『ノドン強奪』 トム・クランシー スティーヴ・ピチェニック

オカンと姉貴に呼ばれて、夜の二条城へ花見へ。六時からライトアップしていたのだ
また、そのうち記事にします


ノドン強奪 (新潮文庫)
トム クランシー スティーヴ ピチェニック
新潮社
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大統領就任式に沸く韓国で、無差別爆弾テロが起こった。北朝鮮が疑われるも、地元の情報部のキム・ホアンは韓国内部の犯人を疑い、北朝鮮の女スパイと接触することで確信する。一方、情報機関としてスタートしたばかりのオプ・センターは、同時刻にサイバーテロをくらいコンピューターがダウン、アメリカの軍事衛星には事実と異なる画像が挿入された。誰かが第二次朝鮮戦争をもくろみ、ノドンミサイルを日本へ向けていた!

オプ・センター・シリーズの第一作
1995年初出で、この年の韓国は金泳三政権一年目二人の大統領経験者が逮捕される事態となり、北朝鮮では前年に金日成が亡くなり最高権力者の代替わりしたばかり。日本では地下鉄サリン事件が世情をにぎわせていて、北朝鮮による拉致事件に関しては一般人には疑惑の段階に留まっていた時代だ
本作は、半島の最高指導部が変わったばかりで権力基盤が安定していないと仮定して起こる、両国の過激派分子が手を組んでの騒乱をタネとしている
主役であるオプ・センターは、複数の情報機関を横断する、大統領が使いやすい組織として発足し、トップには文民である元ロサンゼルス市長ポール・フッドが座る。優秀ながら寄せ集めの集団であり、実力を信頼し合いつつの微妙なチームワークが特徴となっている。みんな、良かれと思って勝手に動き、読者をハラハラさせるのである
取って代わりたい野心的な副官マーサ・マッコール、ポールに惚れて不倫を夢見る広報官アン・ファリス、実戦部隊に同行してしまう猪少将マイク・ロジャーズ……ライアンシリーズがハリウッドなら、オプセンターはテレビドラマのような距離の近さがある
こうした個性的な連中が組織の上下関係ではなく、高い意識の連帯で危機を乗り越えていく

拉致事件を経て、日本人の北朝鮮への理解と関心が深くなった今となっては、本作には乗りづらいかもしれない
アメリカ人の両作者にはベトナム戦争へのトラウマから、冷戦後に悲劇的な衝突を避けることが第一にシナリオを組み立てている
北朝鮮のような全体主義体制は、党が軍を支配・コントロールしているのであって、軍先主義でも首領の支持ありき。ホン・グーのような前線の武官が自立的な判断と行動が簡単には取りきれない。本作の北朝鮮には、最高権力者の存在が希薄過ぎて、この点まったくリアルではない
アメリカ大使や特殊部隊と北朝鮮軍との連携も、何やら米軍とベトコンの仲直りのような牧歌的な光景だ。弾道ミサイルの飛距離を伸ばし続け、トランプ政権がそれを撃ち落とそうという今となっては、隔世の感がある


次作 『ソ連帝国再建』
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『米中開戦』 第3巻・第4巻 トム・クランシー マーク・グリーニー

アメリカらしい解決法


米中開戦3 (新潮文庫)
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米中開戦4 (新潮文庫)
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ジャック・ジュニアはハッカー集団を追って、香港のCIA工作員アダム・ヤオと合流。天才ハッカー査殊海を追い詰め、国防省特殊部隊と香港マフィアの銃撃戦を乗り越えて捕えるが、アメリカで人民解放軍の特殊部隊に査を殺されてしまう。大統領ジャック・シニアは台湾に米軍パイロットを密かに送り込むも、中国側はついにサイバー攻撃で報復し、アメリカ軍を大混乱に陥れるのだった

