カテゴリ0の固定表示スペース

カテゴリ0の固定表示スペースの本文サンプルです。
テンプレート使用時に削除してください

カテゴリ1の固定表示スペース

カテゴリ1の固定表示スペースの本文サンプルです。
テンプレート使用時に削除してください

カテゴリ2の固定表示スペース

カテゴリ2の固定表示スペースの本文サンプルです。
テンプレート使用時に削除してください


『邪宗門』 高橋和巳

特定の宗教団体がモデルではない


邪宗門 上 (河出文庫)
邪宗門 上 (河出文庫)
posted with amazlet at 18.02.10
高橋 和巳
河出書房新社
売り上げランキング: 63,215

邪宗門 下 (河出文庫)
邪宗門 下 (河出文庫)
posted with amazlet at 18.02.10
高橋 和巳
河出書房新社
売り上げランキング: 62,870


東北の飢餓で母を亡くした少年・千葉潔は、所縁のある宗教団体「ひのもと救霊会」を頼る。救霊会は神がかりの開祖・行徳まさを引き継いだ、活動的なカリスマである二代目・行徳仁次郎が、日本各地はおろか、満州、南海の委任統治の島々にも支部を広げていた。しかしその団体の拡大が、国家神道で宗教界を束ねようとする政府に警戒され、大弾圧を受ける。戦後、戦地から帰った千葉は、救霊会をもって本当の「世直し」を計るが……

『愚民社会』で宮台センセが推していたので読んでみた。なるほど名作である
本作の特徴は、マイノリティである新興宗教の立場から見た昭和となっている。部外者からは珍奇な視線で見てしまう新興宗教だが、その由来が分かると見る目も変わってくる
江戸から明治にかけて、国を挙げての工業化・近代化が推進された結果、農村は荒廃して都市との格差は増し、男性的な民法によって女性の立場が脅かされ続けた。不幸が重なって社会の階層から放り出された人々の受け皿になったり、向上心がありながらそれを社会で生かす場所がない女性の活躍の場になっていたのだ。女性の開祖が多いのは、男性中心の社会に対応している
テーマは難解ながら、飢餓から生き残った少年・千葉潔タカビーな教主の娘・阿礼を中心に、気さくな二代目教主・仁次郎、持病で足が不自由な次女・阿貴などなど多彩な登場人物が魅力的で、喜劇としても悲劇としても華のある過酷な大河小説である

上巻では、大恐慌、東北を中心とする農村の貧困、日中戦争から太平洋戦争へと軍国主義が進展するなかで、宗教団体が国策に飲まれていく様が描かれる
宗教界のナショナリズムな運動として、廃仏毀釈が進むなか、新興宗教も神道に近い形式をとって誕生する。団体が大きくなって社会的影響力を増し、時代がきな臭くなって思想統制がとられるようになると、国家神道に不都合だと判断されて、弾圧を受ける。戦前の信教の自由は、天皇制で許された範囲に過ぎないのだ
行徳仁次郎の逮捕と拘禁は、開祖・行徳まさが遺した「お筆先」で歴代の天皇について書いた部分を口実にした反逆罪であり、長い虜囚生活のなか、妻の行徳八重は半病人で釈放され、仁次郎は獄死する(元ネタとおぼしき大本の出口王仁三郎は1942年に釈放されている。あくまでモデルであって、いろいろアレンジされているので細かい比較はよしたほうがよさそうだ)
救霊会は、九州において分派した軍国主義を鼓吹する救世軍と合同することとなり、行徳阿礼はその教祖の息子に嫁ぐこととなる

下巻では、5・15事件に関係し教団から出奔した千葉潔が、戦争から帰ってきて物語を大きく展開させていく。モデルとなった新興宗教たちには、武力闘争とした歴史などないから、まったくのオリジナルである
戦争で捕虜を殺した千葉に、救霊会の神を信じる気持ちは持てなくなっていた。彼が志すのは、教団を利用した「世直し」であり、宗教を手段と考えるニヒリストとなってしまったのだ
解説の佐藤優がロシア革命でできたソ連を「ニヒリストの作ったグロテスクな帝国」と称したように、千葉にはドフトエフスキーの『悪霊』に出てくる革命家たちを連想させるところがある
千葉によって指令された教団のゲリラ戦は幻の本土決戦といえ、天皇制に弾圧された宗教組織が進駐軍相手に信者を玉砕させるところは、単に日本の戦争を軍部のせいにせず、日本人の精神構造へ求めているかのようだ(それどころか、あさま山荘事件やオウム事件をも予見していたかのようで……)
そして、終盤において、自殺を美化し「この世」と自分の命を軽んじる救霊会は、最初から「邪宗」ではなかったかと指弾する。これは単に新興宗教だけでなく、日本人全体に根付いた傾向ではなかろうか。とにかく空間的にも時間的にも、とんでもない射程を持つ作品なのである


