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『血と暴力の国』 コーマック・マッカーシー

シュガー「死ぬぜ。おれを見た者は!」


血と暴力の国 (扶桑社ミステリー)
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猟に出かけていたモスは、メキシコ国境付近で銃撃されたトラックを発見する。麻薬密売人が残した大金を見つけてしまった彼は、若い妻を持ちながらも浮かび上がれない生活を変えるべく、持ち逃げしてしまう。その後を追うのは、見る者すべてを殺してしまう‟殺人鬼”シュガー。そして、そのシュガーが残していく陰惨な殺人の山を初老の保安官ベルが追って……

救いはないんですか~
物語は麻薬の受け渡しに使われた大金を巡る追いかけっこなのだが、単なる犯罪小説にとどまらない
基本となる文体が、本来なら台詞を挟む「」がなく(原文でも引用符‟”がない)、登場人物の動作と境目がなく連動している。考えれば「しゃべる」という行為も動作のひとつであり、何でもないやりとりは雲のように消えてしまうものだと言いたげだ
視点キャラの心理描写は外観の微妙な動作などから想像させるなど、最低限に抑えられていて、その中でのベルの語りは独特の位置を占めている
娯楽小説ならグッドエンドもありうるところ、なんでこうなってしまうのか。国の荒廃と、故郷の喪失は、日本人も無縁ではなく、「身捨つるほどの故郷はありや」と問いかけられる小説だ

モスはベトナム戦争を、保安官のベルは第二次世界大戦のヨーロッパ戦線を経験している
保安官ベルは軍曹の地位にあったが、自分の小隊が全滅してしまい、作戦の失敗を隠すために勲章をもらう。本人はそれが重荷になっていて、傷ついた心を取り戻すために保安官の職についた
戦争と愛国が結び付き(と信じ)、守るべき故郷があると、信じられた世代
しかし、モスが経験した戦争はベトナム戦争であり、映画『ランボー』のように参加してしまったことがまるで罪のよう。もはや住んでいる場所への愛着もなく、目の前の大金に目がくらんで、人生を狂わしてしまう
ベルとモスには大きな世代的な断絶があるのだ

そして、三人目の視点キャラである殺し屋シュガー。彼にはモスやベルのような背景すら語られない。死神のような殺人鬼である彼は、一人で社会の裏にうごめく暴力を象徴しているようだ
訳者は解説で、「ギリシア神話のネメシス」に喩える。いわば神話的な「純粋悪」の存在を放り込むことで、単なる社会小説に落ち着かせない
「昔は良かった」「帰れる故郷があった」と時代の問題に終わらせず、西部開拓が血と暴力によって行われたという土地に染み付いた歴史性を照らし出して、最後の無頼に生きた父とベルの和解に結びついているのだ


関連記事 【DVD】『ランボー』

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『梟の城』 司馬遼太郎

反権力的主人公


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司馬 遼太郎
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織田信長によって一族を殺された伊賀忍者、葛籠重蔵は、怨念を心に秘めつつも仏像を彫り山にこもっていた。そこへ忍の師匠である下柘植次郎座衛門が訪ねてきた。同門の忍者である風間五平が行方知れずとなったので、彼が請け負っていた仕事を継げというのだ。それは堺の豪商・今井宗久から下された秀吉暗殺なのであった

初期の司馬遼太郎の代表作で、戦後の忍者小説のはしりともいわれる金字塔的作品である
伊賀忍者が秀吉の代になって影響力が下がった今井宗久の頼みで秀吉暗殺を謀るのだが、そこに至るまでがかなり複雑。さる大名に仕える女忍者・小萩にたぶらかされたと思えば、同門である風間五平が敵役として後を追われ、師匠の娘である‟木さる”が重蔵と五平の間を揺れ動く。そこへ、甲賀忍者のレジェンドが加わるとか、あまりに因縁が絡み過ぎて秀吉暗殺どころの状況ではない(苦笑)
いわば、ハードボイルドに生きる忍者同士の駆け引きが本編であり、重蔵と小萩と木さる、そして五平との四角関係に代表される、非情と人情の間に揺れ動く心理描写に魅せられる