中国の南シナ海進出を題材にしたシリーズの後半である
ジャック・ジュニアらの活躍によって香港のサイバー軍団は広州への移転を余儀なくされたが、中国のサイバー作戦はここからが本番。単にアメリカ軍の軍事衛星を無力化しハイテク兵器の精度を奪うのみならず、銃後の領域へも迫る
原子力発電所の冷却水までコントロールし原子炉の暴走を誘い、ウォール街の証券取引所を取引停止に追い込む。しかもサイバー攻撃は直接の証拠が残らないから、国として反撃することもできない
その証拠を掴むべく秘密チーム「ザ・キャンパス」が動きまわるわけだが、サイバー攻撃の脅威ハイテク社会がそれに対して脆弱なことを本シリーズは啓蒙してくれる
小説ではサイバー軍団の拠点が都合よく一か所に集中していて、爆弾で吹き飛ばすというアメリカらしい一発逆転が決まるものの、実際にどう対処するかフィクションのなかでも見えてこないから恐ろしい

後半は当然ながら、一方的に弄ばれていたアメリカ側の反撃が始まる
アメリカ大統領ジャック・ライアン・シニアは、「アメリカに脅威を与える国の指導者を許さない=抹殺する」というライアン・ドクトリンを掲げる。ただし、今回は中国側と公式的には戦争になっていないので、簡単には動けない
しかしサイバー攻撃の拠点が広州にあると判明するや、迅速な作戦を指示した。なんと海兵隊戦闘機、F-18ホーネットによる本土空爆である!
通常兵器だけに限れば先制攻撃であり、そのまま全面戦争になりかねない選択だ
作者が国防長官に語らせるのは、「サイバー攻撃で原子力発電所を誤動作させることは、核爆弾を投下するに等しい」ということ。攻撃方法ではなく、その結果とリスクで判断すれば、本土攻撃も妥当というわけだ
何やらブッショ・ドクトリンを彷彿とさせる行動基準だが、これが小説で示されるサイバー戦を交えた現代戦の想定なのだ。冷戦が終わり核ミサイルが向き合う時代が終わったと思いきや、一皮むくとこういう恐ろしい可能性があるのである
中国が南シナ海で強引な作戦をとる動機として、経済低迷に中国共産党への求心力の低下とか、その想定にはフィクションとして可能性の薄いラインを持ってきて、民主化を求める過激な若者がアメリカの工作に協力するとかご都合もあるものの(公然と外国の暗殺作戦に乗るだろうか?)、サイバー戦争については迫真性が高かった


前巻 『米中開戦』 第1巻・第2巻
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『米中開戦』 第1巻・第2巻 トム・クランシー マーク・グリーニー

原題「Threat Vector」=脅威のベクトル


米中開戦1 (新潮文庫)
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米中開戦2 (新潮文庫)
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アメリカの極秘情報機関「ザ・キャンパス」は、旧カダフィ政権関係者に対する暗殺作戦をイスタンブールで展開していた。大統領の息子ジャック・ライアン・ジュニアが最後の標的を射殺したとき、何者かに監視されていることに気づく。一方、中国では韋真林国家主席が軍部の力を借りて政変を退け、強硬派の蘇克強が主導権を握る。経済の低迷から南シナ海・東シナ海への進出に舵を切るのだった

風雲急を告げる中国の南シナ海進出を題材にしたジャック・ライアン・シリーズ
冒頭は「ザ・キャンパス」のメンバーを紹介するように、五人の標的を様々な手段で暗殺していく。必殺仕事人だとクライマックスだが、本作はここからオープニング
暗殺する瞬間をことごとく監視されていたことから、大統領の直属ともいえる情報機関が沈黙を余儀なくされるのだ
それを待っていたかのように、中国政府は南シナ海の掌握へ乗りだして、国外で大規模なハッカー軍団を創設する。巨額の軍事費を海軍につぎ込みつつも、通常兵器では対抗できないのは百も承知で、唯一アドバンテージのあるサイバー戦に持ち込んで、無人戦闘機などハイテク兵器に頼るアメリカ軍を混乱させていく
そうした大情勢に、ライアン・ジュニアの恋人メラニーに対するFBI捜査官の脅迫、右手を潰された工作員クラークと潰した張本人コヴァレンコとの因縁、ハニー・トラップにかかったビジネスマン、一人香港で天才ハッカーを追う現地工作員が絡み合って、複数の筋が紆余曲折を経て、かすかなつながりを持ち始めて後半へ突入する

