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『聖の青春』 大崎善生

管理人との共通点は、部屋が積読で溢れているぐらい


聖の青春 (講談社文庫)
大崎 善生
講談社
売り上げランキング: 3,019


幼い頃に腎臓病を患った少年は、療養学校で将棋を覚える。普通の子供のように動き回れない鬱屈を将棋にぶつけ、外へと羽ばたつ翼とした彼は、メキメキ上達。1983年に谷川浩司が最年少名人が話題となり、「打倒谷川」を目指してプロの門を叩く。つきまとう持病の闘いに、師匠はときに少女漫画を探しそのパンツを洗った

今秋に上映されている松山ケンイチ主演の映画の原作小説である
管理人は大学時代、将棋部に属していて、その死には涙したものだ
本作は村山聖の良き評伝であるだけではない。冒頭には、山に連れて行った兄がマムシを投石で殺し、村山の病気が発症する場面から描かれる。周囲の人物の視点から始まっていて、なおかつ劇的な場面なのだ
そうした小説としての鋭さを持ちつつ、様々な人間から見た多声的な構成が本作の特徴であって、身近にいた作者が我を張らずに、ただただ村山聖のピースを拾い集めて作り上げられている
世界でただ一つのユーモラスな師弟関係が取り上げられる一方で、病気の子供を持った家族のやるせなさ、苦しさも描かれていて、村山聖という人間が自然に立ち上がってくるのである

村山聖には、名人位を目前にしてA級在籍中に死去した悲運の棋士というイメージがつきまとう
たしかに悲運には違いないが、本作で強調されるのは村山自身が病気を不運だと思っていなかったということだ
病気と村山は不可分の関係であり、その将棋は長くは生きられないという切迫感によって作られていた。そもそも病気になっていなかったら、将棋に出会っていたかどうかも分からない
阪神大震災で弟弟子の奨励会員が亡くなり、村山は積読の山が崩れて頭に本をぶつけただけで済んだというエピソードは、人の運命について考えざる得ない。ただ、悲運の棋士を描くだけではなく、人が生きていく上で出会ってしまう、不運や幸運、絶望と希望の錯綜が書きつけられているのだ
ヒューマンで温かいともに、人生のなんともいえない巡り合わせを見せられるノンフィクションであり、文学なのである


村山聖名局譜 (プレミアムブックス版)

マイナビ出版 (2016-11-22)
売り上げランキング: 18,626
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『天才』 石原慎太郎

まさに今太閤


天才
天才
posted with amazlet at 16.10.16
石原 慎太郎
幻冬舎 (2016-01-22)
売り上げランキング: 230


政治家を引退した石原慎太郎が、かつての政敵田中角栄を振り返った小説
一人称が「俺」で角栄自身の回顧録のような体裁となっていて、最初は「俺」が誰なのか明示されないのにとまどったが、これも作者の茶目っ気。自分の臨終直前の状況など、架空の回顧録でなければ書けない箇所だろう
石原自身は政治家として自民党に所属しながらも、田中の金権政治を批判して反主流派の青嵐会を結成して、まさに不倶戴天の敵といえた
本作は田中の出自から政治家としての業績・活動、本妻と愛人の二つの家庭を巡る生々しい人間関係にも踏み込んでいて、この大胆さは作者ならではものといえる。真紀子も怖くないのだ
単行本だと分厚いわりに文字が大きく、アッと言う間に読み終えてしまった。お値段のわりにあっさりしすぎないかとは思うが、中身は濃い

田中角栄は小学校を卒業すると、家計を助けるために土建屋で働き始める。上京後も働きながら夜間学校に通う苦学生だった
徴兵され満州に配属されるが、病気で帰郷後に建築事務所を設立し、理研コンツェルン(現在のリコー)との関係から戦時中に業績を伸ばした
戦後は政界へ進出。憲法制定後の選挙で民主党から故郷・新潟で出馬して初当選する
議員としては現場で土木関係の経験を生かして、インフラ整備にまつわる法律を次々に立法していった。敗戦直後は船舶、道路をはじめ日本のインフラは徹底的に破壊されており、その再建は日本の復活に必須だった。角栄の地元である新潟をはじめ北陸地方は、首都圏から遠く離れて放置されてきた裏日本であり、経済格差を埋めるのに道路・鉄道の整備がもとめられていた
最近、開通した北陸新幹線もこうした政策の延長にあるわけで、角栄は良かれ悪しかれ今の日本を形作った政治家なのである

