大学の仕事のためアメリカにやってきたハンバート教授(=ジェームズ・メイソン)は、下宿先で美しい少女ロリータ(=スー・リオン)に一目惚れする。彼女に近づきたい一心で彼女の母親(=シェリー・ウインタース)とも結婚し、家庭生活をスタートさせるが・・・
登場人物は少ないが、修羅場の連続で飽きない。最初はユーモアに富んで楽しそうなんだけど、要所ではハンバートと母親、ロリータががつんがつんとやり合う
ドラマの展開の仕方が予想に反して転がっていくし、時間が長くてもずっといいテンションを保っているのだ。構成が秀逸なのだろう
ハンバードは一見知的だが、普通のせこい男。大それたことはできない。ロリータへの欲情を隠しながら、父親然として振る舞う
しかし、女の方は二手三手上を行っていて、非常に情けない結果になっちゃうのだなあ
それがまた絵になるのである(笑)
権威的なロリコン
一般的なロリコンのことはさておいて、この映画のハンバードの情けなさというのは、まずロリータに素直に告白できないこと。映画終盤まで劣情として持ち続けていく
ロリータ自身は、ハンバードが全面的に嫌いではなかった。この結末は大人のプライドを振りかざして続けた結果なのだ
ライバルである“あの男”は、少なくとも彼女にそういう態度を示さなかったに違いない
そしてもう一点が、ロリータに勝手な女性像を押しつけていくことだろう。彼女への束縛の仕方というのは、ただ男が近寄るのを禁じるだけじゃなくて、ある種の価値観を求めているように感じる
対等の付き合いではないのだ。そりゃ当然、女性から拒否されるわけだわな
なんであんな男を好きになると思うが、この不条理こそが色恋だろうし、人生、大きく言えば人の世なんだろう
「どうしてこうなった♪」ということこそがむしろリアル。それを感じさせてくれるいい映画だった