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『宵山万華鏡』 森見登美彦

京都や祇園祭にくわしくなくても楽しめる


宵山万華鏡 (集英社文庫)
森見 登美彦
集英社 (2012-06-26)
売り上げランキング: 12,120


祇園祭の“宵山には、何かが潜む!? 山鉾と露店でにぎわう一日に、さまざまな人々の想いが交錯し、不思議な世界の扉が開く
祇園祭の“宵山”だけにちなんだ短編集
六つの話がひとつの世界を共有しており、ここの主人公が出会った謎の大坊主が、別の章でとある役割を背負っていたことが分かるとか、読み進むごとになんとなく世界の秘密が分かってくる構成であり、次の話に自然と楽しみになってくる
特徴的なのが、宵山を舞台とするだけあって、京都という都市空間の中からファンタジーを引き出しているところだ
京都は景観条例や経済力の問題もあって、都市開発できる地域は限られているし、家やビルの建て替えは進まない。結果、何が入っているか分からない古いビルがうらぶれたまま残っている
その建物のなかには何があるのか、屋上はどうなっておるのか、そんな更新されにくい町並みから、華やかさと怪しさと、ほんの少しの怖さが入り混じった幻想的な世界が立ち上るのだ


<宵山姉妹>

バレエ教室に通う小学生の姉妹が、宵山の夜に教室のあるビルの上階や、露店が出ている通りを探検する話
冒険好きの姉に引きづられる妹の視点であり、子供の立場に立った、初めて見る物事、風景への興奮と不安がみずみずしく描かれる
最初の話にふさわしく、後に登場する人々が派手に、あるいは地味に少女へ関わってくる


<宵山金魚>

今はサラリーマンとなった藤田が大学時代に過ごした京都で、謎めいた旧友の乙川「宵山」見物へ出かける。生まれながらのトリックスターといえる乙川が用意した、藤田への歓迎とは?
孫太郎虫(ヘビトンボの幼虫として実在する)や、「超金魚」の養殖と、直に祇園祭と関わらないところから始まるものの、祇園祭“いちげんさん”の藤田を視点にして、外部の人が京都へ抱く神秘性や幻想が乙川の罠として描かれる
知らない場所だと、なんか破ったら怒られるしきたりとか、ありそうで億劫になるもんである。京都人ですら


<宵山劇場>

乙川が藤田に仕掛けた罠の裏側には、どんなドラマがあったのかを明かす
元学生劇団の裏方である小長井を視点に、酔狂な乙川によって集められたメンバー、学生劇団の美術監督だった山田川、洲崎バレエ教室の岬先生、大坊主にさせられる大学院生の高藪らのドタバタが描かれるのだ。人の手間を考えず独創的な想像力を押し付ける山田川が暴れ回り、小長井は終始引きずられ続けて、なんだか昔懐かしい学園物のジュブナイル小説のようだ
ただ前話までが背負っていた幻想的な雰囲気が崩れてしまうので、読んでいるときは面白いけど浮いているように思ったが、読み終わって見ると最終話のフェイクとして機能していたのであった


<宵山回廊>

京都から離れたことのないOL千鶴は、画廊の柳さんに頼まれて、宵山に画家の叔父を訪ねる。叔父は自身が「今日でいなくなる」と宣言し、不思議な万華鏡をもらったことから陥った終わりのない“宵山”を話す
叔父には“宵山”の日に行方不明になった娘がおり、万華鏡の向こうにその娘が見えたことから手放せなくなり、げっそりと痩せ衰えてしまう
最初の話の少女が出会った赤い浴衣の少女画廊の柳さんが再登場し、「終わらない宵山」という設定が加わって、作品はいよいよ彼岸の世界へ踏み込んでいく


<宵山迷宮>

今回は画廊の柳さんが主人公。柳さんはなんら心当たりがないのに、千鶴の叔父のように「終わらない宵山」に巻き込まれる。一日、一日、違う“宵山”を過ごしつつ、毎日訪れるのが、杵塚協会の乙川だった
この話では視点キャラが「終わらない宵山」に巻き込まれる。海外の小説なら『リプレイ』を思い出させる展開だ
乙川の口からは、この「終わらない宵山」はある万華鏡から覗かれた世界だと明かされる


