『米朝開戦』 第3巻・第4巻 マーク・グリーニー

「ザ・キャンパス」の物語は続く


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マーク グリーニー
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米朝開戦(4) (新潮文庫)
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アメリカ西海岸に到達する弾道ミサイルの開発と、その資金源となるレアアース鉱山の採掘と精錬。北朝鮮はその野望の妨げとなるジャック・ライアン合衆国大統領の暗殺作戦に乗り出す。一方、CIAは鉱山開発の実態を暴くべく、中国系工作員アダム・ヤオを北朝鮮に潜入させる。ジャック・ジュニアも北朝鮮に協力する民間情報機関を探るために、ヴェトナムで会った美女ヴェロニカ・マルテルに接触を試みるが……

熱いスパイ小説である
北朝鮮に『米中開戦』で活躍したアダム・ヤオを潜入させたと思いきや、ジャック・ジュニア元フランス工作員の美女にお近づきとなり、もう一歩でウッフンなところまで行く。スパイ同士が騙しあう二重三重の頭脳戦が展開され、「ザ・キャンパス」の面々も不測の事態に七転八倒して先を読ませない。まさに痺れる
リアリティはともかくも、純正グリーニーの本作は娯楽性に富んでいるのだ
第3巻のラストにはジャック・ライアン暗殺を狙った大規模テロが起こされ、第4巻ではその真犯人への「ザ・キャンパス」の総力(五人だけど)を上げた追撃、重要人物を亡命させるべく、収容所国家を相手にしたアダム・ヤオの逃走劇が怒濤のように展開される。彼の救出に意外な専門家の分析がものを言うとか、計算され尽くしたプロットには感動した
最後の決着のつけ方に、現実から逸脱する嫌いがあって、今後の国際情勢との整合性に疑問が残るものの、エンターテイメントとしては一級品だ

アダム・ヤオは中国の非公式開発業者を経て、レアアース鉱山へ潜入する
北朝鮮側の責任者・黄珉鎬は開明的な人物ながら、いやだからこそ、警察国家で生まれ育った人間の苦悩を代表している
三代目の独裁者から無茶な要求を出されて亡命を余儀なくされても、独裁者一族への忠誠が洗脳教育として植えつけられている。逃亡中にヤオが崔智勲を非難すると、思わずカッとなって反論し、ヤオを蒼ざめさせるほどだ
そして、黄の両親を脱出させようとして、逆に「裏切り者扱い」されるところなど、洗脳の怖さを物語っている
朝鮮戦争における中国の協力を北朝鮮は国内的に説明しておらず、むしろ中国の革命に北朝鮮が貢献したと夜郎自大な革命観を公式なものとしている。結果、中国人と北朝鮮人の関係は友好とは程遠い
こういった同国の閉鎖性を考えると、小説のオチは中国の影響力を過大視しているように思える


前巻 『米朝開戦』 第1巻・第2巻

関連記事 『米中開戦』 第1巻・第2巻
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『米朝開戦』 第1巻・第2巻 マーク・グリーニー

原題はFULL FORCE AND EFFECT直訳だと「勢揃いと効果」という、分からない意味になるが、英語の契約用語に「In full force and effectというのがあって、これは契約後も効力を持つ」という意味があるそうだ
北朝鮮と取引すると、その後も拘束されるということ?


米朝開戦(1) (新潮文庫)
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ベトナムで元CIAの男が殺された。現場を張っていた“ザ・キャンパス”の面々は、刺客を北朝鮮の工作員と見て、彼の雇い主である民間情報機関“シャープス”とその工作に関わったチェコの外務省職員を追う。一方、北朝鮮では父親の跡を継いだ新指導者が、独自色を発揮しようとレアアース鉱山から中国の公社を追い出し、アメリカに届くICBMへの研究に邁進していた。3年以内の成功を義務づけられた北の偵察総局長は、起死回生の謀略を仕掛けるのだった

亡きトム・クランシーから、マーク・グリーニーが引き継いだジャック・ライアンシリーズ
今回のテーマは北朝鮮のミサイル開発で、代替わりした指導者が中国離れとアメリカへの強硬路線を追究するという、かなり現実に近いというか、現実が近づいてしまった情勢が展開していく
ジャック・ライアン・シニアがアメリカ大統領であるというフィクションに対応して、北朝鮮の指導者が崔智勲と設定されているものの、それが誰に当たるかは明らか。北朝鮮がアメリカと渡り合うためのミサイル開発にともなって、どこまでの手段をとるのか、その最悪のシナリオがシミュレートされている
トム・クランシーから純正マーク・グリーニーになって感じたのは、映画的な華である。2巻の最後にキャンパスのメンバーと北朝鮮の暗殺者が2対2でかち合うが、お互いに向けられた拳銃と腕がX字を作る熱い構図。リュック・ベッソン製作のアクション映画を彷彿とさせる

