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『ノドン強奪』 トム・クランシー スティーヴ・ピチェニック

オカンと姉貴に呼ばれて、夜の二条城へ花見へ。六時からライトアップしていたのだ
また、そのうち記事にします


ノドン強奪 (新潮文庫)
トム クランシー スティーヴ ピチェニック
新潮社
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大統領就任式に沸く韓国で、無差別爆弾テロが起こった。北朝鮮が疑われるも、地元の情報部のキム・ホアンは韓国内部の犯人を疑い、北朝鮮の女スパイと接触することで確信する。一方、情報機関としてスタートしたばかりのオプ・センターは、同時刻にサイバーテロをくらいコンピューターがダウン、アメリカの軍事衛星には事実と異なる画像が挿入された。誰かが第二次朝鮮戦争をもくろみ、ノドンミサイルを日本へ向けていた!

オプ・センター・シリーズの第一作
1995年初出で、この年の韓国は金泳三政権一年目二人の大統領経験者が逮捕される事態となり、北朝鮮では前年に金日成が亡くなり最高権力者の代替わりしたばかり。日本では地下鉄サリン事件が世情をにぎわせていて、北朝鮮による拉致事件に関しては一般人には疑惑の段階に留まっていた時代だ
本作は、半島の最高指導部が変わったばかりで権力基盤が安定していないと仮定して起こる、両国の過激派分子が手を組んでの騒乱をタネとしている
主役であるオプ・センターは、複数の情報機関を横断する、大統領が使いやすい組織として発足し、トップには文民である元ロサンゼルス市長ポール・フッドが座る。優秀ながら寄せ集めの集団であり、実力を信頼し合いつつの微妙なチームワークが特徴となっている。みんな、良かれと思って勝手に動き、読者をハラハラさせるのである
取って代わりたい野心的な副官マーサ・マッコール、ポールに惚れて不倫を夢見る広報官アン・ファリス、実戦部隊に同行してしまう猪少将マイク・ロジャーズ……ライアンシリーズがハリウッドなら、オプセンターはテレビドラマのような距離の近さがある
こうした個性的な連中が組織の上下関係ではなく、高い意識の連帯で危機を乗り越えていく

拉致事件を経て、日本人の北朝鮮への理解と関心が深くなった今となっては、本作には乗りづらいかもしれない
アメリカ人の両作者にはベトナム戦争へのトラウマから、冷戦後に悲劇的な衝突を避けることが第一にシナリオを組み立てている
北朝鮮のような全体主義体制は、党が軍を支配・コントロールしているのであって、軍先主義でも首領の支持ありき。ホン・グーのような前線の武官が自立的な判断と行動が簡単には取りきれない。本作の北朝鮮には、最高権力者の存在が希薄過ぎて、この点まったくリアルではない
アメリカ大使や特殊部隊と北朝鮮軍との連携も、何やら米軍とベトコンの仲直りのような牧歌的な光景だ。弾道ミサイルの飛距離を伸ばし続け、トランプ政権がそれを撃ち落とそうという今となっては、隔世の感がある


次作 『ソ連帝国再建』
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『ヌメロ・ゼロ』 ウンベルト・エーコ

イタリア版松本清張
新聞の出資者コンメンダトール・ヴィメルカーテのモデルはベルルスコーニらしい


ヌメロ・ゼロ
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ウンベルト・エーコ
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売れないライターであるロマンナは、シナイという男に依頼され、新たに創刊される日刊紙『ドマーニ(明日)』に参加する。テレビに負けない情報で読者を揺さぶる方向性で動き出すも、出資者であるコンメンダトール・ヴィメルカーテの隠然とした意向にいつのまか左右されてしまう。そして同僚ブラッガドーチョから、教皇庁の秘密、ムッソリーニの生死の謎、対コミュニスト部隊ステイ・ビハインドを聞くに及んで、事態は急変して……

