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『葬送のフリーレン』 第9巻・第10巻

徐々に戦いもヒートアップ




第9巻。さらに北を目指すフリーレン一行は、嵐すら起きる巨大な湖に、巨鳥が巣食う橋を通り抜けていく。聖雪結晶の採掘場とともに、噂されるのは黄金郷の伝説
その“生みの親”は七崩賢の一人、「黄金郷のマハトであり、すべての物を黄金に変える力を持つ
そして、マハトによって黄金の都市に変えられた城塞都市ヴァイゼには、第1級魔術師試験で同じだったデンケンが待っていた

「黄金郷のマハト」数十年、王国の顧問魔術師として仕えた異端の魔族。そんな彼にときの領主は「支配の石環」をかぶせて、都市の住人への「悪意を抱かぬこと」「仕えること」を要求した。しかし、魔族と人間には何が「悪意」か、「忠誠」かに大きな隔たりがあり、街の住人は殺され、黄金郷の噂を聞きつけたものは黄金に変えられてしまうのだった
マハトの作り出す黄金は、何人も加工できず、交換できないので実際の価値はない。なぜ、領主はマハトを仕えさせようとしたのか




第10巻。フリーレン「黄金郷のマハト」の秘密を握るために、マハトと都市ヴァイゼの過去に遡る
人間の感情に興味を持ったマハトは、ヴァイゼの貴族グリュックを気に入り、暗殺者として協力。グリュックが領主となってからは、宮廷魔術師として表舞台に立ち、彼の息子へ魔術を教える教官にもなった
その息子こそが、若き日のデンケンなのであった!
グリュックは魔族に頼った栄光からニヒリズムに陥りつつも、息子に希望を託していたのだ

後半にようやく、フリーレンは目を覚ます。ただし、マハトの魔法を解析するには、さらなる観察が必要と眠りにつくが、その間にソリテールという少女姿の魔族がマハトに接触する
彼女はマハトを閉じ込める結界を二ヶ月かけて解除。巨大な魔力を察知したフェルンたちは、マハトの黄金に包まれる前にと近くの住人を連れて避難
しかし、人間に生物学的興味をもつソリテールの魔の手が迫る。そして、デンケンとマハトの宿命の戦いと、急にバトルにギアがかかってきた
フェルンが魔法だけでなく、人外レベルの強靭さを持ち始めたところには笑ってしまうが、お話はずっとシリアスに流れる。はたして、勝負の行方は……


前巻 『葬送のフリーレン』 第7巻・第8巻

『呪術廻戦』 第21巻・第22巻 芥見下々

各地で戦い続く




第21巻。「死滅回遊」の東京第二結界では、秤金次が得点100を目指して奮闘。ペン先で描いたコマ割から未来を読む、漫画志望の術師シャルル・ベルナールを相手に、確率で未来が変わるパチスロの世界へ領域展開
大当たり中は無限に再生する術式をもって制した。ベルナールは島本和彦『燃えよペン』のノリなんだろうけど、どこをどう持ってきているかはよく分からない
一方で、パンダ先輩稲妻を操る得点100プレイヤー、鹿紫雲一(しかもはじめ)に、あっという間に内蔵(?)ごとやられてしまう。デフォルメされた場面は、パンダの中の世界のことで、窮地に追い込まれて出した“姉”がやられたことから、パンダの中から兄弟が消え、残機ゼロとなったことを表していると思われる

秤金次鹿紫雲の戦いは領域展開しても熾烈を極めるが、鹿紫雲が必殺の術式を温存したことで勝利
実際のパチスロは演出前に当否の抽選が行われていること、塩素ガスが空気より重く、上空で様子を見る秤に効くかとか、考証が微妙なところはあるが、そこはジャンプ漫画。ささいな整合性より、勢いが大事であろう
ただ、あまりに精密な異能力戦を追求しすぎると、活躍する場面というより、設定を読まされる“ハンターの罠”にはまってしまうので、これぐらいに留めてもらいたい