小説で北朝鮮の指導者がレアアース鉱山から中国の公社を追い出し、ミサイル開発の資金に回すが、まんざら根拠のない話でもない

中国を凌駕する北朝鮮のレアアース

レアアース自体が注目されるようになって歴史も浅いので、シェールオイルのようにいろんな国で鉱床が眠っているような気はするが、北朝鮮にもこういう調査結果もあるのだ
記事に書かれているとおり、北朝鮮が資源大国になる上での障害は、レアアースの精製技術輸出手段
本作では、メキシコの鉱山グループと協力して経済制裁を迂回する方策を探す一方、経済制裁そのものを消すべく大手新聞などのマスコミ国連関係者への工作活動を行う
もし北朝鮮がレアメタル輸出によって膨大な資金を手にすれば、大量破壊兵器の開発に必要な技術が簡単に手にできてしまう。そんな国際情勢のリスクなど知ったこっちゃないと、元スパイが集まる民間情報機関など、金目当てで動く人間が世界には山ほどいて、国家もまともな手段では止めようがないという、グローバル化した世界の困難さが突きつけられている


次巻 『米朝開戦』 第3巻・第4巻
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『米中開戦』 第3巻・第4巻 トム・クランシー マーク・グリーニー

アメリカらしい解決法


米中開戦3 (新潮文庫)
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米中開戦4 (新潮文庫)
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ジャック・ジュニアはハッカー集団を追って、香港のCIA工作員アダム・ヤオと合流。天才ハッカー査殊海を追い詰め、国防省特殊部隊と香港マフィアの銃撃戦を乗り越えて捕えるが、アメリカで人民解放軍の特殊部隊に査を殺されてしまう。大統領ジャック・シニアは台湾に米軍パイロットを密かに送り込むも、中国側はついにサイバー攻撃で報復し、アメリカ軍を大混乱に陥れるのだった

中国の南シナ海進出を題材にしたシリーズの後半である
ジャック・ジュニアらの活躍によって香港のサイバー軍団は広州への移転を余儀なくされたが、中国のサイバー作戦はここからが本番。単にアメリカ軍の軍事衛星を無力化しハイテク兵器の精度を奪うのみならず、銃後の領域へも迫る
原子力発電所の冷却水までコントロールし原子炉の暴走を誘い、ウォール街の証券取引所を取引停止に追い込む。しかもサイバー攻撃は直接の証拠が残らないから、国として反撃することもできない
その証拠を掴むべく秘密チーム「ザ・キャンパス」が動きまわるわけだが、サイバー攻撃の脅威ハイテク社会がそれに対して脆弱なことを本シリーズは啓蒙してくれる
小説ではサイバー軍団の拠点が都合よく一か所に集中していて、爆弾で吹き飛ばすというアメリカらしい一発逆転が決まるものの、実際にどう対処するかフィクションのなかでも見えてこないから恐ろしい

後半は当然ながら、一方的に弄ばれていたアメリカ側の反撃が始まる
アメリカ大統領ジャック・ライアン・シニアは、「アメリカに脅威を与える国の指導者を許さない=抹殺する」というライアン・ドクトリンを掲げる。ただし、今回は中国側と公式的には戦争になっていないので、簡単には動けない
しかしサイバー攻撃の拠点が広州にあると判明するや、迅速な作戦を指示した。なんと海兵隊戦闘機、F-18ホーネットによる本土空爆である!
通常兵器だけに限れば先制攻撃であり、そのまま全面戦争になりかねない選択だ
作者が国防長官に語らせるのは、「サイバー攻撃で原子力発電所を誤動作させることは、核爆弾を投下するに等しい」ということ。攻撃方法ではなく、その結果とリスクで判断すれば、本土攻撃も妥当というわけだ
何やらブッショ・ドクトリンを彷彿とさせる行動基準だが、これが小説で示されるサイバー戦を交えた現代戦の想定なのだ。冷戦が終わり核ミサイルが向き合う時代が終わったと思いきや、一皮むくとこういう恐ろしい可能性があるのである
中国が南シナ海で強引な作戦をとる動機として、経済低迷に中国共産党への求心力の低下とか、その想定にはフィクションとして可能性の薄いラインを持ってきて、民主化を求める過激な若者がアメリカの工作に協力するとかご都合もあるものの(公然と外国の暗殺作戦に乗るだろうか?)、サイバー戦争については迫真性が高かった


前巻 『米中開戦』 第1巻・第2巻
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『米中開戦』 第1巻・第2巻 トム・クランシー マーク・グリーニー

