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『勝つべくして勝つ 競馬三点突破論』 今川秀樹

競馬はやはり穴ありき


勝つべくして勝つ!  競馬3点突破論 (競馬ベスト新書)
今川 秀樹
ベストセラーズ
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競馬を勝つべくして勝つ秘訣とは? リアルカイジが語る競馬で勝ちきる法


著者は東スポ、月刊誌『競馬最強の法則』で連載を持つ予想家で、管理人が参考にしている一人である
三点突破論の「三点」とは、「予想法」「買い方」「メンタル」
「予想法」自体は素朴なラップ分析であり、勝負に絡みうる逃げ馬を見つけることが競馬で勝利する早道とする。ここまでならよくある定跡かもしれない(アマゾンのレビューでそう吠えてた人もいた)が、著者はそこをさらに逃げ馬のタイプを加速の仕方で数パターンに分け、レースの性質によって取捨していく
ラップ分析を重視するものの、単に上がり三ハロンの速い馬を見つけるのでは、人とは差がつかない
競馬を「競走馬とそれを見抜く人間のゲーム」と見ず、競馬を買う人間同士のゲーム」と考えているのが鋭い指摘で、オッズの裏を掻くことは多数派の裏を掻くのと同じということ。競馬はまごうことなき「対人ゲーム」なのだ

ある程度、予想法を持つ到ったファンにとって、悩んでしまうのが馬券の「買い方」。ついおかしい馬券の買い方をして、いろんな後悔をするものだ
著者の「買い方」は、競馬は勝ち馬を当てるものという原則から単勝を基本とし、馬連、ワイド、三連複、三連単に広げるやり方
回収率については、的中率を20%として一撃で5倍の配当を目指す。この前読んだ境和樹氏とは、この点では共通するものの、著者の場合は複勝を重視しない
複勝では、5倍の配当に達するケースが少ないからだ
5倍の配当を目指すゆえに、オッズでも「5」の数字が明確な基準となる。単勝でもワイドでも5倍を切れば、買うに値しない
細かいと思うのは、合成オッズへのこだわりだ。競馬データベースソフト「TARGET」を使用して、なるべく同じ配当になるように細かく調整していくのだ
著者いわく、オッズを把握するためにも、競馬場より自宅のほうが予想に向いている

「メンタル」については、カイジらしからぬ(?)精神論に突入する
まず第一に、競馬には潤沢な資金が必要と、10万円の現金を用意しろというのだ。家庭を持つサラリーマンでも、一年頑張ればこれぐらい貯まる、貯められないなら止めてしまえの突き放しは、この手の本を買う読者に通用するだろうか
管理人もパチンコで勝負するときは、10万ぐらい資金が貯まるのを待ちはしたが…競馬は100円から買えるからこそ、予想が甘くなるという指摘は耳が痛い
第二に、馬券に使う最低金額を1万円に設定すること。理由は賭け金が少ないと、やはり予想が甘くなるから。まあ、これは著者個人の場合で、個人個人で引き下がれない最低金額を設定して、甘く賭けちゃうぐらいなら「見」にするべきということだろう
負けがこんだからと賭け金を引き下げると、かえって予想に対する自信がなくなっていくというのは、管理人も今週から半額にするつもりだったので、まさに図星だった(苦笑)
正直、ここまでストイックだともはや「カイジ」とはいえまい。見た目からして競馬寺の若和尚である。ともあれ、これからもこの人のコラムを読んで、競馬道に精進していくつもりだ


関連記事 『単複論』

『単複論』 境和樹

相手を考えるのも楽しいんだけど


単複論! (競馬最強のハンドブック)
境 和樹
ベストセラーズ
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最近、競馬の成績が急降下なので、馬券作戦を見直そうと購入した
本書では血統から導き出した「非常識馬券」で、東スポ、『最強の法則』に連載を持つ著者が、単勝・複勝を中心とする馬券で穴馬券を的中する方法を提唱している
誌上プロは三連複、三連単といった券種を使って万馬券をアピールしがちだが、著者はもっとも当てやすい複勝で勝負する。単勝はあくまでボーナスとして買い、複勝のみでも充分儲けが出る賭け方をするのだ
穴馬の見つけ方としては、種牡馬、繁殖の父(いわゆる母父)のみならず、種牡馬の母父までも辿り、コース適性とその日の馬場に合う馬を探す。単に能力判断だけでは、みんなに評価される人気馬が浮上しがちなので、馬が活躍する前に隠れ適性馬を見つけようというわけだ
本書では、父母父まで遡ることで血統の特徴を掴み(著者は「内包」と表現する)、同じサンデーの血統でもその傾向の違いを説明している。それほど深く突っ込んでいるわけでもなく、ダビスタにはまった人なら容易に飛びつける手法だろう