関連記事 『愚民社会』
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

『騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編』 村上春樹

昨年は病気で倒れ、親父が死に、最後に軽い失恋を味わうヒドい年だった
今年は確実に去年よりはよくなるだろう

あっ、記事はネタバレ全開なのでご注意を


騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編
村上 春樹
新潮社 (2017-02-24)
売り上げランキング: 748


私に肖像画を依頼した謎の富豪「免色」の目的は、実の娘かもしれない‟まりえ”に近づくことだった。私は免色のお願いを聞き、‟まりえ”を絵のモデルとして招いて、免色は‟まりえ”の美しい叔母、かつての恋人の妹・笙子へと近づく。しかしある日、‟まりえ”は突如として失踪する。騒然とする周囲をよそに、私は‟騎士団長”の予言に従って昏睡状態の雨田具彦を尋ねる。そこから不思議な世界へ突入して……

話は「私」が雨田具彦を訪問することで一気に動いていく
騎士団長として現れた「イデアは、具彦が眠る病室で自らを殺すように要求する。絵画「騎士団長殺し」の光景を再現しろ、というのだ
イデアを殺したところから、穴から覗く男「かおなが」が現れ、私は彼を脅すことで‟まりえ”がいると思しき世界へと入っていく。私にとって13歳の‟まりえ”は死んだ妹の写し絵であり、別れた妻・ゆずに対しても同じ感情を引きずっていた
妹の死に立ち向かうことが、私にとっての「試練」だったのだ
それがなぜ‟まりえ”の救出につながるかは、現実をベースに考えるとご都合なのだが(笑)、「私」の冒険は‟まりえ”の冒険と表裏一体となっており、終盤に彼女の「父を知る旅」が描かれる。『スプートニクの恋人』などハルキ小説では女性の冒険が割愛されることが多いので、ちゃんと取り上げられるのは意外だった
まりえの冒険は「私」に比べて写実的でややそっけないが、作者にとってはチャレンジだったはずだ

騎士団長とは何だったかというと、主人公やまりえに対する助言者であり、ユング心理学の「老賢者そのままだ
雨田具彦の『騎士団長殺し』は、歌劇『ドン・ジョヴァンニ』を下敷きにナチスに対するオーストリア抵抗運動に影響されたもののはずで、上巻の巻末では『トレブリンカの反乱』(邦題『トレブリンカ叛乱』)からの引用があった
しかし、下巻では最後に東日本大震災と福島原発に言及されたものの、『騎士団長殺し』に内包された課題「邪悪なる父を殺し、その血を大地に吸わせる(p322-323)は放り出されたままに終わった。癒されたのは「私」と‟まりえ”で、世界と「私」は接続されず距離をとったままに終わったのだ
「白いスバル・フォレスターの男」主人公の行いを監察する審問官のような存在で「邪悪なる父」になりえないし、免色も実の娘を追いかけてしまう「ちょっと嫌なおっさん」に過ぎず、悪役には発展できなかった
本作は打ち上げたアドバルーンの割に、うまく中身が詰められなかった作品だと思う
作中で主人公が‟まりえ”の肖像画、「白いスバル・フォレスターの男」「雑木林の中の穴」が未完成のままに終わらせたのも、これ以上書き足しても作品が良くならないという自己言及なのかもしれない


前巻 『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』 村上春樹 

 この本を身内から借りたのは、入院した三月末。なんで、ここまで放っておいたのか謎


騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編
村上 春樹
新潮社 (2017-02-24)
売り上げランキング: 1,249


画家の「私」は、妻・柚に新しい男ができたことから別れ、旅に出る。流浪の果てに友人である雨田政彦の好意で、彼の父親・具彦が残した別荘に住むこととなった。その別荘には、具彦の残した謎めいた絵『騎士団長殺し』が置かれていた。その絵に出会ったから、謎の富豪「免色」の肖像画を描いたり、夜中に鈴の音に悩まされ即身仏のために掘られた竪穴を探索したり、絵から飛び出したような「騎士団長」が顕れたりと、不思議な体験をすることに……