『薔薇の名前』などで知られるウンベルト・エーコの遺作である。管理人はエーコの作品がはじめてで、まさか遺作から読むことになるとは思わなかった(苦笑)
出版は2016年ながら、作品の年代は1992年の5月から6月の一月間。ソ連が崩壊して冷戦時代の緊張が良くも悪くも溶け始めた時代。ネットが一般的ではなく、記憶媒体はフロッピーディスクで、主人公たちの新聞が意識するライヴァルも週刊誌でありテレビである
冒頭は、主人公が寝ている間に水道を止められるという事案、本人にとって不気味でも他人にとっては取るに足りないアクシデントから始まる。主人公が病んでいるとしかいえない出だしだが、その後に日刊紙の準備に携わるところから、神経症気味になるに到った経緯が分かる
話の展開はどこか松本清張を思い起こしてしまうが、かつてイタリア共産党が大きな勢力を持ち、極左組織がマフィアを介して保守勢力と結びつき、元首相を誘拐暗殺するとか、百鬼夜行の裏社会を持つイタリアの風土からすれば、遠い昔のことではないのだ

殻を破ろうとして生まれたはずのメディアが、どうやって既存のもののような保守性、事なかれ主義に陥っていくかが、本作の焦点だろうか
編集長であるシナイは、主人公コロンナを参謀格に経験の薄い記者たちを指南していくが、読者に新しい刺激を与えるとしつつも、不愉快になることを書かない読者にあくまで印象だけを残して、一定の方向に誘導することを目的とする。想像を誘うだけで、その責任までは取らないのだ
主人公のように本来は独立心をもった人間でも、いったん組織に属してしまうと、ブラッガドーチョのようなはねっ返りを除き、その枠内でしか動かなくなってしまう。官僚を批判する側が官僚的になってしまうのは、日本だけではないらしい
保守層を敵に回すことが出資者の意向に沿うのか、マフィアを敵に回す覚悟があるのか、そこまでするほどの意味があるのか、そんな内輪への言い訳を言っている間に、外国のメディアに堂々と暴露されてしまう。この報道途上国あるあるが、物悲しい
もっとも根っこでは、どこのメディアも抱えている普遍的な問題でもあり、一流メディアの報道という触れ込みで、実はそれも情報操作されているという現実もあるわけだが
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『LAコンフィデンシャル』 ジェイムズ・エルロイ

先週は持病の発作を起こして、検査入院。稀勢の里の一番を、病院のテレビから眺めたのであった
照富士は、ずいぶん株を落としたな、おい


LAコンフィデンシャル(上) (文春文庫)
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著名な父を持つエクスリーは警察官の世界で出世すべく、監獄の暴力事件「血塗られたクリスマス」をきっかけにロス市警の警部にのしあがる。地方検事候補エリス・ローに可愛がられた彼だったが、娼婦殺しに異様な熱意を燃やすホワイトや芸能界に羽を伸ばすヴィンセンスらベテラン刑事の反感を買ってしまう。しかし謎の虐殺事件「ナイト・アウル」を契機に、宿敵の三人が奇妙に交錯する

ケヴィン・スペイシー、ラッセル・クロウの出世作としての有名な映画の原作小説。LA暗黒街シリーズの中では第三作目である
出世欲と正義感に板ばさみのエド・エクスリー、女殺しを許さない暴力的正義の体現者“バド”・ホワイト、麻薬と芸能界で遊泳するジャック・ヴィキンズの三者の視点で物語は進み、現在扱う事件と別件が絡むところは前作『ビッグ・ノーウェア』と似ているものの、その絡み方はより重層的へ深化している。いい格好しいのエドと暴れん坊刑事のバドが好対照をなして人物の位置関係は分かりやすいものの、ナイトアウル事件が並行して起こる猥褻本事件とつながるのみならず、かつての児童連続殺人事件の真相へもつながってしまうとか、ロサンゼルスという都市空間の歴史と因縁が群像劇として描きだされているのだ
シリーズとしても、前々作から登場の俗物検事エリス・ローに、最凶の悪徳警官ダドリー・スミス史実の大悪党ミッキー・コーエンに負けない存在感を見せており、暗黒街を仕切る彼らがどう関わっていくかも注目である
ねえ、読者のみなさん。あなたがたはこの話をこの誌面ではじめて知ったのだ――この話はオフレコだよ。内緒だ。まさにハッシュ、ハッシュ