ロッキード事件に関しては、角栄の視点と作者の思いが交わるかたちで取り上げられている
当時の角栄は選挙のために300億円もの政治資金を集めており、5億円ははした金にしか感じていなかった。ロッキード社からは橋本登美三郎、佐藤孝行、加藤六月の三名に献金されていたが、角栄はその件に直接タッチしていない
丸紅専務の伊藤宏から受領したという、角栄の秘書・榎本敏夫の証言は、角栄が受領を認めたというガセネタを検察が新聞社に流し、その一面を榎本に見せることで調書に署名させたという裏技によるものだった
角栄の後継内閣は、直接の後継候補だった椎名悦三郎三木武夫を指名するが(椎名裁定)、三木にとって角栄は政敵。徹底した追及につながった
角栄がアメリカの石油メジャーを出し抜いて独自のエネルギー外交を展開し、ニクソン訪中に続く中国への急接近も、アメリカの警戒心を煽った
本作では直接語られないが、ロッキード事件の裏には、直接の問題になったトライスターの売り込みのみならず、対潜哨戒機P3Cの導入問題がある。軍用機の問題が露呈すると、国防に響くのみならず日米両国の体制を揺るがすものとなるので、角栄一人に留めるために白羽の矢が立ったという話もあるようだ
本作でも金権体質はモロ出しだが、政治家としての角栄はあくまで国益のために行動した。今の政治家は官僚出身かタレント、元ハーバードとか、垢抜けている反面、時勢に流されやすい人が多いので、人を動かし腰を据えた考えを持つ政治家が現われて欲しい
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『ペリリュー・沖縄戦記』 ユージン・B・スレッジ

他のFCブログへコメントしようとしたら、「不正な投稿」だと言われて拒否られてしまった
相手さんのブログにNGされてるわけではないとはずなので、単なるバグだと思うのだけど……


ペリリュー・沖縄戦記 (講談社学術文庫)
ユージン・スレッジ
講談社
売り上げランキング: 31,242


アメリカ人から見た太平洋戦争は、いかなるものだったのか。ガナルカナル、ペリリュー島、そして沖縄の激戦地を体験した海兵隊の一兵士の記録
著者は戦時に志願兵として海兵隊に入り、戦後は生物学の教授になった人。異色の人物に思われるかもしれないが、民間人が戦争に召集されるのが普通の時代では、こういう経歴の方はたくさんいたようだ
所属したのは第一海兵師団であり、『バンド・オブ・ブラザーズ』のスタッフが製作した『ザ・パシフィック』でも著者の体験が中心的な位置を占めている
本書では敵味方が悪鬼と化す、戦場の地獄が余すことなく書かれている。当時の著者は、友軍兵士の死体に残酷な悪戯をされたことをきっかけに日本軍への同情を無くすが、特に日本人を諸悪の権化のように描いているわけではない。人間を極限の状態に追い込んでその尊厳と人間性を奪い、最後には人生そのものを奪ってしまう戦争そのものへの嫌悪が全体を包んでいる

戦史本などを読むと、1944年以降はアメリカが圧倒的な物量を背景に圧勝し続けたように思えるが、最前線の一兵士から見れば日本人同様で生き地獄に放り込まれるようなもの
上陸戦では生還できる確率は二割から三割と言い聞かされ、補給が追いつくまでは物資が欠乏し、油混じりの水で凌がなくてはならない。いくら兵站が整っているといっても、相対的なものなのだ
ペリリュー島の戦い以降、日本軍は淡白な万歳突撃から、島全体を戦場とする縦深陣地を構築して、粘り強く出血を強いる作戦に転換しており、海兵隊も立ち往生せざる得なかった。太平洋戦争末期でも、全方面で日本軍が一方的な敗北だったわけではなかった
ペリリュー島の十倍以上の規模の沖縄では、さらに異常な光景に遭遇する。敵味方の死体を葬る機会がないために、戦場に折り重なるように放置される
塹壕を掘ろうとしたら、そこには腐った死体が埋もれていて、大量のうじ虫が沸いており、作業中の兵士の衣服に入り込む!
敵味方の砲撃に疲弊した兵士たちは、精神に異常を来たして後送されていく。統計的に火力に勝るといっても、前線の兵士からすれば日本側の砲火も強力だったようだ
異常が日常化した体験は、戦後も心に深い傷跡を残した。勝利した戦争にすら、栄光はないのである。その一方で、著者は「住むに値する良い国ならば、その国を守るために戦う価値がある」という言葉も遺している


ザ・パシフィック 上
ザ・パシフィック 上
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ヒュー・アンブローズ
ACクリエイト
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ザ・パシフィック コンプリート・ボックス(5枚組) [Blu-ray]
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント (2015-11-03)
売り上げランキング: 31,102
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『東京アウトサイダーズ』 ロバート・ホワイティング

暗黒街から見る日本社会


東京アウトサイダーズ ― 東京アンダーワールド2
ロバート・ホワイティング
角川書店
売り上げランキング: 450,610


太平洋戦争終了後にアメリカ軍が進駐して以降、闇の世界でも日本とアメリカ、世界との交流が深まった。50年代から21世紀の現代まで、暗黒街で踊った紳士淑女を追う
だいぶ前に読んだ『東京アンダーワールド』の続編である
『東京アンダーワールド』の時点で膨大な資料を集めたものの、編集の段階でだいぶ削ぎ落とされたという。本書では前作で入りきらなかった、ニック・ザペッティ、児玉誉士夫、力道山といったメジャーではない、数奇な運命を辿った山師、娼婦たちが取り上げられている
不良外国人の殿堂ともいえる内容なのだが、本書のテーマは前作と同じく闇の業界から見えてくる日本人とガイジンの関係史外国人犯罪の多くはほとんど日本の暴力団絡みであり、外国人の犯罪率は日本人よりも少ない
本書で紹介される外国人犯罪者の暗躍は日本社会の闇を映し、日米の力関係の変化をも表している

