今年はもう少し、本の記事を増やせるようにしたい(毎年言ってるなあ)
原発のある港町で男女の水死体が揚がった。その女、のぞみを追って東京から来たヒモの坂田(=原田芳雄)は、心中事件として扱われたことを疑い、実家の青葉家を訪ねるが門前払いを受けた。事件の記事を握りつぶされた記者・野上(=佐藤慶)はそんな坂田に接触し、心中した男、原発技師の妻・山崎明日香(=山口小夜子)のもとへ送り込む。明日香は死んだ山崎が持っていた原発事故の資料を渡し、坂田を原子力行政の闇へ導く
田原総一朗の同名ルポの映画化
もとがノンフィクションながら、かなりミステリー成分が濃い。巨大権力が過失をもみ消すために無実の人間を犠牲にし、その陰謀を明らかにしていく展開は松本清張ぽい
その一方で、伝説のファッションモデル・山口小夜子が演じる未亡人が坂田とネンゴロになるところは、幽玄なBGMもあいまって江戸川乱歩を思わせる
黒幕に電力会社、原子力関係の学会、通産省の連合体を据えつつも、タイトルシーンでオレンジがかる効果、要所で入る砂浜と波音、ラストにのぞみの妹・翼(=風吹ジュン)がトンネルを抜けて都会へ出ると匂わせる場面など、絵で訴えて視聴者に深読みさせる表現が楽しめた
作中に異様な場面がある。原発利権に触れる作品なせいだろう、発電所の許可が下りなかったせいか、受付所で原田芳雄が止められ、警備員にカメラを制止されるシーンがあるのだ(福島第一原発!)
わざわざこのシーンを残したのは、協力を得られなかった制作サイドの腹いせだろうか
特典映像に原作者、田原総一朗のインタビューがあって、「どうせなら原田芳雄が逮捕されるぐらい、頑張って欲しかった」という感想が(笑)。本物のパトカーがくるぐらいだと面白かったともあって、期待したドキュメントとは違ったらしい
とはいえ、原発利権については、堂々と触れられる。のぞみの兄・守(=石山雄大)が語る利権にまみれてしまった町の事情は深刻で、税収は2億から12億に増えたが9割は原発関係!
漁業やめて原発で働く若者も多く、完全に依存してしまい、事故で損害を被るのは地元民なのに事故隠しにまで加担にする構造もあった。原発はただの港町を歪んだ形で‟成長”させてしまったのだ
そして、電力会社は広告スポンサーの立場から新聞社を抑え、原子力学の教授は国策に協力して事故を過小評価し、地元の漁業組合は補償金をいくら取るかを競ってしまう。誰も批判に耳を貸さない
2011年の福島原発の事故で表面化した問題が、その30年前に訴えられていたのである