読み進みにくい小説だった……
画家の私が様々な出来事を通して、12歳で早逝した妹への哀惜が残す心の傷など、自分の隠された内面や至らない過去に気づいていく物語であり、第一部はそれに雨田具彦の過去とアンシェルズ(ナチスのオーストリア併合)の関係が解き明かされていくなど、過去作だと『ねじまき鳥クロニクル』に近い作風だ
画家の「私」は妻にフラれたダメ男と思いきや、旅先やお絵かき教室でこせこせと情事の相手を見つける、妙な器用さがある(笑)。『ノルウェイの森』しかり、ナンパの上手さもハルキ小説の主人公の伝統といえよう
文体も落ち着いていてそれが読みにくいわけではないのだが、「免色」の訪問、人妻の「ジャングル通信」、謎の鈴の音、「騎士団長」の登場と、こまごまと日々が過ぎていき、物語の筋が見えない、まるで日記のような構成が章をまたいで読みにくいリズムを生んでいたと思う。ただそれは欠点というわけではなく、作品の特異さなのである

ついつい従来の作品と比較しがちだが、謎の依頼人「免色はなかなかユニークな人物だ
金融資本主義に乗っかって莫大な利益を上げ、人里離れた別荘に若隠居した男。「色」を「免」れるとあって、「私」はその肖像画を描くのに苦戦する。その正体を探るのが、第一部の筋のひとつである
『ノルウェイの森』の永沢とか、『ねじまき鳥クロニクル』の綿谷ノボルのように、主人公と対称的な存在として登場するが、世界の敵でもなければ主人公の虚飾をはぎ取る悪魔でもない
第一部の終盤で、感傷や迷いと無縁であるやりたい放題の人生を送っているように見える「免色」も、実は主人公と同じ弱点を抱えた同質の存在と分かるのだ
そして「免色」の屈折が明らかになるとともに、主人公が抱えていた心の傷が明るみになっていく。この終盤の畳みかけは感動的だった
「私」の心の傷は第一部で明らかになってしまったかに思えるものの、ラストには『トレブリンカの反乱』(『トレブリンカ叛乱』)からの意味深な引用が!
雨田具彦がウィーンで観たものはなんだったのか。「騎士団長」は何を「私」に訴えたいのか。そして、「私」はどうなっていくのか。これは第二部を読まざるえまい


次巻 『騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編』

関連記事 『ねじまき鳥クロニクル』 第1部
     『ノルウェイの森』 上巻

トレブリンカ叛乱――死の収容所で起こったこと1942-43
サムエル・ヴィレンベルク
みすず書房
売り上げランキング: 233,088
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

『ザ・キープ』 ポール・ウィルソン

映画はマイケル・マンが監督だったのに、原作を台無しにした駄作とか。怒りの作者が映画監督を殺す短編小説を書いたらしい(爆)


ザ・キープ〈上〉 (扶桑社ミステリー)
F.ポール ウィルスン
扶桑社
売り上げランキング: 632,118

ザ・キープ〈下〉 (扶桑社ミステリー)
F.ポール ウィルスン
扶桑社
売り上げランキング: 639,581


1941年、ルーマニア。トランシルヴァニア地方の古い城塞へ、ドイツ軍小隊が派遣された。隊を率いるヴォーマン大尉は、壁に飾られる奇妙な十字架の存在を不審に思うが、その不安は的中。宝物探しに出た部下が地下の壁を崩したときに変死してからは、毎日のように喉を引き裂かれた兵士が発見されるように。本国へ増援に呼ぶと現れたのは、ヴォーマンと因縁深きケンプファー少佐親衛隊(SS)二小隊。さらに古城へ吸い込まれるようにユダヤ人の歴史学者クーザ娘マグダ謎の男グレンが集まって……

吸血鬼物と思いきや、予想外にハッテンしていく伝奇小説であった
ときは第二次世界大戦の真っただ中、ナチス・ドイツの全盛期。まさに悪がヨーロッパを包もうとする闇の時代を舞台に、闇の帝王が目覚めて人々を襲い対立させていくという、ダークにダークを重ねるモダンホラーなのである
吸血鬼に対抗させるべく、ユダヤ人の学者クーザは古城へ連れてこられるが、彼にとって吸血鬼もナチス・ドイツも同じ悪。いや、ユダヤ人を絶滅させようとするナチスのほうが絶対悪
彼は吸血鬼をしてナチスとヒトラーを潰そうと画策する。この悪をもって、悪を制しようとする攻防が上巻までの醍醐味である

