域の美しい自然変わっているが根は素朴な人々への愛が感じられた
本作でも主人公のアルヴィンは、500キロの道のりをわざわざ芝刈り機を改造した車でひと月以上かけて、兄を訪ねに行く頑固者。兄と自分の健康状態を考えると、一刻も早く会うためには自動車に乗せてもらって行くのが常識というものだろう
しかし、仲違いした兄に謝罪の姿勢を示すために、時速8キロのトラクターで山川越えて会いにいってしまう。愛すべき変人なのである
娘のローズもまた、吃音症をもつ少し変わった女性。4人の子供がいたのに、友人に預けた際に火事に巻き込まれてしまった時に、役所の判断で子供を施設に取り上げられてしまったという
こうした普通という言葉の中に収まらない個性、社会から弾かれそうな変わり者への優しさは、リンチの作品に共通するところだろう

【DVD】『サンセット大通り』

ゴードン・コールは、ノーマの車を借りたいだけのおっさんでした




ロサンゼルスのサンセット大通りに面する大邸宅で、プールに銃で撃たれた男の死体が浮かんでいた。事件の発端はその半年に遡る
売れない脚本家ジョー・ギリス(=ウィリアム・ホールデン)は家賃を滞納するほど追い込まれていた。必死に関係者へ当たるが仕事はもらえず、取り立て屋に追われて廃れた豪邸へと逃げ込む。そこはサイレント時代の大女優ノーマ・デズモンド(=グロリア・スワンソン)が所有していて、スターの幻想を捨てきれずに暮らしていたのだった

『マルホランド・ドライブ』を観たら、チェックせざる得まい
業界ものは高い評価を受けやすいそうだが、これはその中でも特別。実際にサイレント時代の大物女優だったグロリア・スワンソンを主演に、執事役に同じく戦前から監督・俳優として活躍するエリッヒ・フォン・シュトロハイム(ジョジョの某軍人の元ネタ)本人役でセシル・B・デミル監督が出演などなどキャストも贅を極めている。グロリアは久々の映画復帰であり、シュトロハイムもデミルも彼女の主演映画を撮っているという間柄なのだ
そんな背景を抜きにしても、映画として普通に面白い
最初にオチが明かされているにも関わらず、そこに至るまでの過程に引き込まれていくのだ。ナレーションの多用も、画面で伝えられる映画ではマイナスになりやすいと思っているのだが、本作に限っては別でむしろ味になっている。悲劇的なドラマにクールな視点を提供している

『マルホランド・ドライブ』のような謎はまったく残らないのに、ミステリアスな世界が作られている
主人公が逃げ込んだ先は、姿を見せなくなった往年の大女優の邸宅で、外観は廃館のように荒れ果てている。そして、こちらを見透かすように佇む偉丈夫の執事
中には、彼女の思い出で飾られた豪華な室内屋敷そのものの有り様が主人の実質を表しているかのようだ
「私は大物よ。映画のほうが小さくなったのよ」とサイレント映画を称え、音つきの映画をけなすものの、ノーマの本音はハリウッドへの復帰。主人公と関係が深まると、ネズミが巣食っていたプールに水が湛えられ、彼女が蘇り始める
ゴードン・コール(!)からの電話を、セシル・B・デミルからの出演依頼と勘違いしてことから、復帰への涙ぐましい努力を行うのだ
皆が待望する大女優という幻想こそが彼女を支えていて、転落したスターの悲哀が描かれていく
その一方で、これから脚本家を目指して這い上がっていこうとするベティ・シェーファー(=ナンシー・オルソン)のような存在も。女優を志したが、「鼻が悪い」と言われて整形したら「特徴がない」とオーディションに引っかからなかったという過去も、今の変わらぬ業界の裏側なんだろう
これだけ面白ければ、オスカーは独占かと思いきや、同年に同じ業界物の『イヴの総て』があって分け合う形になったとか。こちらも要チェックですな


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【DVD】『デューン/砂の惑星』

宇宙で『アラビアのロレンス』




宇宙を束ねる銀河帝国は長い星間移動に不可欠な香料「メランジ」を独占しており、それが支配の源泉としていた。皇帝シャダム4世(=ホセ・ファーラー)は、警戒するアトレイデス大公(=ユルゲン・プロホノフ)にあえて、メランジを唯一産出するアラキス星、通称“デューン”の統治を託す。その背後を大公家のライバルであるハルコネン男爵(=ケネス・マクミラン)に突かせるためだ。出港前夜、大公の息子ポウル(=カイル・マクラクラン)は奇妙な夢にうなされるが……