<宵山万華鏡>

最初の話に出てきたバレエ教室に通う姉妹の、が主人公。妹とはぐれた姉は探しつつも、不思議な“宵山”の世界に惹かれていく
そこに誘うのは、妹も会ったはずの大坊主。そして、岬先生らしい舞妓さんに出会うが、どうも勝手が違う。ビルの屋上同士がつながっていて、あの藤田を罠にはめた“宵山”よりも荒唐無稽なのだ。そして、登場する“宵山様”はというと……
古いビルの屋上には、植木鉢が置かれまくったり、おかしな置物があったりとそれぞれ謎の個性があるもの。まして祭の夜となれば


ひとつ不思議に思ったのは、本作の舞台が“宵山”に限られていることだ。祇園祭は準備期間から一月に渡るお祭りだし、“宵山”の翌日の山鉾巡幸こそが本番である
あとがきを読むと、それも氷解する。作者は山鉾巡幸に出かけたことがなかったのだ。それだけに“宵山”のうるささが頭に残ったのだろう。あるいは、「祭の前夜のにぎやかさ」が好きなのかもしれない
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『ホワイト・ジャズ』 ジェイムズ・エルロイ

悪党たちへのレクイエム


ホワイト・ジャズ (文春文庫)
ジェイムズ エルロイ
文藝春秋 (2014-06-10)
売り上げランキング: 421,124


ディヴィッド・クラインはロス市警の警部補の身で、弁護士資格を持ちつつ不動産業を営み、袖の下も怠らない多芸な汚職警官。麻薬課と深い関係を持つカフェジアン一家へ、変質的な強盗が押し入ったことから、刑事部長エドマンド・エクスリー直々に捜査を命じられる。麻薬課を中心に隠然とした勢力を持つ強盗課警部ダドリー・スミスを追い落とすためだ。クラインは一家の身辺を調べるうちに、相棒のステモンズ・ジュニアに不審を覚えて……

『ブラック・ダリア』に始まるLA暗黒街四部作の最終巻である
文体が特殊である。視点となる汚職刑事ディヴィッド・クラインに思考と完全にリンクしているがゆえに、やたらと文章の間に「‐」「;」「/」「=」と記号が使われて、詩のように短いセンテンスが積み重なっている
そこに余計な説明や冷静な分析はない。それだけ主人公クラインがしたたかながらも刹那的な世界に暮らしており、欲望に流されつつも鋭い勘でピンチをくぐり抜けていく。まるで暗黒街の住人をVR体験しているかのようだ
正直読みにくいことは、読みにくい(苦笑)。日本語と英語の記号が入り混じるがゆえで、原語ならばこそ生きる表現なのかもしれない
カフェジアン一家も単に犯罪者というだけでなく、人間関係も悪徳の極みといえるドロドロの世界にいる。そして、それに対峙するクラインもまた、それに匹敵するドロドロから這い上がった人物で、新しい悪事を働くことでそれを相対化していく狂気を持ち合わせる
はたして、人はどこまで堕ち続けていくことができるのか。堕ちた先に何が待っているのか
エクスリーが主役なら、もっと普通の文章になっただろう。しかし、打算と狂気を行き来するクラインだからこそ、巨悪ダドリーを刺せるのだろう

巻末の解説に乗るように、暗黒街四部作をダドリーの王国とその栄枯盛衰の物語と読むことができるが、それぞれがアメリカの変貌を映している
1958年を舞台とする本作では、マフィアの世界でも世代交代が起きる。ユダヤ系のミッキー・コーエンが脱税での収監をきっかけに没落し、イタリア系のサム・ジアンカーナが勢力を伸ばしていて、クラインもその仕事を受ける
その一方で、上院議員のジョン・F・ケネディが反マフィア運動に力を入れ、FBIを動かしてロス市警を揺るがし、エクスリーはダドリーを葬る口実に利用する
ダドリーのように薬の売人と釣るみながら、出る杭を打つ式に組織犯罪を押さえるという、犯罪者と警察の境界が曖昧な時代が終わり、エクスリーのような官僚が組織の利害を中心に動く時代が始まっていく。いつか見た映画、『県警対組織暴力』と同じテーマが隠れているのだ
当時、ニューヨークのブルックリンに本拠地にしていたドジャーズが、ロサンゼルスへ移転しホームグラウンド用地の立ち退きがワンシーンにあったりと、戦中戦後の混乱が良くも悪くもある種の秩序に収まっていくという時代の移り変わりを暗黒街シリーズは活写していた


前作 『LAコンフィデンシャル』

関連記事 【DVD】『県警対組織暴力』
     『アメリカを葬った男』
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『空の城』 松本清張