下巻ではこの悪対悪の構図がダイナミックに崩れていく。ホラーの壁が崩れて、ヒロイックファンタジーが姿を現わす
闇の帝王モラサール(ラサロム)赤毛の男グレン(グレーケン)は、<混沌>と<光>を代表する神話的存在であり、その戦いは吸血鬼対人間の枠を超えての超人バトルへ突き進んでいく
ここまで来ると、ドイツ軍だナチス親衛隊だのは、塵芥のごとし(苦笑)。世界の存亡をかけた決戦がここで果たされるのだ。たまげたなあ
上巻であれだけ描かれたヴォーマンとケンプファーの確執が、斜め上の決着をみてしまうのに良くも悪くも圧倒されてしまったが、これもアメリカの作家が書いたゆえなのだろう
下巻の展開は人を選ぶが、高いレベルのファンタジーなのは間違いない


ザ・キープ [VHS]
ザ・キープ [VHS]
posted with amazlet at 17.11.20
(1985-03-21)
売り上げランキング: 4,880


なんと、映画はDVD化されていない! どんだけ酷かったというのだろう
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

『妖怪』 司馬遼太郎

今回の衆院選は応仁の乱?


新装版 妖怪(上) (講談社文庫)
司馬 遼太郎
講談社
売り上げランキング: 203,132

新装版 妖怪(下) (講談社文庫)
司馬 遼太郎
講談社
売り上げランキング: 197,031


室町時代、足利義政の代。凋落する京の都へ、第六代将軍足利義教の落胤を称する熊野源四郎は上った。義政の「奥」では正妻の日野富子と側室の今参りの局が権勢を争っており、源四郎は怪しい術の使い手たちによってその渦中へと巻き込まれてしまう。東国で兵法を学んで幻術に対抗しようとする彼だったが、日野富子に嫡男が誕生したことで将軍の継嗣問題が表面化し、複雑怪奇な政情へ翻弄されていく

珍しい、応仁の乱前夜を舞台にした作品である
熊野源四郎は、母が熊野大社の巫女。参拝者の夜伽をすることもあって、息子に六代将軍・義教の落としだねだと吹き込んだ。義教は守護大名を次々に討伐して幕府の中央集権化に失敗した将軍であるともに、現将軍・義政、その継嗣となる義視の父親で、もし本当なら将軍の異母弟ということになる
もちろん、将軍家には相手にされないものの、関係者に利用価値を見出されて食客になったり刺客となったりする
司馬小説に珍しく、源四郎はそうした思惑に対して、逆らえずに流されていく。文字通りの狂言回しである。あくまで室町時代の一人物にとどまり、小さな英雄にすらなれないのだ

司馬小説の王道は、合理が不合理を破って時代の進歩として示すところにあるが、本作はそこから大きく踏み外している
熊野源四郎は都に巣くう「妖怪(=前時代的な価値観、権力闘争)に対抗すべく、東国で生まれた兵法(剣法)を学ぶ。兵法には肉体を合理的に分析し、何が強いか弱いか、生きるか死ぬかを追究する技術であり、その思想には神仏や物の怪を精神の脆弱さが原因であると否定する側面がある
しかし、源四郎はそうした兵法を身につけたにも関わらず、非合理の象徴である唐天子の幻術に流されて、結局はその謀略に利用されてしまう。なぜか
おそらくは応仁の乱前夜で、腐敗した体制が無政府状態へ陥っていく時代背景が関係している。兵法家、足軽(印地)、一向宗などの新興勢力が勃興しつつも、都の「妖怪」の力はいまだ強く、奇々怪々な政治状況を作ってしまうのである
主人公は唐天子に代表される非合理に飲み込まれて、同じく成り上がろうとした腹太夫ともに没落する。源四郎の物語として失敗しているのは、合理が次の秩序を作り出すのではなく、非合理が混沌を呼ぶ時代を題材にしたからなのだろう
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