主人公の一人、エクスリーの父プレストンは、優秀な警官でありながら実業家に転じて、大成功を治めている
プレストンが携わるのがディズニーランドをモデルにしたテーマパーク『ドリーム・ア・ドリーム・アワー』であり、ウォルト・ディズニーをモデルにしたレイモンド・ディータリングなる人物が登場する
なぜ、わざわざディズニーを別名に置き換えたのか
作中にはなんと、アニメ『ドリーム・ア・ドリーム・アワー』の関係者の間で麻薬が蔓延している描写があるのだ。主人公の一人ヴィンセンスはそれをお目こぼしする代わりに、ロス市警を描いたドラマ『名誉のバッチ』の考証を担当するなど甘い汁を吸ったりとか、芸能界と警察行政の癒着ぶりが本作の背景に取り上げられているのだ
次作の『ホワイトジャズ』には、しれっとした顔でディズニーランドをそのまま出しているようだから、本作の描写がどこまで本当かは分からないが、土地と年代的に充分ありえる話ではある
当然のことながら、レイモンド・ディターリングは劇場版にはいっさい登場していない。某諸悪の根源が生き残ったりと、映画とはずいぶん展開も結末も異なるので、違いを楽しみに読み進もう


前作 『ビッグ・ノーウェア』

関連記事 【DVD】『LAコンフィデンシャル』
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『武器製造業者』 A・E・ヴァン・ヴォークト

謎すぎる作者のバランス感覚


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“不死人”ヘドロックは、太陽系を統べる「イシャー帝国」とそれに対抗する「武器製造者ギルド(武器店)」の間が深刻化するのを防ぐべく、一人の帝国軍人として潜入していた。双方から裏切りを疑われた彼は姿を消しつつも、恒星間移動できる宇宙船が製造されたことを察知。その宇宙船を乗っ取って、小型宇宙船で外宇宙へ追っ手を逃れたが……

『イシャーの武器店』の時系列的には作品的続編。ただし、製作時期はこちらのほうが早い
『イシャーの武器店』にもでてきた“不死人”ヘドロックが主人公であり、ヒロインは女帝イネルダ。二人との関わりから、イシャー朝と武器店の誕生の秘密が明かされる
展開はこれも前作同様、短編集をまとめた“fixed-up”という手法ではないかと思うほど、ごったがえしている。女帝に死刑を宣告されそうになった直後に、武器店にも同じように処分を受けて逃走。その途中でとある武器店支部に訪れたギル・ニーランに出会って、その弟の行方不明を知ったことから恒星間移動できる宇宙船にたどりつくという忙しさである
そうした活劇を可能にするために、主人公には長い歴史を生き抜いた“不死人”という設定があり、不死身ではないものの過去に開発した秘密兵器を駆使して、ピンチを潜り抜けていく
というふうに、いろいろとぶっとんだ設定と展開が繰り広げられつつ、なんだかんだロマンスに落ちてまとまってしまうという、力技の作品である

これ以上書くといつものようにネタバレになってしまうのだが、書いてしまおう(苦笑)
ヘドロックはとんでもない長命であり、彼はイシャー朝と武器店の創設そのものに関わっている
現存の支配体制を作った、まさにの存在であり、“不死人”であることを隠しながらも、各時代のイシャー朝の女帝たちと関係をもってその血統を維持してきた
彼のデザインした武器店の役割は、国民ひとりひとりが武装する銃社会と、法律を盾に不合理と戦う訴訟社会を目指すもので、そのままアメリカ社会の理想でもある
もっとも、作品内でも理想どおりには進まない。武器店はヘドロックの秘密を明かそうと帝国の支配体制を崩すところにまで突き進んでしまい、ヘドロックはその“神の手”ともいえる科学技術を駆使して、是正せざるを得ない。まさか、巨人を進撃させるとか、たまげたなあ(笑)
冷静に考えると、一人の隠れた神=独裁者によって成り立つ体制であり、エルガイムのアマンダラ・カマンダラを思い出してしまった
ヘドロックのやりたい放題に思えるが、さらに恐るべき能力を持った“蜘蛛族”が彼の首根っこを押さえつけていて、かろうじて作品の均衡が保たれている
“蜘蛛族”はまさに機械仕掛けの神=デウス・エクス・マキナ神の上にさらに神がいて、その神も思い通りにはならないという、外が見えない入れ子構造であり、ぶっとんだ設定をさらなるぶっとんだ設定で帳尻を合わせるという、ほんとうに妙な作品だった


