『資本主義の終焉と歴史の危機 』 水野和夫

近代の延命策を非難しつつ、しばらくそれしかないとか


資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)
(2014/03/14)
水野 和夫

商品詳細を見る


歴史的低金利は資本主義の死を意味する!バブル多発の原因を究明する
本書は『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』などの認識を踏まえた上で、金融バブル崩壊に対する先進国の財政出動が無効であると指摘。近代の成長神話を脱しなければ、低金利でバブルが繰り返され、中間層が没落して民主主義を危うくするとする
21世紀の低金利を16世紀のイタリアで現れた「利子率革命」、新大陸発見による「空間革命」と結びつける持論は卓見で、資本主義の本質が需要の先食いである以上、“最後のフロンティア”アフリカが開発されることによって現状のグローバル資本主義が終わるのは確かだろう
ただ例によって、この著者は話が遠大すぎる(苦笑)
「シェール革命によってアメリカが近代主義をやれるのは、たかだか100年くらい(!)です」とか、孫の代までもつなら政治的には正解ではないのか
自身も「脱成長」のモデルを提示できず、それを見つけるまで資本主義の破綻を防ぐために延命しかないとするなら、現実の政策を批判しえないだろう

内容的には著者が過去に訴えてきたものと大きく重なるのだが、以前と違うのは新興国の経済と将来に対して悲観的で、EUの試みも金融危機から失敗と位置づけるところだ
中国が「世界の工場」となったように、欧米の覇権がBRICsを中心としたユーラシア大陸に戻るという視点はもてはやされてきたが、著者によればそこまで期待できないという
原因は欧米の金融政策であり、歴史的低金利から新興国に流れ込む資金は必要量のゆうに数倍以上に到っている。そのため中国では、入居者が見込めないマンションが建てられるなど、設備投資の過剰が歴然としている
経済低迷から先進国の消費が落ちるのも痛く、先進国向けの製品を作る新興国はそのはけ口を失って莫大な在庫を抱えることになる。そして、こうした製品を捌けるほど、新興国の国内市場は充実していない
そのため新興国は過剰投資の整理=リストラに追われざるえず、中国のバブルは必ず弾けると断言する
進みすぎた金融技術とグローバル化は、世界の需要を先食いし続け、その余りのスピードからフロンティアをあっという間に食い潰してしまうのだ

EUに関しては、英米の「海の帝国」に対する、仏独の「陸の帝国」とする
カール大帝以来、ヨーロッパ統一は政治的悲願であり、ときには経済的利害を乗り越えて加盟国を増やしてきた。その精神は国と民族の「蒐集」(=コレクター)であり、それはまた資本主義の精神にも通じるものがあるという
そもそもヨーロッパの起源はローマ帝国にゲルマン民族などが登場したことであり、彼らが贅沢をするにはローマ人に奴隷を供給しなければならなかった。つまり、絶えず戦争を続けて奴隷を集めなければいけなかった
著者は、豊かな生活のために「奴隷」を求めるのが、ヨーロッパの精神&資本主義の本質という。EU内では、それがギリシャとなり、アメリカではサブプライム層、日本では非正規社員がそれにあたるという
なぜ20世紀の資本主義が上手く行ったかというと、15%の先進国が85%の途上国から資源を安く買い上げ、製品を高く売れる環境にあったからで、新興国の先行きが微妙なのもこの15%枠が崩れるから。グローバリゼーションとは、世界が先進国ばりの生活ができることではなく、ウォーラーステインでいう<中央>と<周辺>を組み換えることに過ぎない
絶えず食い物にする人間を見つけないと、資本主義は成立しないというのだ

ただしこの議論、下流の一員である管理人からすると、ひとつ抜けている。テクノロジーの進歩だ。派遣を転々としていれば搾取はとうぜん感じるものの、同時に世の中が便利に暮らしやすくなったと思える瞬間もある
馴らされたと言われればそれまでだが、イギリス産業革命の労働者は賃金が伸びずとも、技術革新で生活のコストが下がったことで相対的に豊かになったのだ(→『大英帝国』長島伸一
あまり悲観的になりすぎるのも良くないだろう
ただし、資本の暴走が実物経済をかき回す事態はたしかに異常で、時代にあった雇用体系の見直しもしっかりやって頂きたい
本書では直接触れていないが、経済が行き詰ると戦争でむりくり需要を作るのが人類の歴史であり、不幸にもそれが効果的だった(朝鮮戦争とかさ)。戦争を必要悪と言い切る悪役とか富野作品にも出てくるけど、現実的にそれを退ける仕組みと知恵が必要なのだ