『ゼウスガーデン衰亡史』 小林恭二

日本から離れていたり、近づいたりする妙な作品


ゼウスガーデン衰亡史 (ハルキ文庫)
小林 恭二
角川春樹事務所
売り上げランキング: 713,089


1984年、下高井戸オリンピック遊戯場は、双子の天才・藤島兄弟に買収されたことにより急拡大を始める。「ゼウスガーデン」に名を変えて、国内外の一流デザイナーを集めて珍奇なアトラクションを次々に立て続け、人々の欲望を満たし続けて怪物のように日本全国を覆っていく。いつしか、「ゼウスガーデン」は治外法権を持つ一つの帝国となっていた。その狂騒の果てに何が待っているのか

十数年前だろうか、HPで強く推している人がいて、数年後に購入しつつも積読の中に眠っていた
小説は1980年代より始まる遊戯場「ゼウスガーデン」の歴史をたどる年代記である。解説にある筒井康隆と作者の対談によれば、『ローマ帝国衰亡史』からではなくモンタネッリの『ローマの歴史』を下敷きにしたらしく、ローマの偉人ぽい立ち位置の人がそれらしく出てきて、人間臭い歴史絵巻が展開される
作風はというと、80年代の日本からスタートしつつ、「リアリティ」という言葉をはねつけるように「ありえないフィクション」を上塗りしていくところだろう。特にそれが作中の新しいリアリティを確立するわけでもないのだが(管理人はのれなかった)、荒唐無稽、気ままに書いているように見せかけて、実は80年代から急成長するディズニーランドなどのテーマパークVRを生み出すいたるゲーム産業の未来を睨んでいて、20年以上経った今、現実とのリンクの仕方に驚かされるところもある

1984年はいわば、バブル景気が膨らんでいく黎明期であり、「ゼウスガーデン」という遊戯空間の拡大がこれに重ね合わさっているのは言うまでない
お立ち台に代表されるディスコブームを思い起こせば、作中に展開される過激なアトラクションもその延長線上のものとして理解できるし、各国の建造物をコピーした宴会場なども、雨後の筍のように地方に建てられた箱物事業や豪華リゾートを連想できる
ただゼウスガーデンのデザイナーたちの感性は、現実のリゾート開発よりはるかに洗練されていて、その悪趣味さえも芸術性を帯びている。バブル経済はここまで壮大な構想を実現できなかったし、渦中の日本人もここまで快楽主義になれなかった。なれれば、過労死の問題など消えてしまったことだろう
作品世界と展開が現実の日本とあまりにかい離して、日本人が読む物語としては「ありえた未来」ではなく、「ありえないフィクション」へ飛躍してしまい(その分、楽しいのだが)、他国の話のようにしか感じられなかった

巻末に足された「ゼウスガーデンの秋」を読むに、ゼウスガーデンは作者自身の遊び場であり、それに関わった奇抜なデザイナー=権力者たちと楽しんでいるようでもなる。あまり大上段に社会ヒヒョウを期待して読まず、いっしょに楽しんで読めばいいのかもしれない


*2017’10/6 記事の原文を書いたのは、ネットがつながらない内なのだが、その後の政局(希望の党→民進党分裂)を見ると遊技場間の政争を思い起こしてしまった(笑)。小池百合子の矢内原夫人説
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

『モナリザ・オーヴァードライブ』 ウィリアム・ギブスン

読み返さざる得ない入り組みよう


モナリザ・オーヴァドライヴ (ハヤカワ文庫SF)
ウィリアム・ギブスン
早川書房
売り上げランキング: 307,404


抗争の激化から大物‟ヤクザ”の娘・久美子は、ロンドンへと向かう。しかし、匿ってくれるはずのスウェインが、電脳世界の一件に噛んでしまったことで、危険な街へ飛び出す羽目に。一方で、タリィ・アイシャムに変わってネット・アイドルの頂点に登り詰めたアンジィ・ミッチェルは、自身をすり替える陰謀を察知してこちらも逃亡。意識不明の‟伯爵”ボビィ女殺し屋モリィまで絡んで、マトリックスの秘密へと迫る