今も沖縄で問題となる米兵の犯罪は、敗戦から50年代が頂点だった
特に1957年に起きた「ジラード事件は、日米安保条約を根底から揺るがした
事件は群馬県相馬ヶ原にあるキャンプ・ウィアでの射撃場で起きた。ここでは米兵たちが射撃訓練後には、地元の「金属回収協同組合」の数百人が入り、薬莢を廃品業者に売っていた。こうした慣習は、旧日本軍時代から暗黙の了解で認められていて、米兵も黙認していたという
21歳のウィリアム・S・ジラードは、訓練の最中に薬莢を拾いに来た日本人に対して発砲し、主婦の一人を射殺してしまう
敗戦さめやらぬ時期だけに世論は激昂し、それを受けた日本政府がアメリカに米兵の裁判を日本で行うことを求める要請を行った。そして、アメリカ政府はアイゼンハワー大統領の了承のもと、国務省と国防省がジラードの行動を「救いようがない」と声明を出した
しかし、これにアメリカの世論は二分し、連邦裁判所の最高裁まで昇ってようやく日本での裁判が認められた
が、大問題になったこの裁判の結末は、執行猶予4年、禁固3年という軽い処分に終わる。1995年に公開された資料によると、アメリカ政府は極秘に引き渡しの条件として「殺人罪」ではなく「傷害致死」とするように申し入れていたのだ
とはいえ、このジラード事件をきっかけに基地撤廃運動が過熱し、全国の米軍が撤退するきっかけとなる
60年近く前に、今の沖縄のような状況に日本全体があったのである

日本人の外国人観を端的に示しているのが、2000年に起きたルーシー・ブラックマン殺害事件
当初、日本の警察は観光ビザでホステスになった被害者の捜査に熱心ではなかった
しかし、被害者の父親が運動した結果、沖縄サミットで来日していたトニー・ブレア首相に届き、当時の森首相が警視庁へ介入した
そこから地下鉄サリン事件並みの捜査体制へ以降し、織原城二の逮捕につながる
そもそも日本の歓楽街では、白人女性が重宝されていた。アメリカの進駐以来、白人女性をはべらすことは客のステータスとなり、著者いわくお座敷遊びからの伝統で、必ずしも肉体関係をともなわずに高収入を得られるホステスの仕事は、外国人女性にとって魅力だった
そうした事情の一方で、著者が指摘するのは、東南アジアから来る女性たちの存在だ。白人女性の事件は過熱するのに、人身売買同然に送られてくる彼女たちについて、日本のマスコミは一切触れない。東南アジアから母国のマフィアに騙されて渡航した女性たちは、地方都市の歓楽街で奴隷同然の状態に置かれているにも関わらずだ
相手国が先進国か途上国かで、日本政府の対応は様変わりする。それは日本人の価値観をそのまま映している。アジア経済の台頭で、はたしてどこまで改善されているだろうか


前作 『東京アンダーワールド』
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『ブッシュの戦争』 ボブ・ウッドワード

対テロ戦争の答えはいまだ見えず


ブッシュの戦争
ブッシュの戦争
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ボブ ウッドワード
日本経済新聞社
売り上げランキング: 562,026


9.11同時多発テロ事件から、ブッシュ政権はいかなる過程で対テロ戦争を計画したか。ウォータゲート事件をスクープした「調査報道」のレジェンドが、ブッシュ政権の要人を取材してその全貌を明らかにする
『攻撃計画(Plan of Attack)』イラク戦争への道程に焦点が当たっていたが、その前段である本書はアフガニスタンのタリバン政権への攻撃を扱っている
ラムズフェルド国防長官のように9.11直後にイラク攻撃を意識する人間はいたものの、他の“ネオコン”チェイニー副大統領、ポール・ウォルフォウィッツ国防副長官はさすがに今の段階で結びつけるのは無理筋であり、アルカイダへの攻撃やテロ対策に集中すべき考えていた
コリン・パウエルやアーミテージの国務省の元軍人コンビと大統領の関係も、タリバン政権の転覆まではさほど問題ではなく、コンドリーザ・ライス大統領補佐官が見事なつなぎ役を果たしてた
9.11の報復であるアフガン戦争も、アフガンの歴史背景や周辺諸国の反応を重視して単独行動主義(ユニラテラリズム)に陥らない配慮がなされていたのだ