最近、日本企業の海外の失敗が続いているので


空の城―長篇ミステリー傑作選 (文春文庫)
松本 清張
文藝春秋
売り上げランキング: 391,499


日本の10大商社の末席にいた江坂産業は、一流商社を目指して石油業界へ打って出ようとしていた。アメリカ江坂の社長・上杉次郎は、本社の河井社長の了解を得てレバノン系の実業家サッシンと交渉。1973年にクイーンエリザベス2号にて、ニューファンドランド島の石油精製工場を運営するNRCの総代理店となる契約を結んだ。しかし、その契約には恐るべき条項が盛り込まれていたのであった

松本清張が現実にあった総合商社・安宅産業の破綻を題材に書いたノンフィクション経済小説。人物の名前やキャラクターについては脚色してあるが、その他のことは事実に基づいているという
江坂産業は、本社社長の河井が業務上の最高責任者だが、人事権はない。人事については創業者一族の江坂要蔵が“社主”として掌握しており、実務には深く関わらないものの、奨学金を出した若者をファミリー社員として社へ送り出していた
一方、サッシンとの契約をまとめた上杉次郎は、社がGHQによって財閥解体の指定を受けようとしたときに、得意の英語と外交能力で免除に成功した“英雄”。大変な功労者ながらハワイ出身という出自から、社内では「英語屋」と妬まれており、ニューファンドランドの大プロジェクトを成功させることで見返したいという気持ちが強かった
レバノン出身のサッシンとは、ロックフェラーやユダヤ系が強い石油業界で偏見をバネにしたという共通点があり、半ば同志として危険な道へと進んでいくのだ
しかし、上杉は社内で異端児とはいえ、ニクソンとつながりを持つ政商サッシンほどのキワモノにはなれない。日本と海外の常識の差に身を引き裂かれて、おろおろするうちに江坂産業も真っ二つになって沈んでいってしまう

なぜ安宅産業は破綻してしまったか
直接の原因は、もちろんニューファンドランド・リファイニング・カンパニー(NRC)との契約にある。NRCの総代理店として、原油の買取代金の面倒を見ることになっていたが、中東戦争によって事情が一変する。アラブ諸国が石油の値上げとユダヤ系石油会社との取引を渋ったことから、原油価格が高騰
NRCがイギリスの石油会社ブリティッシュ・ペトロリアム(BP)に独占的に原油供給を受ける契約をしていたために、割高の原油を受け取らねばならず、精製した石油を捌こうにもアメリカやカナダの石油市場は自国の石油産業防衛のために門戸を閉じていた
さらに航空燃料などの“シロモノ”に精製する機械が故障を起こし、労働者のストライキもあいまって、NRCは赤字を垂れ流すようになる
引き上げようにも、NRCと安宅アメリカの間には「補助契約書」が結ばれており、NRCに4000万ドルを融資しつつも、その担保はなし! 取り返すためにNRCを破綻させるわけにはいかない
作中では上杉次郎(高杉重雄)がサッシン(シャヒーン)に何度も抵当権を要請する場面があり、金を出した商社側がなぜか「お願い」する立場になっているのが印象的だった。上杉のような海外通ですら、相手を信用するから最初に不利な材料を切り出さないという日本人同士の作法を無意識に行っていて、契約の文章を軽視してしまうのだ
東芝や郵政の失敗も、こうした希望的な観測から細かい契約に目を配らない点にあったのではないだろうか

清張が注目するのは、安宅産業の特異な体制である
社主である江坂要蔵(安宅英一)に人事権が掌握して、本社の社長が一社員を異動させるにも骨が折れる。安宅アメリカでは支社長には人事権がないから、部下は本国の社主や元上司を意識して統率がとれず、新任の支社長が就任しても問題の発覚が大きく遅れてしまった
上杉の独走は最終的に社主の了解を得ればまかりとおるという、独特の権力構造が生んだものといえよう
安宅英一は実業にはほとんど関わらない代わりに、会社の金で中国や朝鮮の陶磁器を収集し、オペラ歌手(実際はピアニスト?)を後援するなど公私混同が激しかった。清張は無茶な契約を結んだ上杉よりも、社主の要蔵に表舞台に立たない黒幕として責を重くみている。陶磁器の鑑定に「心眼」ともいえる才能を示した男が、会社経営にすこしでも目を向けていればどうであったか。最後にコレクションを褒め称える場面は、最高の皮肉である