第22巻。舞台は鹿児島の桜島結界へ。そこには禪院家を壊滅させた禪院真希と、京都校の加茂憲紀が入っていて、呪霊となった禪院直哉と対決する
マッハ3で飛び回る能力を手にした直哉に圧倒されるが、刀を手にすると天下無双の剣豪に目覚める大道鋼、土俵を領域展開する河童・三代六十四と触れ合うことで、能力が覚醒。妹・真依から呪いを見る力を身につけつつ、呪力を持たない性質を生かして、あの伏黒甚爾に匹敵する戦闘力を得たのであった

一言でいうと、禪院真希の成長回。もう主人公でいいんじゃないかという、取り上げ方である。釘崎野薔薇は復活しても、枠的に二軍なのではなかろうか(苦笑)
冒頭では、桜島編の前日譚として京都の加茂家夏油傑の姿の“羂索(けんじゃく)”が登場。かつて”史上最悪の術師”加茂憲倫でもあったことから、第25代当主となることを宣言される。次期当主とされていた加茂憲紀は、アイデンティティを壊された状態で戦っていて、逆にそれが真希をフォローすることに専念できたようでもある
ラストでは、伏黒恵を連れる"天使”来栖虎杖高羽文彦が見つけて合流。五条悟の封印を解くために、来栖に取り憑く"天使”へ助力を願うが、その代わりに"堕天”退治への協力を頼まれる。虎杖はその"堕天”が両面宿儺のことと宿儺本人から聞かされるのだった


前巻 『呪術廻戦』 第19巻・第20巻

『満州アヘンスクワッド』 第3巻・第4巻

絵はいいのに、展開はやっつけ気味




第3巻。日方勇は、中国人を装う日本人女優・李姚莉(本名、山内洋子!)を連れて逃避行。ひと目だけと立ち寄った彼女の故郷で、いい仲になるも地元の青幇、針使いのに捕まってしまう
一方、麗華李姚莉の代役女優として潜り込んで、相手役の池山大二郎(モデルは長谷川一夫ではなかろうが)に超高濃度の阿片を投入。一撃で虜にしてしまう
その勢いで満映(満州映画協会)を篭絡し、合流した勇は李姚莉奪還作戦に乗り出すが……

順調にぶっ飛んでいた
阿片中毒者になっていく過程が圧倒的に省略されていて、誰もがいとも簡単に仕上がってしまう。アヘン戦争からの歴史的経緯を考えれば、相当な拒否反応があってしかるべしなのだが……
一種の開き直りというか、ギャグにしてしまうことで、ピカレスクロマンに必要な暗さを払拭してしまっているように思える。クライマックスの危機の脱し方もそれでいいのかという(苦笑)
早くも史実と違う展開が始まっていて、実名でない人はいくらでも曲げていく方針のようだ




第4巻。満洲国の首都・新京(現・長春)で、青幇のボスで麗華の父である杜月笙は、日本の"阿片王”里山柾と会談。既存の阿片を脅かす高純度の「真・阿片」の存在は捨て置けないと、里山は提携を持ちかける
満映では、その「真・阿片」を宣伝する李姚莉が主演の映画が公開され、大ヒット。勇たちは彼女を日本へ送ろうとするが、周一派の襲撃を受ける
それを助けたのは、意外な男だった

本巻もいろいろツッコミどころは多かった
満映の映画で「真・阿片」を宣伝って、さすがに関東軍が検閲するのではなかろうか(苦笑)
周たちの追撃を妨害するのも、自分が勇を捕まえたいという元開拓義勇軍で、憲兵に通じた熊田岩男 「生け捕りにしてやる」と銭形のとっつあんのような存在になってしまった。まさか、これほどの戦闘力を誇ろうとは
後半は舞台をロシア系の亡命者が多いハルビン(哈爾濱)に移り、ロシア人の「逃し屋」キリル・メドヴェージェフと、青幇の支配するスラム街、大観園に住む閻馬という少年が新キャラとして登場する
ハルピンでは、亡命者を束ねる白露事務局の局長アレクセイ・ロジャエフスキーが、青幇と裏社会の二分する"皇帝”として君臨しているようだが