アフガニスタンのタリバン政権への攻撃で問題になったのは、アルカイダとタリバン政権の関係が不明なこと。アルカイダと一体化しているのが、最高指導者オマル師の周辺だけなのかが不鮮明で、当初はビンラディンとアルカイダの追討への協力がタリバン側に打診された
対抗勢力である北部同盟には主要民族のパシュトゥン人が含まれておらず肩入れし過ぎるとパシュトゥン人全体を敵に回す危険がある。タリバン政権から距離を置くパシュトゥン人の部族や後に大統領となるカルザイ氏の勢力を取り込む工作が行われた
北部同盟には首都カブールへの進撃を遅れさせ、北部の要衝であるマザリシャリフ攻略を優先させ、カブールの統治は国際的な枠組みでの管理が望まれた。アフガンにはイギリス、ソ連と外国の勢力による支配へ頑強に抵抗した歴史があり、アメリカが前面に立つことは避けたかったのだ

軍事的な問題としては、空爆を加えるにしても拠点となる空港が必要とともに、パイロットを救出するための特殊部隊を配置せねばならず、北部への攻撃にはウズベキスタンやタジキスタンと交渉せねばならない。ウズベキスタンはロシアと対立する傾向があり、タジキスタンは親ロシアなので、これまた一方に肩入れし過ぎるわけにはいかない微妙な外交が必要となる
南部への空爆は空母からのみとなり、か細いものとならざる得なかった。パキスタン国境付近の山岳地帯の制圧には限界があり、後のタリバン復活につながっていく
とはいえ、300名余りの特殊部隊とCIA工作員が北部同盟の支援、パシュトゥン人への工作に潜入して着実に現地勢力の協力者を増やし、大規模な地上軍の派遣なしでタリバン政権に首都カブールを放棄させることに成功した
本書のなかの範囲ではアフガン戦争は緻密な外交、軍事作戦、秘密工作で、最低限の投資・損失でアメリカが成果をあげたものとされている。イラク戦争のガバガバさに比べると、確かに信じられないぐらいリスクが管理されていた
ただ、その後のアフガンではタリバン政権が息を吹き返し、オバマ政権では数万人の米軍が駐留せねばならないようになった。ビンラディンは死んだけど、何が最善手だったかはイラク戦争に比べはるかに難解である


関連記事 『攻撃計画(Plan of Attack)-ブッシュのイラク戦争』
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『傭兵の誇り』 高部正樹

最強を目指す男(当時)


傭兵の誇り―日本人兵士の実録体験記
高部 正樹
小学館
売り上げランキング: 349,271


現在の傭兵はどんなつもりで戦っているのか。元航空自衛隊の日本人傭兵が、実際の戦場を語る
著者の人柄のおかげで、かなり香ばしい本になっていた(苦笑)
いわゆる“戦争の犬”、金で雇われる傭兵たちは、第三国の民間人からすると「殺しの仕事をしている」「なぜ外国へ戦争しに出かけるか」と思われがちだ。しかし、実際の傭兵とは、自らの戦闘技術を提供する者であり、殺人が任務に伴うことがあっても、あくまで作戦目的を達成するためのものであってサイコパスではない
本書では著者が体験した戦場、80年代のアフガニスタン、90年代のボスニア紛争、ミャンマーにおけるカレン民族解放軍における傭兵たちが取り上げられている。戦場でのストイックさと無駄のない行動力、そしてオフでの弾け方はどこかチームスポーツの選手のように見えてくる
と、傭兵のマイナスイメージを払拭するための本書なのだが、その点あまり上手く行っていない。著者は戦う男こそ、最強である」という信念のもと、傭兵になったという人であり、口ばかりのジャーナリストに対して敵愾心をむき出しにする。それはいいとしても、安全地帯でふぬけた生活を送る人間ども(日本人のことである)より、傭兵の人生のほうが遙に上等であると言い切ってしまう。そんな傲岸な態度では、傭兵に対するイメージが悪くなるだけではなかろうか
しかし、現在の著者は軌道修正したようで、2007年に傭兵を引退しタイ・ミャンマー情勢の専門家として、カレン民族独立運動を応援する立場をとっているようだ

傭兵というと金のために危険を冒すイメージだが、著者が体験した傭兵稼業はきわめて薄給だった。外国で日本とは物価が違うことを加味しても学生のバイトレベルであり、「飲む・打つ・買う」をしようにもそんなお金なんてない
意外に傭兵たちにギャンブルに励む人間は少なく、「飲む」が精一杯だ。ただ、後方では外国人好きの女性にモテる傾向はあったそうだ
お金も名誉にもならないので、なぜ男たちは傭兵になるのか。著者に言わせると「傭兵そのものに価値がある」ということになるが、軍隊に入っても戦闘訓練を積んでも実際にその技術を振るう機会はなく、フリーの傭兵であれば戦場に立つ機会に恵まれることにあるようだ
欧米の傭兵には人生のなかの「冒険」として捉える者が多く、日本人の場合にはカレン独立運動に協力する民族派のように大義名分を重視する者が多いという。自らを鍛えるために戦場に身をおくという著者はやはり、変り種である
ただし、本書で語られた傭兵像はあくまで著者の体験から来るもの。アメリカの民間軍事会社アフリカで猛威を振るった傭兵集団は、違った顔を持っていることだろう