なぜ著者は単複馬券を推すのか?
控除率が低いこともさることながら(単複20%、その他は25%)、相手を考える必要がない点だ
三連単の大万馬券などが出たときは、「誰やねん」といいたくなるような予想できない人気薄が突っ込んでいる。後半の鼎談で出てくる「政治騎手」のヒノ氏も、百万馬券を獲るために三連単の総流しも辞さない
もし複勝ならば、予想しがたい人気薄が突っ込もうと心配ないし、むしろ確定オッズを押し上げる要因となる。大歓迎なのだ
相手のある馬券だと的中しても、他の買い目は自動的に死に馬券となるが、単複は一頭ずつ買うなら無駄な馬券が生じにくいので、回収率の点でもヒケをとらない
ただプロ予想家同士の鼎談では、単複で高配当がとれるなら、三連単・三連複を組み合わせれば、より高い回収率を上げられるのではないか、と指摘されている。もっとも前述のヒノ氏などは、三連単で90点~200点も買う人なので、一レース数千円台の一般人には迂遠な話だろう

著者の買い方はいかなるレースでも、単勝2000円、複勝4000円で勝負する。水上学氏からは、買い方を固定するのもいいけれど、固執しぎると買えるレースが減るのではとも
ただ実践的には、ある程度買い方を決めていないと、レース直前に迷って馬券を買えないケースもでてくる。こういうレースならこれでいくと、自分なりのパターンを決めてしまうことも大事だ
管理人個人にとっては、買えるオッズの境目が分かったことが本書の収穫。著者の場合、単勝と複勝の比率が2:4で、複勝オッズの下限は“2.5倍。6000円の馬券で複勝的中なら、10000円の払い戻しになることが最低限となる
普通の競馬攻略本だと、ここまで具体的に書いてくれることがないので助かった


関連記事 『馬券術 政治騎手』

『馬券術 政治騎手』 樋野竜司

万馬券は60点から200点の三連単で追うらしい


馬券術 政治騎手
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樋野 竜司 「競馬最強の法則」馬券術特捜班
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騎手の勝ち負けは、馬集めの「政治力」で決まる! 業界内のポジションから穴騎手を探す馬券術
『競馬最強の法則』で連載を持つ著者が、騎手の実力を「技術力」「戦略眼」「政治力」の三点から分析し、それがレースの勝ち負けにどういった影響に出るかを明らかにしていく
騎手の年間勝利を決定づけるのは、なによりも馬集める「政治力。そもそもいい馬に乗れないと、競馬で勝つことはできない。藤田伸二の発言を引いて、「技術力」は数年で差がなくなるとし、騎手たちは馬集めるサバイバルレースを戦っているというのだ
紙数を稼ぐためか、同じ内容を繰り返す文章はくどいし、中盤以降に載っているJRA騎手のプロファイルは、初出が2006年とあって現代と乖離しているものの(10年経つと、かなり入れ替わる)、騎手から観た競馬観は確かで一読の価値はあった

「政治力」のある騎手がいい馬に乗り、競馬に勝つ。とはいえ、有名騎手と人気馬が強いからといって追いかけても、馬券的には渋すぎる
そこで著者が目をつけるのが、「政治力」が足りないものの、優れた「戦略眼」を持ってリーディング上位を虎視眈々と狙う騎手
「政治力」がいまいち足りないうちを狙うのがポイントで、一流騎手になってからではオッズ面でうまみがなくなる
もうひとつのポイントが、決め打ち型」か否か。足りない馬に乗るからこそ、一瞬にチャンスに賭ける戦略で穴馬券を作るのだ
逆に気配り系」の騎手だと、着狙いに走ったり、人気どおりの着順に終わることが多い。そうした「気配り系」は、逃げ馬を潰せる先行馬に乗っても、レースを壊すのを恐れて番手に徹し、むしろ後続の馬への「壁」になって逃げ切りを助けることが多い
著者はこうした騎手を壁ジョッキーと名づける。先行馬が多くてのスローペースは、小心な騎手たちが作ってしまうのだ
馬券を買う側からだと、「気配り系」にはもやもやしてしまうが、業界内ではそれなりの意味がある。条件戦などでは、うかつに勝ちあがってしまうより、馬を傷めない範囲で掲示板を確保してくれるほうが、関係者にとって経済的なのである