松本清張原作 ザ・商社 DVD-BOX 全2枚セット【NHKスクエア限定商品】
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『ノドン強奪』 トム・クランシー スティーヴ・ピチェニック

オカンと姉貴に呼ばれて、夜の二条城へ花見へ。六時からライトアップしていたのだ
また、そのうち記事にします


ノドン強奪 (新潮文庫)
トム クランシー スティーヴ ピチェニック
新潮社
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大統領就任式に沸く韓国で、無差別爆弾テロが起こった。北朝鮮が疑われるも、地元の情報部のキム・ホアンは韓国内部の犯人を疑い、北朝鮮の女スパイと接触することで確信する。一方、情報機関としてスタートしたばかりのオプ・センターは、同時刻にサイバーテロをくらいコンピューターがダウン、アメリカの軍事衛星には事実と異なる画像が挿入された。誰かが第二次朝鮮戦争をもくろみ、ノドンミサイルを日本へ向けていた!

オプ・センター・シリーズの第一作
1995年初出で、この年の韓国は金泳三政権一年目二人の大統領経験者が逮捕される事態となり、北朝鮮では前年に金日成が亡くなり最高権力者の代替わりしたばかり。日本では地下鉄サリン事件が世情をにぎわせていて、北朝鮮による拉致事件に関しては一般人には疑惑の段階に留まっていた時代だ
本作は、半島の最高指導部が変わったばかりで権力基盤が安定していないと仮定して起こる、両国の過激派分子が手を組んでの騒乱をタネとしている
主役であるオプ・センターは、複数の情報機関を横断する、大統領が使いやすい組織として発足し、トップには文民である元ロサンゼルス市長ポール・フッドが座る。優秀ながら寄せ集めの集団であり、実力を信頼し合いつつの微妙なチームワークが特徴となっている。みんな、良かれと思って勝手に動き、読者をハラハラさせるのである
取って代わりたい野心的な副官マーサ・マッコール、ポールに惚れて不倫を夢見る広報官アン・ファリス、実戦部隊に同行してしまう猪少将マイク・ロジャーズ……ライアンシリーズがハリウッドなら、オプセンターはテレビドラマのような距離の近さがある
こうした個性的な連中が組織の上下関係ではなく、高い意識の連帯で危機を乗り越えていく

拉致事件を経て、日本人の北朝鮮への理解と関心が深くなった今となっては、本作には乗りづらいかもしれない
アメリカ人の両作者にはベトナム戦争へのトラウマから、冷戦後に悲劇的な衝突を避けることが第一にシナリオを組み立てている
北朝鮮のような全体主義体制は、党が軍を支配・コントロールしているのであって、軍先主義でも首領の支持ありき。ホン・グーのような前線の武官が自立的な判断と行動が簡単には取りきれない。本作の北朝鮮には、最高権力者の存在が希薄過ぎて、この点まったくリアルではない
アメリカ大使や特殊部隊と北朝鮮軍との連携も、何やら米軍とベトコンの仲直りのような牧歌的な光景だ。弾道ミサイルの飛距離を伸ばし続け、トランプ政権がそれを撃ち落とそうという今となっては、隔世の感がある


次作 『ソ連帝国再建』
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『ヌメロ・ゼロ』 ウンベルト・エーコ

イタリア版松本清張
新聞の出資者コンメンダトール・ヴィメルカーテのモデルはベルルスコーニらしい


ヌメロ・ゼロ
ヌメロ・ゼロ
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ウンベルト・エーコ
河出書房新社
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売れないライターであるロマンナは、シナイという男に依頼され、新たに創刊される日刊紙『ドマーニ(明日)』に参加する。テレビに負けない情報で読者を揺さぶる方向性で動き出すも、出資者であるコンメンダトール・ヴィメルカーテの隠然とした意向にいつのまか左右されてしまう。そして同僚ブラッガドーチョから、教皇庁の秘密、ムッソリーニの生死の謎、対コミュニスト部隊ステイ・ビハインドを聞くに及んで、事態は急変して……