関連記事 『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』
     『大英帝国』
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』 水野和夫

設備投資依存の景気回復はすぐ行き詰るって……


人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか (日経ビジネス人文庫)人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか (日経ビジネス人文庫)
(2013/07/02)
水野 和夫

商品詳細を見る


グローバル化は世界をどう変えたのか。気鋭のアナリストが変わった世界の原則を明らかにする
著者は民主党政権のブレーンとも言われた、水野和夫。冷戦以後、急速に進展したグローバル経済の本質を解き、なぜ、従来の経済政策が功を奏さないのかを、丁寧に分析していく
アメリカの「金融帝国」の解説は、時事的に懐かしいものとなっているが(それでも読む意味はある)、金融経済が実物経済より優位に立つ理由、アメリカ、中国、ロシアらの「帝国化」の動き、ネット時代の景気変動、そして、景気回復しても懐が暖まらない訳を明確にしてくれる
初出が2007年であるが、現在の安倍政権も自民党の伝統的政策、輸出増による経済成長を目指してしまっているので、本書の指摘は十二分に通用してしまうだろう

金融経済が実物経済を振り回せる理由は、ひとつにグリーンスパンも指摘していたように冷戦終結で途上国の富裕層、特にオイルマネーが先進国の証券市場へなだれこんだこと、そして、IT技術の進化によりいつどこでも証券市場が開いている限り、参加できるようになったこと
アメリカでは経済成長が実物で見込めなくなったため、「強いドル政策」によって自国の資産価値を高め、外国からの投資を呼び込む「金融帝国」となることで成長を達成した
リーマンショックの失敗で徐々に実物経済への揺れ戻しはあったものの、先進国では株価の変動が景気とリンクしていて、富裕層が株で儲けると個人消費が増える実態があり、金融経済の優勢は変わらない
比較的高い経済成長を遂げても、一部の人間以外賃金が上がらないのはアメリカでも同じで、貯金せず投資に熱くなる人が多いのも他に収入を上げる手段がなかったからだろう

グローバル経済における先進国は、二つの経済圏に分かれる。新興国の成長とリンクできるグローバル経済圏と、国内でしか循環できないドメスティック経済圏
BRIC.sに代表される新興国は、従来の「近代」成長モデルが通用するから、それと付き合える業界、企業は、「近代」モデルの生活でさらなる成長が目指せる。しかし、国内向けの市場しか持てない業界では、努力しても成長は見込めず、従来の政策、あるいはグローバル化の政策が裏目に出てしまう
バスやタクシー業界、外食産業といった国内市場のみをターゲットとする業界に、自由競争、規制緩和を極めた結果、労基法を守らないブラック企業を生み、過労による人身事故を起こしたことは記憶に新しい
こうした成長できる業界とできない業界がくっきり分かれることがグローバル時代の特徴で、成長できない「経済圏」を著者は「新中世と呼ぶ
日本人の約七割以上の人がこのドメスティック経済圏=「新中世」に属し、その中では賃金が極端に抑えられるので、経済格差が大きくなる。経済の格差は子供の学力に直結し、階層の固定化につながる。「新中世」を本当の中世にしないためにも、教育の機会均等など成長が低くても安定した施策が求められるのだ