里山柾は、阿片中毒者のために阿片を作っていると、際どい論理で自らを肯定する。戦前の日本では阿片の製造は国の専売であり、鎮静剤のモルヒネや阿片中毒の治療目的の生産・使用は認められていたのだ
ハルピンがロシアが施設した鉄道をきっかけに発展したとか、ちゃんと史実を踏まえてくれるところもあるので、お話作りにもどこかでギアがかかって欲しい


前巻 『満州アヘンスクワッド』 第1巻・第2巻



『満州アヘンスクワッド』 第1巻・第2巻

題材が面白いので、手にとって見た
満州アヘンスクワッドは、1930年代の満洲国でのアヘン売買を巡る抗争を描くクライム・サスペンス
関東軍に徴兵された日方勇は、戦場で片目の視力を失って移住した家族の元へ戻る。満蒙開拓義勇軍に転属されたものの、母親がペストにかかったのをきっかけに、アヘン密売を企てる。地元の青幇に売りこんだところ、始末されそうになるが、首領の娘である麗華に助けられて…というのが、序盤のあらすじ
満州では軍閥時代からアヘン売買が盛んで、関東軍も手を染めていた史実を踏まえつつも、青年誌らしいセックス&バイオレンスに、アクの強いキャラクターが続々に登場し、時代背景に感心のない人にも入りやすい作品に仕上がっている




第1巻から、かなり刺激的である
はペストにかかった母を、片腕を失った衛生兵・陣内茂の家に引き取ってもらうが、勇と兄弟がアヘン栽培に気づいた途端に豹変し、勇の首を締める。それを助けるために、妹のセツ陣内を石で殴殺してしまう
そのアヘンを持ち込んだ先で、青幇の首領・杜月笙(実在)の娘・麗華は、勇と結託。お色気ムンムンで、満州鉄道の関係者をアヘン地獄に落としていく
アヘン栽培をかぎつけた憲兵伍長・長谷川圭人は、長髪でメガネの優男に見えて、実はサディストという、かなりぶっ飛んだキャラクター。わざわざ関東軍がアヘン栽培に手を染めているから、他のアヘンが出回ると困ると公に語ってしまうとか、いろいろリアリティを吹き飛ばす存在だが、こういうオーバーアクションがお話のテンションを盛り上げているし、分かりやすくもしている




第2巻では、追われる身となった麗華は、驚異的な記憶力を誇る少女・リンを仲間とする。青幇の売人兼運び屋だったリンは、仕事が終われば牢屋に入れられるような境遇だったが、仕送りした両親が死んだとしらされて、勇にプロポーズされたとの勘違いから、一行に加わる
勇の妹・セツと弟・三郎は、青幇の殺し屋・ロン静英に狙われて、とうとう勇ともにアヘン栽培を手伝うことに。麗華が目をつけたのは、清朝時代からアヘンの特産地となっていた熱河地方現地のモンゴル人と接触して、青幇に対抗する提携を交渉する。そこで加わるのが、四カ国語を操るというバージルで、チームも多国籍軍になってきた
さらに、終盤では李香蘭モデルのスター女優・李姚莉が登場。なかなかのトンデモ展開なので、さすがに実名ではできなかったか(苦笑)


1話1話が中だるみなく、濃い!
際どい時代と舞台でどこまで暴れるのか。読み続けざる得ない


次巻 『満州アヘンスクワッド』 第3巻・第4巻



満州を舞台の漫画というと、まずコレが

『呪術廻戦』 第19巻・第20巻 芥見下々

買い忘れてた




第19巻。「死滅回遊」のルールを変えるべく、虎杖伏黒100点をもつ男、日車寛見を探す。手分けして探したものの、虎杖は池袋、伏黒は新宿に案内される
正解にたどり着いたのは、虎杖。日車は凄腕の弁護士であり、その術式は裁判所になぞらえた領域を展開し、相手の罪状に応じて能力に制限を加えるというものだ
虎杖は未成年でパチンコへ行ったことを咎められ、呪力を封じられてしまう
複数の審理があることに気づいた虎杖は、第二審を要求し、挽回なるかと思いきや、渋谷での大量虐殺を認めてしまい、死刑宣告が!
しかし、ここで日車が弁護士としての本能に目覚め、虐殺は宿儺に乗っ取られたためで、責任能力なしと判断。自らの罪に向き合うことにした彼は、虎杖に得点を譲り、プレイヤー同士で融通できるようになった

