『由伸・巨人と金本・阪神 崩壊の内幕』 野村克也

こんなタイトルだが、巨人の監督には松井秀喜を推す


由伸・巨人と金本・阪神 崩壊の内幕 (宝島社新書)
野村 克也
宝島社
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広島独走の原因は、頭を使わない野球にあり。外野出身の監督が増えたプロ野球界への警告
2016年8月が初出で、本書は同年における金本阪神と高橋巨人の低迷の原因を分析することから始まる
阪神に関しては、虎番記者に代表される関西マスコミが癌とするなど、『阪神タイガース暗黒時代再び』とかぶる内容が多いものの、自らと同じ外様からの就任ということで、金本監督へは改善を期待した批判がなされている
巨人の高橋監督には、なぜ監督にしたか分からないと手厳しい。12年間の長期政権ながら、これという後継者を育てられなかった原辰徳前監督が俎上に上る
話はノムさんの好き勝手に飛び、話題は巨人阪神にとどまらない。東映フライヤーズの殺人的なホーム突入、サインを覗いた者勝ちといった昔の野球から、最後の方には監督でチームが変わる時代ではない」という衝撃のボヤキが待っている(苦笑)

本書で展開されるのは、「外野手監督に名将なし」の持論。ノムさんの野球観は、捕手>内野手>投手>外野手とポジション別のヒエラルキーがある
理屈としては、外野手は守備の時間で一球ごとに考えることの少なさにある。考えている人は考えているのだが、多少変な場所に守っていても、コーチからの指示で修正すれば済んでしまう。守備の負担の少なさは、打撃に専念できる環境なのだが、考えずに済むという条件が監督には不向きというわけだ
もっとも名将なしの持論は、ノムさんの「名将」の条件が高いからで、鵜呑みにはできない。選手の力を引き出すだけでは足りず、その人間教育もできなければならないし、接戦を抜け出すだけの頭脳や野球知識も持たなければならない
要する能力は多様なので、どのポジション出身の人間でも大変な基準なのだ。これを満たした人間が過去何人いるだろうか
広島の緒方監督は、今後の成績如何では「名将」入りするだろうし、日本ハムの栗山監督もなんだかんだ何年かに一度は優勝している。「外野手に名将がなし」といっても、愚将ばかりともいえず、世間的にはなかなか受け入れられない持論だろう
ノムさん怒りの矛先は、外野出身の監督そのものというより、選手の能力と勢い任せの「考えない野球であり、その場限りの補強に走る名門球団のフロント。今、名捕手という存在がいなくなったのは、その結果といえよう


関連記事 『阪神タイガース暗黒時代再び』
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『阪神タイガース暗黒時代再び』 野村克也

けっこう冷静な分析


阪神タイガース暗黒時代再び (宝島社新書)
野村 克也
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監督が3年もたない阪神に、再び暗黒時代が訪れる! ノムさんが語る阪神再生への道
金本阪神以前の、大型補強路線時代の阪神に向けられた苦言である。時期的には、和田阪神の一年目終了時であり、和田監督には「守りの野球」の復活に期待をこめていた
自分自身の阪神監督は「失敗だった」「自惚れていた」と否定的なものの、チームに対する愛着は残っているらしく、以前読んだ『あーぁ、楽天イーグルズ』に比べると前向きな記述が多い
監督視点のチーム作りのみならず、編成レベルからいかに取り組むべきかを指摘し、阪神の短期政権はフロントが監督に全責任を負わせているからこそ、起こることだとする
関西マスコミの、阪神だけにいれ込む特異性にも喝を入れるなど、ノムさんだから書ける内容も多く、五年の月日を感じさせない現代野球の原理原則が語られている

自身の辞任後に就任した、星野仙一、岡田彰布、真弓明信、和田豊の4人の采配について分析されているが、低迷の戦犯とされているのが真弓監督である
太平洋クラウンズからの田淵幸一とのトレードで阪神へきたからか、16年在籍していても外様意識を捨てきれず、OB会や関西マスコミに遠慮した無難な人事、采配が目立った
代表的なのは、連続フルイニング出場記録がかかる金本知憲を肩に出場させ続けたことで、金本本人が切り出すまで放置したのは監督の怠慢だとする。さらに、フルイニング出場にこだわった割りに、あっさり連続出場記録を俊介の盗塁で潰してしまったことも、分かりやすい失態だった
星野監督については、自分で有力選手を引き抜いて戦力を整えるGM的監督であり、セオリー重視の「動かない采配」も一貫性があるとするものの、生え抜きの岡田監督へはバントを嫌い過ぎるなど、ノムさんからすると意味不明の独自色を出していて、歴史的逆転からの逃げるような辞任など評価は低い
岡田監督は野村監督時代に二軍監督を務めていたが、何も引き継がれなかったのだ
対して一年目を五位で終えた和田監督に対しては、上本や大和を起用するなど「守りの野球」への志向を認めていた
しかし、問題となるのはフロントの姿勢が大型補強路線を継続していること。外野で福留孝介は引退する金本の後釜としても、西岡剛のポジションと役割は上本と丸かぶりする
2010年の城島の引退からFAで藤井彰を獲得し、2012年オフに日高剛を獲るのは、自前の正捕手育成を怠るものとして批判している
生え抜きの選手を上手く育成した原巨人や落合中日が、安定した力を保ったのに対して、その後の阪神は低迷し、育成からやり直す大手術を余儀なくされた