関連記事 『戦争の犬たち』
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『アメリカン・スナイパー クリス・カイルの伝説と真実』 マイケル・J・ムーニー

設立したPMC(民間軍事会社)の社訓が「ママがなんと言おうと、暴力が全てを解決する」。ちょ


アメリカン・スナイパー クリス・カイルの伝説と真実 (竹書房文庫)
マイケル・J・ムーニー
竹書房
売り上げランキング: 325,437


クリント・イーストウッドによって映画にもなった伝説のスナイパー、クリス・カイルの生涯を辿る
ブームに便乗した本なのか、かなりあっさりした内容だった
戦争については本人の自伝に譲るのか、軍隊のことより、入隊する前の青春時代、除隊した後の慈善活動に紙数が割かれている。文章が端的で、写真のページも多いので、一日で読めてしまった
映画化する前から、アメリカでは有名なスナイパーらしく、米軍史上最多160人以上の狙撃は、あくまで確認できた数字。機密作戦についてはカウントされないから、実際にはその倍の人間を葬っているという
「敵」から「悪魔」と罵られたというが、敵からするとアメリカのスナイパーはすべて「悪魔」。戦場で名前を確認できないから、クリスが特別というわけでもなく、だいたい一人8万ドルの懸賞がかけられていた
戦場の英雄がナイーブでなく、実にシンプルで竹を割ったような性格というところに、フィクションと現実の違いを感じる

本書では、クリス・カイルとベトナム戦争の伝説、カルロス・ハスコックが比較される。ハスコックはクリスも尊敬したスナイパーで、やはりその自伝もベストセラーとなった
「味方を助けるために、敵を撃ち殺しただけ」「いっさい後悔することはない」と発言も似ていて、軍隊内の論理で完結した精神の持ち主
イラク戦争に投入された狙撃手は、通常兵器による民間人の被害を減らすために市街に配置されていて、クリスもその仕事に誇りを持っていた
敵を狙撃する際の精神状態は「平和的だそうで、リラックスな状態でなければ距離、風、地表の曲がり(!)をも換算した精密射撃を行えない。戦時において「健全」足りえることが、狙撃手の条件なのだ。戦場を潜り抜けてなお、ウッソのように「健全」な人なのである(それが人間としての「健全」かは分からないが……)

海軍特殊部隊SEALsの離婚率はクリスいわく90%と芳しくない。妻タユから限界と切り出されたことから、除隊を決意。本国に帰った後は、自信を失った帰還兵や負傷兵のためにフィットネス用品を配る仕事を始め、狙撃手を訓練するPMCの取締役に就任して、精神を患う元兵士を救う活動に終始する。軍人としての義務を全うし、市民としての慈善活動に勤しむ、極めて模範的な国民であり続けた
しかし2013年2月2日、戦場でPTSDを患った若い元兵士を射撃場へ連れて行こうとしたときに、その若者によって友人とともに射殺されてしまう。本書では壮大な葬儀と英雄としての偶像が称えられるが、戦争の闇に葬られた一人といえるだろう


関連記事 【BD】『アメリカン・スナイパー』

アメリカン・スナイパー (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
クリス・カイル スコット・マキューエン ジム・デフェリス
早川書房
売り上げランキング: 11,673
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『同和と銀行 三菱東京UFJ“汚れ役”の黒い回顧録』 森功

芸能人の人脈が凄過ぎ。うかつに書けねえ(苦笑)




高度成長期からバブル時代まで、銀行と同和団体の間に何があったのか。三和銀行元支店長の証言から、政財官を巻き込んだ日本経済の闇を明らかにする
本書は旧三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)の元淡路支店長・岡野義市の告白をもとに、部落解放同盟(以下、解同)の元飛鳥支部長・小西邦彦と三和銀行の関係を中心とする同和利権、大阪市・府警・検察・国税との癒着関係、バブル時代に行われた錬金術を開きらかにする
小西邦彦は山口組系金田組の元構成員で、解同の支部長を就任することで同和事業を差配し利権を仕切る一方、三和銀行から暴力団や地上げ屋などアングラ界への迂回融資の便宜をはかり、各界へ顔が利くことから絶大な影響力を持っていた
そういう闇の紳士である一方で、老人ホームに金をつぎ込むなど支部長として飛鳥地区の改善に意を払っていて、面倒見の良さから多くの芸能人に慕われる一面もあった
国策で土地売買が奨励される時代、体制の都合で小西のような存在が必要とされていたこともあって、単純に悪と割り切れる人物ではない
噂の同和利権はバブル経済と銀行の放漫融資で、かくも肥大化したのである