馬券的に使えそうなのが、巻末の「乗り上がり」「乗り下がり」である
乗り上がりで分かりやすいのが、前走に下手な騎手が馬の力を生かせずに惨敗したパターン。余力が残っている分で、次走で上手い騎手に乗り替われば好結果になりやすい
誤った戦略(アピール目的とか)のために先行して失敗したことが、かえって調教代わりになって激走することもあるそうだ
乗り下がりだと、一流騎手が絶妙な「戦略眼」で勝たせたパターン。力を戦略で補ったわけで、警戒されるなかで同じ結果を出すのは困難となる。下手な騎手に乗り替わる場合は、さらに厳しいだろう
勝利騎手は「馬が充実しているから勝った」というコメントを残しがちなので、何が勝因か客観的に分析していくことが重要である
騎手三割、馬七割というものの、乗り役が下手を打てばたちまち勝負は終わる。エージェントの差配で馬が決まる現代、政治騎手的な視点はより重要さを増すだろう
本書は10年近く前の本であり、データ的には使えない。最新の情報は、「政治騎手」が連載されている『最強の法則』誌を当たるべき


馬券術政治騎手名鑑2015 集団的自衛権
樋野 竜司&政治騎手WEBスタッフチーム
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『シービスケット―あるアメリカ競走馬の伝説』 ローラ・ヒレンブランド

実際のレッド・ポラードは映画とキャラが違う

シービスケット―あるアメリカ競走馬の伝説シービスケット―あるアメリカ競走馬の伝説
(2003/07)
ローラ ヒレンブランド

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2003年に公開された映画『シービスケット』の原作本
シービスケットは1930年代に活躍した名馬で、1938年においてヒトラーを押しのけ、もっとも新聞の紙面を飾るほどの国民的人気があった
三冠馬ウォーアドミラルの対決では、7万8千人の観客が小さい競馬場(定員一万二千人)に殺到し、アメリカ中がラジオを通してその勝負を見守ったという
本書は、馬主ジョン・ハワードの前半生からシービスケットとの出会い、世紀の対決、故障からの復活、念願のサンタアニタ・ハンデキャップ(10万ドルレース)制覇まで、馬主、調教師、騎手が味わった波乱万丈の物語を描いている
“世紀の対決”を巡る駆け引き、騎手の過酷な減量(ときには37キロまで!)、など映画で語られない裏事情も盛りだくさんで、鑑賞済みでも多くの発見があった

第一次大戦後、アメリカでは禁酒法に代表される禁欲主義が蔓延し、カリフォルニアでは1916年に競馬が禁止されていた
そのはけ口として、メキシコのティファナ競馬場がオープンし、職を失った競馬関係者が殺到した。後にシービスケットの主戦となるレッド・ポラードはそこで苦しい下積み時代を送る
1933年、大恐慌から財源に苦しむカリフォルニア州が、競馬を合法化。自動車販売で富を築いたジョン・ハワードも馬主となり、1934年にサンタアニタ競馬場への出資者ともなった
シービスケットの調教師となるトム・スミスは、馬車が交通手段の時代に牧場を渡り歩いて生計を立ててきたが、自動車の普及で競馬の世界に身を投じた。くしくも自動車の普及に心血を注いでいたのが、ハワードだというのだから、人生は分からない
1930年代はちょうどラジオが普及していく時代でもあり、耳から共有された情報から「有名人」(セレブレティ)の概念が生まれた。大恐慌で打ちのめされた人々は、ラジオから聞くシービスケットの活躍に驚喜したのだ

実際のシービスケットは、どんな馬だったかというと、いわゆるズブい馬。早くから賢く、調教を走らない馬だったようだ
そのために体重を絞るのが大変で、最初の調教師フィッツシモンズ(当時のアメリカを代表するトレーナー)はあえて過酷なレース日程を組んで調整した。3歳での酷使は馬体作りにはよくても、精神的には傷つけてしまい、業界に入ってまだ一年のトム・スミスの手に渡ることになる
スミスは丹念にシービスケットのトラウマを取り、その心を癒したが、やはり馬体を絞るのが大変で、今の競馬で考えると過酷な日程を組まざる得なかったようだ
そうした遊ぶ馬と手が合うのが、主戦レッド・ポラードで、友人のジョージ・ウルフほどの実績はなかったが、派手に失敗しても馬主と調教師の信頼を失わなかった
当時は西部が未開拓地として扱われ、“世紀の対決”では95%の競馬記者が東部の三冠馬ウォーアドミラルを推したという
それを四馬身差で退けたシービスケットは、日本でいうと東西競馬界の力関係を変えたテンポイントに近いだろうか