デヴィッド・リンチ興行で大敗北を喫した作品
原作はSFの歴史に残る名作とされるも、その制作は企画と断念を繰り返し、リンチの前にリドリー・スコットが内定していたのに自ら降板と、とても順調とは言いかねる制作環境だったようだ
受けなかった理由は、見ればすぐわかる。1984年公開なのだが、『スター・ウォーズ』第一作から7年後にこれをSF大作だよ、と見せられるとそりゃ辛い
そもそも原作の世界観からして、パソコンとロボットを廃してSFと称しながらも近現代の資源戦争・帝国主義を描いた作品であり、未来のテクノロジーを感じさせるものが少ないのだ
特撮のボロを出さないためかもしれないが、普段は暗めで地味な絵作りも受けの悪さを助長したことだろう

原作の小説自体はいろんなジャンルに影響を与えていて、上述の『スター・ウォーズ』しかり、砂漠化した世界に巨大な虫がいる設定は『風の谷のナウシカ』を思い起こされる。くしくもナウシカの公開は、本作と同じ1984年だ
砂漠に巨大な虫(ミミズ、芋虫、爬虫類etc)がいるというのは、遊牧民で古くから伝えられる伝承にあるのだが、これがRPGの定番となっているのにも本作が一役買ってそうだ
映画は星間移動すらできる高度な文明に銀河を統べる帝国とスケールは大きいのだが、主な戦いの舞台は惑星デューンに集中する
そのデザインは中世ヨーロッパの貴族社会を思わせ、“声”で人を操る道女や超人の存在から、SFというよりスペースファンタジーであることは明らか
『スター・ウォーズ』に比べるとB級感は漂うのだが、監督独特のセンスは十分、爪痕を残している。お気に入りは、ポウルの妹アリア(=アリシア・ウィット)が男爵を倒したあとに外に出た場面だろうか。薄暗い場面が多いなか、陽光のなかに毅然と立つ姿が凛々しい
ポウルと決闘するハルコネン男爵の甥フェイドスティング(!)が演じるなど、いろいろ見どころはある作品なのである




【DVD】『マルホランド・ドライブ』

濃厚なラブシーンあり。インティマシー・コーディネーターの普及で、どうなるんでしょうねえ




スター女優を目指してロサンゼルスにやってきたベティ(=ナオミ・ワッツ)は、大女優である叔母ルース(=マヤ・ボンド)の邸宅に仮住まいすることに。そこには謎の女(=ローラ・ハリング)が入り込んでいて、リタ・ヘイワースのポスターから“リタ”を名乗った。交通事故にあったリタは記憶喪失に陥り、謎の大金と青い鍵の入ったバッグを持っているだけだった。ベティはオーディンションを受けながら、リタを助けようとするが……

いやはや難解ホークスな映画だった
冒頭は監督の好きな50年代の服装した男女によるダンス(ジルバ!)に始まり、若い女優(ナオミ・ワッツ)を挟む感じで、老夫妻が立ち並ぶイメージがフェードインしてくる
そして、赤いベッド「マルホランド・ドライブ」の看板(実在する道路)が浮かび、タイトルコールの代わりとなる
OPロールが終わるや、夜道をリムジンが走る画面に。“リタ”は同乗した男に銃を突きつけられるが、若者の暴走車との追突事故に巻き込まれたことで一命を取り止める。そして、記憶をなくした彼女はベティの叔母ルースの高級住宅街にたどり着くのだ
そして、この可哀想な“リタ“を純真なベティが助けていくうち、恋に落ちていくというのが前半の物語だ

当然ながらそんな調子で終わるはずもなく(!)、前半から散りばめられていた不可思議な描写の数々が結びついて、後半には大どんでん返しが待っている。この前後半の落差が凄まじく、2時間30分近い尺もまったく気にならなかった
堂々と「サンセット通り」の名が出てくるように、監督お気に入りの映画『サンセット大通り』の再演ともいえ、“リタ”が大女優の家へ逃げ込んだのは、売れない脚本家がサイレント時代の大物女優の家に駆け込む展開のオマージュとなっている
とはいえ、『ツイン・ピークス』(以下『TP』)のファンからすると、それを意識したかのような超常的な演出だろうか。ハリウッドの黒幕として現れるミスター・ローグ(なんちゅう、ネーミングだ)は、『TP』で“踊る小男”を演じたマイケル・J・アンダーソンが演じる
また、カフェレストラン“ウィンキーズ”の裏に潜む、顔を真っ黒に染めたホームレス(?)は、やはり『TP』の悪霊“ウッドマン”を彷彿とさせる
極めつけは物語が反転するきっかけとなる、「クラブ・シレンシオ」の深夜劇場で、赤いカーテンがバックに垂らされ、夢と現実の境界のような役割を果たすのだ