新宿に連れられた伏黒は、レシートを利用した術者レジィ・スターとその一党による罠にかけられてしまう。式神を犠牲にして凌ぐうちに、特撮パロディをネタにする芸人術師・高羽文彦が助勢に!
身を削りながらレジーを体育館に誘い出し、そのものを領域化するのだった
前半のバトルと法廷ドラマが入り交じる展開は秀逸で、まさに神回だ
高羽の着ぐるみに金を使えた頃の、テレビ番組のノリはなんだか懐かしく思えた




第20巻。熾烈を極めた伏黒とレジィ・スターの決闘に終止符。相手が逆転の手を繰り出した瞬間に“影の領域“を解いて、本来の体育館のプールへと落とす。レシートが呪術のタネとしたレジィを仕留めたのだ
ただ虎杖よりも、オーバーキルの人殺しを続けたことにより、闇落ち感が増していて、自分を罠に誘い込んだ呪術師を使い魔で殺そうとした。が、義姉・津美紀を思わせる声音の謎の天使によって、意識を失うのだった

話は一転して、虎杖の故郷仙台へ。仙台もまた全国にもうけられた「死滅回遊」のエリアのひとつであり、古代の呪術師ドルヴ・ラクダワラ、一撃必殺のリーゼント石流龍平安時代のアサシン烏鷺享子ゴキブリ呪霊・黒沐死による三つ巴ならぬ、四つ巴の戦いとなっていた
そこへ現れたるは、乙骨優一。ドルヴ・ラクダワラを打ち倒すと、均衡が一気に崩れ、黒沐死と戦う最中に、背後から攻撃を受ける
しかし怨霊の里香ちゃんなどの隠し玉が多いのが、乙骨の武器。戦ううちに相手の術を模倣する術式で、次々に相手を圧倒するのだった
前日譚の映画が好評で、彼の出番も増えていくのだろうか


次巻 『呪術廻戦』 第21巻・第22巻
前巻 『呪術廻戦』 第17巻・第18巻

『HUNTER×HUNTER』 第37巻 冨樫義博

未完結確定かな




第37巻。第8王子サレサレは、第1王子ベンジャミンが送り込んだ私兵リハン(能力「異邦人(プレデター!)」により守護霊獣を食われ、後に暗殺される
そんな血なまぐさい継承戦争は忌避した第9王子ハルケンブルグは、自身の父ナスビー・ホイコーロ国王を暗殺しようとしたが、すでに王族同士が殺せない継承戦争のルールが発動しているために失敗してしまう。これにより参戦を決意したハルケンブルグは、驚異的な能力を覚醒させるのだった
同じく、兄弟殺しを嫌った第10王子カチョウ第11王子フウゲツは、ハンターのセンリツ(ノストラード家、クラピカの部下)とギーニの助けで逃走をはかるが、同じく継承戦争の呪いによりカチョウが死亡! カチョウの守護霊獣がカチョウに化けて、フウゲツを守ることになる

