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【PS配信】『聖の青春』

連休は引きこもりか


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1994年、大阪。羽生善治(=東出昌大)が名人を奪取し、五冠を達成する中、七段になったばかりの村山聖(=松山ケンイチ)は、東京行きを決断する。羽生をはじめとする同世代の強豪が、関東に固まっていたからだ。持病のネフローゼといった体調管理が心配されたが、師匠の森信雄(リリー・フランキー)にも賛成し、将棋連盟の職員・橋口(=筒井道隆)がその面倒をみることに

原作小説を読んだが、映画のほうを見そびれていたので。上手いこと、連休中に100円セールとなっていた
小説では谷川浩司に憧れてプロを目指すが、映画では羽生善治との関係に焦点が当てられる。羽生が名人となったことから、自然と村山の目標となり、それに追いつくために東京へ
七冠達成から、畠田理恵との結婚(!)まで、村山が欲しいものを全て持っている存在として描かれる
が、盤上で一戦交えてしまえば、そんなことは関係ない
村山が羽生に勝った夜に、村山が羽生を居酒屋に誘った場面が白眉で、趣味はまったく合わねど「負けることが死にたくなるほど悔しい」という一念は共通していた。美しい対局風景と、この天才同士の交感が素晴らしい
とすると、ラストで村山の死に師匠に先立って羽生が訪れたという場面を、話だけで割愛されたのが画竜点睛を欠くような

病気との闘いとなると、悲惨さが先立って暗いイメージを持ちがちだが、それを補って余りあるのが、村山の愛されるキャラクター
少女漫画が好きで、それが原因で自身の七段昇進の祝勝会を遅刻。師匠を「将棋は三流」とあいさつする(爆
「牛丼は吉野家、シュークリームは…」のこだわりもテンドンとなって笑いを誘い、松山ケンイチの徹底した役作りをあいまって、村山が蘇ったようだ(NHKでしか見たことないけど)
リリー・フランキー演じる師匠・森信雄も口癖の「冴えんな~」と瓢とした雰囲気をかもしだし、話題になった東出昌大の羽生には細かい仕草にこだわりを感じた
勝負の世界の厳しさとそこで生きる住人の人懐っこさが美しく、令和最初に見られてよかった


原作小説 『聖の青春』

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【PS配信】『日本のいちばん長い日』(2015年版)

史実再現度は高い


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1945年4月、小磯内閣の退陣を受けて、鈴木貫太郎(=山崎務)は、77歳にして内閣総理大臣の大命を受ける。「軍人が政治に関与すべきでない」という信念から固辞し続けたが、昭和天皇(=本木雅弘)のたっての願いだった。鈴木は同じ時期に侍従武官を務めた阿南惟幾(=役所広司)を陸相に指名し、時局の収拾に当たろうとするが……

『関ケ原』の原田眞人監督による日本終戦のドラマ
1967年版と同様に半藤一利を原作に据えながらも、その構成は1945年4月の鈴木内閣の組閣から始まるように、いわゆるリメイクではない
岡本喜八作品では宮城事件に焦点があてられていたが、本作では鈴木貫太郎と阿南惟幾の絆を軸に、近年公表された『昭和天皇実録』などの逸話を織り交ぜて、身内の軍人や国民に本土決戦を訴えつつ、裏で終戦の準備をせねばならない葛藤が主題となっているのだ

数か月の過程が描かれる分、本土決戦の計画を練り続けて腰を折られた畑中少佐(=松坂桃李)青年将校たちの焦燥と狂奔にリアリティが与えられている
その一方で、取り上げられる期間が長いわりに1967年版より短い20分尺が短いためか、細かいエピソードを取り上げては切り刻むようなカットで次に移ってしまうという、『関ケ原』でも見られたせわしなさ残念だった
これでは分かる人だけが分かる内容となっているし、見せたいドラマが圧迫されてしまう
とはいえ、3時間近い作品はいまどき作れるわけもないし、日本の映画興行の現状を考えると、大作映画として最善が尽くされた作品といえるのかもしれない


関連記事 【映画】『関ケ原』

日本のいちばん長い日 Blu-ray
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【DVD】『仁義なき戦い 広島死闘編』