『ニューロマンサー』『カウント・ゼロ』に続く三部作最終巻
前作は三つのプロットが絡み合ったが、本作は‟ヤクザ”の娘・久美子、電脳空間のアイドルになったアンジィ、それに少し似てるという16歳の少女モナ、ロボットを作るジャンク屋のスリックと、四人の視点で物語が同時並行していく
さすがに四つの筋でローテーションを組まれると、読者には把握しづらいし、どうしても展開が遅く感じてしまう。前作では挨拶代わりの派手なオープニングが用意されていたものだが、本作はどれも普通に盛り上がっていくので、背表紙に書かれたような疾走感は感じられなかった
読者の性格にもよるのだろうけど、同時並行するプロットは三本が限界かなと思える
ただ展開が中盤まで渋くとも、四つのプロットが収斂する山場は熱いロボットの活躍も日本人好みだ(笑)
前作とは違い、シリーズの最終巻という性質が強く、ぼんぼん説明もなく固有名詞が飛び出すので前々作、前作の既読が望ましい。ただ解説によると、本場のファンすら引用された日本語のせいでチンプンカンプンだったというから、本作から入り謎を追って遡る読み方もありだろう

本作のタイトル、『モナリザ・オーヴァードライヴ』とは何を意味するのだろう
視点となる三人の女性、久美子、アンジィ、モナはどれも騒動に対して巻き込まれていく。自己防衛のために戦ったり、自身や世界の謎を挑んだりするものの、「オーヴァードライヴ=暴走」するわけではない
暴走する女性といえばネタバレになるが(苦笑)、騒動を起こす「黒幕」3ジェイン・アシュプールしかない
3ジェインは、電脳世界=マトリックスを作ったティスエ・アシュプール社の一族。創業者夫妻の多数いるクローンの一人であったが、前々作の事件で財閥を潰したもののマトリックスの中で生きる‟半神”となっている
電脳世界が発達した本作の時代には、擬験(スティム)」と呼ばれる素人でも簡単にスターに成りきり体験ができる娯楽が流行していて、十数年君臨したタリィ・アイシャムに代わって、前作のヒロインであったアンジィ・ミッチェルが新しいアイドルとして頂点にいる。3ジェインがその彼女に嫉妬して、抹殺しようとしたのが今回の騒動の出発点なのだ
彼女の恋人である‟伯爵(カウント)”ボビィは、アンジィを守るために身を挺して3ジェインが籠る電脳空間の箱「アレフ」を確保し、キッド・アフリカ(容貌はプリンスがモデル?)に頼んで、ジャンク屋のスリックの元にジャックインしたまま運び込まれたようだ
3ジェインの暴走は、久美子が自殺した母の秘密に迫るきっかけを与えていて、騒動の外側にいる彼女の問題を上手く解決させている

物語のオチについては、リアルより「電脳世界」が上位である世界観に忠実なものだった
第一作『ニューロマンサー』において、高度に発達したAIがマトリックスの世界では「半ば神」、人間同然の存在となったが、本作ではリアルで死んだ3ジェインが力を示したように、人間もまた電脳世界に身を投じ切ることで同じく「半神」となる
身体すら人為的に作れてしまうサイバーパンク的未来において、人間が人間たる所以は精神的なもの、「意識」しか残らないという思想がリアリティを持ってくる。本作では攻殻機動隊ほどの逡巡もなく、主要人物が電脳世界だけの存在に身を投じてしまう
ギブスンはアップルコンピュータの広告から未来をイメージしたといわれ、当時はまだ見ぬネット社会に対してかなり楽観的な時代だったのだ。それにしても、身体を捨てるのに抵抗がなさ過ぎるぞ(苦笑)
作品内で言及されているように、ネットの中の「神」といっても、電気のない場所では存在すら許されない。インターネットが現実化しいろんな歴史を持ってしまった今となっては、出来過ぎに見えてしまうだろう


前巻 『カウント・ゼロ』
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

『山本五十六』 阿川弘之

阿川佐和子のお父さん


山本五十六 (上巻) (新潮文庫)
阿川 弘之
新潮社
売り上げランキング: 24,756

山本五十六 (下) (新潮文庫 (あ-3-4))
阿川 弘之
新潮社
売り上げランキング: 20,672


日米戦争に反対しながら、その口火を切らざる得なかった山本五十六とはいかなる人物だったのか。その出生からブーゲンビルで戦死するまでを詳細に描く
膨大な取材と資料を駆使した山本五十六の記録文学である
海戦における航空母艦を中心とした機動戦術の優勢を確立した名将である一方、戦前においては日米戦争に最後まで反対し続けたことでも知られているが、本作で強調されるのは生々しい人間としての姿
愛人である梅龍の千代子との逢瀬、「海軍を辞めたらモナコでカジノでもやる」というほどの博打・勝負好き、どこでも逆立ちして見せる茶目っ気と、戦争のドキュメント番組などからは想像しにくい、軽快な人柄が偲ばれる