原題「Threat Vector」=脅威のベクトル


米中開戦1 (新潮文庫)
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米中開戦2 (新潮文庫)
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アメリカの極秘情報機関「ザ・キャンパス」は、旧カダフィ政権関係者に対する暗殺作戦をイスタンブールで展開していた。大統領の息子ジャック・ライアン・ジュニアが最後の標的を射殺したとき、何者かに監視されていることに気づく。一方、中国では韋真林国家主席が軍部の力を借りて政変を退け、強硬派の蘇克強が主導権を握る。経済の低迷から南シナ海・東シナ海への進出に舵を切るのだった

風雲急を告げる中国の南シナ海進出を題材にしたジャック・ライアン・シリーズ
冒頭は「ザ・キャンパス」のメンバーを紹介するように、五人の標的を様々な手段で暗殺していく。必殺仕事人だとクライマックスだが、本作はここからオープニング
暗殺する瞬間をことごとく監視されていたことから、大統領の直属ともいえる情報機関が沈黙を余儀なくされるのだ
それを待っていたかのように、中国政府は南シナ海の掌握へ乗りだして、国外で大規模なハッカー軍団を創設する。巨額の軍事費を海軍につぎ込みつつも、通常兵器では対抗できないのは百も承知で、唯一アドバンテージのあるサイバー戦に持ち込んで、無人戦闘機などハイテク兵器に頼るアメリカ軍を混乱させていく
そうした大情勢に、ライアン・ジュニアの恋人メラニーに対するFBI捜査官の脅迫、右手を潰された工作員クラークと潰した張本人コヴァレンコとの因縁、ハニー・トラップにかかったビジネスマン、一人香港で天才ハッカーを追う現地工作員が絡み合って、複数の筋が紆余曲折を経て、かすかなつながりを持ち始めて後半へ突入する

邦題は「米中開戦」という物騒なタイトルだが、前半まででぶつかりあうのはサイバー領域である
中国側はサイバー戦の天才を脱走犯という形で国外へ放流し、忠実な中国系ハッカーで軍団を作らせるとともに、遠隔操作を可能にするマルウェアソフトを蔓延させて、サイバーテロの戦力に加える。さらに個人の弱みを握り工作員に変え、どこの組織かも構成員に分からせない不可視の諜報組織を作り上げる
バレても国対国の対立とならないように工夫されているのだ
とはいえ、そのサイバー軍団の能力はプレデター、グローバルホークを乗っ取り遠隔操作して見せ、アメリカ軍を大混乱に陥れる
実際に米中の海軍が角突きあわせる情勢で、サイバー領域がどう使われるかというのが、後半のテーマとなるようだ
前半では、取引に足のつかない仮想通貨ビットコインを使用する、数え切れないほどのサーヴァーを経由するなど、上記のように身元を隠してネット上で活動するノウハウが詰まっていて、個人と犯罪組織と国家が同じレベルで入り乱れるサイバー・スペースのカオスさが露わになる。それはもう、様々な規模の海賊船が動き回るような世界なのだ
それはもう酷いインターネットですね、としか言えないが(苦笑)、それでもネットを使わざるえないんだよなあ


次巻 『米中開戦』 第3巻・第4巻
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『米露開戦』 第3巻・第4巻 トム・クランシー マーク・グリーニー


米露開戦3 (新潮文庫)
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ロシアのヴォローディン大統領はウクライナへの軍事侵攻を前に、同国経由のパイプラインを一方的に閉鎖する。欧州向け天然ガスの75%がカットされたことになり、NATO加盟国への強力な牽制となった。それに対し「ザ・キャンパス」のメンバーはキエフでデルタ・フォースと合流し、隠密にウクライナ軍に協力を始める。一方、父の指示で「天頂」を探り出したジャック・ライアン・ジュニアは、元M15の工作員「地底」と出会い……

トム・クランシー最後の作品の後半
ついに、ロシアはウクライナ侵攻を開始した。自作自演の親ロ政治家の暗殺から、FSBと特殊部隊、ロシア・マフィアの結合によって起こされた騒擾を口実にした軍事介入と、現実とリンクするような展開に驚く
首都キエフを目標とする軍事行動は現実と乖離しているものの、その有様は実際のウクライナ東部を彷彿とされるもので、作品内の出来事との距離感の無さがいろんな意味でたまらない。小説のようなことが本当に起こっちゃいけないんだよ!
このロシア軍の侵攻を押し留める鍵となるのが、ジャック・ライアン(現大統領)が30年前に会った謎の暗殺者「天頂」を巡る事件であり、ジャック・ジュニアが父に代わってその謎を解き明かし、現FSB長官と結びつけることでヴォローディンの野望を後退させる
若干、オチには強引さは否めないものの、現実的紛争と冷戦下のスパイ物を絡ませて最終的な決着に結びつけるストーリーラインはさすがで、国際社会への切実な警告といいポリティカル・フィクションの巨匠に相応しい名作だった