関連記事 【DVD】『シービスケット』

シービスケット―あるアメリカ競走馬の伝説 (ヴィレッジブックス)シービスケット―あるアメリカ競走馬の伝説 (ヴィレッジブックス)
(2005/01)
ローラ ヒレンブランド

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『騎手の一分 競馬界の真実』 藤田伸二

講談社現代新書も最近の新書らしくなっちゃったなあ

騎手の一分――競馬界の真実 (講談社現代新書)騎手の一分――競馬界の真実 (講談社現代新書)
(2013/05/17)
藤田 伸二

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競馬界の終わりの「始まり」!? エージェント制、外国人騎手の活躍、高速馬場、クラブ馬主の席巻などなど競馬界を取り巻く問題に男・藤田が物申す!
講談社の新書だけあって、いわゆる内輪の暴露話ではなかった
騎手生活を締めくくる覚悟での、競馬界への提言なのである
現役騎手だけあって全て騎手側の視点で斬っていく。クラブ馬主の寡占状態&エージェント制が若手騎手の出番を無くし、騎手の人数がピークの半分に落ち込んでいることを指摘。この事態は騎手という職業の魅力を奪ってしまい、競馬学校の応募者数がピークの二割にまで下がってしまった
競馬界は底辺から崩れ去ろうとしているのだ。誰が悪いのか。エージェントでもクラブ馬主でも外国人騎手でもない
そういう環境を作るJRAが「諸悪の根源」と言い切っている。いいのか、そこまで言って(苦笑)

現役騎手の視点から、同僚に対する忌憚のない評価が聞けるのも本書の魅力
先輩の武豊騎手に対しては、ミスが少ない「無難な騎乗」と評する。どんな馬の騎乗でも文句を言われることない乗り方をする
俗に「天才」の一言で済まされるユタカだが、実際にはリスクを犯さない優等生、秀才型なのだ。ただし、普通の騎手の「無難」ではなく、広い視野に立った一流の「無難」なのであって、だからこそ数字を残し多くの期待に応えてこられたわけだが
大先輩の岡部騎手は「鞭の名手」で、横山典弘騎手はスマートな姿勢で「人馬一体と褒め称える
ただし、岩田騎手に対しては、仕掛けのタイミングなどレース巧者であることは認めるけど、尻もちダンスは「かっこ悪い」「馬の背中を痛める」と否定的だ。尻もちには賛否両論があるが、競馬界で言われるスマートな乗り方ではないようだ
リーディングをとった福永騎手には、体が固いせいか馬と体に無駄な開きがあることを指摘。数字が上がるのは、強い馬に乗せてもらっているからだよ、とチクリ

こう騎手のことを語りながら、「騎手ではなく馬が走る」「一人で勝ってるわけじゃない」ことも忘れない
崇拝する田原成貴も同期の四位騎手も、才能を誇示するゆえに関係者と衝突し干された。一種の「人付き合いの良さ」も大事だし、「関係者の努力に感謝の念を表す」ことが次の騎乗依頼につながるのだ
こうしたつながりは、厩舎の協力で若手がトップジョッキーに育つことで生まれるのだが、今はエージェントが直接、馬主とつながって勝負レースは外国人騎手に任されてしまう
2012年のジャパンカップでは17頭のうち外国馬が5頭しかいないのに、日本馬12頭のうち5頭が外国人騎手という歪な状況になってしまったという
外国人騎手に馬が集まるのは、腕がいいだけでなく、日本人ならでは舶来品信仰がある。この状況を放置して、ライトなファンが競馬に関心を持ち続けられるのか
JRAの決断が待たれる


関連記事 『殴る騎手』


競馬番長のぶっちゃけ話 (宝島SUGOI文庫)競馬番長のぶっちゃけ話 (宝島SUGOI文庫)
(2011/01/12)
藤田 伸二

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『サラブレッドはゴール板を知っているのか』 楠瀬良

走る馬はほんとうにアホ?