邦題は「米中開戦」という物騒なタイトルだが、前半まででぶつかりあうのはサイバー領域である
中国側はサイバー戦の天才を脱走犯という形で国外へ放流し、忠実な中国系ハッカーで軍団を作らせるとともに、遠隔操作を可能にするマルウェアソフトを蔓延させて、サイバーテロの戦力に加える。さらに個人の弱みを握り工作員に変え、どこの組織かも構成員に分からせない不可視の諜報組織を作り上げる
バレても国対国の対立とならないように工夫されているのだ
とはいえ、そのサイバー軍団の能力はプレデター、グローバルホークを乗っ取り遠隔操作して見せ、アメリカ軍を大混乱に陥れる
実際に米中の海軍が角突きあわせる情勢で、サイバー領域がどう使われるかというのが、後半のテーマとなるようだ
前半では、取引に足のつかない仮想通貨ビットコインを使用する、数え切れないほどのサーヴァーを経由するなど、上記のように身元を隠してネット上で活動するノウハウが詰まっていて、個人と犯罪組織と国家が同じレベルで入り乱れるサイバー・スペースのカオスさが露わになる。それはもう、様々な規模の海賊船が動き回るような世界なのだ
それはもう酷いインターネットですね、としか言えないが(苦笑)、それでもネットを使わざるえないんだよなあ


次巻 『米中開戦』 第3巻・第4巻
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『米露開戦』 第3巻・第4巻 トム・クランシー マーク・グリーニー


米露開戦3 (新潮文庫)
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米露開戦4 (新潮文庫)
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ロシアのヴォローディン大統領はウクライナへの軍事侵攻を前に、同国経由のパイプラインを一方的に閉鎖する。欧州向け天然ガスの75%がカットされたことになり、NATO加盟国への強力な牽制となった。それに対し「ザ・キャンパス」のメンバーはキエフでデルタ・フォースと合流し、隠密にウクライナ軍に協力を始める。一方、父の指示で「天頂」を探り出したジャック・ライアン・ジュニアは、元M15の工作員「地底」と出会い……

トム・クランシー最後の作品の後半
ついに、ロシアはウクライナ侵攻を開始した。自作自演の親ロ政治家の暗殺から、FSBと特殊部隊、ロシア・マフィアの結合によって起こされた騒擾を口実にした軍事介入と、現実とリンクするような展開に驚く
首都キエフを目標とする軍事行動は現実と乖離しているものの、その有様は実際のウクライナ東部を彷彿とされるもので、作品内の出来事との距離感の無さがいろんな意味でたまらない。小説のようなことが本当に起こっちゃいけないんだよ!
このロシア軍の侵攻を押し留める鍵となるのが、ジャック・ライアン(現大統領)が30年前に会った謎の暗殺者「天頂」を巡る事件であり、ジャック・ジュニアが父に代わってその謎を解き明かし、現FSB長官と結びつけることでヴォローディンの野望を後退させる
若干、オチには強引さは否めないものの、現実的紛争と冷戦下のスパイ物を絡ませて最終的な決着に結びつけるストーリーラインはさすがで、国際社会への切実な警告といいポリティカル・フィクションの巨匠に相応しい名作だった

はたしてロシアとウクライナ間で戦争になった際、アメリカはどこまで援助できるのだろうか
ウクライナ軍は、旧ソ連軍を引き継ぐロシア軍とは歴然とした差がある。動員兵力もさることながら、質もしかりで、戦車で比較すればロシア軍が最新鋭のT-90なら、ウクライナ軍は冷戦時代のT-72(湾岸戦争のイラク軍主力戦車)なのである
兵隊の士気も高いとはいえなくて、空軍が思ったほど差がないという程度。小説ではこれを生かして、デルタ・フォースを秘密裏に投入し、最新のレーダーでロシア軍の戦車を捕捉しウクライナ軍の戦車や攻撃ヘリ、攻撃機に位置を知らせ、その進軍を遅滞させている
ウクライナはNATOの機関EAPC(欧州・大西洋パートナーシップ理事会)に加盟しているものの、NATOそのものには加盟していない
中東などに強い影響力を持つロシアと正面から事を構えるわけにはいかず、有事にやれることといえばこの程度なのだ
本作では旧KGB関係者“シロヴィキ”による恐怖政治と新興財閥オリガリヒによる略奪資本主義が描かれる一方、美人すぎる親ロ政治家を持ち出したり(モデルはおそらくユーリヤ・ティモシェンコ。実際の彼女は欧米派)、冷戦時代のスパイ小説とCOD的アクションも味わえて、サービス精神も旺盛な作品だ