たしか市川崑の映画では、眠っていた秀吉に重蔵がなぜ朝鮮出兵を続けるのか、問いただす場面があったはず。それに秀吉は「今となっては皆に火がついてしまっていて、わしを殺したところで止められるものではない」とうそぶいていた
これを聞いたときは、太平洋戦争時の日本国民を連想したのかと思ったが、小説を読み直してみると、そうした場面はない!
重蔵はあくまで忍者としての至芸に生きる人間であり、それを実現するために秀吉の暗殺を仕掛ける。俗世の帝王として諸事に気を配る秀吉とは、真逆の存在である
映画のように政治的メッセージがなく、男と男の決着として収めてきってしまうのは、後の司馬小説のイメージからは想像しがたい。こういう徹底したクールさが、忍者小説時代の魅力なのだ
巻末にある作家・村松剛の解説には、時代小説のなかでの本作の位置付けががっつり説かれているので、読み逃しなく
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『スノーデン・ファイル』 ルーク・ハーディング

携帯やネットは筒抜けなので、暴露する側も徹底した情報統制


スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実
ルーク・ハーディング Luke Harding
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2012年末、エドワード・スノーデンは何を世界に警告したのか。スノーデンとそれに協力するマスメディア、そして米英両国との確執を描く
エドワード・スノーデンはCIA、NSA(アメリカ国家安全保障局)の職員であり、学生時代から磨いたスキルを活かしてコンピュータセキュリティに関わっていたが、NSAが自国民の無制限の通信傍受に携わっていたことから、合衆国憲法に抵触するとして告発に及んだ
本書ではNSAイギリスのGCHQ(政府通信本部)が行った諜報活動とともに、スノーデンがどうやってグレン・グリーンウォールドなどのジャーナリストと接触したか、スノーデンから得た情報を記事にしたイギリスのガーディアン誌にどのような圧力がかかったかも取り上げられる
ネットを通して世界を監視社会化した国家と、それに対抗するジャーナリズムの戦いの日記なのだ

ずいぶん報道されたことながら、おさらいすると、事の発端は2001年の同時多発テロ事件である
アメリカへのテロを防ぐために、ネット社会への監視が必須とされ、アメリカとイギリス、ヨーロッパ大陸をつなぐ大西洋にまたがる光ファイバーに手を加えられた。これには、イギリスのGCHQも積極的に関与し、情報を共有し合うことになる
さらにIT企業にも通信傍受の協力が求められ、マイクロソフト、Yahoo!、Google、Facebook、You Tube、Skype、アップルらが応じて、NSAが傍受しやすいように暗号回避のバックドアが作られることもあった
対テロ戦争の美名のもとに、リベラルとされるオバマ政権でも継続され、改善を期待していたスノーデンを落胆させることとなる。そして、通信傍受の対象がテロと関係ない一般市民や第三国の人間も無制限に広がっていき、機関自身すら捌ききれないほどの情報がNSAに集積されていくこととなる。ITのテクノロジーと情報機関が融合することで、システムの暴走が起こっていたのだ

スノーデンの告発はアメリカの国民や同盟国を震撼させた
EUのリーダーであるドイツは厳重に抗議しつつも、自身の諜報活動から深く追求しなかったが、2013年にはメルケル首相の携帯が盗聴されたことが発覚して、米独の関係は一気に冷え込んでしまう
旧大英帝国のつながりから特別な情報共有が進んでいるカナダ、オーストリア、ニュージーランドにすら、NSAの活動は及んでいて、アメリカの影響力が強い中南米諸国にも強い動揺が広がり、アメリカ―イギリスを経由しない光ファイバー網の建設も検討されたという
しかし、そういう実態が明かされたところで、米英政府は強気だった。ドイツやフランスも自国の諜報活動に支障が出ることから強くは追求せず、イギリスは記事を書き続けるガーディアン誌に対して露骨な圧力をかけ、裁判にまで発展する。イギリスには、合衆国憲法修正第一条のように報道の自由が明文化されておらず、国民の安全を口実に封殺されやすいのだ
そこでガーディアン誌は憲法で報道の自由が保障された、通信傍受の大元であるアメリカの支部で報道が続けられた。そして、母国アメリカにいると終身刑にあいかねないスノーデンは、監視社会が全体化しているロシアに亡命せざる得なかった
自由と権利を守るために、守られない国にいざる得ないという状況は皮肉であり、自由に見えるネット社会の実態を示す深刻な話なのである
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『ダークタワー 第3部 荒野』 下巻  スティーヴン・キング