サラブレッドはゴール板を知っているかサラブレッドはゴール板を知っているか
(1998/10)
楠瀬 良

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サラブレッドは競馬を理解しているのか。馬の研究者による14人へのインタビュー
本書はJRAの雑誌『優駿』で連載された対談をまとめたもので、藤沢和雄など厩舎、牧場関係者に始まり、武豊、岡部幸雄、マイケル・ロバーツといったジョッキー、獣医、装蹄師、そして馬術家やなぜかアスリート、果てはムツゴロウこと畑正憲まで、多彩すぎる面子で送る
テーマを生物としての馬に置いており、タイトルの「ゴール板を知っているのか」など、競馬誌で扱われない競走馬の本性に迫っている
出版が1998年(スペシャルウィークがダービーを獲った年)と十数年前で、国際レースにおける日本馬の活躍を考えると、本書で指摘される日本競馬の遅れていた部分はかなり改善されているとは思う
生き物としての馬の本質は競馬予想の根幹をなすにも関わらず、語られることは少なかった。競馬を愛する者にとって知っておきたいことばかりが語られる

馬が「ゴール板を知っているか」については、岡部は分かっていないといい、ユタカは知っていると言う。関係者によってまちまちの答えが出る
馬は過去の経験をかなり覚えられる動物らしく、人を騙したりする“意識”を持っているのは確からしい。想像以上に賢く繊細なので、知っていると考えるのが妥当なようだ
意外だったのは、欧米の馬が「馬優先主義」で育成されていること
力のいる洋芝を日本以上の斤量背負って走る欧州馬は、細い日本馬よりゴツゴツしたパワー型のイメージなのだが、調教においては馬の気持ちを配慮してプログラムされていて、アンハッピーな状態なら調教を早めに切り上げる
藤沢和雄、岡部幸雄、武豊と続く「馬優先主義」は、欧米の競馬から学んだものなのだろう
ロバーツによれば、日本の競馬場で写真撮影で人間の立ちたいところに馬を連れて行くのはおかしいし、パドックからレースまでの時間が長いのも馬には良くない
騎手であっても、馬が人間を背に乗せる時間が長いのはストレスが貯まる。馬にとってジョッキーが乗ったらもうレースなのだ
イギリスはパドックから五分でレースだそうなので、ぜひ改善していただきたい

バリエーションに富んだ面子がそれぞれの分野で深い話をしてくれるので、ピックアップするのが難しい(汗
藤沢調教師からは、滞在だとかえって落ち着かない馬もいるという意外な話も。調教をする場所と競争する場所が同じだから緊張感が解けず、ファンファーレを聴いて騒いでしまう馬もいるらしい
輸送の難は避けることができるものの、美浦の方が調整しやすいそうだ
装蹄師の方からは、1989年のJCをレコード勝ちしたホーリックスが実は落鉄していたという驚愕の事実が。それでも爪は無事だったそうだが、落鉄はそう大きなアクシデントではないとか
ちなみにレース前に蹄鉄を打ち直すことがあるが、すぐに終わるのでレースへの影響はほとんどないそうだ
ムツゴロウさんは、動物王国で見る温厚さから離れた、峻烈な探求者と下ネタ好きという姿も見せてくれる(苦笑)
動物全体からの馬という生き物を見る視点が新鮮で、競走馬を身近に感じることができる一冊だった

『黒の軍団 チーム田原』

蝶野さんではなくて

黒の軍団チーム田原 旅立ちの章黒の軍団チーム田原 旅立ちの章
(1999/12)
田原 成貴

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黒の軍団チーム田原―2000年春 飛翔黒の軍団チーム田原―2000年春 飛翔
(2000/03)
田原 成貴

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かつての一流ジョッキー、田原成貴の調教師時代のルポルタージュ、というかファン本
違う意味で黒くなってしまって(苦笑)と、ネタ的に手にとったのだが、読むとしんみりしてしまった
<旅立ちの章>では、1999年に一年間の修行を経て調教師になったところ、管理馬ゼロからスタートとなった事情や、調教助手、厩務員などのスタッフの紹介、主戦騎手といえる上村洋行騎手や武幸四郎騎手のインタビュー、飼い葉や調教などの話せる範囲の工夫、所属の競走馬などが触れられる
<2000年春 飛翔>は、1999年を振り返った各スタッフの回顧に、施設の説明、四位洋文騎手や藤田伸二のインタビューがあるが、オフィシャルHPの説明にサテライトメンバーの座談会など内輪向けの箇所が多く、やや内容が薄かった
田原成貴はもちろん、ベテランの柳田三千男清水悦治らスタッフの談話もユーモアがあって面白く、競走馬を知る手がかりとなるし、後輩騎手のインタビューから競馬界で田原がどういう存在だったかが分かる