管理人は知らなかったが(苦笑)、映画公開時にはリンチ監督は、ストーリーを理解するための10のヒントを掲げていた
正直その全てを理解したわけではないが、それをごく普通に踏まえると、前半部分はダイアン・セルウィンの妄想・願望・夢であり、後半に現実の破滅が露呈したと考えるのが妥当だとは思う
普通の監督ならそれを踏まえた上で、それが正解ですよとどこかで確証を見せるものだろう
が、この作品ではそれが曖昧で、違う想像すらさせるところに絶妙である

後半が現実というのなら、ダイアン・セルウィンが、同性の恋人だった自分を捨てて女優としてのし上がっていくカミーラ・ローズの殺害を依頼する場面があるが、その相手となる殺し屋ジョー(=マーク・ベリグリノ)がどうも嘘くさい存在なのだ。売れない女優が遺産は入ったと大金を持っているのもご都合で(遺産が入ったなんていうのはいかにも眉唾だ)、後半すら一つの悪夢ではないかと想像したくなる
殺し屋ジョーは任務を達成すると、依頼人に青い鍵を残す。ということは、バッグに青い鍵を持っていた“リタ”は、なにか依頼していたのではないか
物語を反転させるきっかけとなる、「クラブ・シレンシオ」の帰りに知らぬ間に入っていた青い箱を青い鍵で開けるときにベティは姿を消し、“リタ”が開ける。青い箱がダイアンの夢を晴らす箱ならば、開けるのはダイアンの化身であるベティではないのか
と釈然としないところもあり、どこかでダイアンが自分の運命をベティとすり替えたのではと妄想のひとつもしたくなる

実のところ、どちらが本当でどちらが夢かなど、大した問題ではないのかもしれない。だいたい映画そのものはフィクション、夢の世界の話ではないか
むしろ、明るい未来を信じて階段を登っていくベティと、夢破れ恋人にも捨てられてボロボロになっていくダイアン・セルウィンはコインの裏表の存在であり、その2つのドラマをもってハリウッドの栄光と破滅、光と闇を表現したことがキモであろう
とここまで言っておいて、『サンセット大通り』をまだ見ていないので(エッ、機会があったら見ようと思います


元ネタの映画→ 【DVD】『サンセット大通り』

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【DVD】『ロスト・ハイウェイ』

刑事事件無罪、民事有罪のO・J・シンプソン事件をヒントにしたとか
くしくも、ミステリーマン役のロバート・ブレイクも似たような目に




ある日、ジャズ・ミュージシャンのフレッド(=ビル・プルマン)は、インターホン越しに「ディック・ロラントは死んだ」と告げられる
そしてある朝、フレッドの妻レニー(=パトリシア・アークエット)は、玄関先にビデオテープが置かれていることに気づく。それは我が家が撮られたものだったが、次に届けられたビデオには、寝室の二人の姿が写っていた
いちおう警察に届けた後に、友人アンディ(=マイケル・マッシー)のパーティに出ると、白塗りの不気味な男“ミステリー・マン”(=ロバート・ブレイク)に声をかけられて……

タイトルからロードムービーかと思ったら、そんな代物ではなかった
冒頭のオープニングロールが真夜中のアスファルトを疾走するものだったが、デヴィッド・リンチらしい謎めいたサスペンス・ドラマなのだ
序盤はビデオテープが届けられ、誰かに観察され追い詰められていく感じにとおもいきや、3本目のビデオテープからストーリーは急旋回!
テープを警察に見せた後の結果に、まさかの主人公交代と、想像の斜め上を行く展開に悶絶である
主人公が“異界”に突入する際に、赤いカーテンがちらついたり、チリチリと電気の火花が飛ぶ音がするなど、『ツイン・ピークス』的な演出にニンマリとしてしまう