ハルケンブルグの能力名は「遊戯王(!)だったり、第4王子ツェリードニヒの霊獣の容貌が『ベルセルク』の化け物を思わせるなど、追悼的なパロディが多い
第4王子の能力「予知夢」は、10秒先を予知夢し、その間の時間が止まっているために相手の認識をそのままに先回りして行動できる
まるでディオ様のザ・ワールドを想起させるわけだが、ご期待に答えるように説明するシーンのツェリードニヒはジョジョ立ち!
異能力バトルも歴史ができてしまって、どこかでネタがかぶるようになる。こういう開き直りもやむを得ないのだろうか
相変わらず、パートによっては文字数がぎっしりで、同じ漫画とは思えないテンポの落差がある。漫画読むのに、メモをとる必要があるのはどうなのだろう(苦笑)
ここから継承戦争たけなわという、ところなんだけど、雑誌のほうで幻影旅団の過去話になったという風の噂を聞いた。いつになったら、暗黒大陸に着くんでしょうねえ


前巻 『HUNTER✕HUNTER』 第36巻

『パイナップルARMY』 浦沢直樹

ずっと、気になっていた作品




押しも押せれぬ漫画家、浦沢直樹の長編デビュー作
雑誌連載が1985~1988年で、管理人はまだ小学生。なかなか目に触れることもなかった
それでも、『MASTERキートン』のほうは、布教活動している歴史オタの友人がいて、名前だけは覚えていたのだ
さて、作品のほうはというと、元傭兵のジェド・豪士インストラクターとして、様々な事情を抱えた顧客に護身術、戦闘技術をレクチャーしていくもの
主人公は表立って戦わず、あくまでサポーターとしてフォローするところからスタート。素人の付け焼き刃にも限界があるので、結局は解決に乗り出すというパターンが最初は多い
さすがに主人公が傍観者で終わっては、話が盛り上がらない……そのうち、バリバリ前線に立つミリタリー物になるかと思いきや、そうでないのが、この作品の良いところ
むしろ、原作者も漫画家も連載に自信を持った頃から、ひとりひとりの顧客の背景に焦点があたり、中盤以降は主人公が狂言回し、語り部としての役目を果たしていく。主人公はあくまでインストラクターという職分に踏みとどまっているのだ
絵に関しても、話は硬派ハードボイルドなのに、キャラクターに丸みを帯びているという妙な風味であったものの、徐々に描線もキリリとしてきて、劇画タッチの作品とは違う、柔らかい人間ドラマを生み出している

いちおう、長期連載が決まったあたり(「5人の軍隊」)で、味方となる戦友や元上官、恋人(?)のジャネットが加わり、因縁のライバルとしてコーツが渋い存在感を見せる。基本1話完結ながら、登場人物の配置が王道にして絶妙!
ジェドは優れた戦士であるものの、タイトルにもなっているパイナップル(手榴弾)などの爆弾のし掛けが得意分野だ。他のジャンルの専門家が出てくると、さすがに辛く、その戦いぶりはあくまで等身大の人間で、読者との距離の近さと危機一髪の迫真さを生んでいる
終盤に近づくにつれ、豪士とは正反対のスタンスで生きる“小東夷”なる宿敵が登場する。これまでの空気からは少し浮いた存在であるが、話を畳むために必要となるラスボスであり、何から何まで行き届いている
原作は変われど、ここから『MASTERキートン』が出てくるのが分かる作品だった

『レッド最終章 あまさ山荘の10日間』 山本直樹

巻末には、山岳ベース事件の生き残り、植垣康博のあとがきが。ほぼ創作なしの作品だからこそ、ここから革命の問題を問い直す起点となるとか




山岳ベースを出た谷川(=坂口弘)たちは、谷急山を登頂して、和美峠へ出る。凍傷に悩みながらも警察を警戒して道路を避け、軽井沢のレイクゾートへと抜けた
食料や物資を調達すべく、鳥海(=青砥幹夫)岩木(=植垣康博)唐松(=伊藤和子)立山(=寺林真喜江)は買い物に出かけるが、身なりの汚さ、立ち込める体臭から怪しまれ、小諸まで逃れたところで警察に逮捕されてしまう
これで山岳ベースのメンバーは、谷川吾妻(=吉野雅邦)、志賀(=坂東國男)、黒部次郎(=加藤倫教)、黒部三郎の5人となる