<旅立ちの章>には、“フサロー”こと関口房朗の息子に嫁いで、その管理会社の秘書をやっていた関口由加里による、馬セリの日記が収録されている
ちょうど、日本で初めてのセレクトセール(1998年)へ行った模様などが軽い調子で触れられていて、個人オーナーがどういう調子で馬を購入していくかがよく分かる
田原も同伴するのだが、脚の動きで体質の弱い馬を見抜いたりと、相場眼はさすが
セレクトセールではフサイチコンコルドの半妹にあたるバーレクイーンの1996(本の中ではセリ年の「98」)を1億4000万円で、トリプルワウの19981億8000万円で落札
血統の裏づけがあるとはいえ、さすがの金満である
バーレクイーンの1996=フサイチミニヨンは一度も走らず、繁殖に上がり函館2歳S勝ちから古馬になってもオープンで活躍したアンブロワーズを生み、トリプルワウの1998=フサイチオーレはオープン頭打ちながらサンデー産駒なので豪州で種牡馬になっているようだ

厩舎としての初勝利がフサイチゴールドで、出世頭が弥生賞勝ちのフサイチゼノンに、のちに神戸新聞杯を勝つフサイチソニック(勝ったときには転厩)と、所属馬のほとんどが関口房朗の馬が占める
<2000年春飛翔>の巻末には、フサイチゼノンが弥生賞を勝ったときのグラビアで締められているが、皮肉なことにこの直後からフサイチと田原厩舎の関係は悪化する
フサイチゼノンの皐月賞出走を巡って揉め、ゼノンの脚部悪化に不信感を持ったフサローはフサイチの馬を田原厩舎から引き上げてしまうのだ
それでも2000年には初年の倍の勝ち星を上げたが、2001年には田原本人が銃刀法違反、覚せい剤所持で逮捕され、厩舎は解散してしまう
アンケートで田原成貴というキャラクターを作っているという答えていて、自分を追い込むためにわざと大口を叩き、騎手時代は結果を残してきた。同時にその時代から才人特有の脆さも見せていて、才能だけでは通用しない調教師の世界では、不安に押し潰されたのだろう
『最強の法則』のコラムは好きだったけど、残念だよ


ありゃ馬こりゃ馬 1 (ヤングマガジンコミックス)ありゃ馬こりゃ馬 1 (ヤングマガジンコミックス)
(1994/07)
田原 成貴

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『殴る騎手―JRAジョッキーたちの裏舞台』 森田駿輔

馬券作戦につながらなくもない?

殴る騎手―JRAジョッキーたちの裏舞台 (双葉文庫)殴る騎手―JRAジョッキーたちの裏舞台 (双葉文庫)
(2006/10)
森田 駿輔

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競馬は格闘技だ!トレセン厩務員から見た騎手たちの熱い戦い
パワハラに体罰・イジメが社会問題となる昨今ではショッキングなタイトルだが、初出は2002年と10年以上前の本だ
騎手の世代も入れ替わって本書の内容よりも、良くも悪くも変わっているはず・・・でしょ?(苦笑)
著者は暴露本ではないという言うが、素人から見れば十分に暴露本である
騎手同士の場外乱闘に、競走馬のヤリヤラズ、騎手の馬券購入、グループによる展開作り、法律に絡む内容もあれば、公正競馬の観点からいかがなものかという物事もある(さすがに馬券購入は今はないようだが)
有名な暴行事件で殴ったことより木刀を使ったことを問題にするなど、ずれているところもあって、競馬界と世間の常識のズレを楽しむ本ともいえよう
ただし、著者の競馬や騎手に対する愛情は本物