前作 『イシャーの武器店』

関連記事 『重戦機エルガイム』 第1話~第3話
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『アルスラーン戦記14 天鳴雷動』 田中芳樹

相変わらずの文章力


天鳴地動(てんめいちどう) アルスラーン戦記14 (カッパノベルス)
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デヴァマント山から来る魔軍の一団に対して、ナルサスの献策によりアルスラーンはペシャワール城を放棄した。その好餌へラジェンドラ王の率いるシンドゥラの軍勢に、チュルク軍まで侵入、魔軍の介入よりチュルク軍は全滅。復活した魔人イルテリッシュは、魔軍の力に手ごたえを掴み、空からチュルクの首都を強襲するのだった。その一方、ミスル王国を掌握したヒルメスは、ナバタイ王国を迎え撃つべく大河を遡るが、思わぬ伏兵を受ける

漫画化、アニメ化の影響か、前巻より間もなく出版されていた
前巻から引き続き、アルスラーンの主従以外の場所が面白い。イルテリッシュ『魔界転生』の宮本武蔵よろしく、完全に自立化してチュルク王国の征服をはかる。魔人の君主に人間社会が統治可能かと疑うものの、あんがい生前(?)より頭が回るようになっているので、上手く行きそうな勢いである
作者の筆が乗っているのは、ミスルにおけるヒルメスだろうか
4年の時の流れを感じさせないアルスラーン主従に比べ、しっかりと年輪を刻み人間の幅が広がっているし、パルスの他に人はなしという世界観の中で、無警戒の凡夫が実は一世の梟雄だったという意外性もジュブナイル小説からはみ出している
なんとなく積読の山に入っていたが、読んでみるとあっという間に読破できた。余計な描写がなく、簡明で軽快な文章で頭のなかへするすると入ってしまうのである

魔軍はイルテリッシュのおかげか強化された
空飛ぶ猿たちも、空からの攻撃を徹底するようになった。今まで死んだ死人の数だけいるような大軍であり、前巻まで普通のおっさんに応戦できたものが、普通の兵士では苦戦するのだ
幹部クラス(?)の妖怪として人に化ける“鳥面人妖”も加わり、パルス側を大混乱に陥れる。まあ、追い詰められてもいないのに、自ら正体を現すのは謎すぎるが(苦笑)
これまでパルスに人材が集中し過ぎて、人間界に相手となる存在がいなかったところ、蛇王から発せられる超自然の力、妖怪、天変地異によって、調整されたかのようである
ともあれ、作者が予告していたように十六将がまた一人と死んでいく場面は唖然とするほかない。なんでそんなに簡単に殺せるのだろうか
こんな死に方をしては十六将のうちに入らないではないか、と危惧するような有様で、予想どおり地味な人からお亡くなりになっているのだ(苦笑)
人材が集まって死んでいく展開は、当初から『水滸伝』を意識しているだろうけど、それを貫徹する必要はあるのだろうか
最初から予定を決めてしまって、書いていくうちに立ち上がるキャラクターたちを転がしていかない手法は、長編ファンタジーと相性が悪く遅筆を招いている気がする


前巻 『アルスラーン戦記13 蛇神再臨』

関連記事 『魔界転生』
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『ビッグ・ノーウェア』 ジェイムズ・エルロイ

警察が腐敗しずぎの50年代


ビッグ・ノーウェア〈上〉 (文春文庫)
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ビッグ・ノーウェア〈下〉 (文春文庫)
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1950年、1月のロス。若き保安官補アップショーは、遺体が獣に引き裂かれるという異常殺人に出会い、その解決に情熱を注ぐ。その死体解体現場を発見するものの、市警の管轄を不法に入るというミスを犯してしまう。一方、離婚危機を抱える警部補コンシディーンは、義理の息子の親権と名声を手に入れるため、赤狩り作戦に乗りだす。暗黒街の始末屋バズ・ミークスは、金のためにその作戦に組し、アップショーもまた異常殺人の捜査協力を条件に、左翼組織への内偵を試みるが……