以降、管理人が頭を整理するためにネタバレを含む。いつものことだが
3本目のビデオテープから妻レニーを殺害したとみなされたフレッドは、裁判で有罪が確定し電気椅子での死刑が決まってしまう。しかし、独房で死刑を待っていたフレッドは頭痛に悩まされるうちに、なぜかまったくの別人である青年ピーター(=バルサザール・ゲティ)に入れ替わっているのであった
ピーターは身元が判明したことから釈放され、実家に戻って自動車の整備工をやり直すところから、第二のドラマが始まる(ちなみにカーショップの先輩役にリンチ作品のジャック・ナンスが登場。撮影後に急死したため、これが遺作となる)
ピーターはその腕の良さからマフィアのミスター・エディ(=ロバート・ロッジア)の信頼を得るが、同時にその愛人であるアリス(=パトリシア・アークエット、二役)に一目惚れしてしまう
視点となるフレッドとピーターの二人の主人公に対応して、レニーとアリスが同じ女優がやっていることが物語の鍵で、彼女を取り巻く謎が終盤にかけて明らかになっていくのだ

厳密に考えると、ピーターとすり替わったはずのフレッドの肉体がどこに行ったかが気になる。まともに考えてしまうと、フレッドとピーターがフュージョンしちゃった感じなのである(苦笑)
時系列については、「赤い部屋」的な解釈で過去にも未来にも通じると考えられるので、怪奇現象が起こったところで過去への遡及などが起こったとすれば、いちおう納得はできるだろうか
最初にインターホンで告げてきた人間は誰なのか。細かい考証より、暗がりを疾走するミステリーを楽しめばいいのだ


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【DVD】『インランド・エンパイア』

ローラ・ダーンの身内がそこかしこに出演




女優ニッキー・グレイス(=ローラ・ダーン)の邸宅に、引っ越してきたという老婦人(=グレイス・ザブリスキー)が挨拶にやってきた。彼女は女優が役を得たことをなぜか知っていて、不気味な説話をぶちあげた末に、その映画には「殺人が起きる!」と警告する。彼女の予言どおりに、映画『暗い明日の空の上で』の主演が決まったのが、それは主役二人が謎の死を遂げて撮影中止になったといういわくつきの映画のリメイクなのだった

監督が監督だけあって、次々と違うストーリー上の人物が出てくる、分かりにくい出だし!
大まかな構想は決まっていたらしいが、見切り発車で製作に乗り出したために脚本を書きながらカメラを回すこととなり、監督すら完成したらどういう作品になるか分からなかったという(爆)
そうである以上、いったい何がスクリーンで起こっているのか分からないのも、やもえまい
ひとつ確かなのは、主演に抜擢された女優が相手役のデヴォン(=ジャスティン・セロー)と謎めいた映画の撮影にのぞむうちに、内なる世界「インランド・エンパイアに入り込み、様々な女性の境遇に立ち会っていく話だということだ
3時間の長い尺で、どこへ連れて行かれるか分からない状態に置かれ続けると正直、生理的に辛いものがあった
その一方で、デジタルカメラなのになぜかレトロに思わせる画質での作り方は、非日常空間なのに懐かしさを覚えさせる独特の作品世界には引き込まれてしまう

作中劇である映画の元のタイトルは『47』といい、ポーランドの説話を土台にした作品であり、主役二人が怪死してお蔵入りしたという噂のある作品だった
序盤には謎の老婦人に「必ず殺人が起きるはずです」と警告される。ちなみに婦人は「男の子が家から出かけると、さらわれて代わりに悪魔の子を残す。女の子は市場で迷子になり、裏の路地を抜けると宮殿に行けるのだが、それを思い出せない」という謎の逸話を残している
映画から入り込む異界「インランド・エンパイア」については、どこからどこまでかなのは非常に難しい。世界観が共通するとまでは言えないが、人気シリーズ『ツイン・ピークス』から得た着想がぞんぶんに盛られているのは間違いなく、ところどころに赤いカーテン、古い映画のなかのようなモノクロ世界、スタンドや照明の点滅など、シリーズに似た部分も多い

管理人が頭を整理するために書くと(苦笑)、作中劇においてニッキーはスーザンという人妻を、デヴォンはビリーという妻子持ちの男を演じるW不倫の関係に陥いる
撮影が進むうちに、ニッキーはスーザンとの境界をなくしてしまい、デヴォン=ビリーに同一化してのめり込んでしまい、現実に不倫しているかのような認識を持ってしまう
撮影を通じて突入した「インランド・エンパイア」の世界では、時間軸が混濁しており、「昨日あったことが明日になる」こともある。まるで『ツイン・ピークス』の異界「赤い部屋」のごとしだ
幸い、そこに住まうのは髭面のおっさんたちではなく、むちむちイケイケの若い女性たちで前途の希望はもちやすいが(笑)
スーザンはその異界で、うさぎの一家の寸劇(リンチ監督の会員制サイトのドラマ『Rabbits』から流用?)、フランスの娼婦と顧客、ポーランドから密入国して夫と子供からはぐれた妻、自傷癖のある女、強がるもDVを受けてそうな女などなど、様々な物語と交錯することとなる