『薔薇の名前』などで知られるウンベルト・エーコの遺作である。管理人はエーコの作品がはじめてで、まさか遺作から読むことになるとは思わなかった(苦笑)
出版は2016年ながら、作品の年代は1992年の5月から6月の一月間。ソ連が崩壊して冷戦時代の緊張が良くも悪くも溶け始めた時代。ネットが一般的ではなく、記憶媒体はフロッピーディスクで、主人公たちの新聞が意識するライヴァルも週刊誌でありテレビである
冒頭は、主人公が寝ている間に水道を止められるという事案、本人にとって不気味でも他人にとっては取るに足りないアクシデントから始まる。主人公が病んでいるとしかいえない出だしだが、その後に日刊紙の準備に携わるところから、神経症気味になるに到った経緯が分かる
話の展開はどこか松本清張を思い起こしてしまうが、かつてイタリア共産党が大きな勢力を持ち、極左組織がマフィアを介して保守勢力と結びつき、元首相を誘拐暗殺するとか、百鬼夜行の裏社会を持つイタリアの風土からすれば、遠い昔のことではないのだ

殻を破ろうとして生まれたはずのメディアが、どうやって既存のもののような保守性、事なかれ主義に陥っていくかが、本作の焦点だろうか
編集長であるシナイは、主人公コロンナを参謀格に経験の薄い記者たちを指南していくが、読者に新しい刺激を与えるとしつつも、不愉快になることを書かない読者にあくまで印象だけを残して、一定の方向に誘導することを目的とする。想像を誘うだけで、その責任までは取らないのだ
主人公のように本来は独立心をもった人間でも、いったん組織に属してしまうと、ブラッガドーチョのようなはねっ返りを除き、その枠内でしか動かなくなってしまう。官僚を批判する側が官僚的になってしまうのは、日本だけではないらしい
保守層を敵に回すことが出資者の意向に沿うのか、マフィアを敵に回す覚悟があるのか、そこまでするほどの意味があるのか、そんな内輪への言い訳を言っている間に、外国のメディアに堂々と暴露されてしまう。この報道途上国あるあるが、物悲しい
もっとも根っこでは、どこのメディアも抱えている普遍的な問題でもあり、一流メディアの報道という触れ込みで、実はそれも情報操作されているという現実もあるわけだが
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『LAコンフィデンシャル』 ジェイムズ・エルロイ

先週は持病の発作を起こして、検査入院。稀勢の里の一番を、病院のテレビから眺めたのであった
照富士は、ずいぶん株を落としたな、おい


LAコンフィデンシャル(上) (文春文庫)
文藝春秋 (2016-05-28)
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LAコンフィデンシャル〈下〉 (文春文庫)
ジェイムズ エルロイ
文藝春秋
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著名な父を持つエクスリーは警察官の世界で出世すべく、監獄の暴力事件「血塗られたクリスマス」をきっかけにロス市警の警部にのしあがる。地方検事候補エリス・ローに可愛がられた彼だったが、娼婦殺しに異様な熱意を燃やすホワイトや芸能界に羽を伸ばすヴィンセンスらベテラン刑事の反感を買ってしまう。しかし謎の虐殺事件「ナイト・アウル」を契機に、宿敵の三人が奇妙に交錯する

ケヴィン・スペイシー、ラッセル・クロウの出世作としての有名な映画の原作小説。LA暗黒街シリーズの中では第三作目である
出世欲と正義感に板ばさみのエド・エクスリー、女殺しを許さない暴力的正義の体現者“バド”・ホワイト、麻薬と芸能界で遊泳するジャック・ヴィキンズの三者の視点で物語は進み、現在扱う事件と別件が絡むところは前作『ビッグ・ノーウェア』と似ているものの、その絡み方はより重層的へ深化している。いい格好しいのエドと暴れん坊刑事のバドが好対照をなして人物の位置関係は分かりやすいものの、ナイトアウル事件が並行して起こる猥褻本事件とつながるのみならず、かつての児童連続殺人事件の真相へもつながってしまうとか、ロサンゼルスという都市空間の歴史と因縁が群像劇として描きだされているのだ
シリーズとしても、前々作から登場の俗物検事エリス・ローに、最凶の悪徳警官ダドリー・スミス史実の大悪党ミッキー・コーエンに負けない存在感を見せており、暗黒街を仕切る彼らがどう関わっていくかも注目である
ねえ、読者のみなさん。あなたがたはこの話をこの誌面ではじめて知ったのだ――この話はオフレコだよ。内緒だ。まさにハッシュ、ハッシュ