『ブラック・ダリア』に続く、LA暗黒街シリーズの二作目である
ときは冷戦が始まって間もない1950年。ハリウッドでは赤狩りの波が何度も押し寄せ、作中ではエキストラと裏方の組合UAESが待遇改善のデモを起こしている。それを潰したい大実業家ハワード・ヒューズ暗黒街の帝王ミッキー・コーエンは傘下のティームスター(全米トラック運転手組合)に対抗のデモを打たせている情勢だ
この赤狩りを潰すためにUAESの弱みを握ろうと、アップショー、コンシディーン、バズ・ミークスがそれぞれ違う動機で誘い込まれる
前半はこの赤狩り作戦とアップショーの追う連続異常殺人が別枠として始まるが、下巻に入ると一気に交わりだし、次々に秘密が噴出して主人公たちを七転八倒させる
そのピンチのなかで、アップショーの正義感が無頼漢バズ・ミークスに乗り移り、冷淡なコンシディーンをも動かすという漢気の連鎖がたまらない
あまりに筋が複雑過ぎて、最後に作中で解説せざる得ないのは、ミステリー小説として不手際(笑)かもしれないが、いろんな意味で濃い名作である

前作がブラックダリア事件を題材としたように、本作でも実在の人物、事件が重要な位置を占める。そこに作品オリジナルのキャラクター、事象が乱入するので、どこまでが事実なのか、素人には判別できない(苦笑)
日本版WIKIにも確認できないスリーピーラグーン事件は、1942年にメキシコ系青年が殺されたことに対して、警察が無関係のメキシコ系移民を多数逮捕した冤罪事件である。背景にはアングロサクソン系白人のメキシコ系移民=バチューコに対する偏見があり、太平洋戦争の開戦で日系移民が収容所に入れられたことにより、よりメキシコ系に差別の対象が移行したという
主人公たちの視点ですら強烈な差別表現が次々に登場し読者を鼻白ませるが、これも50年代の苛烈な時代を再現するため。メキシコ系移民、黒人、同性愛者といったマイノリティがどういう扱いを受けていたか、掛け値なしに映し出されている
役人の出世のために行われる赤狩りに対しては、コンシディーンに「とてつもなく無駄であり、とてつもなく恥ずかしいことだよ」と言わせる。題名である「ビッグ・ノーウェア」=大いなる無とは、この無駄な労力、無駄な犠牲のことを指しているのだろう


次作 『LAコンフィデンシャル』
前作 『ブラック・ダリア』
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『ループ』 鈴木光司

安原顕の解説はスルーしよう


ループ (角川ホラー文庫)
鈴木 光司
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科学者の父を持つ二見馨は、10歳のときに重力分布図と長寿村の関係を読み解き、アメリカへの旅を約束した。しかし、その後に父の幸彦が悪性のガンにかかり、約束は果たされないままだった。10年後、馨が医学生になったとき、世界には幸彦がかかったウィルス性のガンが蔓延し、それは樹木や動物にまで冒されていた。気に病む彼は父と同じ病院に息子を入院させている礼子と関係を持つが……

リングシリーズの完結編としては、やや外してしまっただろうか
『リング』『らせん』は、『らせん』内に小説『リング』が登場するように、入れ子構造になっていた。本作と『らせん』も同じように入れ子構造となっている
『らせん』によって『リング』の意味が変わったように、『ループ』によって『らせん』の意味が変わってしまうが、変わり方がどうもよろしくない。あまりにぶっ飛び過ぎて、『リング』の続編である必要がないのだ。関連付けはなされても、前作・前々作を矮小化してしまっている
前々作のホラーから前作はサイエンス・ホラーに化けたが、今回は完全なSF。ガンとの絶望的な戦い、患者とその家族の辛さは執拗に描かれているし、アメリカの砂漠の描写は迫真であるが、シリーズとして意識したときに貞子が出てこないのが寂しい

