コメディ、映画、メジャーリーグ、音楽、文学と様々なジャンルで、「わが道をいく」23人の異端児の物語
タイトルに「スタンド・アローン」となっているが、ただ“自立”しているというだけではない。自分の世界を作り、自分にしか従わない、そんな孤高の狼たちの物語なのだ
23人のラインナップも知る人知る人物たちで、一般受けするメジャーな人はあまりいない。あえていえば、『ティファニーで朝食を』の作家トルーマン・カポーティ、映画監督エリア・カザン、『ロッキー』の由来(モデルではない)となったプロボクサー、ロッキー・マルシアーノぐらいだろうか
あの時代にこんな男たちが生きていたのか。そんな驚きに満ちた23篇の人物評、エッセイなのである
国籍でいうとアメリカの人が多く、ヨーロッパはだいたい映画人なので、なんだかんだアメリカに絡んでくる
とりあえず、23人の名を書いてしまおう
W・C・フィールズ(チャップリン、キートンと並ぶ三大喜劇人)
ブランチ・リッチー(ブルックリン・ドジャーズの名会長、黒人メジャーリーガーのジャッキー・ロビンソンを採用)
リング・ラードナー(スポーツ記事の地位向上を促したスポーツライター・作家)
B・トレヴン(映画『黄金』の原作小説を書いた謎の作家。その正体は……)
ハリー・クロスビー(1920年代ジャズエイジの詩人。31歳で心中自殺)
ノエル・カワード(同じくジャズエイジのイギリスで活躍し、アカデミー脚本賞ももらった華麗なる作家)
フランク・キャプラ(ロードムービーの元祖『或る夜の出来事』の監督)
ジョージ・ラフト(マフィアとの交際を隠さない名脇役)
マイク・トッド(超大作『八十日間世界一周』を実現した“山師”プロデューサー)
エリア・カザン(マイノリティを題材にしながら、“赤狩り”で仲間を売った名監督)
マルカム・ラウリー(メキシコで名作『火山のもとで』を書き上げた作家)
ピーター・フィンチ(『日曜日は別れの時』で同性愛役を演じた俳優)
ロバート・ミッチェム(アカデミー賞に喧嘩を売り続けた“バッドボーイ“俳優)
ジャック・ケルアック(ヒッピーの聖典『路上』を書き上げた“ピート”作家)
トルーマン・カポーティ(『冷血』でノンフィクション・ノベルを確立した上流作家)
ゴア・ヴィダル(性転換した女優志望者を描いた『マイラ』を描きつつ、自称“貴族”作家)
サム・ペキンパー(『ワイルドパンチ』などで知られる妥協知らずの“ハリウッドのアウトロー”)
ロッキー・マルシアーノ(49戦49勝!イタリア系のヘビー級絶対王者)
ミッキー・マントル(全盛期のヤンキースを支えたオクラハマ出身の朴訥な強打者)
バディー・ホリー(プレスリーと同時代のメガネの元祖ロッカー)
エリック・バードン(黒人のR&Bに学んだアニマルズのボーカル)
ピエロ・パエロ・バゾリーニ(最底辺の血と暴力にこだわったイタリアの映画監督)
R・W・ファスビンダー(バイセクシャルでパートナーたちや自分すら追い込んだドイツの映画監督)
誰もが個性的過ぎて、何か共通点があるわけではない。あえていえば、家庭人としてまともなのが、ほとんどいないぐらいか。でもそれは、海外の有名人なら不思議なことでもない
自分の思うままに破滅へ突き進んで夭折した人もいれば、体制に順応しながら“王様”であり続けた人もいる。一つ言えるのは、とにかく自分を曲げないということだろう
著者のあとがきに小津安二郎の言葉が引用されていて、「自分の生活条件として、なんでもないことは流行に従う、重大なことは道徳に従う、芸術のことは自分に従う」。これを120%実行してしまったのが、彼らではないだろうか
ここに書かれていることは、WIKIPEDIAでも記述されていないことばかり。解説の鹿島茂氏はどこかのゴシップ誌までかき集めたのでは言っているが(苦笑)、知られざる噂を含めて、逆立ちしても真似できない人間模様が面白い