5人は「あさま山荘」に入る前に、レイクニュータウンの山荘のひとつ、「さつき山荘」に入り込み、一息つく。しかし、そこを警官に発見され、慌てて抜け出す
そして、たどり着いたのがあさま山荘だった
山荘には管理人の利根夫人(仮名)が留守番をしていたが、谷川がこれを“確保”。吾妻は包囲される前に脱出を主張するが、谷川が岩木に片方の靴を貸し出して長くは歩けないこと、全員が凍傷に苦しんでいて、疲労困憊していることから、立て籠もりを決断する。総括対象になりかけた谷川は、志賀や吾妻を制して事実上のリーダーとなっていた
利根夫人と人質交換で北(=森恒夫)赤城(=永田洋子)などの釈放を目指す

警察と谷川との攻防は熾烈を極めた。治安当局は人質の人命優先は当然として、殉教者にしないために犯人たちを生きて捕らえることを目指した
そのため、強行突入はギリギリまで控えて、谷川や吾妻などの両親による説得、寝かさないための騒音作戦催涙ガス放水と、考えうる限りの手段をとってくる。谷川たちにとっての“殲滅戦”と、警察の人命優先の救出作戦という認識の違いは、何人もの死傷者を生んでいく
新潟でバーを営んでいた品濃康彦(仮名)が、左翼にシンパシーを抱きつつ暴力では解決しないとして、「文化人」と称して人質との身柄交換を申し出るが、偽装した警官と誤認した谷川が銃撃。当初は命に別状なしと思われたが、弾丸が脳に達し、一週間後になくなってしまう
2月28日のXデーが迫り、27日に放水を指揮していた荒川中隊長(=高見繁光)が射殺され、突入当日には志賀の狙撃により石川警視(=内田直孝)が死亡。警察を中心に多くの死傷者が出たのだ

作品は谷川らが逮捕され、その後に現代に至るまでの年表を置いて幕を閉じる。最後のコマが、「あさま山荘」の電子ジャーでご飯が炊き終わるのを待つ黒部三郎
こんなご飯をガツガツ欲しがる普通の少年が、なぜ悲惨なリンチ事件に巻き込まれ、あさま山荘で銃撃戦に及んだのか、事実を淡々と追い続けたなか、この一コマでそんな問いかけを投げかけているように思える
年表を見ると、「あさま山荘」をもって学生運動は失墜したが、テロの時代が終わったわけではないと分かる
同じ年の1972年5月30日、イスラエルのテルアビブで“日本赤軍”が無差別銃乱射事件を起こす
1974年8月30日には、東アジア反日武装戦線による三菱重工ビル爆破事件(後に一部メンバーが日本赤軍に合流)
1975年8月日本赤軍マレーシア、クアラルンプールのアメリカ大使館を襲撃。人質と引き換えに連合赤軍の谷川と志賀の釈放が要求され、志賀がこのとき超法規的措置により釈放されている(谷川は拒否)
1977年9月には、日本赤軍がダッカ空港のハイジャック事件を起こし、9人の解放を要求。それに含まれた岩木はこれを拒否している
ここから9.11までの年表を見ると、むしろ「あさま山荘」がテロの時代の魁を果たしたかのようだ
谷川(坂口弘)は死刑判決を受け、吾妻(吉野雅邦)は無期懲役を受け服役中。志賀(坂東國男)は今なお逃走中で、彼が捕まり裁判を受けない限り、「あさま山荘事件」は終わっていないとする捜査官もいるそうだ


前作 『レッド 最後の60日 そして あさま山荘へ』 第4巻



『レッド 最後の60日 そして あさま山荘へ』 第4巻

山に登った37名中、8名が逃亡・離脱、5名が逮捕、死者15名




山岳ベース事件の最終章。この巻で15人目の犠牲者が揃う
苗場(=山本順一)の総括は、北(=森恒夫)にとって計算外だったのだろうか。自殺しようとする苗場を「そうするぐらいなら、総括しろ」と、猿ぐつわをはめて防ぐ。私刑の嵐はもはや、森を離れて展開して止まらない
しかし、苗場は妻・不二子の願いも虚しく、厳寒の夜に縛られて凍死してしまう