はたしてロシアとウクライナ間で戦争になった際、アメリカはどこまで援助できるのだろうか
ウクライナ軍は、旧ソ連軍を引き継ぐロシア軍とは歴然とした差がある。動員兵力もさることながら、質もしかりで、戦車で比較すればロシア軍が最新鋭のT-90なら、ウクライナ軍は冷戦時代のT-72(湾岸戦争のイラク軍主力戦車)なのである
兵隊の士気も高いとはいえなくて、空軍が思ったほど差がないという程度。小説ではこれを生かして、デルタ・フォースを秘密裏に投入し、最新のレーダーでロシア軍の戦車を捕捉しウクライナ軍の戦車や攻撃ヘリ、攻撃機に位置を知らせ、その進軍を遅滞させている
ウクライナはNATOの機関EAPC(欧州・大西洋パートナーシップ理事会)に加盟しているものの、NATOそのものには加盟していない
中東などに強い影響力を持つロシアと正面から事を構えるわけにはいかず、有事にやれることといえばこの程度なのだ
本作では旧KGB関係者“シロヴィキ”による恐怖政治と新興財閥オリガリヒによる略奪資本主義が描かれる一方、美人すぎる親ロ政治家を持ち出したり(モデルはおそらくユーリヤ・ティモシェンコ。実際の彼女は欧米派)、冷戦時代のスパイ小説とCOD的アクションも味わえて、サービス精神も旺盛な作品だ


前回 『米露開戦』 第1巻・第2巻

関連記事 『ソ連帝国再建』
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『米露開戦』 第1巻・第2巻 トム・クランシー マーク・グリーニー

原題は「COMMAND AUTHORITY」(=指揮権)


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ロシアの戦車部隊がエストニアに侵入した。NATOの介入で事なきを得たものの、KGB出身のロシア大統領ヴォローディンは、ソ連復活をかけてウクライナに狙いを定める。アメリカ大統領ジャック・ライアンは、ヴォローディンの野望を阻むべく、休眠状態だった「ザ・キャンパス」を始動させ、キエフへ潜入させるのだった。その一方、中国の作戦で傷心のジャック・ジュニアは、民間の調査会社でロシア経済の闇に迫っていた

2013年12月に亡くなったトム・クランシーの遺作
共著者のマーク・グリーニーは、2011年からジャック・ライアン・シリーズに参加しており、自身のグレイマン・シリーズでも有名な人らしい。クランシーの死後も、ジャック・ライアン・シリーズの世界観を引き継いだ作品を発表しているそうだ
本作は現在進行形で紛争が起きている旧ソ連圏を舞台とした、ロシアと欧米の角逐がテーマだ。アメリカ視点なので、欧米寄りのウクライナを独裁国家のロシアから守るという筋立てとなっている
トム・クランシーというと、現実の「そこにある危機」を膨らませてハリウッド風に爆発させるイメージが強い(偏見?)が、第2巻まで読んだところでは、むしろ現実が小説を追い越している(苦笑)
前半のクライマックスがクリミアの親ロシア派に取り囲まれたCIA職員をオスプレイで救出するところなのだが、現実のクリミアは2014年3月にロシアが軍事介入し、住民投票で編入させてしまったのだ
第3巻以降はさすがに小説が追い抜くようだが、現実のほうもウクライナ東部にロシア義勇軍が乱入するなど予断を許さない情勢が続いている

KGB出身の大統領に、ジャック・ライアンと会食したロシア人の元スパイがポロニウムで毒殺されるなど、物騒なネタをこれでもかと盛り込まれている。小説として膨らませなくても、そのまま使えてしまうのがオソロシア・クオリティである(苦笑)
小説では国外を諜報を担当するSVR(ロシア対外情報庁)国内の保安を担当するFSB(ロシア連邦保安庁)が統合され、実質的にKGBの復活とされているが、そもそもFSBがロシア国内のみならず旧ソ連圏(CIS諸国)全体を活動範囲としていたことに驚いた
表向きはCIS諸国同士が諜報活動しない協定があるかららしいが、旧ソ連圏を統括する保安機関がずっと続いていたことになる。旧KGB関係者は、ソ連が崩壊してもCIS諸国を自分の庭のつもりでいたのだ。彼らと普通の人間とは世界地図が違うのである
小説ではクリミア併合を狙って、FSBが住民にパスポートを配り、自国のごろつきを組織員として送り込むなど具体的な工作活動が描かれる一方、新任のFSB長官が実は伝説的な暗殺者「天頂」であり、30年前のジャック・ライアンの視点で回想され、息子のジャック・ライアン・ジュニアが租税回避地を利用した闇取引に挑むなど、様々な筋が絡み合う
それがいかに結合して収束するか。後半が楽しみだ


次回 『米露開戦』 第3巻・第4巻

関連記事 『リトビネンコ暗殺』

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