『ループ』 鈴木光司

安原顕の解説はスルーしよう


ループ (角川ホラー文庫)
鈴木 光司
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科学者の父を持つ二見馨は、10歳のときに重力分布図と長寿村の関係を読み解き、アメリカへの旅を約束した。しかし、その後に父の幸彦が悪性のガンにかかり、約束は果たされないままだった。10年後、馨が医学生になったとき、世界には幸彦がかかったウィルス性のガンが蔓延し、それは樹木や動物にまで冒されていた。気に病む彼は父と同じ病院に息子を入院させている礼子と関係を持つが……

リングシリーズの完結編としては、やや外してしまっただろうか
『リング』『らせん』は、『らせん』内に小説『リング』が登場するように、入れ子構造になっていた。本作と『らせん』も同じように入れ子構造となっている
『らせん』によって『リング』の意味が変わったように、『ループ』によって『らせん』の意味が変わってしまうが、変わり方がどうもよろしくない。あまりにぶっ飛び過ぎて、『リング』の続編である必要がないのだ。関連付けはなされても、前作・前々作を矮小化してしまっている
前々作のホラーから前作はサイエンス・ホラーに化けたが、今回は完全なSF。ガンとの絶望的な戦い、患者とその家族の辛さは執拗に描かれているし、アメリカの砂漠の描写は迫真であるが、シリーズとして意識したときに貞子が出てこないのが寂しい

勢いよくネタバレしてしまおう。『らせん』の世界は、本作の世界にあるスーパーコンピューターに作られた仮想空間『ループ』である!
前作までの話を読んでいると、ガンのウィルスがリング・ウィルスであることはすぐ分かるし、仮想空間で人工生命の研究がなされていたこととつなげると、わりあい連想しやすい
小説としても、これほど巨大なプロジェクトで予算が割かれて、かつ関係者が不審な死を遂げているのに、日米の国家機関がまったく為す術がないというのが不思議で、エリオットが行った非人道的な実験をどこにも漏れていないというのも解せない
作者が書きたいこと以外を簡略化し過ぎていて、終盤に近づくごとにリアリティが落ちていくのは残念だった
主人公の自己犠牲的なラストも、「正攻法だと時間が足りないから」というも切ない。殺す気まんまんじゃないすか

と、ネチネチ書いてしまったが、読後感は悪くない。作者の文章力が力強く、すがすがしい気分にさせられるのである。すごい腕力だ


前作 『らせん』




ドリームキャストで発売された『リング』というゲーム
一見、クソゲーだが、じつは『ループ』の設定が生かされたシリーズを総括する内容でもあったらしい
まあ、やりたいかというと……
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『らせん』 鈴木光司

『らせん』の映画は小説に近かったかと


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幼い息子を亡くした監察医・安藤満男は、かつて大学で同窓だった高山竜司の遺体を検視解剖した。高山の遺体の内部からは謎の暗号が現われ、安藤はそれが「RING」であると解き明かす。一方、高山の恋人でその遺稿をまとめていた高野舞は、謎のビデオテープを見たあとに消息を絶ってしまう。舞の美貌に惹かれていた安藤は、彼女のマンションを探るうちに、ただならぬ気配を感じるのだった

いわずとしれた『リング』の続編
映画では『リング』と『らせん』が同時上映されていたが、小説は1995年の出版『リング』から4年の間隔が空いている
作者が4年かけた続編だけあって、前作の世界観を大きく膨らませる大作へ変貌していた。ロッグキャビンと一本のビデオテープから始まったホラーが、世界の存亡を賭けたSFになるなど、誰が想像するだろうか
『らせん』からがSFとしての本編であり、『リング』はいわばその前日譚……というか、読み終わった後にはその『リング』こそが、『らせん』作中に出てくる小説になってしまって、その結果……(以下略)。続編によって前作の立ち位置が変わるのは、アゴタ・クリストフの『悪童日記』の三部作を思い出す
本作の貞子は映画のようなモンスターではなく、科学現象で生まれた突然変異に過ぎず、憎むべき存在になりえないことも作品を薄気味悪いものにしている

しかし、ホラーでなくなったかというと、まったくそうではない
ありふれた都市の光景の中から、ふとしたことで感じてしまう違和感や見えないものへの怯えを拾い上げていて、それが読者の日常に重なっていくのだ
そして、それに人類社会そのものを揺さぶる“サイエンスホラー”が加わっていく
安藤の同僚である宮下がやけにオカルトへ傾倒するとか、前作にも見られたご都合はある(苦笑)。普通なら「ばかじゃねーの」とオカルト的発想を止めにかかる人が出てくるものだろう
が、読者の視点に近い生活感と、DNAと遺伝子の関係から生物誕生の謎にまで行きつく薀蓄の積み重ねが、香ばしくぶっとんだフィクションを厚く包みこんでいる。読者にやぼな突っ込みをさせない強固な作品世界を作り上げているのだ
ラストにとる主人公に迫られる選択とその決断も、“サイエンスホラー”に相応しい迫力と後味の悪さ


次作 『ループ』
前作 『リング』

関連記事 『悪童日記』

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『リング』 鈴木光司

オチはSFと聞いて


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4人の少年少女が同日同時刻に変死した。雑誌記者・淺川和行は姪の早すぎる死に不審を持ち、オカルトに一家言持つ教授・高山竜司に連絡を取り、彼らが夏休みに出かけた南箱根のロッグキャビンへと行く。そこにはただ、一本のビデオテープがあったのみ。しかし、そこにモノクロで映されていたのは、火山の噴火、謎の老婆、肩をかまれた男、……そして井戸。呪いを回避する“おまじない”を探すため、山村貞子を探す旅が始まる

映画のイメージとは、かなり違った
映画の貞子はビデオテープを観た人間を殺し尽くしてしまうモンスターとして扱われていて、管理人も今まで観た映画のなかで一番ビビったものだ
小説にはそうした等身大の怖さがない。主人公の淺川が客観的にはキョーレツな妄想癖の持ち主としか思えず、読者は同調できるキャラクターではないからだ。4人の変死という事実があっても、半信半疑にならざる得ないのが普通の人間ではないだろうか
強気な高山とは本当にいいコンビであり、シリアスなホラーというよりはどこか香ばしい雰囲気があって、単純なホラーではなくビデオテープから山村貞子を追いかけるミステリーというに相応しい

単純に驚いたのは、もう25年も前の作品だということだ
VHSテープに、不幸の手紙ネタ、公衆電話と今では懐かしいものがゴロゴロとしていて、リゾート地のにぎわいはバブルの名残を思わせる
家族思いの淺川に、ノリの軽い割りに純情な高山と、男性像にも昭和の匂いが強い
小説では山村貞子の生い立ちが詳しく語られていて、彼女がなぜビデオテープを作り出したかも理詰めで説明してくれる。名状しがたい恐怖ではなく、分かった上でどうにもならない恐怖なのである
映画『らせん』を観たときには、映画『リング』との調子の違いにとまどったが、小説『リング』からならあの設定にも納得。このシリーズは『パラサイト・イヴ』と同様の、サイエンス・ホラーだったのだ


次作 『らせん』

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