なぜ……
ウォーハンマーノベル 吸血鬼ジュヌヴィエーヴ (HJ文庫G)
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ジャック ヨーヴィル
ホビージャパン
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ドラッケンフェルズ事件後、劇作家デトレフは吸血鬼ジュヌヴィエーヴと帝都アルトドルフに戻り、由緒ある劇場で新作『ジークヒル博士とカイダ氏』に取り組んでいた。しかし、ドラッケンフェルズ城の跡地から、その元主人の“遺志”を受け継ぐ仮面が人から人へ乗り移り、復讐を果たさんと迫るのであった。(見かけは)美少女吸血鬼ジュヌヴィエーヴの不思議な冒険の三編
この前読んだ『ドラッケンフェルズ』、『ベルベットビースト』の後日談となる三編が収められている
『ベルベットビースト』はまだ手に入れていないが、とりあえず『ドラッケンフェルズ』を読んでいればついていける内容だった
どの話もウォーハンマーの世界観を生かしつつ、独特の輝きを持つミステリーであり、意外な謎と結末が待ち構えている。ダークファンタジー好きにはたまらない、絶品である
<流血劇>
ドラッケンフェルズ城から生還したデトレフは劇作家として本格復帰。一座は伝説の魔術師を倒した名声から、帝国の貴顕を招けるほどの盛況を見せる
新作が『ジークヒル博士とカイダ氏』と元ネタがこれ以上なく分かりやすい(『ジキル博士とハイド氏』)。劇場の主であり異形の存在“落とし戸の悪魔”は、新進女優エヴァに助言するなど『オペラ座の怪人』を彷彿とさせる存在であり、地下に謎の地下空間が広がるとか、これまた分かりやすい
ただしラストへの畳み方は、ドラッケンフェルズの復讐が絡まって怒涛の展開だ
『ドラッケンフェルズ』を読んだ人間なら、あの惨劇を生き残った者たちのその後の群像劇としても楽しめる
<永遠の闇の家>
ジュヌヴィエーヴが登場するものの、彼女の記憶が混乱しているので、出だしではいつの時代なのか分からない。管理人は最初、彼女が吸血鬼に成りたてのころと勘違いしてしまった(苦笑)
彼女が囚われているのは不思議な力を持つ館であり、中の住人は120歳を超える老人メルモス・ユードルフォの遺産を巡って血で血で洗う戦いを繰り広げていた。相続人たちは死んでは、何度でも蘇って戦い続ける
その不毛な惨劇に風穴を開けるのが、貴族出身ながら階級闘争を唱える革命家クロソウスキー大公と、かつてデトレフの劇団で女優もやっていたというアントニアで、この二人が主役を務める
訳者のあとがきによると、登場人物の多くは往年のゴシック小説から来ているとか。挙げられたところでは、アン・ラドクリフ『ユードルフォの謎』、C・R・マチューリン『放浪者メルモス』、マシュー・グレゴリー・ルイス『修道士(マンク)』
日本で需要が少ないからか、映画化された『マンク』ですらお高い! 参ったぜ
<ユニコーンの角>
ジュヌヴィエーヴは、不覚にも帝国の財務大臣ティバルトに囚われてしまった。自身のことだけでなく、かつての愛人デトレフを持ち出された彼女は、ティバルトの政敵であるルディゲル・フォン・ウンハイムリッヒ伯の暗殺を命じられる
傲岸な貴族であるルディゲル伯は、幻獣ユニコーンの“雌”を求めて狩りに出る。伯の息子ドレムス、親友のドレムス伯に、大臣の密偵バルトゥスとジュヌヴィエーヴが同行するが…
ルディゲル伯の城に招かれたオト・ヴァールニクは、アルトドルフ大学の学生クラブ“カール・フランツ盟友会議長”で、伯の息子ドレムスもアルトドルフ大学の学生。二人は『ベルベットビースト』にも登場するらしい
本作も禁断のユニコーン狩りと、ドレムス出生の秘密、ジュヌヴィエーヴによる暗殺作戦が混じりあって、誰がどういう結末をたどるのか最後まで引き込まれた
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