部落開放同盟とは、戦前の水平社に発する部落差別の撤廃を目指す組織で、戦後は自民党系、共産党系に分裂しつつ、解同は社会党系とされていた
金田組のヤクザだった小西を引っ張ったのは、社会党の衆議院議員・上田卓三共産党対策に武闘派の用心棒として期待されたようだ
1968年に同和対策事業特別措置法が成立すると同時に、小西は飛鳥地区の支部長となった。大阪府では大阪府同和建設協会」(同建協)部落開放大阪府企業連合」(大企連)が組織され、建設業者は同建協の許可なしに同和事業に参入できないため、ゼネコンはこぞって小西詣でをした。同和事業は公共事業でありながら、部落の就職対策の側面があり、支部長の裁量が大きかった。本人も「友愛建設工業」という会社を設立し、甘い汁を吸う
大企連は部落差別の撤廃を金科玉条に、国税と「七項目の確認事項」という約定を交わし、加盟企業の税申告は事実上フリーパスとした
同和事業を謳いながら、同建協と大企連は小西次第で部落出身者でなくとも入れたことから、いわゆる同和利権が誕生する

小西邦彦はあらゆる機会を通じて、人脈を築いていく
政界では、大蔵出身で国税畑の衆議院議員・村田吉隆と通じて、国税に圧力がかけられた。小西の三和銀行における定期預金は、マル優の悪用なしに素で免税とされた
大阪府警には新しい課長が就任すると、祝いの宴会で前任者に現ナマを渡し篭絡してしまう
同和、極道、国税、府警、検察にまで顔が利くようになった小西を、大阪市や銀行はほうっておかない
大阪市高速道路の経路がヤクザのフロント企業のビル予定地だったために、小西に仲介を頼む。その結果、なんとビルの中を高速道路が走ることとなった
これが大阪市福島区にあるゲートタワービルである。1989年に立体道路制度が認められてすぐに着工され、日本ではじめて同制度を活用した建造物である
三和銀行は担当課長・岡野義市に小西との取引を一任しアングラ勢力の迂回融資を請負つつも、他系統のヤクザの防波堤として利用。さらに頭取直属の「プロジェクト開発室」は、松下電器グループのノンバンク「ナショナル・リース」に融資して牛耳りつつ、地上げ業者「ライトプランニング」へ融資して大阪の再開発事業に乗り出す
銀行への融資規制をノンバンクを経由して回避する手法で、ライトプランニングの地上げ資金を三和が請け負っていた。ライトプランニングには、もちろん小西の息のかかった人間がいて、地上げにはヤクザが動員される
関西に地盤を置く三和は、小西と一体となって土地バブルを走っていたのだ

たとえバブルが崩れ始めても、小西の目が黒いうちにその牙城が崩れることはなかった
三和銀行にある組長の貸金庫に拳銃が隠された事件(1986年)には、小西が手を回して銀行に火の手が回らないように手配したし、「北浜の天才相場師」と言われた料亭の女将・尾上縫の一件でも、拓銀を潰した男・中岡信栄に頼んで、検察に三和への追及を封じさせた
しかし小西がガンを患うと、急に捜査のメスが入る。大阪市の外郭団体から委託された駐車場事業の収益を過少申告し、差額横領したとする飛鳥会事件」(2006年)である
捜査の進展のなか、歴代の小西担当課長のひとりが自殺し、東京三菱UFJ銀行は小西との関係を追求され、一週間の業務停止命令を受けた
天国から地獄に落とされた小西はその翌年に肺ガンで死去する
岡野曰く、出会った当時の小西は銀行のことを何も知らなかったという。岡野自身が半ば指南役といえ、日本全体が土地バブルに狂奔するなか、「自分が銀行に利用されたと言われても、それは本望」と悪びれない
はたして小西が銀行を利用したのか、銀行が小西を利用したのか。本書は銀行の責任を重く見ている




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『海軍乙事件』 吉村昭

べっ、べつに乙しているわけじゃないんだからねえ!


海軍乙事件 (文春文庫)
文藝春秋 (2012-09-20)
売り上げランキング: 4,415


日本近代史の知られざる事件を追う吉村昭の中短編集
表題の海軍乙事件とは、山本五十六の跡を継いだ連合艦隊司令長官・古賀峯一大将がフィリピン近海で遭難し、行方不明となった事件
山本五十六撃墜事件を、「海軍甲事件」と呼ぶことから名づけられた。「甲事件」についても、五十六を護衛した戦闘機パイロットの顛末を描いた短編がある
「シンデモラッパヲ」を除いて、太平洋戦争にまつわり、歴史の闇に葬られようとしていた出来事を掘り起こす。当事者への取材の様子も描かれて、事実をあるがままに記す戦史文学の王道を行くものだ
全編を通して、戦争に振り回される個人の哀れさが強調されている