FO4でガンスリンガー・プレイはできなくもない
映画のような二丁拳銃は無理ですが


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運命の三人目、少年ジェイクが仲間となり、いよいよ<闇の塔>を求める旅が始まった。‟ビーム”に沿って歩く旅路で、世界の変転で廃墟と化した街<ラド>へと入る一行。その入口で奇人ガッシャーの奇計により、ジェイクは野盗集団‟グレイ”のもとへ落ちてしまう。ローランドはガッシャーのあとを追いかけて、グレイのボス、チクタクマンに迫る。一方、エディとスザンナはジェイクの救出を信じて、<闇の塔>への道を走るという列車ブレインを探索する

下巻はタイトルどおり、ウェイストランドの冒険である
街の外側では<河の交差点>で善良な老人たちのコミュニティに出会ったものの、<ラド>の市街には弱肉強食の掟に支配された、‟グレイ”‟ピューブ”といった略奪者たちがうごめいている。悪党にしかいない、ならざる得ない廃墟はそれこそ『Fallout』のウェイストランドそのものなのだ
特に異彩を放つのが、ジェイクを連れ去った老人ガッシャー。グレイの特性である爆弾を使ったトリックが得意であり、行く先々に地雷で廃墟を崩す罠を残していく
そのボス、チクタクマンは時計を偏愛するキャラクターとそのガッシャーをも制する威圧感を持ち、マッドマックスか北斗の世界の住人のごとし(笑)。それを一蹴するガンスリンガーは、まさに救世主である

そんな<ラド>の街の、本当の主人といえるのが、エディとスザンナが見つける列車ブレイン
上巻でジェイクが購入した『シュッシュッポッポきかんしゃチャーリー』に出てくる機関車が、悪夢の世界で転生してきたかのようで、街の運命を左右するほどの力をも持つ。ジェイクが「きかんしゃチャーリー」について裏読みしていたように、人間に近い知能を持つブレインは、街の住人のように悪辣に振る舞って、主人公一行をびびらせてくる
しかし謎かけが好きで、それが隙にもなる。まさかのジェイクが購入した謎々の本がここで拾われると思わなかった。ガンスリンガーの謎かけ遊びの習慣といい、二重にも三重にも伏線が回収されていき、おそらく新しい伏線が生み出されているだろうことも分かる。これが本読みにはたまらない
ラストがあまりにいいところで終わり過ぎて、そのあとが非常に気になる。というか、読みたいんですが……(苦笑)
あとがきが言い訳がましくて草


前巻 『ダーク・タワー 第3部 荒地』 上巻

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『ポル・ポトの掌』 三輪太郎

なんで会いにいくのやら


ポル・ポトの掌
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幼馴染だった修一の死を聞いて、ぼくは内戦さめやらぬカンボジアへ行く。修一はたえず前を走る存在であり、いつしか疎遠となったが、大学の株式研究会で思わぬ再会をする。学生時代から相場に親しみ、卒業ともにアメリカの大学で最新の投資理論を学ぼうと留学した彼に何があったのか

少し完成度が低い作品だろうか
大学時代に幼馴染の修一から刺激を受けて相場の研究会に入り、投資会社でディーラーとなったぼくは、その修一の死を聞いて強い喪失感に陥る。修一はなぜカンボジアへ渡って客死したのか、本作はそれをたどる物語となっている
中盤まではカンボジアを旅する主人公と、1970年代に生まれてからのディーラーを辞めるまでの回想が交互に進展して、それが自然と合流するように作られており、その後にはタイトル通り、森で隠棲するポル・ポトと面会する山場にさしかかっていく。構成は整っている
が、テーマ性という点からは、「修一がなにを求めて死んだか」という部分が放り出されているし(オウム真理教に触れた部分から類推できなくはないが)、資本主義の「神の手」と対比されるはずの「ポル・ポト(の掌)」が資本主義批判として弱い