あれが千葉真一だったとは


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昭和25年、山中正治(=北大路欣也)は賭場で暴れ回り刑務所に入ったが、そこで広能昌三(=菅原文太)と知り合う。出所した山中は、上原靖子(=梶芽衣子)の店で大友組の者と揉めて、村岡組の組長・村岡常夫(=名和宏)と杯を交わす。やがて靖子に惚れて関係を持つ山中だったが、彼女は特攻隊員の未亡人という立場で正式には結婚できない。その微妙な関係に目をつけた村岡組長は、組のヒットマンとして山中を動かしていく……

『仁義なき戦い』のシリーズ第二作
主要な戦場は呉から、広島市へと移る。前作の主人公、広能昌三は抗争に脇から巻き込まれる狂言回しであり、主役は「殺人鬼」の異名をとったヒットマンがモデルの山中正治と、小勢ながら広島を恐怖に陥れた博徒大友組の大友勝利(=千葉真一)である
老獪な村岡組長に転がされる山中と対照的に、グラサンにパンチパーマと派手派手に飾る大友は、親も大勢力も警察も恐れない狂犬。その一党は西部劇に登場しそうな愚連隊であり、野望と欲望のままに突き進んでいく
これが現実におこった抗争をモデルにしているというのだから、驚きである

ヤクザの源流は博打系とテキヤ系に分かれるが、作中では村岡組が博打大友組がテキヤで住み分けていた
村岡組は組長を競輪場の理事とし、その警備の利権を得たことで力を増し、蜜月だった大友組との格差が拡大。実の親に絶縁された大友勝利は、時盛勘市(=遠藤辰夫)の跡目を引き継ぐことで賭博大友組を結成して、博打のシマを持つことで、村岡組と競合関係になった
これが抗争の引き金となるが、昭和も30年に入り闇市が姿を消していくと、警察権力が整ってヤクザの力を借りる必要がなくなり、厳しい取り締まりが始まる
無期懲役から脱走した山中に村岡組長も、以前にはない追求を受けてしまうのであった
物語のラストは、前作のテンドンのようにお葬式。祭壇の近くで開かれる賭場で、山守組長(=金子信雄)が広能に聞こえるように、山中を孝行息子と褒め称える
『仁義なき戦い』シリーズは子殺しの物語なのだ


前作 【DVD】『仁義なき戦い』
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【DVD】『仁義なき戦い』

ユーチューバーはやめえ、言うたやろ


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昭和20年代の広島・呉。終戦まもない混乱のなか、進駐軍とそのMP、警察、ヤクザが入り乱れる闇市で、若者たちは愚連隊を組んで身を守るしかなかった。日本刀で暴れる酔漢を射殺してしまった広能昌三(=菅原文太)は、刑務所に入りそこで土居組若頭・若杉寛(=梅宮辰夫)と兄弟杯を交わす。出所には山守組の組長・山守義雄(=金子信雄)の出迎えを受け、同じく山守組に入った坂井哲也(=松方弘樹)と組の問題の解決に乗り出すが……

アニメ『ポプテピピック』の影響で見直してしまった。同じことを考える御仁が多いのか、レンタルがなかなか借りれない(苦笑)
改めて見て驚くのは、昭和22年の闇市時代から、昭和29年の坂井の死までの七年間がたった1時間39分に凝縮されていることである
冒頭の闇市の喧騒から、主要人物にでかいテロップが入って情報量が多すぎて頭に入んないんじゃないかと心配されたが、その後はほどよいテンポで流れ、人間関係を見せられるので、まったく混乱しなかった
管理人はキャストと一部の名シーンしか覚えていなかったので、改めてインプットし直していく必要があったのだが、自然と頭にはいったのだ

中年のおっさんになって気づくのは、山守組長の狸ぶり。最初から金儲けしか興味がなく、極道のくせに喧嘩に弱い泣き虫なのだが、保身の才能だけはある
困ったことが起こると、力のある他人同士をぶつけて消耗させ、自分の優位を残そうとする。組が大きくなると、自分の子分同士を対立させてまで、利益を追い求める
そうした‟親”に広野も坂井も嫌気が差していて、その影響力から逃れようと坂井は山守組からの独立を策す。しかし、極道の世界の節度なのか、‟親殺し”までには至らず、逆に……
‟親殺し”のタブーに守られた長老たちが若い世代を利用するという構図は、鮮烈な世代交代を遂げる『ゴッドファーザー』とは対照的である