「海軍乙事件」

古賀峯一大将が行方不明になった事件には、連合艦隊参謀長・福留繁中将作戦参謀・山本祐二中佐も遭難していた。二番機に乗っていた一行は、セブ島沖に不時着し、同地の抗日ゲリラに身柄を拘束されてしまう
セブ島には、クッシング大佐率いる数千人のゲリラが米潜水艦の補給を受けて活動していたのだ。参謀たちの持っていた連合艦隊の邀撃作戦「Z作戦(新Z号作戦)はこのとき、ゲリラの手を経てアメリカ軍へ流出してしまう
セブ島の守備隊を率いる大西精一中佐が討伐に出た際に、ゲリラ側が日本人を交渉に派遣し、一行は無事、引き渡されることとなる。抗日ゲリラは引渡しのとき、日本の歌を歌って融和の雰囲気を作ったそうだ

しかし問題なのは、福留繁中将はじめ捕虜となった参謀の処遇
戦陣訓が有名なように、当時の日本軍は捕虜を恥とする気風があった。海軍は苦肉の策として、「抗日ゲリラは正規軍ではない」→「正式に戦争してないから、捕まっても捕虜ではないという理屈をひねりだし、不問にする
そして、件を隠しきるために福留繁中将を、第二航空艦隊へ栄転させてしまった(山本祐二は戦艦大和の特攻で戦死)
福留中将は作戦の流出を否定し続けたが、戦後にアメリカの戦史を手伝った旧軍の士官が流出の存在を確認した。本書では、この流出により日本軍の戦力は割れ、レイテ沖海戦の大敗北につながったとされている(実際に、その情報が生かされたかは微妙らしいが)


「海軍甲事件」

山本五十六がブーゲンビル島で撃墜されたときには、6機の零戦が護衛についていた。戦後生き残ったのは、著者が取材した柳谷謙二氏のみ
五十六巡察が決まったときには、その進路に敵機がいることは少なく、6機の護衛でも充分すぎると考えられていた。16機での遭遇は明らかに待ち伏せと考えられた
6機のパイロットは倍以上の敵には敵わないと表向きは不問にされたものの、周囲の視線は厳しく自ら死地へ旅立つように、ラバウルを飛び立っていった
柳谷氏は、ガナルカナル沖で敵の機銃によって片腕をもがれ、本土へ帰還。航空隊の教官として終戦を迎えた
上記の捕まった参謀たちに比べ、この扱いの差はなんだろうか

海軍では、待ち伏せとしか考えられないのに、いろいろ理屈をつけて暗号が見破られていないと判断してしまう。アメリカのラジオが五十六の撃墜を報じないからだ
しかしそれは、アメリカ側が日本側に暗号の解読を気取られないように、細心の配慮をしたから。暗号解読の成否を確認しようと、日本が飛ばした囮に対しては黙殺していたのだ
物量以外でも相手が上という、悲しい史実である


「八人の戦犯」

ポツダム宣言を受諾後に、戦犯の問題が浮上した。連合軍に裁かれる前に日本で裁いたほうが傷跡が少ないのでは考えた軍部は、八人の戦犯を選び出す
いわば「とかげの尻尾切り」の発想で、連合軍による戦犯の拘留が始まったことで裁判自体はフェードアウトしたものの、その調書は連合軍に提出されBC級戦犯に影響することとなった
本章では、その八人の戦犯のうち、確認しきれた事例を書き記す

A氏は陸軍中野学校からスペイン→南米に派遣され、台湾でアメリカ人捕虜を拷問した容疑。鉛筆やモップをつかって苦痛を与え、拳銃で殴打したとも
タバコの火を押しつけた部下を庇い、自分だけが裁判に立っている。BC級戦犯では、身内を庇うケースが多かったようだ
C氏に関しては、完全に冤罪仏領カンボジアで、敗戦後8月22日に抗日ゲリラを指導した神父ら3人を処刑した容疑で、終身刑の判決を受けた(冷戦に突入して大幅軽減された)
取材の最後で、C氏がクリスチャンであることが明かされる。まさに無情……


「シンデモラッパヲ」

日清戦争中、撃たれた後も進軍ラッパを離さなかった兵士の裏話
当初は岡山県浅口郡船穂村の白神源次郎と報じられた。村では日清戦争唯一の戦死者であり、英雄として顕彰碑が作られる。そればかりか、日本国外でも高名な詩人によって、題材とされた
しかし日清戦争後に死んだラッパ兵は、同じ岡山県の川上郡成羽村から出征した木口小平であることが発覚する
白神の名が余りに知れ渡ってしまったため、木口小平は日露戦争後にようやく世間から認定された
戦中の美談は、人々の欲求によって作られる、かなり怪しいものなのだ


戦史の証言者たち (文春文庫)
吉村 昭
文藝春秋
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『安倍晋三と岸信介』 大下英治