おそらく元の「47」自体が「インランド・エンパイア」の体験に基づくものだからこそ、入り口になりえたのではないだろうか。最後まで謎なので、このブログらしく勢いよくネタバレしてしまおう
といっても、どこまでが作中劇の筋なのか現実なのか、判別不能なわけだが(苦笑)、家庭優先したビリーに振られ、全てをうしなったスーザンは、通り魔にドライバーに刺されて重傷を負う。ストリートで雑魚寝する人たち(裕木奈江!)に見守れながら、天に召される……
と、撮影をなんとか終えたところで、スーザンであることを終えたニッキーは、もう一度「47」の扉を開け、「インランド・エンパイア」に入る
そこで銃を手にした彼女は、後を追って入ってきた男を銃撃! すると男は異形の化け物に変化した(ツイン・ピークスに出てきそう)
やつこそがスーザンを刺した女性を催眠術で操っていたのか、テレビの画面を通じてニッキーとその女性は抱き合い、キス。青い光が天井から照らす中、離れ離れの夫婦が再会するなど個々の世界の悲劇が解消されていく
そして、老婦人までが姿を現して、彼女の予言どおりの位置にニッキーは座っているのであった。そして、エンドロールはあっちの世界のイケイケガールズ集まってお祭り状態!
『ツイン・ピークス』で、ブラックロッジからホワイトロッジに抜けると、こんな感じなんだろうな、と想像させるラストだった



↑いけいけガールズのテーマ。急に踊るよ


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【DVD】『ブルーベルベット』

ピート役のジャック・ナンス、ダイアン役のローラ・ダーンも出演




大学生のジェフリー・ボーモンド(=カイル・マクラクラン)は、故郷の町ランバートンに戻ってきた。父が謎の発作で倒れ、その金物店を手伝うためだ。父の見舞いの帰りに、空き地で石を投げていると人間の耳を見つけてしまう
知り合いのウィリアムズ刑事(=ジョージ・ディッカーソン)に届けると、彼の娘・サンディ(=ローラ・ダーン)からこの一件が、クラブ歌手ドロシー・ヴァレンズ(=イザベラ・ロッセリーニ)に関わっていることを知る。サンディを巻き込んで、ドロシーの部屋に忍び込んだジャフリーは、ドロシーとマフィアのフランク(デニス・ホッパー)の倒錯したセックスを目撃してしまうのだった

意外にも、ちゃんと解決した(苦笑)
デヴィッド・リンチ監督カイル・マクラクランを主演にすえての二作目の長編作品。林業中心の地方都市で、のどかな日常の裏に繰り広げられる異常な性愛や薬物汚染、警察の汚職が徐々に明らかになるという、後の『ツイン・ピークス』を思わせる雰囲気がすでにある
そして、ジェフリーの父が倒れる芝生にうごめく昆虫(発作の原因か?)の場面や、ドロシーのアパートの暗がりを歩くところジェフリーやフランクが暴力性を発散したときなどに、超常現象のような演出に魅せられる
筋書きがミステリーの古典的王道を辿っているだけに、単に表で見えている事件以上のものが、建物や町に隠れているのではないかと想像させられるのだ

SMを仕込まれたドロシーに、ブルーベルベットをくわえるフランクと異常な性愛が目立つ一方で、ジェフリーとサンディが対照的に清い
監督としては、カイル・マクラクランを後押ししたかったのか、その美しい裸体を惜しげもなくさらさせる。その前には、泥棒として忍び込まれたドロシーも魅せられてひれ伏してしまうのだ!
また、終盤には三角関係の危機に陥っても、誠意はサンディに通じてなんとかなってしまう。普通なら修羅場で潰れるところ、当代一のイケメンによる主人公補正で乗り切ってしまうのだった
人間の心のなかにある光と闇を美しい対比で描き、綺麗に丸く収まるのも『ツイン・ピークス』の後に見ると新鮮に思える。最後の最後までどこかで、ひっくり返らないか心配だったが(苦笑)


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