関連記事 『波乱の時代 わが半生とFRB』 下巻
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

『超マクロ展望 世界経済の真実』 水野和夫 萱野稔人

幕末モードから、じょじょに衰亡史モードへ
積読解消のためにも、乱読に近い形になってしまうかなあ

超マクロ展望 世界経済の真実 (集英社新書)超マクロ展望 世界経済の真実 (集英社新書)
(2010/11/17)
水野 和夫、萱野 稔人 他

商品詳細を見る


菅首相のブレーンと言われるエコノミスト・水野和夫と、その思想に影響を与えた政治哲学者・萱野稔人の対談本
世界の金融危機、日本の低迷に対する水野和夫の説明は実に明快である
先進国で起こった金融危機は、実物経済で成長を維持できなくなったのを金融化で補おうとしたことに他ならず、日本の低迷は交易条件が悪化して儲からなくなったことにある
交易条件の悪化とは、新興国の工業化で安価な商品が出回り、資源が高騰してしまうことであり、そのため幾ら物を作っても利益率が下がってしまう。件の金融危機も、実物経済のマイナスを金融で補おうとしたものなのだ
グローバル化した現在では、閉じた国民経済をモデルした経済学は通用しない
対談した両者は歴史を中世まで遡り、経済システムを巡る大国の興亡に着目して、経済、政治、歴史、環境問題と学問の枠に囚われない視点を提示してくれる
震災以前に出版された新書ではあるが、題名通り長期的視野で語られているので、かなり賞味期限の長い内容なのだ

対談では、数々の面白い視点、知られざる史実を語ってくれるのだが、中でも興味を惹くのは、日本のバブル崩壊が21世紀の世界金融危機の先触れではなかったかという話

萱野 ・・・(略)・・・すでに確認したように、金融経済化というのは覇権国の実物経済におけるヘゲモニーが衰退するときに起こってくる現象です。そうである以上、日本のバブルにおける金融経済化は、アメリカのヘゲモニーのもとで牽引されてきた世界資本主義のいきづまりを、ある意味で先取りしたものであるといえるのではないでしょうか。
水野 そういった側面は確実にあると思います。日本は戦後、アメリカのヘゲモニーのもとで急速に経済発展してきましたから、そのヘゲモニーの可能性と限界が日本で凝縮してあらわれたとしてもけっしておかしくありません。私は、バブル以降の日本には、二一世紀の利子率革命が起こっていることも含めて、資本主義の歴史におけるある種の先行性があると考えています。(p162-163)

日本でバブルが起こりえた理由は、日本人の貯蓄率が高く他国から資金を集めなくてもバブルを起こす資本が蓄積していたから
逆にアメリカは、自国民の貯蓄率が低く、国際的な金融空間を作るまでバブルを起こせなかった
「アメリカとは違うのだよ、アメリカとは」と変な自信を持ってしまいそうだが(笑)、その裏話としてレーガン政権の対ソ軍拡競争を支えるために日本のバブルが促されたというネタを聞くとまるで笑えない
バブル崩壊後、「バブル自体は良くないが、バブルが起こるのは成長性の証」という慰め文句が流行ったが、成長が限界に来たからこそ起こるのがバブルだ
水野和夫も、バブルはその変動の激しさで無関係な人に悪影響が出ると、批判的。中世末期のスペインを例に引いて、バブルは、結局は国を疲弊させるとする
低成長の時代という現実を受け止めて、少しでも負荷のかからないシステムを作らなければならないのだ

具体論を並べる水野和夫に比べ、聞き役に回って地味な小ネタが続く萱野稔人なのだが、アメリカは空の帝国という視点は面白い
イギリスは、海という陸とまるで違った空間を占拠、利用することで覇権を握り、アメリカは空を制することで戦後の覇権を確立したとする
空の次は宇宙ということで、ソ連と激しい競争をするものの、宇宙を得ても現時点では経済に潤すものはない。そこにアメリカの覇権の限界点があるとか
とはいえ、主役は水野和夫。金融危機に関しては、グローバル化で外部がなくなったゆえに自国民をバブルで食い物にしたのでは、という見解は鋭い。それこそ、現代の全体主義論とリンクするもので、戦後に中立的にみられてきた経済が実はいつの時代も権力政治と結びついてきた点も見逃せないところだ
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

『金融大崩壊』 水野和夫

読んでだいぶたっちまった

金融大崩壊―「アメリカ金融帝国」の終焉 (生活人新書)金融大崩壊―「アメリカ金融帝国」の終焉 (生活人新書)
(2008/12)
水野 和夫

商品詳細を見る


サブプライムローンに端を発した世界的な経済危機を、「アメリカ金融帝国」の黎明期から振り返ってひもとく。たんなる時事ネタだけではなく、金融危機は資本主義の発祥から続いた「近代」そのものの終焉とする深い知見を盛り込んでいる。日本の将来の展望にも触れていてなかなか幅が広い新書だ
好感がもてるのは、「グローバル化」なり「アメリカ金融帝国」に対し倫理的な裁断をしていないこと。行き過ぎや責任者のミス、モラルに対する非難はあるが、構造そのものは認めている
最近は都合が悪くなったからって、変わった構造そのものを非難する不毛な本が多い。エコノミストとして当然の振る舞いかもしれないが、過去を懐かしむよりネクストを睨む姿勢の方がためになると思う