同じく縛られた白根(=大槻節子)も凍死したことで、岩木(=植垣康博)への総括は緩くなる。山岳ベースの引っ越しが忙しくそれどころではないのだ
しかし宮浦(=金子みちよ)妊娠していることを盾にして、総括しようとしないと見なされ、縄で顔を張られる総括を受ける。北は「赤ん坊を宮浦に私物化させてはならない。組織のものとしなければならない」と宮浦が死んでも、お腹から取り出そうと言い出す
幸いという言い方はおかしいが、宮浦が部屋で縛られた状態で死んで冷たくなっていたので、赤ん坊の取り出しまでには至らなかった

中央委員の霧島(=山田考)は車の修理に行った際に、銭湯に入ったことを問題視。北からは赤色軍に復帰したのを出世欲、権力欲ではないかと指摘され、下の者からは幹部面していると安達(=寺岡恒一)のように「官僚的」で傲岸と糾弾される
霧島は雪の上に正座した後、一日一杯の水で薪拾いをするように命じられ、それでも態度が悪いと罵られる
しかし、北と赤城が東京に出ている間、苗場不二子が逃亡したことで、事態は緊迫。谷川(=坂口弘)は、霧島への「総括は終了した」と縄を解くが、岩木ら事情の知らない人間が帰ったときに再び縛られてしまう
霧島は極度の疲労と凍傷から、「総括しろだって、ちくしょう!」と叫んで死んでいった

一度は逃げようとした荒島(=前澤虎義)が榛名ベース解体後に逃走。苗場の赤ん坊を預かっていた平藍子(=中村愛子)も、途方に暮れているところを保護される
相次ぐ脱落にショックを隠せない北は、谷川の霧島に甘かったところを問題視「人間としての感情は党の指導を危うくする」と街に残した妻と離婚し、行動を共にしてきた赤城との結婚を決意する
赤城は組織の維持のために北に同調する。情の上では谷川に未練はあるが、北と肩を並べているうちに、考え方はかなり引きずられてしまっていた
谷川は北と「総括」を巡って相容れず、もはや修復の余地はないのだ

15人目の犠牲者、霧島が死に、谷川と赤城が別れたのちは、北ではなく谷川が実戦部隊の隊長格として残りのメンバー率いていく
警察の手を逃れるべく、厳しい冬登山、それも難関といわれる妙義山の裏を通って群馬と長野の県境を目指す。そして、北と赤城の逮捕を聞いて、奪還の作戦で盛り上がる。ここだけ切り取れば、なんだかイイハナシになっており、彼らが生きたかった「革命の物語」だったのだろう
それと比べると、北の「殲滅戦」は警察相手の暴発に終わり、いかに彼が観念の世界に生きていたかが分かる


これにて、山岳ベース事件の幕は閉じる。彼らのその後については、ただ文字で説明されただけ。ときに修羅場でメンバーの本音が強調されるものの、死んでいく順に番号が割り振られるなど、全体的には突き放した視線で淡々と描かれていた
起こった事象を並べて、あとは読者に委ねる形であり、集めた資料や証言の隙間を作者の想像で埋めた部分もあるとはいえ、ノンフィションに近い作品なのだ
『最後の60日』では関係者の対談がなくて、少し寂しかったが、それは贅沢というものか

次巻はあさま山荘事件。そこでは彼らのやりたかった「革命の物語」も崩壊するはずだ


最終章 『レッド最終章 あさま山荘の10日間』

前巻 『レッド 最後の60日 そして あさま山荘へ』 第3巻

『レッド 最後の60日 そして あさま山荘へ』 第3巻

反逆者と脱走者の出現で赤城にも変化が




安達(=寺岡恒一)はすでに死を覚悟したのか、総括の際に露悪的な態度をとる。自分がトップに立ったら、連合赤軍の女性たちに囲うつもりだったとか、王侯貴族の生活をする気だったと言い放つ。いきり立つメンバーを背に、森は尋問の際にナイフで刺させる。そして、満足いく答えが得られないと、死刑を宣告する
皮肉なのが、権力との殲滅戦だの唱えている一団が、人ひとり殺すのに心臓の位置も分からず苦労するところ。大勢で寄ってたかってアイスピックで刺していく
そして最終的には首を締めるのだが、これも時間がかかり地獄絵図のような状況になる