著者は文芸評論家で村上春樹の研究でも知られていて、「あさま山荘事件」に代表される過激化して終息した学生運動から、「森の王」というキーワードでオウム真理教につなげる着眼点は、2009年初出の『1Q84』に先んじている
しかし、どうすれば「森の王」を生まないか、取り込まれないかという課題を解消できず、ぼくはポル・ポトに手玉にとられる形で送り返される
年代的に、新自由主義の全盛はその後であり、グローバリゼーションの進展も冷戦後に始まっていて、小説のポル・ポトには今少し頑張って排撃してもらいたかったのだが(苦笑)、自らの行動を正当化する老人に過ぎずガッカリだった
なぜか日本のムラ社会の是非に飛び火していて、議論のベクトルが散漫になっている
そして、肝心の修一の話題がいっさい出ず、彼が何を求めてポル・ポトの森に踏み込んだのかは分からずじまい。主人公を翻弄し続ける現地人ソヴァンのしたたかさ、近代への意志だけが光を放っている


関連記事 『1Q84 BOOK1』

あなたの正しさと、ぼくのセツナさ (講談社文庫)
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文庫本ではなぜか、この改題。出版社が決めることではあるが……
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『ダーク・タワー 第3部 荒地』 上巻  スティーヴン・キング

Waste Landsの訳は荒野のほうが雰囲気が……


ダークタワー III 荒地 上 (角川文庫)
スティーヴン・キング
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元ヤク中のエディ車椅子の女スザンナを仲間にしたローランドは、ダーク・タワーに向かって果て無き旅を続ける。タワーに向かって伸びる‟ビーム”に沿って森を進むうちに、熊の‟守護者”に遭遇し、死闘の末に三人は打ち倒す。熊は本来、<門>の守護者であり、行く手に現実世界への扉を暗示していた。一方、ローランドがモートを殺したことで交通事故死を免れた少年ジェイクは、別世界からの声に混乱し家出を決意する

第三部はページ数が多く、うまく内容が分かれているので、上下巻ずつ感想を書く
第二部のタイトルが「運命の三人」だったのに二人しか仲間にならなかった(三人目の殺人鬼は死亡した)が、第三部でその三人目が出てくる。それはローランドが黒衣の男を追いかけるのを優先して、犠牲にした少年ジェイク
ジェイクは現実の世界で、ジャック・モートに背中を押されて車にはねられて死亡し、ローランドの世界へ飛ばされた。しかし第二部でローランドがモートに乗り移って電車に轢死させたことにより、ジェイクは現実の世界で生き続けることになったのだ
本巻では、<門>の鍵が頭に浮かんで木で彫り始めるエディと、死ななかった人生に混乱するジェイクが主役となって、現実世界と中間世界が交互に物語を進めていく

ジェイクの世界は1970年代のニューヨークであり、エディは1980年代、スザンナは1960年代の間の時代である
ジェイクの年代では、エディも少年であり兄のヘンリーとともに登場する。ジェイクはエディに誘われる形で、現実世界の<門>へ向かっていく
ジェイクは多忙のテレビマンを父に持ち、神経症気味の母に、友達感覚で接してくれるメイドさんと暮らしていて、中産階級の子弟が通うパイパー・スクールへ就学している。経済的には恵まれていながら、型にはめられた環境が面白くなく、本や外界に自由を感じる思春期の少年の心情を、小説では精緻に描かれている。年代は違うが、作者の経験とあてはまるのだろうか
映画では黒衣の男に追い込まれる形だったが、小説では自らの意志で<門>のある屋敷へ出かけた。これだけ遠大なドラマとなると、映画でかなり省略されてしまうのも止む無しだろう(一時間半では無理だって…)