何よりこの本は経済音痴な僕(経済学部卒だがw)にも分かるように金融危機を解説してくれるのが有り難い
まず、サブプライムローンとは、普通に住宅ローンを組めない中間層(サブプライム層)に対し貸し付けたローンのこと。アメリカでは数年前から住宅バブルが起きていたが、富裕層の購入が落ちてきたので、不動産屋がより収入のない層をターゲットにした。借りる方も土地の値段が上がり続ければ少々金利が高かろうが気にならない
で、バブルが崩壊してローンが払えなくなった人が続出→不良債権というわけだが、日本の土地バブルと違うのここから

アメリカでは消費者が住宅を買うときに住宅専門の金融機関の融資を受けるわけだが、その金融機関は投資銀行に住宅ローンを売却し、次の消費者への融資するお金を作る。そして投資銀行大量の住宅ローンを証券化し、格付け会社に評価を依頼しランク付けさせる
サブプライム層に貸したローンはそのまま証券化してもハイリスクのまま

そこで、高度な金融工学の手法を使い、サブプライムの住宅ローン担保証券を、格付けの異なる住宅ローン担保証券や住宅ローン以外の証券と合わせるなどして、新たな証券を作ることが行われました。サブプライムの住宅ローン担保証券に潜んでいたリスクは細切れにされ、住宅価格とは異なる値動きをする別の証券と混ぜ合わされるため、リスクは軽減されます。この証券は「債務担保証券(CDO=コラテライズ・デッド・オブリケーション)」と呼ばれます(p52)


先進国はどこも低金利で投資家は投資先に困っている状況。お得に見えた金融商品にわれ先と飛びついた。しかし、その実際リスクがなくなったわけではないし、そもそも格付け会社と投資銀行の関係は怪しいものなわけで・・・
本来リスクを正確に計算するための金融工学が、リスクを隠蔽するように使われたということだ

で、もうひとつの仕掛けがリスクに対する保険だ

・・・債務担保証券(CDO)はそのリスクが理解しにくいため、ほとんどの場合、一種の保険がつけられていました。CDOに損失が発生した場合、それが契約によって定められた形の損失であれば、保険会社がその損失をすべて補償してくれるのです。もちろん、保険会社に保険料を払う必要があります。
・・・ある証券化商品はトリプルAの格付けになっている。購入したいが、本当はリスクが高いのではないかと心配になる。それならば、保険料を余分に払ってリスクをヘッジ(回避)しておけばいい。これがクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)と呼ばれるものです(p61)


こうした仕組みがあったからこそ、投資家は安心してリスク商品を買い続け、バブルは膨らんだ
かの世界最大の保険会社AIGが公的資金で救済されたのは、もし破綻すると他の投資家や会社にリスクがヘッジできなくなるからだ
バブルはみんなが一つのモノ、見方に乗っかってしまって、市場がまとも機能しなくなる現象だろう。今回の危機では発達した金融工学がそれに拍車をかけてしまったようだ

もう何かに一本かぶりは危ない。世界的視野で見てもアメリカだけに依存する体制は不自然なわけで、これから伸びるアジアなり南米なりの新興国に投資して世界経済のパイ自体を増やしましょうよ、ということですね
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)
(この一行は、各ページ下部に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)
カレンダー
08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
カテゴリ
SF (24)
RSSリンクの表示
リンク
FC2 Blog Ranking
ランキング
アクセスアップ!?
検索フォーム
はてな
この日記のはてなブックマーク数
タグランキング

サイドバー背後固定表示サンプル

サイドバーの背後(下部)に固定表示して、スペースを有効活用できます。(ie6は非対応で固定されません。)

広告を固定表示させる場合、それぞれの規約に抵触しないようご注意ください。

テンプレートを編集すれば、この文章を消去できます。