前回 『米露開戦』 第1巻・第2巻

関連記事 『ソ連帝国再建』
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『米露開戦』 第1巻・第2巻 トム・クランシー マーク・グリーニー

原題は「COMMAND AUTHORITY」(=指揮権)


米露開戦1 (新潮文庫)
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米露開戦2 (新潮文庫)
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トム クランシー マーク グリーニー
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ロシアの戦車部隊がエストニアに侵入した。NATOの介入で事なきを得たものの、KGB出身のロシア大統領ヴォローディンは、ソ連復活をかけてウクライナに狙いを定める。アメリカ大統領ジャック・ライアンは、ヴォローディンの野望を阻むべく、休眠状態だった「ザ・キャンパス」を始動させ、キエフへ潜入させるのだった。その一方、中国の作戦で傷心のジャック・ジュニアは、民間の調査会社でロシア経済の闇に迫っていた

2013年12月に亡くなったトム・クランシーの遺作
共著者のマーク・グリーニーは、2011年からジャック・ライアン・シリーズに参加しており、自身のグレイマン・シリーズでも有名な人らしい。クランシーの死後も、ジャック・ライアン・シリーズの世界観を引き継いだ作品を発表しているそうだ
本作は現在進行形で紛争が起きている旧ソ連圏を舞台とした、ロシアと欧米の角逐がテーマだ。アメリカ視点なので、欧米寄りのウクライナを独裁国家のロシアから守るという筋立てとなっている
トム・クランシーというと、現実の「そこにある危機」を膨らませてハリウッド風に爆発させるイメージが強い(偏見?)が、第2巻まで読んだところでは、むしろ現実が小説を追い越している(苦笑)
前半のクライマックスがクリミアの親ロシア派に取り囲まれたCIA職員をオスプレイで救出するところなのだが、現実のクリミアは2014年3月にロシアが軍事介入し、住民投票で編入させてしまったのだ
第3巻以降はさすがに小説が追い抜くようだが、現実のほうもウクライナ東部にロシア義勇軍が乱入するなど予断を許さない情勢が続いている

KGB出身の大統領に、ジャック・ライアンと会食したロシア人の元スパイがポロニウムで毒殺されるなど、物騒なネタをこれでもかと盛り込まれている。小説として膨らませなくても、そのまま使えてしまうのがオソロシア・クオリティである(苦笑)
小説では国外を諜報を担当するSVR(ロシア対外情報庁)国内の保安を担当するFSB(ロシア連邦保安庁)が統合され、実質的にKGBの復活とされているが、そもそもFSBがロシア国内のみならず旧ソ連圏(CIS諸国)全体を活動範囲としていたことに驚いた
表向きはCIS諸国同士が諜報活動しない協定があるかららしいが、旧ソ連圏を統括する保安機関がずっと続いていたことになる。旧KGB関係者は、ソ連が崩壊してもCIS諸国を自分の庭のつもりでいたのだ。彼らと普通の人間とは世界地図が違うのである
小説ではクリミア併合を狙って、FSBが住民にパスポートを配り、自国のごろつきを組織員として送り込むなど具体的な工作活動が描かれる一方、新任のFSB長官が実は伝説的な暗殺者「天頂」であり、30年前のジャック・ライアンの視点で回想され、息子のジャック・ライアン・ジュニアが租税回避地を利用した闇取引に挑むなど、様々な筋が絡み合う
それがいかに結合して収束するか。後半が楽しみだ


次回 『米露開戦』 第3巻・第4巻

関連記事 『リトビネンコ暗殺』

リトビネンコ暗殺
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『ソ連帝国再建』 トム・クランシー スティーヴ・ピチェニック

