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『時代劇入門』 春日太一

管理人がわりと良く見えた映画『関ケ原』を、合戦シーンが安っぽいと一刀両断。一方、長澤まさみの忍者をよしとする


時代劇入門 (角川新書)
時代劇入門 (角川新書)
posted with amachazl at 2020.04.18
春日 太一
KADOKAWA (2020-03-07)
売り上げランキング: 17,905

代劇は「おじいちゃん」だけのものじゃない! 食わず嫌いの人のための入門書

帯の富野インタビューに惹かれて買ったけど、普通にいい新書だった
ゴールデンタイムはおろか、昼間の再放送すらなくなった昨今、若い世代に時代劇は縁遠い。アラフォー世代でも、『水戸黄門』に代表される勧善懲悪な、ご老人のためのものというイメージがあって、それを覆そうというのが本書
尾上松之助から始まる30人の代表的スター、10人の映画監督、10人の原作者を紹介し、映画の全盛期からテレビへの変遷、現在の衰退・変貌までを伝える通史となっている一方、忠臣蔵と大河ドラマから時代劇の見所を初心者向けに紹介と行き届いている
この手の本の常として、初心者より既存のファンを引き付ける危惧はあるのだが(苦笑)、時代劇の関係者をリスペクトしながらも硬さに堕ちない軽快な文章で、知らない層もなんとなく引きずり込んでしまう

そもそも時代劇とは、古典や伝統を意味するものではなかった。チコちゃんも言っていたのだが(笑)、歌舞伎や大衆演劇スタイルで女性も女形がやる「旧劇」から、映画独自の方法論をとるべきとする「純映画劇運動」が1920年代に巻き起こり、それにのっとって撮られた歴史物を「新時代劇」と呼ばれたのだ
時代劇の歴史を読んで思うのは、そのヒーローたちにアウトローが多いこと
有名な「忠臣蔵」も赤穂“浪士”、当時の一大テロ事件であったし、清水次郎長・木枯し紋次郎・座頭市は極道あるいは流れ者、柳生十兵衛・眠狂四郎・拝一刀などの剣豪も組織からはみ出すか、追放された存在で、仕置人・仕掛け人は殺し屋そのものである
戦前の「傾向映画」という時代から、庶民の体制に対する晴らせぬうっ憤を晴らすのが、時代劇の役目であったのだ
戦国三傑をはじめとする史実の英雄、『水戸黄門』『遠山の金さん』『暴れん坊将軍』など体制側のヒーローが時代劇の象徴となったのは、テレビドラマに席捲するようになってからだ
こうしたシリーズの長期安定は、ジャンルを硬直させ視聴者への先入観を育てていく
そして、現在の冬の時代が訪れた原因として著者があげるのが、1994年に導入された「個人視聴率調査。世帯ごとに行われていた調査を、一人一台の時代だからと個人ごとに調べてみれば、時代劇を見るのは「ほぼ高齢者
これでは若年から中年に販促を打ちたいスポンサーの意向にそぐわず、金のかかる時代劇から離れていったのだ

さて、注目の富野インタビューは、Gレコ製作中の忙しい合間ということか、だいたい20ページ著者はガンダムが殺陣に興味をもつキッカケとなったことで申し込んだ。富野監督も「僕のような素人になぜ聞きにきたの?」と当惑気味だったが、なんだかんだヒートしていく

富野 映画をモノクロで撮っている時代、それから、カラーになって、さらにシネスコで撮っている時代ということでの、殺陣のありようというのは、結局、全て演劇的にやっている。根本的なことはどういうことかというと、踊りなんだよね。要するに、日舞を延長したものだと考えていかないと、殺陣の形というのは作れない。ああ、納得。
 僕にとって子供向けの時代劇で許せなかったのは、「こうまでチャンチャンバラバラやっていて、人なんて斬ったり殺したりできるもんじゃない」というのがイヤで見なくなったんだけれども、一方で演劇論、舞台として考えると、これでいいんだよねと思える。やっぱり型がいるわけ、様式があるわけです。
 殺陣は舞踏という部分と基本的につながっているものである。(p343)


リアリズムで考えると、真剣を構えられると身動きできるものではない。一撃で決着がついてしまうから、それを他人に見せられるものにするには「舞踏」たらざる得ない。悪い意味でリアリズムに走ってしまった例として、映画『散り椿』があげられている(監督は予告編しか見てないそうだが)
とはいえ、舞踏にしてもただチャンバラを見せるだけでは客も飽きるのだから、「百人を斬るなら百通りの斬り方をして見せろ」と監督は意識している
実際のロボット物でいうと、「ライフル戦、ビーム戦というものは、演劇的に意味がないんです。一度やったらもういい。そのあとどうするかといったときに、チャンバラしかない。」チャンバラをするには、相手が近い距離にいるしかなく、そのまま相手とのやり取りが生まれて自然と劇が生まれていくのだ
気になったのは、新しい時代劇の形としてみられている実写劇場版『るろうに剣心』に否定的なところ。「あそこまでものを考えずに画像オンリーで作るというのは、ちょっと映画をなめていないか」ゲームのワンシーンにしか見えないとも
著者も『るろうに剣心』の殺陣は、スピード感を出すためにラバーで軽く軟らかい刀身で実際に相手へ当てており、「ただのチャンバラごっこで演出ではなくなっている」
対談の前半に最近の剣道では、スポーツ的に勝つことを重視して、昔の竹刀より軽くなっているという話があり、ゲーム世代の身体性の問題としてリンクしてきそうだ
『散り椿』『るろうに剣心』も観てないので、連休中に確認してみたい


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