次作 【DVD】『仁義なき戦い 広島死闘編』
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【PS配信】『ヒミズ』

ヒミズとは、モグラの一種。浅い地中に住み、夜は地表を歩くこともあることから、日を見ない=「日見ず」と名付けられた


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震災から復興しつつある福島。大きな池で母親(=渡辺真起子)とボートハウスを営む住田祐一(=染谷将太)は、ただただ‟普通の人生”を望む変わった少年だった。しかし、借金を背負った父親(=光石研)と貸したヤクザに暴行され、ある日父親を殺してしまう。住田に片思いの茶沢景子(=二階堂ふみ)の心配をよそに、住田は包丁を片手に‟悪党”を探して街を彷徨する

この監督らしい(?)壮絶な作品だった
製作準備中に東北の震災があり、舞台が被災地に変更されていて、住田の友達が原作の同級生ではなく、家を失ってホームレス化した被災者となっている。住田と茶沢の家庭は崩壊しているが、そこに震災が加味されて親が子に「死んでほしい」という異様な状況を少し視聴者の側へ引き寄せられている
本来の作品のテーマは「普通に生きたい」と願ってそう生きられなくなった少年が、「せめて世の中の役に立って死にたい」と包丁を持って街をうろつくという彷徨える良心、正義。修羅場にかかるテレビで宮台真司氏が出演したのも、これが本題ゆえだろう
こうした重たい作品ながら、一点に陽気を背負うのが二階堂ふみ演じる茶沢さんの存在だ。到底、中学生とは思えない豊満な肉体と色気なのだが(笑)、彼女が動き回るだけで雰囲気が一変するのである。改めて、すごい女優さんだと思った
茶沢さんの死を望む両親がわざわざ苦労して赤い絞首台を作るとか、彼女におよそ中学生らしからぬ長台詞を吐かせるとか(Vガンのウッソかよ!)、演劇的な要素が目立つものの、長い尺が気にならない名作である

住田は父親を殺したことから「普通の人生」に戻れないとして、この先は「おまけ人生」と称し、せめて世の中の役に立とうと‟殺していいクズ”を探して街へ出る
が、実際に街には殺してよさそうな悪党にはなかなか出会えない
最初は親父の借金を取り立てた闇金融を尋ねるが、借金はすでにホームレスの夜野によって返済されていた。自分の計画をダメにした夜野に対して、住田はキレて絶交する
次は罪のない人を襲う通り魔を殺そうとするが、通り魔事件を防げただけで‟ただのいい人”に終わってしまう。そして、クズだと思った通り魔が、実は自分と同じく「何をやっていいか分からず、彷徨っている人間」だと気づいてしまう
同じような通り魔になるには、彼のプライドが許さない。結局彼は回り回って、ボートハウスへ帰ってくる
彼を自殺の衝動から救ったのは、ストーキングともいえる茶沢さんの愛。しかしこれ、裏を返すと、彼女ぐらい強く引き留める人間がいないと「普通の人生」に引き返せないということでもある
ホームレスのおっちゃんたちとの温かい宴会はともかく、彷徨える男たちがそうそう、そんな存在に出会えるはずもなく、希望あるラストの裏に絶望も感じてしまった


終わりなき日常を生きろ―オウム完全克服マニュアル (ちくま文庫)
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【DVD】『花と蛇』

年の瀬に何を観ているのかという(笑)


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政財界に隠然とした力を持つフィクサー・田所(=石橋蓮司)は、95歳になりながらもある美女にくぎ付けとなる。その美女は世界的なタンゴダンサーの遠山静子(=杉本彩)であり、若手実業家・遠山隆義(=野村宏伸)の令夫人だった。田所を親父と慕う組長・森田鉄造(=遠藤憲一)は、隆義の弱みを握って静子を田所へ差し出すように要求。謎の仮面舞踏会へと夫婦で参加するのだった