そんな中、東京でカンパを募りに行った仙丈(=岩田平治)荒島(=前澤虎義)は、シャバの空気を吸ったことで殺伐とした山に戻るかで葛藤する。仙丈は動向していた志賀(=坂東國男)の妻である唐松(=伊藤和子)「自分は反革命になりきる」と宣言し、組織を抜けた。粛清されたメンバーとあまりに近く接していて、革命うんぬん以前に耐えられなくなったのだ
一方の荒島は、弟の読んでいた大江健三郎の『壊れものとしての人間』を読んで、「よろしい、僕は地獄へ行こう」の文が目に止まり、山へと戻ってしまう

もともと態度が良くないとされた神山(=山崎純)は、唐松が戻った際に「仙丈が逃げたな」と言ってしまったがために、北に「普段から考えているから、口に出る」と本格的な総括の対象に
仙丈の失踪からベースを移す必要が生じたことから、神山に対して「死刑」に決まった吹っかけて反応を見ることにするが、最初の関門を突破したあとにホッとしたところの態度を指摘され、自らもそれまでの態度が欺瞞だったと告白。女性兵士たちを性的な目で見ていたこと、逃亡を考えていたことも口走ってしまう。そうなると、安達と同じコースを辿り、前回から進歩のない、非常に苦痛に満ちた死刑が行われるのだった

その後、総括の対象は岩木(=植垣康弘)相思相愛の白根(=大槻節子)吾妻(=吉野雅邦)の妻で妊娠中の宮浦(=金子みちよ)へ矛先が向かう。赤城は白根や宮浦に対しては厳しく、総括の際にも意地の悪いの表情で描かれている
白根は男性遍歴の告白を迫られ、処刑された五竜(=向山茂徳)との関係が、宮浦は「総括される理由が分からない」と態度そのものが問題視された
吾妻は入山のさいに宮浦からケジメとして離婚を申し出されるが、それを赤城が翻意された経緯があったものの、今度は中央委員としての保身で離婚を宣言
それにより、今度は岩木の白根に対する態度が問われることに
その一方で、引っ越しの工事現場で、苗場(=山本順一)がトラックの運転をミスし、「安達の処刑が影響しているのでは」と一日正座を命じられる。「山にくるべきではなかった」と涙するのだった


連合赤軍の「総括は、その制裁に対して全員の参加が求められる。全員に罪の意識を共有させた上で、言葉をすり替えて「革命に背を向けた“敗北死”」というレッテルを貼ることにより、自分たちは「革命の物語」を生きられる
もしその物語から抜けると「総括」に加担した自分が、ただの殺人者になってしまうので、自分にやられる「総括」を否定しづらい。また参加を求められるのも、逃亡した際に権力に殺人として裁かれるリスクを背負わせるためで、神山はそれに対する“論理の抜け道”(言い逃れ)を見つけていたために北の怒りを買ってしまう
北は「われわれが前進したため、裏切り者が出た」という珍妙な論理で「革命の物語」を続けるが、中央委員の安達の処刑に、信頼していた仙丈の逃亡は指導部を大きく動揺させ、本来は革命戦士になるための“援助“であった「総括」が、「反革命への処罰」へと変貌していくのだ


次巻 『レッド 最後の60日 そして あさま山荘へ』 第4巻
前巻 『レッド 最後の60日 そして あさま山荘へ』 第2巻

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サイドバー背後固定表示サンプル

サイドバーの背後(下部)に固定表示して、スペースを有効活用できます。(ie6は非対応で固定されません。)

広告を固定表示させる場合、それぞれの規約に抵触しないようご注意ください。

テンプレートを編集すれば、この文章を消去できます。