盆休み、実家に持ち帰った本が切れて、なんとなく掴んだのがこの本


ソ連帝国再建 (新潮文庫)ソ連帝国再建 (新潮文庫)
(2000/07)
トム クランシースティーヴ ピチェニック

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新大統領が誕生したばかりのロシアで、選挙に敗れた内相がクーデターを起こそうとしていた。内相は欧米化を嫌う国家主義者やマフィアと手を組み、ソ連帝国の再興をもくろんだのだ。アメリカの極秘情報機関“オプ・センター”は、ロシア内の不穏な動きを察知して秘密裏に潜入阻止作戦を企むが・・・

トム・クランシーのシリーズらしく、全編ハリウッドなポリティカル・フィクション
オプ・センター”は国民に公表されていない諜報機関で、福井晴敏の“ダイス”と違い、国会議員への報告義務、作戦の事前承認が必要であり、CIAをコンパクトにしたような組織
序盤の展開は派手であり、舞台も広い
敵陣営の作戦は、アメリカ国内にロシア諜報機関による爆弾テロが起こし、それによってアメリカの表だった政府機関を釘付け。その隙にポーランドとウクライナで騒動を起こし、ロシア軍を軍事介入させると同時に、ロシア政府も乗っとるという壮大なもの
それを防ぐために“オプ・センター”は敵の資金源を押さえ込む作戦をとる。その資金は太平洋を越えてウラジオスットクから入ってくるので、ちょうど世界を横断するような規模なのだ
とまあ、その割にそれを阻止する作戦自体は、こじんまりとしている(敵が実行前に資金を確保していたら、どうしたんだろう?)。戦争を防ぐという大目的を小さい組織に当たらせるのだから、多少のご都合はやも得ないところか(笑)

“オプ・センター”の構成員は、みな任務に忠実な優等生たちだ。誰もが国家と国民に忠誠を誓い、自らの任務を疑うことはない。祖国を疑うこともない
“オプ・センター”もそのまま理想的なCIAと言ってよく、このシリーズ自体も諜報機関の理想小説なのだろう
余りにも大規模になってしまったCIAは、数々の失態を犯し機能的な組織とは言い難くなってしまった。そんな現実に対し、俺たちアメリカ国民の税金で養われている諜報機関はこうであって欲しいんだよ、というアメリカ人の願望が透けて見えるようだ
今回の作戦自体は、敵のテロに対し潜入作戦を展開するという、宣戦布告なき戦争という趣で、介入主義の度合いが濃い。小説の一節に、ソ連はバルバロッサ作戦の教訓として戦場を国外にする攻撃主義を身につけたというものがあるが、それはアメリカにも当てはまるように思われる

実際のCIAは?→『CIA秘録』

この手の小説は専門用語の解説が長いという先入観がもってしまうが、この本に関してはさにあらず
簡便して要を得た説明で、文章のリズムを崩していない。文章そのものもさすがベストセラー作家で、誠実すぎる登場人物、余りにベタなハリウッドな展開をやっていても、すっかり読まされてしまった
登場人物にウィットに富んだ会話をさせるのは、向こうの売れっ子作家の条件なのだろうか
ドライな描写と効果的な人情劇のバランスが絶妙にとれている。しかし、ポリティカル・フィクションとして優等生すぎて、少しアクがたりない
あくまで娯楽作品に徹して理想小説にとどまっている作品

この小説の原題は、“MIRROR IMAGE”つまり“鏡像
それは直接的には、“オプ・センター”と同様の秘密諜報機関がロシアにあり、“オプ・センター”の長官ポール・フッドのような愛国者がロシア側にもいたということを示している
しかし、もう一つ意味がある。それはソ連のような帝国は崩壊したように思われるが、混乱するロシアはソ連の“鏡像”のような恐ろしい帝国になるのでは、という不安を表明しているのだ
チェチェン問題を皮切りにした国内マスコミの統制、諜報機関の暗躍を見ると、当たらずとも遠からずか


前作 『ノドン強奪』続きを読む
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