藤田伸二と聞いて思い浮かぶのは、昔マーク屋、今なら「恫喝逃げだろう
しかしこの“恫喝”、競馬界の常識からすれば、当然の行為だと言う
本書では、細江純子と今は調教師の河内洋のエピソードが取り上げられており、細江がか細く「どいてぇー」と言ったので(馬がいっぱいになっていた)河内は進路を開けたあとに、「もっとドスの聞いた声で言え」と注意したそうだ
「どけ、どけ」と声を張るのは、騎手としてのテクニックでもあるのだ
ただし、河内に言わせると「どけ」にも限度があるらしく、「どけ、どけ、どけ」と三度言うのは騎手の品格に抵触するそうだ
ちなみに藤田騎手は場外のエピソードはともかくも、最年少での模範騎手賞、最多のフェアプレイ賞をとるなど騎乗停止が少なく、与えられたルールの中で結果を残しているジョッキーである
著者も彼が好きなようで、いくつかの武勇伝を愛らしく紹介している(格闘技も学んだイニシャルSって、他にいますか!w)

著者は外国人騎手に対しても分け隔てなく書いている
とりわけオリビエ・ペリエの評価は高かった
1996年の凱旋門賞エリシオをフランス競馬では常識外の逃げで勝たせたことを、「日本の経験がなかったら、ああいう騎乗できなかった」という本人の談話を引いている
フランスの競馬では直線のスタミナ勝負が主流で、日本のような展開の妙がなかったそうだ。日本の競馬は海外にも影響を与えているのだ
ミルコ・デムーロについては、いかなるレースでも勝利にこだわる希少種として紹介され、賞金だけを考えればクレバーでないかもしれないが、レースを盛り上げるのに大事な存在としている
著者は騎手全体がおとなしくなって競技化することを危惧していて、闘う男たちを応援する。それは10年経った今だからこそ、必要とされるメッセージかもしれない





関連記事 『騎手の一分』

藤田伸二の男ラム (競馬王新書33)藤田伸二の男ラム (競馬王新書33)
(2010/06/18)
藤田 伸二

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『この馬に聞いた!最後の1ハロン』 武豊

サブタイトルが最後の1ハロンでも、最終巻ではありません

この馬に聞いた!最後の1ハロン (講談社文庫)この馬に聞いた!最後の1ハロン (講談社文庫)
(2001/04)
武 豊

商品詳細を見る


『週刊現代』誌上2000年4月4日から2001年3月24日号まで連載されたコラムに、過去に出会った人、馬について加筆した文庫版第二弾
スペシャルウィーク、アドマイヤベガ引退後の年代なので、騎乗馬の知名度はアグネスワールドトゥザヴィクトリー以外やや低い
しかし、エアシャカール、マチカネホクシン、アドマイヤカイザー、ラスカルスズカ、ゴールドティアラ、マルターズスパープ、タカラサイレンスと聞けば、競馬ファンにはピンと来るだろう
2000年度の武豊はアメリカへの本格遠征に出ていたので、本書でも海外の競馬についての比重が大きい
日本の押しも押されぬトップジョッキーでも、外国では一新人騎手に過ぎない
一日一鞍の立場から、G1に乗れるよう這い上がっていかねばならなかった

アメリカの競馬は日本競馬とは何から何まで違う

・週5日が基本で、月火が休み。1日だいたい10R
・調教は開催中の競馬場の早朝で行なう(正午からレース)
・ジョッキールームが簡素。くつろぐ空間ではない
・カリフォルニアの競馬場はすべて左回り。ダートレース中心で、外側にダート、内側に芝コースがある
・本馬場に入る通路ではファンと距離が近い
・野次がない
・賞金が安い。2000年当時で重賞は日本の約半分

週5日というと、競馬がさかんなイメージが湧くが、地方と中央が合わせて考えれば日本も負けていない
というか、地方と中央という枠組み自体がないということか
「野次が少ない」というのは、向こうの観客が少ないとはいえ見習わなければなるまい。ロンドン五輪でも、イギリスの観客も行儀が良かった
日本の中央競馬のダートコースはほとんどが芝でスタートする。このためなぜか、ダートなのに芝の適性が大事になってしまう
どこか一つでもいいから、ダート中心の本格的な競馬場を作れないだろうか
ジャパンカップダートという国際レースがあるが、東京2100m時代は芝スタートで、現在の阪神1800mは右回りで海外から敬遠されている
ドバイにはオールウェザーの競馬場もあるし、リニューアルするなら国際的視野を持ってもらいたい