勢いよくネタバレしてしまおう。『らせん』の世界は、本作の世界にあるスーパーコンピューターに作られた仮想空間『ループ』である!
前作までの話を読んでいると、ガンのウィルスがリング・ウィルスであることはすぐ分かるし、仮想空間で人工生命の研究がなされていたこととつなげると、わりあい連想しやすい
小説としても、これほど巨大なプロジェクトで予算が割かれて、かつ関係者が不審な死を遂げているのに、日米の国家機関がまったく為す術がないというのが不思議で、エリオットが行った非人道的な実験をどこにも漏れていないというのも解せない
作者が書きたいこと以外を簡略化し過ぎていて、終盤に近づくごとにリアリティが落ちていくのは残念だった
主人公の自己犠牲的なラストも、「正攻法だと時間が足りないから」というも切ない。殺す気まんまんじゃないすか

と、ネチネチ書いてしまったが、読後感は悪くない。作者の文章力が力強く、すがすがしい気分にさせられるのである。すごい腕力だ


前作 『らせん』




ドリームキャストで発売された『リング』というゲーム
一見、クソゲーだが、じつは『ループ』の設定が生かされたシリーズを総括する内容でもあったらしい
まあ、やりたいかというと……
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『らせん』 鈴木光司

『らせん』の映画は小説に近かったかと


らせん (角川ホラー文庫)
鈴木 光司
角川書店
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幼い息子を亡くした監察医・安藤満男は、かつて大学で同窓だった高山竜司の遺体を検視解剖した。高山の遺体の内部からは謎の暗号が現われ、安藤はそれが「RING」であると解き明かす。一方、高山の恋人でその遺稿をまとめていた高野舞は、謎のビデオテープを見たあとに消息を絶ってしまう。舞の美貌に惹かれていた安藤は、彼女のマンションを探るうちに、ただならぬ気配を感じるのだった

いわずとしれた『リング』の続編
映画では『リング』と『らせん』が同時上映されていたが、小説は1995年の出版『リング』から4年の間隔が空いている
作者が4年かけた続編だけあって、前作の世界観を大きく膨らませる大作へ変貌していた。ロッグキャビンと一本のビデオテープから始まったホラーが、世界の存亡を賭けたSFになるなど、誰が想像するだろうか
『らせん』からがSFとしての本編であり、『リング』はいわばその前日譚……というか、読み終わった後にはその『リング』こそが、『らせん』作中に出てくる小説になってしまって、その結果……(以下略)。続編によって前作の立ち位置が変わるのは、アゴタ・クリストフの『悪童日記』の三部作を思い出す
本作の貞子は映画のようなモンスターではなく、科学現象で生まれた突然変異に過ぎず、憎むべき存在になりえないことも作品を薄気味悪いものにしている

しかし、ホラーでなくなったかというと、まったくそうではない
ありふれた都市の光景の中から、ふとしたことで感じてしまう違和感や見えないものへの怯えを拾い上げていて、それが読者の日常に重なっていくのだ
そして、それに人類社会そのものを揺さぶる“サイエンスホラー”が加わっていく
安藤の同僚である宮下がやけにオカルトへ傾倒するとか、前作にも見られたご都合はある(苦笑)。普通なら「ばかじゃねーの」とオカルト的発想を止めにかかる人が出てくるものだろう
が、読者の視点に近い生活感と、DNAと遺伝子の関係から生物誕生の謎にまで行きつく薀蓄の積み重ねが、香ばしくぶっとんだフィクションを厚く包みこんでいる。読者にやぼな突っ込みをさせない強固な作品世界を作り上げているのだ
ラストにとる主人公に迫られる選択とその決断も、“サイエンスホラー”に相応しい迫力と後味の悪さ


次作 『ループ』
前作 『リング』

関連記事 『悪童日記』

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『リング』 鈴木光司

オチはSFと聞いて


リング (角川ホラー文庫)
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4人の少年少女が同日同時刻に変死した。雑誌記者・淺川和行は姪の早すぎる死に不審を持ち、オカルトに一家言持つ教授・高山竜司に連絡を取り、彼らが夏休みに出かけた南箱根のロッグキャビンへと行く。そこにはただ、一本のビデオテープがあったのみ。しかし、そこにモノクロで映されていたのは、火山の噴火、謎の老婆、肩をかまれた男、……そして井戸。呪いを回避する“おまじない”を探すため、山村貞子を探す旅が始まる