次巻 『ダーク・タワー 第3部 荒地』 下巻
前巻 『ダーク・タワー 第2部 運命の三人』
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『秘本 東方見聞録』 赤羽堯

モンゴル人に化ける鎌倉武士の巻


秘本 東方見聞録 (光文社文庫)
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あのマルコ・ポーロは日本に渡っていた! 日蓮の説く法華宗に心酔する鎌倉武士・内藤甚太郎は、蒙古の大草原にあこがれて南宋出身の禅僧のつてで、モンゴル帝国の大都に潜入した。治安の役人となった甚太郎は、酒場で喧嘩に巻き込まれたマルコ・ポーロを助ける。日蓮が予見していたモンゴルの日本遠征を知ってしまった甚太郎は、自分に代わってマルコを日蓮への連絡役を頼む。マルコも‟黄金の国”ジパングへの興味から、快く引き受けるのであった

「ウンベルト・フーコの『薔薇の名前』に匹敵」が宣伝文句の歴史小説である
『薔薇の名前』は未読なので比較はできないものの、作品の傾向はだいぶ違うと思われる(爆)。現在、世界に遺された『東方見聞録』(原題『世界の叙述』)は、獄中のマルコ・ポーロから物語作家ルスティケッロが口述筆記したもの。著者はマルコ・ポーロ自身が後に書いた真の『東方見聞録』を発見したとして、それを小説化したのが本作品というのだ
物語は日蓮が法華宗への迫害を受けるところから始まる。主人公の内藤甚太郎は、蒙古の大草原へのあこがれと予見された日本遠征への危機感からモンゴルの支配する大陸へと渡る。マルコ・ポーロも父と叔父の後を追って、‟元”の国号を称していたモンゴル帝国に渡り、甚太郎と接触する。以降は甚太郎とマルコの二人の視点で、モンゴルと日本での物語が進んでいく
山場は日蓮とマルコ・ポーロの対面であり、第二次元寇=弘安の役。主にモンゴル側からの視点で日本遠征の困難が細かく描かれている
外交に下手を打ち続けて大帝国の侵略を招く鎌倉政権に、面子を潰された名君フビライが無謀な遠征を続けてしまうという、どちらにも勝者が生まれない構図なのである

本作でクローズアップされるのは、元寇であり日蓮
小説の日蓮は、もとから元寇を予見して「立正安国論」を書いていて、弟子を通して大陸の情報を集めていたことになっている。ただの宗教家であるだけでなく、政治家としての側面も持ち合わせていて、モンゴル帝国の情報と引き換えに、北条時宗の側近に法華宗のみに敵国降伏の祈祷を集中させることを持ち出したりしている
マルコ・ポーロと日本の仏教者を代表して宗論させるとか、高度の天文学を駆使して嵐の来る季節にモンゴルの船団をマルコと甚太郎に誘導させるとか、かなり持ち上げられて書かれていて、作者の宗旨が影響しているように思えた(実際に法華宗系の信者かは分からないが)
扱っている素材のわりに、日本人向けの作品に仕上がり過ぎているのが珠に瑕だが、当時の鎌倉が宋の商人や禅僧がやってきて国際性があったことなども描かれていて、元寇の時代を扱った貴重な歴史小説には違いない
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『ダーク・タワー 第2部 運命の三人』

単なる仲間探しにあらず


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黒衣の男の予言から、ローランドは西の海を目指す。海辺にはロブスターに似た奇怪な怪物に、謎のドアが浮かんでいた。ドアの向こうにあるのは、ヘロイン中毒者の男、両脚を失った黒人女性、子供を突き落とす快楽殺人鬼の人生。片手の指を失い、敗血症にかかったローランドは、現代の人間世界の住人に乗り移り、生き延びることができるのか