ジャンルはSMポルノだけど、それを越えた独特の世界が広がっていた
団鬼六の原作小説とは設定が異なるようで(管理人はちょっと触り読みしたのみだが)、静子は老体の田所を楽しませるために、閉鎖された会員制の会場へと連れ去られて淫靡なショーの主役にさせられる
冒頭から‟夢”や針治療という形で、あられもない恰好で登場し、メインのSMショーまでに夫との濡れ場など杉本彩のお色気シーンは文字通りの満載。静子のボディガード・野島京子(=日向)までが連れ去られての責め苦はもうエグくえろい
静子が観念した後は、着物に縄で縛るなどSMの伝統的な様式美、団鬼六の世界が展開されて、田所ならずとも「美しい」のだ

原作がどう展開されたかは読み切っていないのだが、映画では単なるポルノを越えた展開が待っている
静子は夫の借金のため、田所の意図どおりにショーに協力する。が、心の中までは屈服しない
むしろ、ショーの主役を務めきることで男たちを転がし、最後には復讐まで遂げてしまう。そしてよりを戻すと思いきや、あの結末!!
静子は主体的に新しく知ってしまった世界へと踏み込んで生きていくのだ。男たちの手にのって転がされたように見えて、男たちこそが転がされていき、女がその世界の主人となる。この逆転劇がこの作品の魅力なのである


関連記事 『ロマンポルノの時代』

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【映画】『関ヶ原』

島津義弘「ワシの突貫はカット。訴訟」


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1595年、朝鮮の役が終わらぬうちに豊臣政権に激震が走る。秀吉(=滝藤賢一)が甥の秀次を謀反の罪で粛清したのだ。石田三成(=岡田准一)は三条河原において、連座した親族の処刑を執行していたが、一族に仕えていた忍びの娘・初芽(=有村架純)が暴れて騒動になる。石田屋敷に連れ帰った三成へ初芽は、短刀を首にあてるが、三成の愚直な性格にほれ込み「犬」として仕えることとなる。戦乱の空気が高まるなか、自らの半分の知行で島左近(=平岳大)を召し抱えて備えるが……

司馬遼太郎の歴史小説『関ケ原』の映画化である
かつて7時間の正月大河ドラマとなったほどの濃い題材であり、それが映画では二時間半ほどとなっている。原作どおり石田三成を主人公としつつも、カットが細かく切られ過ぎて、特に序盤は忙しい内容となっていた
それゆえ関ケ原前後の史実を知らないと理解しにくいかもしれない。尺の都合でシーンがカットされているのではなく、限られた時間に情報を詰めるために役者が早台詞を強いられていて、その映像や演技の質を減殺しているのが少し残念だった
が、今のNHK大河ドラマでは失われた重厚な空気に、多くのエキストラが動員された大合戦シーンは映画でしか見られない迫力があり、得難いものである

原作も西軍側に立って、徳川家康(=役所広司)と江戸幕府の政治をボロカスと毀誉褒貶がはっきりしていたが、基調としては「政治の世界に正義などというはっきりしたものはない」という大人の良識があった
映画でも融通の利かない三成を島左近がたしなめる場面はなんどもあったが、視聴者に政治の現実を突きつけるところはなく、「これが義だ」といって三成は死んでいく
三成の「義」は、自分を引き立ててくれた豊臣秀吉の遺児を守り天下人の地位を継がせることであり、豊臣家に対する御家意識である。「大一大万大吉」の精神は、まともな為政者なら持っている特別なものではないだろう
小早川秀秋(=東出昌大)が泣いて謝る「義」が視聴者にピンとこず、三成の死を「太閤殿下への良き手向けとなった」と官兵衛が総括した原作には達していないのだ
ともあれ繰り返しになるが、時代劇ファンをくすぐる重厚なドラマ大規模な合戦シーンは秀逸で、金を払って損はない大作映画である


原作小説 『関ヶ原』 上巻
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【DVD】『野獣死すべし』(1980年版)