上巻では、ロンドン軍縮会議など‟条約派”軍人としての活動が中心となる
1929年のロンドン軍縮会議は、日米英での建艦競争を阻止すべく、特にアメリカの台頭を恐れるイギリスが主導で行われた。日本は西海岸側の米艦隊を牽制できる「対米7割」を主張してアメリカと対立し、イギリスは条約の決裂を恐れた
山本は最初、大使付きの中佐という立場で参加しつつも、各国の大物にその存在を認められる。作中では山口多聞と強硬に「対米7割」を主張したことは描かれないが、条約そのものをその工業力の格差からアメリカを縛るものとして評価していた
1936年には海軍次官に就任。海相となった米内光政とのコンビで、陸軍参謀部に触発された軍令部の政治化を抑え込み、害しかない日独伊三国同盟の実現を阻止しようとした
ただし作者は軍人が政治に口を挟まないという海軍の良識が、この非常時において大人し過ぎたのではないかとも指摘する

下巻は真珠湾作戦の計画から、ブーゲンビル島で散るまで
真珠湾攻撃に関しては、本人以外のほとんどの人間から反対を受ける。しかし、日米戦をするならハワイ作戦は必要不可欠として、山本は自身の進退をかけて突っぱねる
山本からすると「南方に進出している間に、東京が空襲されたらどうするのか」という懸念があり、後のミッドウェー海戦につながる着眼点である
ただし、航空母艦を撃ち漏らしたにも関わらず、航空隊が当然あるものと思っていた第二次爆撃を決行せず、ハワイの軍事施設の多くが残存した
ミッドウェーの曖昧化していった作戦目的といい、艦隊保全主義で攻撃に徹底しきれない海軍の性質が異端児の山本五十六にすらあったといえるし、いかにも日本人らしいあっさりさだと作者は評する
話は山本の死だけで終わらず、遺体回収から国葬、知人や近親者たちがいかに振舞ったかまでに及ぶ。赤裸々な記述は訴訟騒動まで起こしたそうだが、後世に語り継がれるべき労作である


関連記事 『聯合艦隊司令長官 山本五十六』(半藤一利)
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

『カウント・ゼロ』 ウィリアム・ギブスン

キャラの立っていた人たちが、あっけなく瞬殺されるのだけがアレ(苦笑)


カウント・ゼロ (ハヤカワ文庫SF)
ウィリアム・ギブスン
早川書房
売り上げランキング: 318,223


ハッカー志望の少年ボビイは、電脳空間へ初めてのジャックインした。経験不足から防御ソフト=アイスに捕らわれてしまうが、不思議な少女の声を聞くや離脱することができた。その一方、ニューデリーで身体を破壊された傭兵ターナーは、大企業マーズの施設から研究者を連れ出す仕事を請け負わされる。そして、失敗したばかりの画商マルディは、大富豪ヨゼフ・ウィレクから謎めいた「箱」の作り手を探すことを依頼されて……

『ニューロマンサー』と世界観が共通する続編的作品である
初心者ハッカーのボビイと、失意の画商マルディ、全身を破壊された状態から再生したガチムチ傭兵ターナーの三人が主人公で、それぞれの物語が並列して展開される
普通こうした構成だと、半ばも過ぎれば収斂されるものだが、これが中々交わらない!
中盤でもボビイが電脳世界で聞いた少女の声と、ターナーが救った謎の少女が淡い共通項として浮上するのみで、マルディは二人の話から全編を通して独立していて、ウィレクの口からターナーが連れ出そうとする研究員の会社マーズの生体チップが話題に出るのみだ
というわけで、いつ交わるのかと期待を胸に読み進まざるえず、最終盤でようやくカタルシスを味わえるのだ
洗練された文体に、読者を釣りに釣る構成、さらには前作『ニューロマンサー』の後日談もあって、エンターテイメントとして至高の出来栄えなのである