第一巻とは、まったく違った冒険が待っていた
冒頭にローランドは黒衣の男が言っていた海に到着するが、ロブスターのような化け物に片手の指を落とされて、両手拳銃ができなくなってしまう。劇場版のような神がかりアクションが、いきなりできなくなってしまったのだ
そこから始まるのは、新しいガンスリンガーを募る旅である。海辺に佇む三つのドアを通じて、現代の世界でそれぞれとある人間に乗り移って、自分の世界に引き込んでいく
特徴的のは、細かく視点を切り分けているところで、章ごとにローランドと乗り移る対象のみならず、端役の視点にも立ってどう見えるかまで描かれている。上巻は少しかったるいぐらい細かいが、作家の腕力を感じる趣向である

ひとつ目のドアの向こうでは、薬の運び屋をやるヘロイン中毒者エディーに乗り移り、彼のピンチを切り抜けることで仲間にする
しかし、二つ目のドアにいたのは両脚を失って車椅子の乗る黒人女性だったが、これが二重人格。電車に突き落とされたのをきっかけに、淑女のオデッタ悪女のデッタに人格が分かれた多重人格者であり、デッタが万引きで追いかけられているときにローランドは連れ込んでしまった
……と、どれも一筋縄ではいかないし、そもそも味方にしてどうするんだという人物ばかりなのだ

物語は進むごとに、単なる仲間集めではなくなってくる
エディはまた、まともに協力するが(かなり毒づくのだけど)、オデッタ=デッタはどの人格が出るかで正反対。デッタのほうが出現するや、白人二人を悪党扱いして敵視するして、お荷物以上の爆弾と化す
そういう存在だと分かっているのに、頼れる相棒となったエディーがオデッタの人格に惚れてしまい、とんでもない窮地を呼んでしまうのだ
それを解決するのが、三人目の快楽殺人鬼。彼は第一部の少年ジェイクを殺して、オデッタを電車に突き落とした張本人なのである。彼のような人物をどう使って危機を乗り切るか、終盤のジェットコースターな展開が凄まじい
第一部が19歳の作品をリライトしたものだが、第二部は1987年、40歳と脂が乗りきったときに書かれたものであり、いよいよローランドの奇妙な冒険が始まるといったところだ


次巻 『ダーク・タワー 第3部 荒地』 上巻
前巻 『ダーク・タワー 第1部 ガンスリンガー』
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『ダーク・タワー 第1部 ガンスリンガー』 スティーヴン・キング

クトルゥフ神話→スティーヴン・キング→村上春樹


ダーク・タワー1 ガンスリンガー (新潮文庫)
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ただならぬ荒野で、一人の男が旅していた。男は最後の‟ガンスリンガー”=拳銃使いのローランド。彼は王国を滅亡させた<黒衣の男>を追いかけていた。<黒衣の男>の魔術によって散々いたぶられるも、謎の少年ジェイクと出会う。奇妙な洞窟を抜けた向こうで、いよいよ<黒衣の男>に追いつかんとするが……

原作を読むと、映画のことがある程度解せてきた
第一巻なので世界観のすべては掴めないものの、ローランドのいる世界は現実世界からの完全な別次元とはいえない。ローランドはガンスリンガーたちが王に仕える国に属していて、それが繁栄した時代もあったが、その一方で過去の遺物として現実世界の物体が存在している
その「現代」から流れ着いたとおぼしき少年ジェイクは、それをローランドに説明して見せるのだ
とはいえ、ガンスリンガーは西部劇のガンマンを超人化したような戦闘力の持ち主であり、タルの街では二丁拳銃で映画のような超絶アクションを見せる。物語の世界自体は開拓時代のウェスタンなのだ。日本人が戦国江戸の時代劇を好むように、アメリカ人にとっての心の故郷なのだろう