2000年の武豊は菊花賞が凄かった

エアシャカールには直線で右にもたれる有名な癖があって、右に馬を置くと最悪斜行の危険があった
そして、菊花賞の枠番は15番の外枠このまま回っては、力を発揮できずに終わる
そこでまず、スタートを勢いよく出して、内目のところで先行し好位置をキープ。馬込みのなかで我慢させながら、直線では最内を狙う。内ラチ沿いを利用して癖を解消したのだ
事前にエアシャカールの癖はばれていたし、勝つにはこれしかない、という戦法だった
その後のエアシャカールは、切れ味不足と気性難が祟ってG1を獲れなかったが、記憶に残る名馬だ


前巻 『この馬に聞いた!』

『この馬に聞いた!』 武豊

G1シリーズ前夜ということで
↓の帯には「最新巻」とありますが、シリーズ第一巻です

この馬に聞いた! (講談社文庫)この馬に聞いた! (講談社文庫)
(2000/04)
武 豊

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スペシャルウィーク、シーキングザパール、エアグルーヴ、ファレノプシス、サイレンススズカ、アドマイヤベガ、トゥザヴィクトリー、アグネスワールド、ラスカルスズカ、ゴールドティアラ、そしてウォーターポラリス(えっ
『週刊現代』誌上にて、1998年4月20日から2000年3月28日まで連載されたコラムをまとめた文庫版
週刊誌なので、次週の重賞の騎乗馬および先週or先々週の回顧が中心で、折りごとに名馬との思い出などを振り返っていく
1990年代末から新世紀までは空前の競馬ブームの時代
シーキングザパールの日本調教馬初の欧州G1制覇スペシャルウィークによる自身初のダービー制覇サイレンススズカの「魔の天皇賞」など、劇的なシーンが脳裡に蘇ってくる

競馬もユタカも、まさに全盛期たけなわで怖いものなしだ
馬主の手前ということはあるにしても、次走の騎乗馬への期待感、自信が半端ない
「これなら、G1全部獲れそうな気がする」とか、どんなライターでも盛れない発言だ(笑)
それが嫌みに聞こえないのが、ユタカのユタカたる所以で、圧倒的才能と実績に加え、言葉を選ぶ明晰さが伝わってくる
例えば、スペシャルウィークが皐月賞を勝てなかったのは、馬場のせいと言い切っているところ
当時の中山は、皐月賞直前に仮柵を外されるので、内にグリーンベルトと呼ばれる良好な馬場が残り、外には馬が踏み固めた荒れた馬場が残っていた

 難しいことを言うつもりはありません。仮柵を外す時期をずらすだけで、内、外の不公平は解消されるのです。僕一人が騒いでもどうしようもないことですが、このままでは皐月賞とダービーがまったく違う種類のレースになってしまう。ダービーを勝った今だからこそ、もう一度声を大にしてこのことを叫びたいですね。・・・(p47)

負けたあとの捨て台詞ではなくて、しばらく経ったあとにこうもはっきり言えるとは
これはもちろん、皐月賞をダービーと同質にしてくれという意味ではなく、クラシックの一冠に相応しいチャンピオンレースであってくれということだろう
また、シーキングザパールが制したモーリス・ド・ギース賞では、ドーヴィル競馬場の芝が欧州の競馬場のなかでも長さが短く日本馬向きだったことを明かし、このレースを選んだ森秀行調教師の慧眼を讃えている

スペシャルウィークの菊花賞ついては、少し後日談がある
実況が「強いものは強い!」と叫んだように、本書にもセイウンスカイが強かったで済ませているものの、横典がダービーを勝ったときにこういう対談がありまして

二人の間であの時点のスペシャルウィーク>セイウンスカイという評価が一致していたのは意外だった。思えば、ローズキングダムの菊花賞と少し近いのかなあ
自分の乗る馬が一番、とジョッキーの騎乗馬に対する愛の深さが本書で良く分かる
全盛期のユタカでも馬の将来については必ずしも見えていないので、さんま師匠のウォーターポラリス事件を繰り返さないためにも、鞍上および関係者のイレコミには注意しましょう

ウォーターポラリス事件とは・・・
 明石家さんまと武豊が電車(新幹線か?)で一緒になった際、ユタカが電車を降りたあと、自動ドアごしに口の動きで「ウォーターポラリス」と推奨馬を伝えたという事件。ウォーターポラリスは当時の3歳牝馬S(現・阪神ジュベナイルフィリーズ)で14着に終わった。ソースは深夜にやっていたさんま・清のGⅠ直前予想。もちろん、さんま師匠の勘違いの可能性もある



次巻 『この馬に聞いた 最後の1ハロン』
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SF (28)
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