前作と同様に、全世界を覆う電脳世界脳みその一部から全体を再生する医療技術クローン技術で生み出されるニンジャ、そうした進み過ぎた技術や頽廃した社会については特に批評性はない
あくまでそうした世界に生きる主人公に寄り添っていて、SFというよりSF的世界で展開されるファンタジーである
ただし本作に限っては、アンジイという特別な脳を持った少女がヒロインたることで、それを使って生命維持装置から抜け出し不老不死を保とうという老人の野望は悪と見なされる。なんでもありの世界でも、老人が先行きのある少年少女の邪魔をしてはならないのだ
もっとも不老不死的な存在は電脳世界に漂っていて、半ば神として現れて主人公たちに訓示を与えていく。彼らの正体こそ、『ニューロマンサー』の結果として生まれた、AIがマトリックスに融合した‟半神”とおぼしい
オリジナルとコピーの境目どころか、創造者と被造物の境目すら氷解してしまうという、なんとも奇怪な世界が描かれているのである


次作 『モナリザ・オーヴァードライブ』
前作 『ニューロマンサー』
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

『ラプラスの魔』 山本弘

昔のラノベの広告を見て、思うこと
20年前から、おっぱい押しだった。ただし、幼女はいない


ラプラスの魔 (角川文庫―スニーカー文庫)
山本 弘
角川書店
売り上げランキング: 339,704


1924年のアメリカ、マサチューセッツ州。ボストンの南にあるうらぶれた港町ニューカムには、誰も寄り付かぬウェザートップ家の幽霊屋敷があった。そこへ謎の東洋人の訪問、子供たちが惨殺された食屍鬼事件をきっかけに、事件を追う女記者と探偵、骨董品収集家、実験に訪れた発明家、恋人を探す霊能者が集結する。ウェザートップ家の当主ベネディクトはどこへ行ったのか、もう一つの世界を作る「ラプラスの魔」とは何者なのか

往年のRPGファンには懐かしい、ゴーストハンターシリーズの小説である
1987年発売のPCゲーム『ラプラスの魔』のノベライズであり、機種はPC-8801mk2SRフロッピーディスクが5インチの時代。今の若い人はそんなディスクの存在すら知るまい(苦笑)
それはさておき、本作はアメリカ東海岸の怪しい屋敷という、古典ホラーの王道を踏まえつつ、後半は実在の数学者ラプラスによる宿命論に貫かれたもうひとつの世界へ、文字通り飛躍する
そんな突飛な展開も、1920年代のアメリカを網羅するかのように当時の車や銃器が並べられ、ナポレオンとラプラスの関わりなど語られる世界史の蘊蓄が重厚な世界観を築いていて、虚実二つの世界をつなげている
惜しむらくは、レーベルの関係か枚数が少ない! この容量では作品世界の壮大さを表現しきれまい

登場人物が多い割に紙数が少ないせいか、段落ごとに視点が変わるなど文体に慌ただしい部分はある。それでも多少、類型的とはいえ、それぞれのキャラクターがしっかり存在感を出している
ゲームでは登場人物ごとにクエストがあって、詳しい事情はプレイヤーの想像に任せる部分が多かったが、うまい具合に作品の中で位置づけられているのだ
作者に愛されているのは、男なら草壁健一郎女ならモーガンだろうか
特にモーガンはサキュバスに男どもがやられるなか、素手で轟沈するなど活躍の場面が多く、アレックスとチョメチョメを匂わしつつ実は〇女らしいとか、作者の趣味を感じるところである
もっとも、アメリカの女性が性的に解放されるのは戦後のウーマンリブから急激に進んでからなので、まんざら出来過ぎなわけでもない
ラノベに過ぎたる知識量かつ、細部も行き届いた作品なのである


ラプラスの魔 【PCエンジン】
(1995-10-13)
売り上げランキング: 40,963


PCエンジンでも出てたようで
草薙健一郎の声が故・塩沢兼人さん! うぉ、やりてえ
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)
(この一行は、各ページ下部に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)
カレンダー
01 | 2018/02 | 03
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 - - -
カテゴリ
SF (25)
RSSリンクの表示
リンク
FC2 Blog Ranking
ランキング
アクセスアップ!?
検索フォーム
はてな
この日記のはてなブックマーク数
タグランキング

サイドバー背後固定表示サンプル

サイドバーの背後(下部)に固定表示して、スペースを有効活用できます。(ie6は非対応で固定されません。)

広告を固定表示させる場合、それぞれの規約に抵触しないようご注意ください。

テンプレートを編集すれば、この文章を消去できます。