忘年会後に風邪をひき、さらに寝てるうちに舌を噛んで流血という、多難
年末の予定が完全に狂ったわ


野獣死すべし 角川映画 THE BEST [DVD]
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都内で岡田警部補(=青木義郎)が刺殺されて、拳銃が奪われる事案が発生。その銃は警部補が関係するカジノバーの襲撃に使用された。犯人は元通信社で、今は翻訳を手がけながら、クラシックが趣味として悠々自適の生活を送る伊達邦彦(=松田優作)。伊達は次の標的に東洋銀行を定めるが、単独行動では成功は期しがたいと、荒々しい真田敏夫(=鹿賀丈史)を抱き込む。その伊達の後を、捜査一課の柏木(=室田日出男)が追いかける

『蘇る金狼』同じ作家の原作、同じ監督ながら、また一風変わった作品だった
題名にわりに、まず主役の伊達が“野獣”らしくない東大出の高学歴でクラシックが趣味、文学的教養もあると多趣味であり、表面的には現代人的頭でっかちである
元通信社での紛争地の経験と、学生時代に射撃部に属した銃の腕という背景はあるものの、ところどころでインテリ的な知識ひけらかしがあって、あくまで人に飼い馴らされない意味での“野獣”
むしろ、所構わず人を殴る真田のほうが野獣に相応しく、伊達も彼とつるみ、洗脳する過程で自らも本性に目覚めていく
映画の出来としては、展開のスムーズよりは俳優たちの見せ場重視で構成されており、優作の一人芝居は観ているだけで面白い。前野耀子が閉店したクラブで歌うなど、ちょい役でも豪華な場面が多い
頭を動かすよりも、気持ちのままノッて観る作品だ

詳しくしゃべると、ネタバレになってしまうのだが仕方ないと開き直ろう
伊達の“野獣”は、紛争地の経験から生まれた。紛争地の虐殺現場からこの世の真理を感じ取ってしまい、平和な暮らしが嘘としか思えなくなってしまった
ゆえに日本にいても、世の真実である修羅場を求めてしまい、自ら事件を起こしてしまう。一種の精神病なのである
一般の動物は自らが生きるともに、子孫を残そうとあくせくしているのだから、管理人は女を躊躇なく殺す伊達が“野獣”だと認めがたい(笑)
真田にその彼女(=根岸季衣)を殺させようとするところ、伊達にとっての“野獣”とは、「男だけの世界」なのだ
ラストシーンは映画史に残る謎エンドらしいが、あれだけ人を殺して無事に戻れるなんてありえないという、物語の力学が働いたように思える。あそこまでやって死ななきゃ、ただの悪人に終わってしまうだろう


関連記事 【DVD】『蘇る金狼』

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【DVD】『蘇る金狼』

今のドラマには、セックスとバイオレンスが足りない


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東亜油脂で働く平社員・朝倉哲也(=松田優作)には、裏の顔があった。プロ顔負けにまでボクシングで肉体を鍛え上げ、白バイ警官に扮して一億円を強奪。それを麻薬に変えるため、薬の売人であるヤクザや黒幕の市会議員までのしてしまう一匹狼の悪漢! 上司の経理部長(=成田美樹夫)愛人・京子(=風吹ジュン)を寝取り麻薬でたらしこみ、会社を巻き込む大汚職事件を嗅ぎつける

かなり乱暴な映画であった(苦笑)
冒頭から凄い。いきなり一億円を強奪して、そのトランクを会社に持ち込んで悠々と仕事をしているのである。見え見えのズラと、いかにもな大ぶちの眼鏡が、あまりに松田優作と不似合いで大笑いしてしまった
このヘボい扮装をした主人公が夜には好き放題に大暴れするので、只野係長が暗黒化したような感じなのだが、実際に漫画のほうでそういう影響を受けているのかもしれない。ちなみに原作小説には、ヘボく見せかける設定はなかったそうだ
作品としてはエピソードの繋ぎ方がかなり雑である。強奪した一億円のナンバーを控えられたから、麻薬に変えようというのだが、あまりに手法が乱暴で派手過ぎる。ボクサーとしての背景はあるにしても、ランボー顔負けの立ち回りはないだろうに(笑)。すべては松田優作だから許されるバランスである
リアリズムより鬱屈した会社員の願望を優先していて、山場で東亜油脂の経営陣を脅しつける場面にそれが象徴されている気がした