映画のイメージとは、かなり違った
映画の貞子はビデオテープを観た人間を殺し尽くしてしまうモンスターとして扱われていて、管理人も今まで観た映画のなかで一番ビビったものだ
小説にはそうした等身大の怖さがない。主人公の淺川が客観的にはキョーレツな妄想癖の持ち主としか思えず、読者は同調できるキャラクターではないからだ。4人の変死という事実があっても、半信半疑にならざる得ないのが普通の人間ではないだろうか
強気な高山とは本当にいいコンビであり、シリアスなホラーというよりはどこか香ばしい雰囲気があって、単純なホラーではなくビデオテープから山村貞子を追いかけるミステリーというに相応しい

単純に驚いたのは、もう25年も前の作品だということだ
VHSテープに、不幸の手紙ネタ、公衆電話と今では懐かしいものがゴロゴロとしていて、リゾート地のにぎわいはバブルの名残を思わせる
家族思いの淺川に、ノリの軽い割りに純情な高山と、男性像にも昭和の匂いが強い
小説では山村貞子の生い立ちが詳しく語られていて、彼女がなぜビデオテープを作り出したかも理詰めで説明してくれる。名状しがたい恐怖ではなく、分かった上でどうにもならない恐怖なのである
映画『らせん』を観たときには、映画『リング』との調子の違いにとまどったが、小説『リング』からならあの設定にも納得。このシリーズは『パラサイト・イヴ』と同様の、サイエンス・ホラーだったのだ


次作 『らせん』

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『風神の門』 司馬遼太郎

今年の大河の外れ臭
柴咲コウが出てるから、観ちゃうんだけど


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霧隠才蔵は伊賀忍者ながら、徳川家にも仕えず堺衆の使い走りにされていた。京の八瀬では徳川の刺客になぜか襲われ、沐浴上では菊亭晴季の娘を騙る美女に遭遇する。美女の正体は淀君に仕える侍女・隠岐殿。徳川との一戦に備えて有力な牢人たちに連絡をとるべく、晴季の娘になりすましていたのだ。真田幸村に心酔する猿飛佐助とも出会い、紆余曲折の末、徳川家康の首を狙う

司馬遼太郎の『梟の城』に続く、忍者小説である
立川文庫の創作である真田十勇士が実在したとすれば、どうであったかという視点で描かれ、猿飛佐助は六角氏に仕えた三雲家に連なる甲賀衆とし、霧隠才蔵は伊賀の郷士出身として服部姓を持つ
幸村の腹心として、穴山小助、三好清海入道らも登場し、霧隠才蔵を加えてちょうど10人目の士分が揃い、真田十勇士が結成されることとなる
もっとも、主人公である霧隠才蔵は幸村に臣従したつもりはなく、佐助への友情家康を討つという任務への昂揚感、そして女たちへの恋に突き動かされていく

本作の特徴は司馬作品ながら、インテリ講談と喩えられる歴史講釈が最低限に留まり、講談の産物である忍者が史実の世界に着地できるように力を尽くされているところだ。エンターテイメントに全力なのである
立川文庫だと、猿飛佐助が最上級の忍者で、霧隠才蔵は永遠の二番手扱いとなっているが、本作ではそれが理屈でフォローされる。佐助は組織力に長じた甲賀衆であり、集団を前提とした大規模な忍術に通じている
翻って、伊賀衆の才蔵は個人技を磨くのみで、その性格も唯我独尊。伊賀忍者は個人事業主が基本で、集団行動は性格的に苦手である
これにより、才蔵は自らの周囲ではピカ一の活躍を見せるものの、全体としての貢献度は佐助の後塵を拝するのだ
組織力が個人技に勝る、そうしたリアルさを保った上で、惚れた女ときのまま生きるという自存自立した才蔵の在り方は、戦後の日本人を惹きつけるものがある
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サイドバー背後固定表示サンプル

サイドバーの背後(下部)に固定表示して、スペースを有効活用できます。(ie6は非対応で固定されません。)

広告を固定表示させる場合、それぞれの規約に抵触しないようご注意ください。

テンプレートを編集すれば、この文章を消去できます。