主人公の一人、エクスリーの父プレストンは、優秀な警官でありながら実業家に転じて、大成功を治めている
プレストンが携わるのがディズニーランドをモデルにしたテーマパーク『ドリーム・ア・ドリーム・アワー』であり、ウォルト・ディズニーをモデルにしたレイモンド・ディータリングなる人物が登場する
なぜ、わざわざディズニーを別名に置き換えたのか
作中にはなんと、アニメ『ドリーム・ア・ドリーム・アワー』の関係者の間で麻薬が蔓延している描写があるのだ。主人公の一人ヴィンセンスはそれをお目こぼしする代わりに、ロス市警を描いたドラマ『名誉のバッチ』の考証を担当するなど甘い汁を吸ったりとか、芸能界と警察行政の癒着ぶりが本作の背景に取り上げられているのだ
次作の『ホワイトジャズ』には、しれっとした顔でディズニーランドをそのまま出しているようだから、本作の描写がどこまで本当かは分からないが、土地と年代的に充分ありえる話ではある
当然のことながら、レイモンド・ディターリングは劇場版にはいっさい登場していない。某諸悪の根源が生き残ったりと、映画とはずいぶん展開も結末も異なるので、違いを楽しみに読み進もう


次作 『ホワイト・ジャズ』
前作 『ビッグ・ノーウェア』

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『武器製造業者』 A・E・ヴァン・ヴォークト

謎すぎる作者のバランス感覚


武器製造業者【新版】 (創元SF文庫)
A・E・ヴァン・ヴォークト
東京創元社
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“不死人”ヘドロックは、太陽系を統べる「イシャー帝国」とそれに対抗する「武器製造者ギルド(武器店)」の間が深刻化するのを防ぐべく、一人の帝国軍人として潜入していた。双方から裏切りを疑われた彼は姿を消しつつも、恒星間移動できる宇宙船が製造されたことを察知。その宇宙船を乗っ取って、小型宇宙船で外宇宙へ追っ手を逃れたが……

『イシャーの武器店』の時系列的には作品的続編。ただし、製作時期はこちらのほうが早い
『イシャーの武器店』にもでてきた“不死人”ヘドロックが主人公であり、ヒロインは女帝イネルダ。二人との関わりから、イシャー朝と武器店の誕生の秘密が明かされる
展開はこれも前作同様、短編集をまとめた“fixed-up”という手法ではないかと思うほど、ごったがえしている。女帝に死刑を宣告されそうになった直後に、武器店にも同じように処分を受けて逃走。その途中でとある武器店支部に訪れたギル・ニーランに出会って、その弟の行方不明を知ったことから恒星間移動できる宇宙船にたどりつくという忙しさである
そうした活劇を可能にするために、主人公には長い歴史を生き抜いた“不死人”という設定があり、不死身ではないものの過去に開発した秘密兵器を駆使して、ピンチを潜り抜けていく
というふうに、いろいろとぶっとんだ設定と展開が繰り広げられつつ、なんだかんだロマンスに落ちてまとまってしまうという、力技の作品である

これ以上書くといつものようにネタバレになってしまうのだが、書いてしまおう(苦笑)
ヘドロックはとんでもない長命であり、彼はイシャー朝と武器店の創設そのものに関わっている
現存の支配体制を作った、まさにの存在であり、“不死人”であることを隠しながらも、各時代のイシャー朝の女帝たちと関係をもってその血統を維持してきた
彼のデザインした武器店の役割は、国民ひとりひとりが武装する銃社会と、法律を盾に不合理と戦う訴訟社会を目指すもので、そのままアメリカ社会の理想でもある
もっとも、作品内でも理想どおりには進まない。武器店はヘドロックの秘密を明かそうと帝国の支配体制を崩すところにまで突き進んでしまい、ヘドロックはその“神の手”ともいえる科学技術を駆使して、是正せざるを得ない。まさか、巨人を進撃させるとか、たまげたなあ(笑)
冷静に考えると、一人の隠れた神=独裁者によって成り立つ体制であり、エルガイムのアマンダラ・カマンダラを思い出してしまった
ヘドロックのやりたい放題に思えるが、さらに恐るべき能力を持った“蜘蛛族”が彼の首根っこを押さえつけていて、かろうじて作品の均衡が保たれている
“蜘蛛族”はまさに機械仕掛けの神=デウス・エクス・マキナ神の上にさらに神がいて、その神も思い通りにはならないという、外が見えない入れ子構造であり、ぶっとんだ設定をさらなるぶっとんだ設定で帳尻を合わせるという、ほんとうに妙な作品だった


前作 『イシャーの武器店』

関連記事 『重戦機エルガイム』 第1話~第3話
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『アルスラーン戦記14 天鳴雷動』 田中芳樹

