「せどり」というと、悪名高き「転売ヤー」のイメージもあるけども、本質は安く仕入れて高く売るという普通の商行為。本書はネットを利用しての「せどり」のノウハウを紹介する
扱うマーケットサービスは、Amazonとメルカリ。Amazonは、単純に市場規模が最大であり、FBA(フルフィルメント by Amazon)という発送・梱包・アフターサービスまでを一括で引き受けてくれるサービスがある
最王手ゆえに、それをフォローするアプリも充実していて、バーコードを読めば市場でどれぐらいの値段で出回っているかが瞬時に分かり、その売れ行きすらもデータで確認できてしまう
お店でスマフォ片手に立ち止まっている人は、このためにアプリをいじっているのだ
メルカリはAmazonで売れ残った物をさばく、サブの市場という位置づけなのだ
ノウハウばかりでなく、「せどり」をする側から見たネット市場が興味深い
1.メインはAmazon、サブでメルカリ
本書における、「せどり」の主戦場はAmazon
Amazonで出品する場合、出品者は代表者名、住所、電話番号を明示しなければならず、出品ごとの手数料(大口なら月4900円、小口なら一品につき100円)、販売手数料、FBAを利用する場合は配送手数料、在庫保管手数料が必要になる。もちろん、別個にAmazon倉庫への配送料はいる
ここでは、個人であっても法人であることが期待されていて、店舗名も購入者が安心できる名前が望ましいという。なので、本書ではどこかにある会社のような名前、支店であるように装うことを薦めている
つまり、Amazonの出品者はちゃんとした会社のように見えても、実は個人がバーチャルオフィスで電話番号を借りて運営している可能性があるのだ
一方のメルカリでは、素人が個人で行っているように思わることが大事。ユーザーもメリカリ自身も業者が大量に物品をやり取りすることを嫌っているのだ(検索順位で下位に回されてしまう!)
なので、品数を捌きたい場合も、一気に出品登録などはせず、欲しい人にメッセージとして添えるテクニックを紹介している
Amazonで仕入れた商品はAmazonで売れない決まりがあるので、それをさばくためにメルカリ、ヤフーオークション、楽天市場などを利用していく
*最近のメルカリでは、メルカリSHOPという枠に業者を誘導しているようである
2.努力イコール検索
著者いわく、「せどり」は簡単、しかし「楽ではない」という。これは仕組みは簡単だけど、やりきるのは忍耐がいるということ
中古ショップ、ディスカウントショップ、大手家電店、デパート、コンビニなどなどいろんな売り場が、仕入れ対象となりうるが、その特徴を知るために求められるのが、とにかくアプリを駆使した「検索」である
場合によって、片っ端から「全頭検索」する必要もあり、それを店舗や他のお客さんと揉めないように行わねばならない
大量仕入れ、大量販売する大手は、在庫が消えることから、「せどり」を歓迎する向きがあるとはいえ、それも限度がある
また、出品してからも、競争は価格を巡って行われるので、こまめに値段の上げ下げをチェックしなければならない
ひとつ注意が必要なのは、本書では法律関係にあまり触れていないこと
少し調べただけでも、税金対策に税務署へ「開業届」をしておくことが大事だし、中古品を扱う場合は所管の警察署に「古物商許可」を受ける義務がある。個人でAmazonへ出品する場合、仕事上の電話番号を作るか、バーチャルオフィスを作って住所と電話番号を借りる必要がでてくることもあるだろう
メルカリはともかく、特にAmazonを利用する場合は、準備と固定費用がかかるのを覚悟するべきなのだ
まあ、そのあたりは著者のサイトでフォローされていると思われるが
本書はかなり具体的に、生々しいテクニックを紹介していて、ネットショップの実態、考え方がよく理解できる。そして、著者の意図ではないのだけども、「せどり」の発想をある方向に尖らせていくと、「転売ヤー」が生まれてしまうのも分かってしまった
*23’4/5 加筆修正