しかし、タイトルの『蘇る金狼』とはなんなのだろう
東京オリンピック直前の高度成長期で、社内の主人公のように人間が組織に飼い馴らされていく時代に、飼い馴らされない狼のようにということなのだろう
中盤以降、朝倉は表の世界で権力の階段を登ろうとする
会社の大株主となって社長の娘と婚約、ランボルギーニで朝の路上のど真ん中を走り抜ける。仮面のついた椅子に口づけする場面は、下克上を達成したと同時に体制に取り込まれることを意味していて、それは狼でなくなることでもあった
アウトローの世界に置いて行かれると思った女に刺されるラストは、整えられた社会では狼が存在しえないことを物語っているようだ。もっとも、男も狼に戻ろうと、海外への高飛びを考えていたのだが……
構成が残念で映画の出来としてはイマイチなのだが、風吹ジュンの、今では信じられないほど濃厚な濡れ場とか、役者さん的には非常に見所の多い作品だった


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【映画】『シン・ゴジラ』

落し物を受け取るついでに、観にいった。ネタバレ気味なので、観にいく予定の人はご注意を


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東京湾に一隻の漂流船があった。海上保安庁の船が調査したところ、遺書ともとれる書類と靴が並べられていたが、そこに水蒸気の噴射が隊員たちを襲う。東京湾で起きた異常現象に内閣官房副長官・矢口蘭堂(=長谷川博己)は、ネットの動画からUMO(未確認生物)の可能性を口にするが、会議では一笑に付される。しかし、巨大な尻尾がテレビ映像に流れるや、空気は一変。蘭堂は内閣総理大臣補佐官・赤坂秀樹(=竹野内豊)と連携し、巨大不明生物特設災害対策本部を立ち上げる

でこぼこしているものの、いい特撮映画だった
謎の怪物ゴジラに対して、日本人が存亡を賭けて立ち向かう内容であり、名高い初代への原点回帰といえる。主役は文句なしにゴジラで、この一作のなかで何段階も進化を遂げ、“新ゴジラ”に相応しい様々な驚異を見せてくれた
対する人間側は、政府要人、官僚、自衛隊といった上層部に焦点が当たっていて、前半は彼らの想定外の事態に対する形式的な対応、報告の繰りかえしに終始してしまって、主人公格の蘭堂はそうした群像の一人に隠れてしまうほど
しかし中盤以降、ゴジラが首都中枢への脅威となることで、蘭堂ら対策本部のチームが直接の被害者となり、ようやくギアが入る。アメリカが破局的な解決法を決めたことで、蘭堂たちが東京の、日本の命運を背負うこととなるのだ
最後の作戦に向けての、蘭堂の訓示は役者さんの演技もあってまさに迫真である

膨大な情報を2時間以内に収めるためか、ひとつひとつの場面が小さく刻まれ過ぎて、その消化に視聴者はけっこうな負担を強いられる。特に対策本部の尾頭ヒロミは短い尺の長台詞が多く、市川実日子の中の人も大変である(てっきり田畑智子だと思ってました)
監督が監督だけあってか、普通の民間人の視点が綺麗に欠けていて、前半は特に他人事のような距離感がある。ニコニコ動画やツイッターを通して把握するようなリアルさがある反面、蘭堂が守るとする「国民」の姿が見えないという難点もある
途中でアメリカの特命大使として石原さとみが出てきて、邦画特撮の伝統的な緩さ(!)を見せつつも、特に恋愛要素もなく終わるとか、自分の不得意な部分は徹底的にそぎ落としていくという潔さは、良くも悪くも監督の個性を感じさせる
第一形態の使徒のような暴れ方、ゴジラの背中から出る驚きの対空ビーム、切り裂かれる高層ビルに、張り飛ばされる電車と、映像的な見所満載であり、その点では劇場でこそ観るべき作品である
ラストには、ゴジラの尻尾に絡み合った異形の姿もあって、作品内で単性生殖の可能性に触れられるなど続編への伏線がたっぷり。このテンションで新エヴァも完結させて欲しいものだ


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