相変わらずの文章力


天鳴地動(てんめいちどう) アルスラーン戦記14 (カッパノベルス)
田中 芳樹
光文社
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デヴァマント山から来る魔軍の一団に対して、ナルサスの献策によりアルスラーンはペシャワール城を放棄した。その好餌へラジェンドラ王の率いるシンドゥラの軍勢に、チュルク軍まで侵入、魔軍の介入よりチュルク軍は全滅。復活した魔人イルテリッシュは、魔軍の力に手ごたえを掴み、空からチュルクの首都を強襲するのだった。その一方、ミスル王国を掌握したヒルメスは、ナバタイ王国を迎え撃つべく大河を遡るが、思わぬ伏兵を受ける

漫画化、アニメ化の影響か、前巻より間もなく出版されていた
前巻から引き続き、アルスラーンの主従以外の場所が面白い。イルテリッシュ『魔界転生』の宮本武蔵よろしく、完全に自立化してチュルク王国の征服をはかる。魔人の君主に人間社会が統治可能かと疑うものの、あんがい生前(?)より頭が回るようになっているので、上手く行きそうな勢いである
作者の筆が乗っているのは、ミスルにおけるヒルメスだろうか
4年の時の流れを感じさせないアルスラーン主従に比べ、しっかりと年輪を刻み人間の幅が広がっているし、パルスの他に人はなしという世界観の中で、無警戒の凡夫が実は一世の梟雄だったという意外性もジュブナイル小説からはみ出している
なんとなく積読の山に入っていたが、読んでみるとあっという間に読破できた。余計な描写がなく、簡明で軽快な文章で頭のなかへするすると入ってしまうのである

魔軍はイルテリッシュのおかげか強化された
空飛ぶ猿たちも、空からの攻撃を徹底するようになった。今まで死んだ死人の数だけいるような大軍であり、前巻まで普通のおっさんに応戦できたものが、普通の兵士では苦戦するのだ
幹部クラス(?)の妖怪として人に化ける“鳥面人妖”も加わり、パルス側を大混乱に陥れる。まあ、追い詰められてもいないのに、自ら正体を現すのは謎すぎるが(苦笑)
これまでパルスに人材が集中し過ぎて、人間界に相手となる存在がいなかったところ、蛇王から発せられる超自然の力、妖怪、天変地異によって、調整されたかのようである
ともあれ、作者が予告していたように十六将がまた一人と死んでいく場面は唖然とするほかない。なんでそんなに簡単に殺せるのだろうか
こんな死に方をしては十六将のうちに入らないではないか、と危惧するような有様で、予想どおり地味な人からお亡くなりになっているのだ(苦笑)
人材が集まって死んでいく展開は、当初から『水滸伝』を意識しているだろうけど、それを貫徹する必要はあるのだろうか
最初から予定を決めてしまって、書いていくうちに立ち上がるキャラクターたちを転がしていかない手法は、長編ファンタジーと相性が悪く遅筆を招いている気がする


前巻 『アルスラーン戦記13 蛇神再臨』

関連記事 『魔界転生』
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『ビッグ・ノーウェア』 ジェイムズ・エルロイ

警察が腐敗しずぎの50年代


ビッグ・ノーウェア〈上〉 (文春文庫)
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ビッグ・ノーウェア〈下〉 (文春文庫)
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1950年、1月のロス。若き保安官補アップショーは、遺体が獣に引き裂かれるという異常殺人に出会い、その解決に情熱を注ぐ。その死体解体現場を発見するものの、市警の管轄を不法に入るというミスを犯してしまう。一方、離婚危機を抱える警部補コンシディーンは、義理の息子の親権と名声を手に入れるため、赤狩り作戦に乗りだす。暗黒街の始末屋バズ・ミークスは、金のためにその作戦に組し、アップショーもまた異常殺人の捜査協力を条件に、左翼組織への内偵を試みるが……

『ブラック・ダリア』に続く、LA暗黒街シリーズの二作目である
ときは冷戦が始まって間もない1950年。ハリウッドでは赤狩りの波が何度も押し寄せ、作中ではエキストラと裏方の組合UAESが待遇改善のデモを起こしている。それを潰したい大実業家ハワード・ヒューズ暗黒街の帝王ミッキー・コーエンは傘下のティームスター(全米トラック運転手組合)に対抗のデモを打たせている情勢だ
この赤狩りを潰すためにUAESの弱みを握ろうと、アップショー、コンシディーン、バズ・ミークスがそれぞれ違う動機で誘い込まれる
前半はこの赤狩り作戦とアップショーの追う連続異常殺人が別枠として始まるが、下巻に入ると一気に交わりだし、次々に秘密が噴出して主人公たちを七転八倒させる
そのピンチのなかで、アップショーの正義感が無頼漢バズ・ミークスに乗り移り、冷淡なコンシディーンをも動かすという漢気の連鎖がたまらない
あまりに筋が複雑過ぎて、最後に作中で解説せざる得ないのは、ミステリー小説として不手際(笑)かもしれないが、いろんな意味で濃い名作である