著者による序文が面白い。富野小説のあとがきのように、ぶっちゃけっている
本作は大学時代、19歳のころから書き出したもので、著者自身も後で振り返ると若気の至りで恥ずかしい内容だったそうだ
いろんなライターのセミナーに通っていたせいで、妙に凝った文学的な表現になってしまい、リライトしても第一巻にはその名残が残ってしまったという
映画で19」という数字が<中間世界>へのキーとなっていたのも、19歳という年齢に由来しており、大人の世界へと連れ去られていくイメージと重なっているようだ。本巻でも、アリスという女性が言ってはならなかった禁忌の数字が「19」である
著者の打ち明けるところ、19歳当時(1970年)はヒッピーの間で『指輪物語』が大流行しており、本作もキング版指輪物語といわれるほど甚大な影響を受けている。ガンスリンガーの王国が内部から崩壊したところなど、指輪の力が内面から<悪>を吹き込んでいくところと重なるし、人をたぶらかす<黒衣の男>はキリスト教世界の悪魔そのもの。なにせ、ラストにガンスリンガーと対峙する場所が、キリストが十字架にかけられた「ゴルゴダの丘」なのだ
<黒衣の男>が説く宇宙大の世界観と触れれば狂気の真理はクトゥルフ神話の影響も感じる。それを直接感じさせるところが、第一巻の若さなのかもしれない
『ダーク・タワー』シリーズはその青い設定(!)ゆえか、中編の連作として断続的に書かれては中断していたものの、末期がんの祖母から続きが気になるといわれたり、本人が交通事故に遭うなどの出来事を経て再開され、2002年を持ってようやく完結した
果たして、どう転がっていったのか、これから楽しみである


次巻 『ダーク・タワー 第2部 運命の三人』

関連記事 【映画】『ダーク・タワー』
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『パラケルススの魔剣』 山本弘

ゲームはPC98のみの発売なので、今となっては幻の一品
ニコ動の生主さんで、近々やってみるという人がいるので楽しみにしている





ラプラス事件から7年後、1932年。フリーのライターであるモーガン・ディランとその旦那である探偵アレックスは、イギリスの心霊研究会に招待された。そこで市井の発明家ビンセントと再会した二人は、研究会のスポンサーである出版社の社長フィリップ・A・スミス氏に本物の霊能力者である少女フランカに引き合わせる。彼はフランカの幻視を調査すべく、モーガンたちにヨーロッパ大陸への取材旅行を持ちかけるのだった。モーガンにパラケルススの短剣を魔除けとしてプレゼントして……

『ラプラスの魔』から続く、ゴーストハンターシリーズの続編である
本作もまずゲームの企画から始まって、そのノベライズという形なのだが、ゲームの製作が終わるまで連載が延びた関係で、上下二巻のスケールの大きい長編小説となっている
前作の生き残った主要人物、結婚したモーガンアレックス、奇抜な発明家ビンセントに、あの魔術師、草壁健一郎も登場。新たな仲間として、強力な超能力者である少女フランカ、「神聖なる獣」の一員だったゲルハルトが加わり、敵役はナチスの親衛隊に守られたオカルト集団!
そして、その裏にはヨーロッパ大陸を越えて地球圏全体に関わる謎の黒幕がいるという、1930年代の情勢と当時もてはやされたオカルティズムや奇抜な定説を盛り込んで壮大なスケールの冒険小説となっている
その一方で、ライトノベルの範疇に入るコミカルなキャラクターと活劇に、作者入魂のエロティシズム(!)もあって、入りやすい作品となっている

作品世界の材料となっているのは、20世紀初頭から流布されたオカルティズムである。もっとも、この頃は相対性理論や量子学がまだ一般に理解されていない頃であり、今から見ればオカルトとしか思えない、突拍子もない学説が一部に信じられた時代でもあった
冒頭の心霊研究会(SPR)は実在の組織であり、イギリスの首相を務めたA・J・バルフォアが会長を務めていたり、作家コナン・ドイルルイス・キャロル心理学者のカール・ユングが会員になっていたこともあった
先史思想研究会のヘルマン・ヴィルト、作中のダッハウで会うカール・マリア・ヴィリグート、生体実験に手を染めるジクムント・ラッシャーは実在の人物であり、太陽系の起源を高温の天体に巨大な氷がぶつかったことから生まれたというヘルビガーの宇宙氷理論はナチスに支持され、ドイツで支配的な地位を築いてしまった
他人の批判を受け付けない独善的な世界観が、とんでもない悲劇を招くという警句は、トンデモ本批判で有名な作者の面目躍如だろう


前作 『ラプラスの魔』
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