確かに言っていることは変わらない


安倍晋三と岸信介 (角川SSC新書)
KADOKAWA / 角川マガジンズ (2013-07-25)
売り上げランキング: 42,995


安倍晋三祖父・岸信介から何を受け継いだのか。岸の戦後と安倍の政治家としての半生を辿り、保守政治の再生を描く
冒頭に自民党総裁に就任直前(2012年)のロングインタビューがあり、岸信介に関しては五章中一章が割かれるのみ。本書は基本的に安倍政権への応援歌である
安保闘争のデモ隊に水鉄砲を浴びせたという良く聞く逸話から、世襲議員同士の友情、突然の首相退陣の裏幕、安倍シンパ議員の奮闘、決選投票も危ういと思われた総裁選など、第二次安倍政権を支える側からの視点で全編が描かれている
金丸訪朝団の時代から拉致事件の解決を訴えていて、小泉の訪朝の際に官房副長官として同行し、被害者の報告を知らされて謝罪の要求を進言し、金正日の謝罪を引き出した
政治信条をストレートに表現するが、その時々の役職に応じて国益を優先するというスタンスはブレがなく、党内に派閥を超えた安倍シンパが生まれるのも良く分かる。それだけに第一次内閣での突然の退陣表明は、シンパにとっても衝撃だったわけだが
本書はNHKの幹部を呼び出した事件に触れるものの、現在行われているメディア対策について言及はなく、大胆な金融緩和や肥大化する負債の問題など、厄介な部分には踏み込まない。これからつきあう政治家を悪く言わない配慮が目立って、分かりやすいバイアスがかかっている
それでも、安倍政権を支えている議員たちの意外な側面を覗けたのは良かった

そもそも保守本流とは、なんなのだろうか。戦後民主主義を「保守」とする人もいるが、自民党内における「保守本流」は、結党の理念である憲法改正であり、占領軍に押し付けられた枠組み、歴史観を解消することにある
岸信介は1953年、自由党に加わったとき、自由党憲法調査会の会長となる

『岸信介証言録』(毎日新聞社)によると、岸はこのとき、吉田総裁に次のように言った。
「自分としては、実は今の憲法を改正しなければいけないと思っている。この憲法は、そもそも制定の経緯からして間違っている。憲法調査会会長としては、そういう考えでやりたいと思いますが、いいですか」
吉田は答えた。
「この憲法なんていうのは、改正しなきゃいかん憲法だよ。自分は、実はあの時、この憲法を仕方なしに受諾せざるを得ない立場にあった。これを改正しねければならないと考えてきた。しかし、改正は容易にならんことだ。そこで占領下のうちに改憲をやろうと思って、朝鮮戦争が起こった当時、マッカーサーに相談した。マッカーサーも自分がこれを日本に押しつけたのは間違いだった、改正すべきだと言っていた」(p66)


ここにおいて吉田の軽武装・経済優先路線と岸の保守本流は、対立していなかった。平和憲法の据え置きは、体制を作った本人も意図しないことだったのだ
岸は鳩山内閣で日ソ国交正常化がなったのを受けて、日米安保条約の改定に乗り出す
興味深いのは、当時の社会党を率いる浅沼稲次郎書記長が、沖縄が軍政下のままであることと安保条約が不平等条約であると非難しつつも、安保条約の破棄を求めなかったことだ
実は安保条約に対する認識は、与野党でここまで接近していたのである
また核武装に関して、岸は死の灰を振りまく核爆弾は憲法違反としつつも、現憲法下でそれをのぞく核兵器(原潜、原子力空母)は自衛のためなら可能という認識を示していた
首相就任後に訪米より先にアジアへ行くなど、安倍総理は岸の行動を踏襲していて、思想的にその延長で行動しているのは間違いない

今、世論を揺るがしている集団的自衛権について、冒頭のインタビューで明確に語っていた

 自民党が2013年3月にまとめた「憲法改正原案」では、自衛権を明確化して、自衛軍を保持することを明記し、集団的自衛権も容認する。個別的自衛権というのは、本来持っている機能ですから。憲法九条とは関係ないですから。私は、そもそも憲法九条を変えなくても、個別的自衛権と集団的自衛権は権限として持っていれば、当然行使できるという考え方です。(p35)


個別的自衛権は良くて、集団的自衛権はいけないという内閣法制局の解釈には、党内で親中派とされる高村正彦副総裁すら、疑問に思っている
内閣法制局は、法律の専門家であっても安全保障の専門家ではなく、集団的自衛権の中に日本の生存のための必要最低限のことがあるのに、気づいていないのではないか
その一方で、憲法改正そのものについては、アメリカに派兵を求められても、「あんたらの置き土産のせいで、派兵できない」と断れる部分もある。自民党内では、より多くの党派の賛成が見込める第96条の憲法改正の規定の改正自衛権を脅かしかねない第九条の二項の削除し、自衛隊(国防軍)の存在を明記するというラインで検討されている
本書を読む限り、TPPオバマ大統領から、自民党の政権公約を掲げて「聖域なき関税撤廃を前提としない」という言質をとるなど、第二次安倍内閣は外交に強い人材がそろっていて、着々と点数を稼いでいるように見える。民主党が酷過ぎたから、ハードルが低いのもあるけれど


岸 信介VS大野伴睦 昭和政権暗闘史 二巻 (静山社文庫)
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