前作がブラックダリア事件を題材としたように、本作でも実在の人物、事件が重要な位置を占める。そこに作品オリジナルのキャラクター、事象が乱入するので、どこまでが事実なのか、素人には判別できない(苦笑)
日本版WIKIにも確認できないスリーピーラグーン事件は、1942年にメキシコ系青年が殺されたことに対して、警察が無関係のメキシコ系移民を多数逮捕した冤罪事件である。背景にはアングロサクソン系白人のメキシコ系移民=バチューコに対する偏見があり、太平洋戦争の開戦で日系移民が収容所に入れられたことにより、よりメキシコ系に差別の対象が移行したという
主人公たちの視点ですら強烈な差別表現が次々に登場し読者を鼻白ませるが、これも50年代の苛烈な時代を再現するため。メキシコ系移民、黒人、同性愛者といったマイノリティがどういう扱いを受けていたか、掛け値なしに映し出されている
役人の出世のために行われる赤狩りに対しては、コンシディーンに「とてつもなく無駄であり、とてつもなく恥ずかしいことだよ」と言わせる。題名である「ビッグ・ノーウェア」=大いなる無とは、この無駄な労力、無駄な犠牲のことを指しているのだろう


次作 『LAコンフィデンシャル』
前作 『ブラック・ダリア』
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『ループ』 鈴木光司

安原顕の解説はスルーしよう


ループ (角川ホラー文庫)
鈴木 光司
角川書店
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科学者の父を持つ二見馨は、10歳のときに重力分布図と長寿村の関係を読み解き、アメリカへの旅を約束した。しかし、その後に父の幸彦が悪性のガンにかかり、約束は果たされないままだった。10年後、馨が医学生になったとき、世界には幸彦がかかったウィルス性のガンが蔓延し、それは樹木や動物にまで冒されていた。気に病む彼は父と同じ病院に息子を入院させている礼子と関係を持つが……

リングシリーズの完結編としては、やや外してしまっただろうか
『リング』『らせん』は、『らせん』内に小説『リング』が登場するように、入れ子構造になっていた。本作と『らせん』も同じように入れ子構造となっている
『らせん』によって『リング』の意味が変わったように、『ループ』によって『らせん』の意味が変わってしまうが、変わり方がどうもよろしくない。あまりにぶっ飛び過ぎて、『リング』の続編である必要がないのだ。関連付けはなされても、前作・前々作を矮小化してしまっている
前々作のホラーから前作はサイエンス・ホラーに化けたが、今回は完全なSF。ガンとの絶望的な戦い、患者とその家族の辛さは執拗に描かれているし、アメリカの砂漠の描写は迫真であるが、シリーズとして意識したときに貞子が出てこないのが寂しい

勢いよくネタバレしてしまおう。『らせん』の世界は、本作の世界にあるスーパーコンピューターに作られた仮想空間『ループ』である!
前作までの話を読んでいると、ガンのウィルスがリング・ウィルスであることはすぐ分かるし、仮想空間で人工生命の研究がなされていたこととつなげると、わりあい連想しやすい
小説としても、これほど巨大なプロジェクトで予算が割かれて、かつ関係者が不審な死を遂げているのに、日米の国家機関がまったく為す術がないというのが不思議で、エリオットが行った非人道的な実験をどこにも漏れていないというのも解せない
作者が書きたいこと以外を簡略化し過ぎていて、終盤に近づくごとにリアリティが落ちていくのは残念だった
主人公の自己犠牲的なラストも、「正攻法だと時間が足りないから」というも切ない。殺す気まんまんじゃないすか

と、ネチネチ書いてしまったが、読後感は悪くない。作者の文章力が力強く、すがすがしい気分にさせられるのである。すごい腕力だ


前作 『らせん』




ドリームキャストで発売された『リング』というゲーム
一見、クソゲーだが、じつは『ループ』の設定が生かされたシリーズを総括する内容でもあったらしい
まあ、やりたいかというと……
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