本書は悪口ばかりではない、阪神期待の若手(当時)も紹介している
まずは和田監督がノムさんに紹介した中谷将大。マー君と名前がいっしょだったことから覚えていたらしく、和田監督は「手足の使い方が新庄剛志に似ていて、球も遠くに飛ばせる」と評価してた
その割りに、和田政権下では99%二軍と言行不一致はなはだしいが、2016年の金本阪神始動ともに一塁、外野でスタメン起用されている
プロ初打席で満塁ホームランを放った森田一成も長距離砲候補に挙げられているが、こちらは一塁しか守れないからか早々戦力外! 低迷するわけである
藤浪晋太郎は当然として、同期の北條史也にも期待していて将来の4番候補とまで
もっとも選手が育つには、一定期間を同じ育成方針、起用を続けなければならないわけで、やはり長期政権は不可欠。広島カープは5年はやらせてもらえるから思い切った起用ができ、今のフィーバーにつながったのだ


関連記事 『あ~ぁ楽天イーグルズ』

「アホ」がプロ野球を滅ぼす (ロング新書)
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『あ~ぁ、楽天イーグルス』 野村克也

ノムダスを読むのは久しぶりです

あ~ぁ、楽天イーグルス (角川oneテーマ21 A 110)あ~ぁ、楽天イーグルス (角川oneテーマ21 A 110)
(2009/12/15)
野村 克也

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本書が出版されたのは、野村監督が楽天を追われた2009年末で、冒頭から楽天球団に対するボヤキが炸裂する
タイトルが阪神タイガースのは「あぁ」だったのが、あ~ぁ」となっていることに万感の想いが込められているのだ
が、球団はともかく「選手、ファンには感謝」が本音。球団初のAクラス、リーグ二位の躍進をもたらした野球哲学、貢献した選手たちの成長ぶり球団経営への冷静な分析があって、ノムダス本としての質も高い
抽象的な話が少ない分、以前出された本と被るところが少なくて、新鮮に感じられた
ただ話のもって行き方が、スワローズが良くて対照的にタイガースが悪く、楽天は虎よりはマシという格好なので、虎ファンの管理人は苦笑いせざる得ない部分が多かった

虎ファンなので目に止まるのは、タイガーズのネタ

 もう時効だからはっきりいうが、当時の阪神では、目をつけていたAという選手がめでたく入団すれば、担当のスカウトに30万円のボーナスが支払われていた。安月給のスカウトにとって、その額はバカにならない。したがって、ボーナスを得るために、確実に入団することができる、いわば獲りやすい選手ばかりを指名するようになる。つまり、ほかのチームなら見向きしないような選手ばかりが入団することになるのである。
(中略)
「あいつら、何を考えているんだろう」
それくらい、ほかのチームのスカウトからも阪神のスカウティングはバカにされていたのである。(p40-41)

これはいちおう、スワローズの監督時代(1990~1997年)から阪神監督就任(1999年)までの話
この頃の阪神は1992年に発作的(!)に二位に浮上したものの、それ以降四位から最下位を彷徨う真の暗黒時代。ドラフトでも、あまり競合する有望選手を獲ろうとしなかった
入ったときだけ評判となり、消えていった選手が何人いたことか(ドラ1野手でモノになったのは今岡くらいか)
その原因はこんな馬鹿げた慣習だったのだ

そして、去年FA移籍してきた「男前」には

 私が楽天の監督になったとき、主にマスクをかぶっていたのは藤井彰人だった。彼はキャッチングの技術はすばらしい。一流だ。ところが、彼は鈍感なのである。
 キャッチャーに一番求められるのは、観察と洞察である。・・・(略)・・・そこが藤井には欠けていた。
 また、彼には責任感と使命感も足りなかった。なによりピッチャーの長所を引きだそうとする意欲に欠けていた。・・・・・・
 藤井もまた、近鉄の残党である。「勝つ」ことを軽視するチームで育った。そういう体質はかんたんには抜けない。そこで私はルーキーの嶋を鍛えることにしたのである。(p116)

城島の穴をしっかり補った「男前」にノムさんはどういう評価を下すだろう
今回の特徴のひとつが近鉄-エゴイスト論で、近鉄出身の選手は個人の成績を追いかける傾向があり、チームの雰囲気を乱したり貢献をしないというもの。西本幸雄監督が人間教育を怠ったからだとまで言う
何やら、昔の南海-近鉄の因縁を感じてしまうが、指導者として成功した出身選手が少ないのはたしかに事実か
西本さんに関しては、「鉄拳」を介した教育であったがゆえに、チームに哲学として残らなかったといえそうだけど

自分の部下たちの活躍をもって野村哲学の浸透とするので、そのあまりの手前味噌には微苦笑を禁じ得ない
それを許されるほどの実績と影響力を誇る人間であるのは間違いないが、だからこそ顕示欲を抑えればもっと良く見えるのにと思う
まあ、今なお講演と語録本で稼ぎまくる出しゃばり振りも含めて、ファンにはご愛敬かな
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